○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
この電磁的記録提供命令によって収集されるデジタル個人情報のその蓄積と利用について、まずお尋ねをしたいと思いますけれども、五月八日の参考人質疑で、成瀬参考人が田島理事の質問に対して、他事件に利用するということを禁止する規定は刑事訴訟法にはございません、データが別の被疑事実とも関連性を有するという形で使われ得ることはあり得ると考えていますと述べておられますが、刑事局長もそのとおりですね。
○政府参考人(森本宏君) 今先生が御指摘なさった論点については、私どももそのように考えております。
○仁比聡平君 つまり、他事件にも利用できると。
この他事件に利用するというのは、現にこれまでもずっとやっているわけですよね。この他事件への利用というのは、発生した刑事事件の捜査に対するいわゆる刑事警察の活動だけではなく、犯罪は発生はしていない、これを予防するというような名目で行われる行政警察活動、いわゆる公安の活動、ここにも利用され得る、あるいは現にしていますと、そういうことですね。
○政府参考人(松田哲也君) お答えいたします。
現行では、捜査で取得した情報のうち、例えば暴力団等の犯罪組織に係る情報等、警察の所掌事務の遂行上必要があるものについては、個人情報保護法等の関係法令に従い、保管を継続して利用することもあり得るものと承知しております。
電磁的記録提供命令創設後においても、こうした運用が変更されることはないと考えております。
○仁比聡平君 今の御答弁のとおり、利用しますと、現にしていますということなんですけれども、一点、こういう答弁のときにごまかしがあるのは、暴力団等と言ったじゃないですか、それはもちろん暴力団も対象なんでしょうね。けれども、多くの住民運動を警察が監視の対象とし、二〇一七年に強行された共謀罪のときには、法務大臣が住民運動を隠れみのにしたテロ犯罪があるといった、そうした見方を、そういう観点を持って我が国の警察は活動していると、それが現実だということを私たちはちゃんと理解してこの法案の審議に臨まなきゃいけない。それは、大臣もそうなんですけど、国会の責任でしょうと私は言いたいんですよ。
そこで、しんぶん赤旗の四月二十九日付けのサイバー法案と刑事デジタル法案という見出しの付いている記事をお配りしましたが、一番下の段に白龍町事件というのが紹介をされています。
どんな事件かといいますと、マンション建設に反対する住民グループの代表を務められた方に対して刑事事件の疑いが掛けられて、裁判にまでなってしまったと。そのプロセスで、指紋やそれからDNA情報、もちろん顔写真というものが警察によって収集されたんですね。刑事事件で無罪が確定したと。無罪が確定したんだから、だから、私は元々何も悪いことしていないのに、だから収集された個人情報は抹消してくださいと求めているのに、それに応えないと。だから、裁判を起こして、地方裁判所、それから名古屋高等裁判所が抹消しなさいという命令をした。名古屋高等裁判所は、本人の意思に反して捜査機関に保管されていることは憲法に違反するとしたわけですね。一審、二審を通じて、警察は、データは適切に保管されていると徹底して争い続けました。けれど、名古屋高裁でそうした判決が出て、もうこれはやむなしということになったんでしょう。だから、上告はされず確定して、まずその一件は抹消されたわけです。
それ以外どうなのかということについて、弁護団をお務めになった中谷雄二弁護士がこう言っていますよね。二三年時点で累計百六十四万人分のDNA型が集められている、その一方で、その年、保管する必要がなくなったとして抹消したのは百四十三件ですと。ほんの一部じゃないですか。
圧倒的多数、巨大な膨大な情報がデータとして蓄積され、それをデータベースとして活用していると。警察庁、そういうことですか。
○政府参考人(松田哲也君) 登録件数と抹消件数をお答えさせていただいてよろしいでしょうか。
警察庁のDNA型データベースの運用状況につきまして、令和二年から令和六年までの五年間における登録件数と抹消件数ということでお答えをさせていただきます。
令和二年につきまして、登録件数が十五万八百六十件、抹消件数が一万四千三百二十五件、令和三年、登録件数が十五万九百五十七件、抹消件数が一万二千六十九件、令和四年が、登録件数が十四万五千百二十九件、抹消件数が一万四千三百十五件、令和五年が、登録件数が十三万九千四百九十四件、抹消件数が一万五千八百七十二件、令和六年が、登録件数が十二万六千六件、抹消件数が一万一千四百十三件であります。
また、令和六年末時点における総数は、登録件数が百八十九万六千六百四十三件となっており、同じく令和六年末時点までに抹消した累計件数が二十四万三千九十一件となっております。
○仁比聡平君 つまり、百九十万近くのDNA情報ですよ、がデータベースとして蓄積されていると。これが、抹消は、今、もう事情までは今日は聞きませんけど、しているといってもごく一部じゃないですか。どんどんどんどん蓄積されていっていると、これが現実なんですよ。
さきの参考人質疑で渕野参考人が、情報が消去されないことによって、最もメジャーな使われ方、最も想定される使われ方というのは、他事件にその情報を流用して使うということであり、それが一番大きな問題を生じさせると、これも田島理事の質問に答えておられます。
端的に、渕野先生、ああ、なるほど、そうだよねと思いましたのは、消去しないことによるメリットがあると。個人情報を保管し、蓄積する、これを消去しないということのメリットがある、そういうことがこの今の警察のデータベースの運用なんかでも表れているんだと思うんですよね。
これ、これまでの議論の中で、たとえ提供命令が取り消されても抹消しないと。これまでの刑事訴訟で抹消するということになっていないから、今も答弁されたとおり、他事件にも、あるいは公安活動にも利用して当たり前だと、留置の必要がなくなったらどうするか考えると、そういう答弁をずっとしておられますけど、それは、法務省刑事局長、つまり蓄積し、利用するということについてメリットがあるということなんですね。
○政府参考人(森本宏君) 検察庁におきましては、ちょっと警察は若干立場が違いますので、警察から送られてきた刑事事件の記録として保管し、そして刑事事件の記録として廃棄するということになりますから、何かこれを持っていることにメリットがあるという立場には立っておりませんし、そうだとは考えておりません。
他方で、これも説明しておりますが、ある事件、例えば性犯罪の事件で押収してきた証拠の中に別の性犯罪の画像が入っていたという場合に、その被害を探知した捜査機関においてその事件を立件できないということにはならず、これはやはり見付けた以上はその事件についても立件することはあり得るということですが、そういうことのために蓄積して持っているというわけではなくて、あくまで検察庁としては、事件が送られてきて、その事件を終結処分に至り、最後、廃棄処分に至るまでその刑事事件の記録として保管しているということでございます。
○仁比聡平君 私の問いをわざとねじ曲げて長々と答弁をしている。私が問うているのは、の前に、今局長がお答えになったのは、検察の証拠の扱いの実務についてなんですよね。私が問うているのは、この法案の提出者としての刑事局に聞いているんですよ。
法案は、たとえ提供命令が取り消されても抹消することにしていないじゃないですか。これまでその説明を、現行の刑事訴訟との共通性と言いましたっけ、これまでそうしてきたんだから、そこの考え方を変えるわけではないんだということじゃないですか。そういう法案を提出しているということじゃないですか。つまり、抹消はしない、どんどん蓄積をされますという法案を提出している趣旨は、これは大臣、つまり蓄積していくことについてメリットがあるということなんじゃないんですか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) この件も繰り返し御答弁申し上げておりますが、私どもとしては、例えば再審請求であったりとかあるいは国賠等と、そういったところにおいてもという可能性も当然あるわけでございまして、そこについてはこれまでの刑訴法上との整合ということで、そこについてはそういう認識で我々としてはこの法案提出してございます。
○仁比聡平君 だから、根本問題だからここは今回は変えないでおこうというふうにごまかしながら、実際にはこの電磁的記録あるいはデジタル化、あるいはそのオンラインやインターネットの爆発的な進歩の中で、現に今後この法案によって創設される強制処分によって、日本の警察機関が、あるいは検察が収集、取得していく情報、個人情報というのは莫大なものになり得るわけです、少なくとも。法案はこうした強制処分の適用場面を限定していませんから、だから、どんなに令状でちゃんとやりますとかこんな場合が想定されますとか皆さんがおっしゃったところで、法案そのものは極めて一般的に広範にプライバシーを侵害し得るという条文になっているわけですよ。この参議院のこの審議の段階まで問われながら、限定するという答弁は全くされていないと言っておかしくない。
私、この電磁的記録提供命令の必要とされる場面というのはどういう場面なのかというのをここまで何回か聞いたつもりですけれども、お答えにならなかった。
その中で、今日お配りしている資料の二枚目は、令和五年の八月四日の法制審議会の第十一回議事録から抜粋したものですが、この字を書いてササキさんとお読みするそうです、法務省刑事局の鷦鷯参事官が幹事として、提供命令に罰則による強制が必要となるような場面についてこう説明をされています。「非協力的な事業者がデータを保管している想定事例を挙げるとすれば、例えば、事案によるとは思いますけれども、事業者が自ら管理するサーバの上で管理、運営されているサイトに違法なわいせつ画像、動画や、海賊版の映画、漫画、音楽データなどがアップロードされていて、そのサーバに事件の証拠として必要なデータが保存されていることが他の証拠から推認されるものの、事業者が提出を拒否していて、データが保存されているサーバの物理的所在も不明であるという状況が考えられ、この必要なデータを差押え等によって入手することができない場合には、罰則を背景にした提供命令を用いることが考えられます。」と。
こういう場合を想定して作っているのか、あるいはこういう場合に限られるのか、あるいは少なくともこういう場合と同程度の強い必要性が令状の請求あるいは発付には求められるのかと思わせる発言なんですけど、ここは、刑事局長、いかがですか。
○政府参考人(森本宏君) まず、電磁的記録提供命令の御説明の中で、今回の法案が国民の方にとってより利便性が高くなるという文脈の中で一つ御説明させていただいておりますのが、例えば協力的な事業者の方の場合に、電磁的記録提供命令、これまでの記録命令付差押えとかあるいは普通の令状で記録をもらってくるのだと、一々全部捜査機関と対面して、それを有体物に焼いて、それを出さなければならないというようなプロセスを生じているわけなんですが、そういうものについてそこまでしなくても……(発言する者あり)いやいや、そういう場合に簡易に電磁的記録を提供してもらう手法として、事業者にとっても利便性が高くなるという形での電磁的記録提供命令の使われ方というのも考えられますと言っておりますので、罰則の掛かる場面とに切り分けるかどうかは別ですけれども……(発言する者あり)
○委員長(若松謙維君) 答弁中ですので、発言をお控えください。
○政府参考人(森本宏君) 電磁的記録一般ということではなくて……
○委員長(若松謙維君) 答弁は簡潔に願います。
○政府参考人(森本宏君) はい、済みません。
罰則が掛かる場合という場面については、もちろん罰則の謙抑性がありますので、今この場面に限るのかといって、これは例として挙げているものですので、それに限られるわけではありませんが、他方で、それは罰則を掛けなければならないほどの事情がある場合ということになろうかと思います。
○仁比聡平君 やっぱり、法案に対する研究者や弁護士も含む国民の皆さんからの極めて強い不安や懸念の指摘あるいは怒りをごまかそうとしておられる答弁ですよ。
電磁的記録提供命令は、いや便利でしょうと、だって対面してUSBに記録したりとかしなくていいんだから、オンラインで送れるから便利な場合に使いましょうという答弁をまずするじゃないですか。そんなこと聞いていないでしょう。大体、そんな場合に令状まで取るんですか。従来であれば、捜査関係事項照会などで、そういう場合だったら取れるんじゃないんですか。取れないんですか、ああ、そうなんですか。そういう場合をどういう場合なんですかと衆議院の参考人として指宿教授は聞いたけれども、はっきりしないまま、ここに来ているんですよ。いえいえ、それはもう先ほど長々御答弁されたんだから。
私が聞いているのは、提供命令に罰則による強制が必要な場合はどういう場合ですかと。つまり、非協力的な事業者の場合なんでしょう。かつ、ここで鷦鷯幹事が挙げておられるのは、私から見ると、まず、対象犯罪が重大であるということが前提になっていると思います。こういうわいせつ画像のアップロードあるいは海賊版サイト、そういう事案の重大性と、何でもかんでも令状出すものじゃないですよと、この事案の重大性、その解明のためにどうしてもこの手続が必要だと。つまり、証拠がそのサーバーに存在するということが他の証拠から推認される場合でしょう。何でもかんでもどこかにないかという、そういう令状請求はできない。ほかの証拠によってここにあるということが推認されるということが必要、かつ事業者が提出を拒否しているということ、それからサーバーの所在は不明である、だから、捜索差押えに入ることはできないという、そういう必要性があるという場合には、罰則を背景にした提供命令を用いることが考えられますというふうにおっしゃっているわけだから。
私、これを素直に、こういう発言を読めば、大臣、電磁的記録提供命令の令状請求というのは、こういう場合に限られるというか、少なくともこのような強い必要性がなければできないものであって、裁判所はその有無を審査しなきゃいけないんだと、そういう疎明資料が本当にあるのかということをちゃんとチェックしなきゃいけないんだということだと思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 当然のことながら、電磁的記録提供命令、そこにおいては、我々としてもその令状においてということで、裁判所の判断、これ極めて大きな話だと思っております。まさにそこにおいて、裁判所の場において、それは司法の場において適切にそれは判断をされるべきものであろうと考えております。
○仁比聡平君 結局、こうやって聞いてもよく分からないまま審議が進んでいいのかということなんですよね。
オンラインの利用の問題について、今日聞いておきたいと思います。
まず、参考人質疑でも、勾留質問というのをオンラインでやる、これは駄目なんじゃないかと私、問いました。勾留質問というのは、逮捕で身柄が拘束されて、初めて刑事施設、まあ大方の場合、警察の留置場ですが、そこから外に出る機会ですよね。検察官が勾留を請求する、そのときに検察庁に行くかもしれないけれども、行って検察官の調べを受けてから勾留請求されるかもしれないけれども、そのときは手錠、腰縄で検察庁に連れていかれて、警察と一緒に検察官から調べられるわけですよね。
勾留質問というのはそうではなくて、その捜査機関があなたを勾留したいといって令状を請求したときに、裁判官がその被疑者とじかに向き合う場面なんです。だから、このときには裁判官の面前に被疑者を連れていくということが国際人権法上の大きなルールだということを河津参考人が言われたとおりなんですけれども、その意義からすると、オンラインで勾留質問、つまり留置場にいたままとか、体調が悪いから病院にいるとかいうままに、病院といったって警察病院なんかにいる、周りに警察官が確保のために立っているみたいなところでオンラインでつないだからといって、勾留質問の意義が果たされるわけがないじゃないですか。
こういうオンライン勾留質問というのは一体どう考えるんですか、局長。
○政府参考人(森本宏君) 今委員御指摘のとおり、勾留質問は、裁判官が被疑者等を勾留するか否かを判断するに当たって、被疑者等から直接被疑事件に関する陳述を聴取する機会であるところ、そのような聴取については、裁判官等が他の機関とは別個独立の中立的な立場にあることが明らかになる形で行うことが望ましく、現行法の下でも原則として裁判所内で行うべきものと考えられておりますし、今後もそこの原則は変わらないというふうに考えております。
その上で、今回、裁判所に在席させて当該手続をすることが困難な事情がある場合という限定を付しておりまして、例えば被疑者、被告人が感染力の高い感染症に罹患している場合や、あるいは災害等によって被疑者、被告人の収容場所と裁判所との間の交通が一時的に途絶した場合などで、他方で、時間的要請の中で、やはり勾留質問しなければ勾留できないことになっておりますので、逆に言うと、被疑者側のちゃんと言い分を聞くという機会が大切なので、今のような、目の前には連れていくのが困難だけれども、でも事情が聞けると、そういう特別な場合、困難な場合に限って今後運用がなされていくということを想定して規定しているものでございます。
○仁比聡平君 勉強レクで聞くと、コロナ禍でこの法案の検討がされたのでこういう議論になったというような背景があるようなんですが、オンラインの公判について一問聞いておきますけど、二百八十六条で、被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することはできない、これが大原則なんですよね。オンラインで被告人のいない公判をやろうなんというのはとんでもないと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(森本宏君) これも本来被告人が出廷しているという形でやるのが原則でありまして、本法律案におきましては、被告人を公判が開かれる裁判所以外の場所に在席させて、ビデオリンク方式によって公判期日における手続を行うことにつきましては、審理の状況、弁護人の数、事案の軽重等の事情を考慮して、やむを得ない事情があり、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがないなどの厳格な要件を満たす場合に限ってこれをできることとしております上、ビデオリンク方式によって手続を行うときには、弁護人は被告人の在席場所に在席できることとしておりまして、被告人が弁護人から助言を受けることができることとしております。
したがいまして、御指摘のような、被告人が弁護人の援助を得られないような事態が生ずるという、御指摘のようなそういう事態は生じませんし、あくまで今のような条件があるときに行うことを想定しているということでございます。
○委員長(若松謙維君) 時間です。
○仁比聡平君 あとは次回で。