○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、午前中の打越さく良委員が自己負罪拒否特権の保障とパスワードを始めとした議論を果敢になされたことに対して、心から敬意を申し上げたいと思います。この議論に対する法務省、法務大臣の答弁は極めてひどいものでした。私は抗議を申し上げたいと思うんです。
通告していませんから、刑事局長と、私、これ以上の議論をするつもりはなくて、私のコメントとして聞いていただけたらと思うんですが、刑事局長が呼気検査に関する最高裁判例を援用して、この電磁的記録提供命令に際しての被疑者、被告人のパスワードの問題を同質の問題だというふうに言っていることには、大臣、これごまかしがあると思います。
呼気検査は、大臣もイメージ湧くと思いますが、酒酔い運転などで、呼気の中にアルコール分があるわけですよね。これを警察が調査をするという検査です。一方で、デジタル個人情報はパソコンやあるいはオンラインの中にあるものですけれども、これはパスワードなどを入れなければ読めるようにはならないわけですよね。
呼気検査における検知管などのものと、それから読めるようにするという手続、手順というのを同質のものに見るというのが刑事局長の答弁の前提にあると思いますが、パスワードの入力は検知管とは全く異質のもの、つまり独立して被疑者の人権を侵害するものです。なぜなら、それは記憶しているパスワードを表出するという観念の表出だからです。
先ほどの議論を聞いていて、私はむしろ、呼気検査などではなくて、うそ発見器の議論を想起しました、ポリグラフ検査というものですけれども。ポリグラフ検査というのは、一定の質問に対して、検査を受けている被疑者の応答に伴って脈拍、呼吸、発汗という、こういう生理的変化が起こる、それを記録して、うそかどうかを発見しようとするという、こういう仕掛けなんですね。
こういう捜査手法に対して、脈拍だとか呼吸だとかを記録するんだから供述とは言えないという議論がありました。もしかしたら今もあるのかもしれない。それはとんでもないでしょうと。質問への応答というのは内心の表出なのであって、これは被疑者の供述の一種と見るべきであって、黙秘権保障、自己負罪拒否特権の保障が及ぶという議論であって、しかも包括的に黙秘権を放棄するなんということはあり得ないんだから、だからこんな検査は許されないし、ましてや裁判の証拠に扱うことは許されないと。それが私は議論だと思いますよ。
刑事局長の、あるいは法制審以来の法案提案者のこの自己負罪拒否特権に関するまとめだとか答弁だとかというのは、一貫してそのごまかしに満ちている。とんでもないと。その上に、法案では、パスワードを入力させなくても通信電気事業者に読めるようにしてくださいねという令状を出せば全部読めるという、そういうことになっているわけですよね。それが私の法案に対する理解であり、コメントなんですが。
大臣にその点について一問だけ、大臣として、あるいは政治家として、人間としてどうなんですかとお聞きしたいのですが、思いも寄らない令状が突然示されて、御自身のパソコンの前に座らされて、パスワードを入力しろと周り中囲まれて言われる、あるいはスマートフォンを目の前にかざされて、ここで顔認証しろと、あるいはパスワード入力しろと、そう言われるということを想定したとき、想像したときに、屈辱的じゃありませんか。自分の存在、知られたくないこともたくさんあるかもしれない、知られていいことだって、そうやって強制されて丸裸にされるということは極めて屈辱的でしょう。
大臣、どう感じますか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) あくまでここは法務大臣として立っておりますので、大臣としてという答弁ということになりますけれども、まさに、この電磁的記録提供命令、ここは、その範囲ということについては、しっかりそこは令状において審査をされるという中でそうしたものが提供を命じられるということだと思います。
そうしたものを命じるということにあって、そのパスワードが掛かっているものにしても何にしても、そのものを提供するという、そういった命令についてということがこの法律の趣旨ということになりますので、そういった意味においては、先ほど打越委員との局長を中心とした答弁でありますけれども、その答弁のラインということにこれは尽きるのかなというふうに私としては考えているところであります。
○仁比聡平君 自分に不利なこと、あるいは自分がそうした行為を供述を強制される、観念の表出を強制されるということは人間の尊厳そのものに関わるんですよ。尊厳を持った生存を根底から揺さぶられてしまうからこそ、黙秘権の保障があり、自己負罪拒否特権という権利が確立してきているわけですよね。
だからこそ、私は、もし今刑事局長がおっしゃるような趣旨の令状請求がされたとしたときには、裁判官は断固としてそのような憲法侵害の令状は出さないと判断すべきだと思います。最高裁の様々な強制処分に関する決定というのは、検察がそのようなことを行い、国がそれは合憲だと主張してきたことによってそういう幾つかの判決が形成されているわけですよね。
言わば検察の論理ですよ、検察の論理に立ってはならないと。我々が立つべきは、憲法三十八条であり憲法三十五条であり、刑事手続における人権保障である。そのことがこの法案には全くないがしろにされているということが先ほど打越さんの議論の中で明らかになったのではないかと思います。
だからこそ私は、今日で審議を終局する、採決に及ぶことは反対だと申し上げてきました。今の点についてもきちんと議論をしていけば先ほど打越さんが求められていたような議論に到達するかもしれないけれど、そうなっていないというのが今の現実じゃないですか。
その点で、聞いておきたいことがあります。
オンライン取調べを現在も行われているのですが、この法案によってオンライン取調べを警察や検察が行う、特に検察のオンライン取調べを記録した供述録取書、そういう電磁的記録というのがこれからは伝聞法則の例外として裁判の証拠として使えるんだという趣旨の改正条文があります。
この伝聞法則というのは、反対尋問を経ていないそういう証拠というのは、裁判官の面前で反対尋問を経ていない証拠というのは誤ったものが山ほど入っているから、だから裁判の証拠にしちゃ駄目ですよと、ざっくりそんなようなことなんですが、その点について、五月八日、渕野参考人が、法案では、国外に所在する証人に対するビデオリンク方式による証人尋問は認められていないと。これは、国外で偽証されると、偽証罪で起訴しても公判の出頭を確保できないし、偽証罪の犯罪事実を立証するための証拠も収集できないので、威嚇効果が働かず、事実認定を誤らせるおそれが強いという理由が示されている。一方で、国内に所在する対象者にはオンライン取調べは限定されない。つまり、国外の証人にビデオリンク方式の証人尋問は認めないという法案が、国外の証人をオンライン取調べをした調書については、国外ではできないからという理由で伝聞例外として採用を求め、それを裁判所が採用するということになるじゃないかと指摘をしているんですね。
これ、法務省刑事局長、そうなるんですか。
○政府参考人(森本宏君) まず、三百二十一条一項二号と、それから国外の所在の証人の偽証の、制裁の下で信用性が担保されるかどうかということと、先ほど言った三百二十一条一項二号の中での特信性をどう判断していくのかというものについて要件が違いますので、まず委員がおっしゃったように、どう違うのかということを、制度が違うので一概には言えないと思いますが、そもそもなんですけれども、今先生がおっしゃったのが、海外にいる人を検察官がビデオリンクで取り調べるということであるとすると、そもそも、その先生の御議論の前に、国内の我々捜査機関が外国に対して主権を行使するという問題が生じますので、まず、そこのところの障害を超えられるかどうかというところからちょっと問題があると思いますので、なかなか、それ以上先に議論が進まないんじゃないかというのが、済みません、ちょっとマニアックですけれども、思っております。
○仁比聡平君 つまり前提として、法文全体は二段階の、この刑事訴訟法の改正によって、そういう、私が申し上げたような、渕野参考人が刑事訴訟法の研究者としてそのように読めるというふうにおっしゃっているような条文規定になっているんですよ。
今刑事局長が言われているのは、その法文はそうかもしれないがという括弧付きなのかもしれないですけど、そもそも検察は、国外の証人に対するオンライン取調べは、まあ基本できませんと、あるいはやりませんというふうにおっしゃっているんだと思うんですね。そうなんですか。
○政府参考人(森本宏君) 国際法の考え方がどう変わっていくのかにもよるのかもしれませんけど、基本的には、それは主権の行使の問題を生じるので抑制的になるのではないかということとともに、それから、裁判所の判断におきましても、仮にですけれども、仮に先生がおっしゃったような形で取調べを行って、それについて特信性が認められるかどうかというときには、裁判官、裁判所といたしましても、その供述調書がビデオリンクによる取調べにおいて作成されたものであるということをもうもちろん考慮した上でその証拠能力について判断するということになると思いますので、なかなかすぐに、じゃ、海外にいるから、どこにいるから、オンラインでやればいいというような形で、それですぐに伝聞例外が、逆に調べられないんだから要件が認められるというような形では実務は動いていかないというふうには考えております。
○仁比聡平君 警察官がオンライン取調べをやるということがあると思いますが、これも三百二十一条の三号書面として認められることがあり得るということなんですか。
○政府参考人(森本宏君) 済みません。お待たせして、申し訳ございません。
まず三号は、済みません、面前の要件がないということと、それから、さらに二号書面以上に特信性の要件が満たされるかどうかということになりますので、今の議論以上に難しい状況になるということですので、これも含めて、余り想定し難い感じかなというふうには思っております。
○仁比聡平君 そのような実務を想定しているというのが今の議論なんですね。
もう一点、ビデオリンクによる証人尋問について、共犯者的な立場の証人であることも少なくないと。だから、対面での十分な反対尋問の機会を保障する必要が高いということも渕野先生はおっしゃっていますが、この点はいかがですか。
○政府参考人(森本宏君) お尋ねの、これは刑事施設等に収容されている証人のビデオリンク方式の証人尋問ということでよろしゅうございますでしょうか。
それにつきましては、法制審議会の部会におきまして、刑事施設等に収容中の証人については共犯という立場に置かれている者も多く、反対尋問においてその表情を含めた様子を観察する必要がとりわけ重要となることからそのような規定を置くことには反対であるといった、今委員が御紹介されたのと同趣旨の御意見が示された一方で、個々の証人の立場や対面による尋問の必要性はビデオリンク方式による証人尋問の実施の相当性の判断において考慮されるべきものであり、一律にビデオリンク方式の活用を認めないとする理由にはならず、刑事施設等に収容中の証人について、裁判所に出頭することが困難な事情があり、かつ相当である場合にビデオリンク方式による証人尋問を実施できるものとすることには十分な合理性があるといった御意見も示されたものと承知しております。
その上で、本法律案におきましては、裁判所が身体拘束を受けている証人について、その年齢、それから心身の状態、処遇の実施状況その他の事情によって、同一構内への出頭に伴う移動により証人が精神の平穏を著しく害され、その処遇の適切な実施に著しい支障を生ずるおそれがあるかなどを判断しまして、そうしたことが認められる場合で、かつ相当と認められるときに証人尋問が行うこととしており、さらにその上で、検察官だけではなくて被告人、弁護人の意見も聞いた上で判断するということになっておりますので、御指摘のような恣意的な運用のおそれはないというふうに考えております。
○仁比聡平君 極めて厳格に扱うんだとおっしゃりたいんだと思うんですよ。こうした答弁も踏まえて、私はやっぱり刑事事件における弁護士の役割というのは極めて重要だと思います。みんな、毅然として闘おうじゃないかと申し上げたいと思うんですよ。
検察は、こういう規定をルーズに使って何でもやれると思ったら大間違いだと。裁判所が憲法の立場に立ってこの公判あるいは刑事手続全体をしっかり指揮しなきゃいけないし、今日も捜索差押令状がいかにルーズにやられているかという議論がありましたけれども、一人一人の裁判官がこの法を一体どうするのか、自分の存在懸けて審査をしなきゃいけないというふうに思います。
ちょっと通告順変えますけれども、電磁的記録提供命令に際して秘密保持命令を付すということは、これ実質的に被疑者の不服申立て権を侵害します。弁護士会が求めてきた通知も行われない。一年たたないと分からないかもしれないと。それはつまり、全く知らない間にプライバシーが丸裸にされているという状態をこの法律でつくり出すということなんですよね。
大体、この不服申立て権、この命令に対しては準抗告ということになると思いますけれども、この準抗告というのは、そもそもが捜査段階での手続を本当に、手続保障を全うする、捜査段階で警察や検察が乱暴なことをした、そうしたらそれに対して断固として被疑者、被告人が人権を守るというために準抗告という手続が保障されているんじゃないですか。これによって不正をただす、不当をただす、それが刑事訴訟の構造じゃないですか。
○政府参考人(森本宏君) まず、一般に準抗告とは、裁判官がした裁判に対する刑事訴訟法第四百二十九条に基づく不服申立てと、それから捜査機関がした処分に対する同法四百三十条に基づく不服申立てを合わせてそのように呼ばれるものというふうに承知しております。
どのような場合に準抗告ができるかということについては、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断すべき事柄でございますけれども、まず、電磁的提供命令により提供された電磁的記録に記録された情報の主体は、まず準抗告の主体とはなり得るということでございます。
他方で、秘密保持命令というものが電磁的記録提供命令の被処分者として捜査に協力的でない者等も想定される中で、そういった者が命令を受けたことや命令により電磁的記録を提供したことなどを犯人等に伝えることによって犯人等が罪証隠滅行為や逃亡に及ぶおそれがあることに鑑みて、捜査に重大な支障が生じることを防止するために創設するものでありまして、まさにその秘密保持命令というのは捜査の必要性とそれから関係者に及ぼす影響の双方を考慮して制度設計をしているところでございまして、その準抗告の権利を不当に制約するものとは考えておりません。
○仁比聡平君 この法案の審議通じて、与野党問わず弁護士出身の議員が、この弁護士の活動というのは一体何かという議論を随分されたと思います。例えば身柄を取られた逮捕、勾留で、あるいは捜索差押え、ガサが入った、何かを持っていかれた。それに対する不服申立てをどれだけ果敢に、機敏に闘って不当な捜査を抑止するか、それは本当にそのときそのときの厳しい闘いなんですよ。タクシー走らせながら手書きで準抗告の申立書書くことだってある、それを裁判所に持ち込むことだってある。のんびりした話じゃないんですよ、本来。それをこの、一年とは言うけれども、秘密保持命令というのは一体どういうふうにしてしまうのか、検察のやりたい放題になるのではないのか、そんなふうにも思うわけですが。
その下で蓄積される情報について、大臣が私の本会議の質問に対して、取得された情報が捜査機関の元に蓄積され続けることとはならないというふうにおっしゃったので、私は、議論の上、統一見解を求めたわけですが、理事会協議の上、今日確認をされたものをお配りをしています。議事録に残すために読みます。
令和七年四月二十七日の参議院法務委員会において、仁比聡平委員から、「電磁的記録提供命令により取得された情報が捜査機関の元に蓄積され続けることになるのではないかという点について、政府としての統一的な見解を明らかにされたい」旨の御指摘がありました。
警察においては、捜査の結果、作成され、又は得られた書類や証拠物は、刑事訴訟法等の関係規定に基づき、適切に検察官に送致しており、送致されなかった証拠物その他の資料については、捜査の終結、公訴の提起、公判の維持等の観点から、保管の必要性を組織的に判断し、保管の必要性がなくなったと認める場合には、確実に廃棄、消去又は還付することとしています。
また、捜査で取得した情報のうち、暴力団等の犯罪組織に係る情報等警察の所掌事務の遂行上必要があるものについては、個人情報保護法等の関係法令に従い、保管を継続することとしており、その保管の必要性は組織的に判断しているところ、例えば、当該犯罪組織との関連が認められなくなった場合等当該所掌事務を遂行する上で保管の必要がなくなったと認める場合には、確実に廃棄又は消去することとしています。
検察庁においては、警察から送致を受けた事件記録や証拠品については、刑事訴訟法、刑事確定訴訟記録法、法務大臣訓令である記録事務規程及び証拠品事務規程等に基づき、適切に保管・管理した上で、必要な期間保管した後は廃棄することとしています。
したがって、捜査機関において取得した電磁的記録が不適正に蓄積され続けることとはなりません。
その上で、本法律案により電磁的記録提供命令が創設された場合に、同命令により取得された電磁的記録について、適切に保管・管理するとともに不適正な利用を防止し、必要な期間保管した後は廃棄することなどを内容とする、適正な取扱いに関する規程等を整備することは重要であると考えており、具体的な規程等の在り方について、引き続き検討してまいります。
この見解について議論したいことはたくさんあったんですが、時間がなくなりましたので、一問だけ警察庁に尋ねます。
この審議で議論になってきたじゃないですか、警察は一体、集めた証拠どうしているんだと。証拠だとは言わないなんという概念があって、一体どうなっているんだと議論がありましたが、今の文書にあるように、検察に送致しない証拠物その他の資料というのがあるんですよね。この証拠物とその他の資料というのは一体どういうふうな意味なんですか。
○政府参考人(松田哲也君) お答えいたします。
送致されなかった証拠物その他の資料については、送致する前に還付した証拠物や送致書類の写しなどを指すものであります。
○委員長(若松謙維君) 時間過ぎておりますので、おまとめお願いします。
○仁比聡平君 もう時間になりましたから終わりますけれども、膨大なその捜査資料、その中で、警察がこれというものだけを検察に送り、検察はそのテーブルの上で法に基づいてきちんとやっていますと言うけれども、莫大なデータを蓄積し、利用し続けている。その中で冤罪も起こしてきている。それが警察の実態なのであって、今の問いに対する答弁が、今みたいな一言で終わる。だから意味が分からない。こういうごまかしに私たちは絶対に負けちゃならないと思います。
断固としてあるべき刑事司法の改革を求めて、質問を終わります。
○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、刑事デジタルプライバシー侵害法案というべき刑事訴訟法等改定案に反対の討論を行います。
法案が新設する電磁的記録提供命令は、今日際限なく蓄積される巨大サーバーやクラウド上のデジタル個人情報自体を押収対象とするもので、被疑事実と全く関係のない個人情報、開発、営業など、事業に関する情報が根こそぎ収集される深刻な危険があります。
法務省は、何を提供すればよいか、通信事業者などが判断できる程度に令状で特定すると言いますが、形のないデジタル個人情報を犯罪関連情報とそうでない情報に明確に区別し、特定することは本来的に不可能です。
電気通信事業者は罰則で提供を強制されるとともに、法案が新設する秘密保持命令が発せられた場合、個人情報本来の、本来の持ち主は、自らの個人情報が捜査機関に丸裸にされたことを全く知らないまま、不服申立て権を事実上奪われることになります。
政府は、そうした強制処分を必要とする立法事実について十分な説明をしていません。法文は具体的要件を定めない広範なものです。個人情報主体への通知を求める日本弁護士連合会の修正要求にさえ背を向けた法案は、憲法三十五条が保障するプライバシー権の不当な侵害であり、包括的押収を許容することになりかねません。
個人情報を一たび押収すれば、捜査機関は、たとえ提供命令が後に取り消されても消去することなく、データベースを構築するなどして手元に蓄積し続け、令状のない他事件や不当な住民監視など、人権侵害を繰り返してきた公安警察活動にも利用することを当然視していますが、そこには大川原化工機冤罪事件、岐阜県警大垣署事件を始め、取り返しの付かない人権侵害を引き起こしてきたことへの何の反省もありません。
本法案は、デジタル技術の劇的発展の下で捜査機関に強力な武器を与える一方、もう一方の訴訟主体である被疑者、被告人にはオンライン接見も、電子データの授受も、その権利性も認めず、防御権へのデジタル技術の利用を極めて制約するものにほかなりません。
無罪証拠、被疑者、被告人に有利な証拠を、証拠ではなく資料などとして隠蔽し、捜査機関が描いた絵に沿うよう根こそぎ集めた、事件とは全く無関係の個人情報を取調べで持ち出して自白を強要してきたような自白偏重、人質司法こそ根本から改革すべきです。
再審法の抜本改正、証拠の全面開示、全事件全過程の取調べの可視化、盗聴法の廃止など、抜本的改革こそ必要であることを強調し、反対討論といたします。