○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、入管庁がしきりにおっしゃっている送還忌避者という言葉についてお尋ねをしたいと思っております。
今般の内閣提出の入管あるいは難民認定に関する法案の立法趣旨といいますか、法案説明でも、令和三年末時点で送還忌避者が累計三千二百二十四人という数字がよく紹介をされているわけですけれども、これはそもそも何をもって送還忌避者というんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 送還忌避者とは、退去強制令書が発付されたにもかかわらず退去を拒んでいる者全般を指して用いている言葉でございます。
○仁比聡平君 令和二年六月に収容・送還に関する専門部会の報告書が出ておりますけれども、そこでは、入国警備官が面接をして事情を聴取した際に、本人が帰国希望の意思を示すか退去を拒む意思を示すかにより判断していると。
これが送還忌避者ですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 先ほど申し上げたとおり、退去強制令書が発付されたにもかかわらず退去を拒んでいる者ということでございます。
○仁比聡平君 この退去を拒む者というこの言葉、あるいは忌避という、何だかいかにも悪い人たちかのように言うけれども、出身国に帰国できないという方々には様々な事情がありますよね。その典型は、迫害あるいはその恐怖という十分な理由がある難民あるいはその難民認定申請者ですけれども、今の捉え方でいうならば、送還忌避者の中には、総数には難民認定申請中の者が含まれるわけですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘のとおりで、難民認定手続中である者も、自らの意思に基づき退去を拒んでいるということでございますので、送還忌避者に含まれます。
○仁比聡平君 おかしくないですか。
難民認定を申請している、難民条約の三十三条一項、ちょっとそのまま読み上げますと、「締約国は、難民を、いかなる方法によつても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。」と、いわゆるノン・ルフールマン原則という極めて強い原則あるいは国家に対する義務を定めていて、これは難民申請者にも同様に当てはまります。難民申請者は難民である可能性があるので、その判断がされる前に送還されてはならないということです。
この難民申請を複数回行っているというときに、現に難民該当性が判断されることがあるじゃないですか。なのに、その難民申請者を送還忌避者呼ばわりすると、これ、おかしくないですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 先ほど申し上げたとおり、退去強制令書が発付されたにもかかわらず退去を拒んでいる者が送還忌避者ということでございますが、退去強制令書が発付された者というものは、退去強制手続において在留特別許可の判断を経るとともに、難民該当性を主張する場合には難民認定手続も経た上で、難民に該当せず、かつ在留を特別に許可する事情も認められないため、我が国からの退去が確定した者でございます。
このうち、さっき申し上げた在留特別許可、これは、いわゆる三審制の最終段階における法務大臣の裁決に至って初めて判断されるものでございますが、その許可件数は過去八年間の年平均が約二千五百件ございまして、これは、退去強制手続において本邦への在留を希望して法務大臣の裁決を求めた件数等の約七一%に当たってございます。
このように、退去が確定した被退去強制者というものは、もはや我が国における庇護、在留が認められず、迅速に送還されなければならないものというふうに考えております。
○仁比聡平君 数字の中ですり替えがあるじゃないですか。だって、確かに難民認定手続を経て退去強制令書が確定したということなんでしょうけど、それは入管が裁量的判断でそうしましたというだけじゃないですか。先ほど、確定したというふうに言うけれども、そして三審制ともおっしゃったけれども、それは入管と法務大臣の話でしょう。その入管の、まるで生殺与奪を全て握ったかのような、自由な裁量だとでも言うのかということがここにも表れていると思うんですよね。
確かに、退去していただくべき人もいるかもしれません、その数字の中には。けれども、複数回の難民申請の中で自ら難民該当性認定している場合あるじゃないですか。あるいは、不許可、不認定という処分に対して、裁判で争われて難民該当性が認められたという例は数多くあるじゃないですか。それを一くくりにですよ、送還忌避者だと称して、その数字をもって全てを語ろうとするというのは、これは私、分からないんですね。
そこで、令和三年末時点の三千二百二十四人という数字について伺いますけれども、これ累計というふうにされています。つまり、その一年のうちに新たに退去強制令書が発せられるなどして送還忌避者と入管が呼ぶようになった人というのがいるはずなんですよね。令和三年の一月一日から十二月三十一日の一年間の間に新たに送還忌避者と判断されたのは何人いるんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) お尋ねの人数につきましては、業務上統計を作成しておりませんので、お答えすることが困難でございます。
○仁比聡平君 何で立法事実として中心の数字として主張しているものについて統計がないんですか。
この累計という数字は、つまり出入りがあるわけですね、新たに退去強制令書が発せられる人もいれば、逆に自ら出国する方々がたくさんですから、帰国する人たちが。なので、送還された、あるいは難民認定を受けた、人道配慮を受けた、あるいは在留特別許可を受けた、あるいは亡くなったという方もあると思いますが、そうした事情によって入管がいう送還忌避者じゃなくなったという人は令和三年の一年間で何人いるんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) お尋ねの人数につきましても、業務上統計を作成していないので、お答えは困難でございます。
○仁比聡平君 おかしくないですか。与党の皆さん、おかしくないですか。送還忌避者がたくさんいるから、だから今度の入管法改定案が要るんだというふうにおっしゃっているでしょう。皆さんお聞きになってきたでしょう。その数字は統計上把握されていないというんですよ。
私、そうした下で、入管が繰り返し、送還停止効、これは二〇〇五年の、まあ二〇〇四年法改正でしたけど、によって難民申請中の送還停止効ということが設けられたわけですけれども、これを濫用、悪用しているケースがある、難民認定申請者が送還停止効を濫用、悪用しているケースがあるというふうにこれまでの過去の説明資料などに書いてこられました。
そこでお尋ねしますけれど、そうしたケースというのは何件あるいは何人あるんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) その前に、その送還忌避者の数につきまして統計を取っていないというのはちょっと語弊がございまして、私どもとしては、今回の法改正に当たり、送還忌避者が増えているのではないか、その人員についての問題意識がございましたので、そういう意味で、その統計を、統計といいますか数を拾ったところで、令和二年末時点では三千百三人、令和三年末時点では三千二百二十四人と、令和四年末時点では速報値ですけど四千二百三十三というふうに増加傾向にあるといったところを調べるために、この時点時点における先ほど定義をしました送還忌避者の数を出したというところでございます。そこはちょっと御理解いただければと思います。
その上で、お尋ねの濫用、悪用の判断基準といいますか、その数字お尋ねでございますけれども、そのお尋ねの数字につきましても業務において統計を作成していないのでお答えは困難でございますが、我が国の難民認定申請数の推移を見ていきますと、平成二十二年四月に難民認定申請から六か月経過後に一律に就労を認める運用を開始したところ、当時、年間千二百件程度であった難民認定申請者数が、平成二十九年までの七年間で約十六倍を超える年間千九百六百件程度まで急増したこと、失礼、年間一万九千六百件程度まで急増したこと、それから、平成三十年一月以降、申請の内容等に応じて就労を認めないなどの措置をとったところ、年間の難民認定申請者数が半減したことなど、これを見ますと、就労を目的とした難民認定制度の誤用、濫用が疑われる状況が生じていたものと考えております。
また、個別に見ましても、例えば、送還忌避者の中に殺人や強姦致傷等の重大犯罪での服役後に難民認定を複数回申請する者がいると、あるいは、観光、留学、技能実習などの在留資格で入国した後に本来の目的から外れた段階で難民認定申請をする者がいる、不法残留や刑罰法令違反を理由として退去強制手続に入ってから難民認定申請をする者がいるなど、難民認定制度の誤用、濫用が疑われる事案も発生しているということを申し上げたいと思います。
○仁比聡平君 まず、最初の方の数字という話ですけど、結局、急増しているとか半減しているとか、ああ、後の方ですね、先ほどの後の方の答弁ですね、急増しているとか半減しているとかいう、そういう大きな数字だけを出して、何だかその全て、皆さんがいう退令が出ても帰国意思を示さない人を全部送還忌避者だというふうに決め付けるのは、これは本当に間違っていると思うんですよね。
その中身として、なぜ疑うのかということをるるおっしゃったので、これはもう今日時間がなくなりましたから、法案の審議の中できちんと議論をしていきたいと思うんですけれども、結局、入管が疑っているというだけでしょう。入管が疑っていると。退令を出しても帰国しないという人たちを全部送還忌避者だとして扱って、これ強制帰国させなきゃいけない、送還するんだということしか考えていない数字の捉え方なんじゃないですか。
これは、難民条約が言うノン・ルフールマン原則、難民申請者は保護されなきゃいけないんですよ。出国を強制されちゃ駄目なんですよ、大臣。これ、そこの関係どう考えるんですか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 御案内だと思うんですけど、我が国におきましては、難民申請中の者であっても、その送還先、これはノン・ルフールマン原則を担保する入管法第五十三条第三項に従って決定されているわけでありますので、これは、ノン・ルフールマン原則に反するという送還は、この条項上起こり得ないということであります。
○仁比聡平君 そんなことなら、難民認定複数回行われる中で、あるいは裁判で、入管の難民認定、不認定の判断が覆されるということはないですよ。そんなことになっていないからこうした重大な問題が繰り返されているんじゃないですか。
今日は時間が来ましたから、ここで終わります。