○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
法案について、司法法制部長に一問ちょっとお尋ねしますけれども、これまで、判決書を私たちが拝見するのに、例えば裁判所のウェブサイトでもそうですけれども、その判決を下した裁判所がその個人情報についての仮名処理を行って、で、私どもに提供していただくというふうな取組をされてこられたと思うんですよね。
今回の法案では、最高裁がこの判決の電子情報を提供するという仕組みになっているわけですけれども、これまで裁判所自らが厳密に仮名処理をしてきたと、そのことによってプライバシー始めとした個人情報が不必要に公開されたりすることのないようにされてきたと思うんですが、この基準というのは変わらないんですか。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
現在の実務におきましては、裁判所ウェブサイトで公開されるものについては裁判所の方で仮名処理を行っておりますが、その件数としては年間六百件程度にすぎないと言われておりまして、より多く、民間の判例データベース事業者や公刊物、失礼、出版社などによって出版されるものの仮名処理は、それぞれの民間事業者が裁判所から判決書借り受けて、それぞれの各社の判断で仮名処理を行ってきたというものであると認識をしております。その上で、裁判所ウェブサイトで公表される裁判情報においては、例えば個人の氏名や個人の住所等の地名の一部について仮名処理がされているものと承知をしております。
一方、本法律案における指定法人が行う仮名処理については、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないようにするために必要なものとして法務省令で定める基準に従い加工しなければならないものとし、また詳細な仮名処理の基準については、指定法人の業務規程に定めるものとしております。
このように、本法律案における仮名処理の具体的な基準は今後定めていくことを予定しておりまして、裁判所ウェブサイトにおける取扱いと重なる部分もあるというふうに考えておりますが、現時点においてその詳細を確定的にお答えすることは困難でございます。
今後、法務省令や指定法人の業務規程を定めるに当たっては、裁判所に、裁判所ウェブサイトにおける仮名処理の基準を含め、現在の実務の運用状況を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 これまで、先ほどちょっと御紹介のあった判例時報だったり判例タイムズだったりというその出版社が出しているもの、それから判例集のような形で事案が紹介をされているもの、こっちの本を見るとコウノタロウさんになっていて、こっちの本を見るとXYになっているというような、そこの違いはあっても、法律家の中ではきちんと仮名処理がされているという、共有されてきた基準があると思うんですよね。それが今部長おっしゃった実務ということなんだと思うんですよ。
これが先ほど議論のあったAIに学習させるのかなども含めて利用されていくということを想定をしたときに、この基準、これまで個人情報を守るために確立されてきた基準ということがちゃんとこれからも守られると、それはとっても大事なことだと思うんですけど、いかがですか。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
今後、法務省令や業務規程の検討がされる際には、現在の実務において関係者のプライバシーや営業秘密に対する配慮がされていることを踏まえながらしっかりと考えていきたいと思っております。
○仁比聡平君 そうした取組をきちんとしていかなきゃいけないと思うんですけれども、大臣、万が一にも、そうした情報が漏えいするとか流出するとか、あるいは先ほども矢倉議員が質疑されていましたけれども、ほかの情報と照合して特定の個人が識別されるというような形の中での人権侵害、これは万が一にも起こっちゃならないわけですよね。逆に言うと、起こってしまったらどうなのかと、誰が責任取るのかと。
この法文を拝見をすると、例えば三条の国の責務で、政府は、こうした施策が適切に実施されるような必要な措置を講ずるような義務がある、努めるものとするというふうにされていますけれども、つまり指定だったり、法人の指定だったり、今申し上げているような基準だったり、あるいは提供の際に、個別事件でこれは秘密にしなきゃいけないとなっているものを間違って出しちゃったとか、何かが起こって漏えいなり人権侵害が起こるわけじゃないですか。そういうことが万が一にでも起こったときの国の責任というのは極めて重いと私は思うんですけど、いかがですか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 今御指摘のように、そうしたことは、これは当然あってはならないということの上で申し上げますけれども、この法律案におきましては、民事裁判情報等の流出あるいは漏えいを防止する観点から、指定法人の保有する民事裁判情報につきまして、漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理に関する事項、これを業務規程の必要的記載事項としてこれは法務大臣がこれを認可をすると、立て付けを申し上げますけれども、その上で法律によって目的外使用を禁止をする、さらには指定法人の役職員等が不正な利益を図る目的で提供するなどの行為について罰則を設けることとしております。
そして、指定法人がこのデータベースを整備をし利用者に提供するに当たっては、私ども法務省令で定める基準に従って仮名処理を行い、個別の事情を踏まえた訴訟関係者から申出を受けて、必要に応じた追加的な仮名処理を行うものとしております。
そうした状況の上で、一般論として申し上げると、故意又は過失によって他人の権利を、権利等を侵害した者については、これによって生じた損害を賠償する責任を負うということになります。もとより法務省、私どもといたしましては、こうした事態が起こることがないように、先ほどの立て付けの中で、法人の指定に当たりまして安全管理の観点から厳格に審査を行う、そして各種監督権限を行使をして指定法人を適切に監督をするということを通じて、そうしたことを起こさないようにするという、そういったこととなっております。
○仁比聡平君 結局、今大臣、立て付けを説明されただけなんですけど、途中でお話になったように、万が一にも一件の裁判情報で個人情報なり営業秘密の塊が違法に漏えいされてしまったというときの責任というのは重大ですよ。ですから、途中お話になったような国賠というようなことだって起こり得るわけで、だからこそ絶対に万が一にもそうした漏えいないというような基準と運用を強く求めたいと思います。
ちょっと関連して、残る時間、裁判所がこの間構築されてきているシステム、デジタルのシステムについて、とにかく評判が悪いものですからお尋ねをしておきたいと思うんですけれども。
今年の一月にRoootSというシステムが導入をされました。裁判所の職員が電子的に事件を管理するシステムと民事局長御説明をされていますけれども、例えば、統計事務というのはシステムが本来得意とするべきものなんだと思うんですが、不具合があって既済事件数などを改めて確認する必要があったと。まあ数を数えたみたいな話になった。こういう不具合が起こっているわけですね。
○最高裁判所長官代理者(福田千恵子君) お答えいたします。
ただいま御紹介いただきましたとおり、RoootSと呼称されるシステムは、裁判所職員が事件管理のために利用するe事件管理システムでございまして、令和六年七月から一部の庁で先行的に導入され、令和七年一月から全庁で導入をされております。
RoootSについて、例えばその統計システムとの連携の不具合など、一定程度不具合等が生じていることは承知をしておりまして、このことは最高裁としても重く受け止めております。バグと認められる不具合については、改修作業を行っているところであり、現時点ではシステムの導入直後に指摘のあった不具合の多くは解消されるに至っております。
いずれにしても、最高裁として、今後とも、できる限り職員への負担を生じさせることのないよう、可能な限り速やかに必要な対応を行っていきたいと考えております。
○仁比聡平君 この同じ問いに、衆議院の法務委員会で民事局長が、システムを停止せざるを得ないような問題は生じておらずという認識を示しておられまして、そりゃ、裁判所のシステムが止まったら大変だよと、停止せざるを得ないような問題が起こっていないからいいという話ではもちろんなくて、システムが逆に事務の簡素化、効率化に逆行すると、逆に手間が掛かってしまうというみたいなことになっているのが今現実なんだと思うんですよ。
ちょっとこのRoootSをめぐっても面白い話がいろいろありますけど、ちょっと時間がないのでやめますが、mintsというシステムもあります。これは弁護士を始めとして事件の当事者が裁判書類を電子的に提出するというシステムなんですけれども、この利用率というのが五%程度にとどまっているという実情にあると思いますが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(福田千恵子君) お答えいたします。
ただいま委員御指摘のmintsと呼称されるシステムでございますが、民事裁判書類電子提出システムと呼ばれるものでございます。
この利用率につきましては、統計として把握をしておらず、お答えすることは困難でございますが、訴訟代理人がmintsを利用する事件として登録されている事件の数については、令和七年四月末時点で全国で約六千三百件となっております。
以上でございます。
○仁比聡平君 係属している民事事件というのは何十万とあるわけですから、ごく僅かなんですね。実際使っている弁護士たちに聞くと、もう本当に使い勝手が悪い。
そういう中で、今、TreeeSというシステムを開発しておられると思います。これまでのシステムがこれだけ不具合があって、効率が悪い、手間が掛かる中で、TreeeSとmintsと紙が併存するのかと。結局、裁判の事件管理が一元化できないということの中で、来年の五月には、民事裁判の申立てあるいは民事執行の申立てがあった際に裁判所間の判決正本などの情報を共有するというこの法が来年五月までに施行するということになっているわけですけど、そんなもの施行できないんじゃないのと、これ大丈夫ですかという声が弁護士やあるいは裁判所職員の現場から聞こえますけど、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(福田千恵子君) お答えいたします。
令和八年五月までに改正法の民事訴訟法が施行されるということになっております。そのときに、先ほど御指摘いただきましたmintsと呼称されるシステムが利用されることにはなりますけれども、このmintsに関しては、令和四年四月の運用開始から約三年が経過をしておりまして、この間に着実に利用実績を積み重ねてきているところでございます。
他方におきまして、mintsの利用が一定の範囲にとどまっているという課題については御指摘のとおりでございまして、ただいま改正民訴法の施行を見据えて、更なる利用の促進、利用習熟に向けた取組を進めているところでございます。
付け加えますと、mintsに関しては、特段不具合といったものは指摘はされておりませんで、使い勝手というところについては更に課題もあろうかと思いますけれども、これまで、利用者である代理人から寄せられた要望等も踏まえてmintsの利便性を高めるべく改修を行ってきているところでございます。
以上です。
○仁比聡平君 最高裁刑事局に一問聞いておきたいんですが、この間可決した刑事デジタル法の具体化でシステムをつくっていかれるわけですが、令状請求も電子化されると。
この下で、お配りしているのはおよそ十年余り前の日弁連の意見書なんですけれども、現在は、捜査機関から令状請求がされると、令状と原本を渡す、それの残りが手元に残る、裁判所に。それ以外の添付資料、疎明資料というのも全部捜査機関に返すという仕組みになっているんですね。これを電子化される、システム化されるということであれば、疎明資料も併せて保存、蓄積をしていくことが裁判所の中で検証を行う上でもとても大事じゃないかという指摘なんですけれども、この意見書は逮捕、勾留に関するものですが、捜索差押許可状あるいはこれから施行されるであろう電磁的記録の提供命令などについてもそのように扱うべきではないかと思うんですが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(平城文啓君) お答え申し上げます。
現状、例えば公判において令状に基づく捜査手続の適法性が争われると、こういった場面におきましては、当事者主義の下、当事者の主張及び請求証拠の内容に基づいて判断がされているところでございます。その前提となる例えば証拠開示の手続についても当事者間で行われていると、これが現状でございます。
令状請求や発付が電磁的方法で行われることによってこのような枠組みが変わることになるか、若しくは変えるべきかということについては、法制度に関わる問題でもありまして、最高裁事務当局としてお答えすることは困難ですけれども、いずれにしましても、裁判所における捜査機関から提供された電磁的記録である令状請求書や疎明資料の保存の要否につきましては、いわゆる制度の内容、これを前提にした上で、その必要性、相当性等を検討していく必要があると考えているところでございます。
○仁比聡平君 今日は終わります。