○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
裁判所職員の定員についてお尋ねをいたします。
裁判手続のデジタル化について、システム構築だとかハードウエアの取得費用などの経費は、補正予算で前倒しされた分も含めて概算要求の六十七億円は確保されました。
ところが、資料一枚目を御覧いただきたいと思いますが、裁判所の定員等の推移について最高裁に作っていただいている資料です。御覧のとおり、裁判所職員については、この六年で百三十九名、令和三年度からの三年は、概算要求ではプラス・マイナス・ゼロのはずなのに、十七名、二十六名、三十一名と減員をされています。
そこでお尋ねをしますけれども、その下で今年度、下級裁の書記官、事務官は各高裁管内でそれぞれ何名ずつの増減になっていますか。最高裁はどうですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
順次数字を申し上げます。
東京高裁管内は、書記官六の減、事務官三十八の減、大阪高裁管内は、書記官二の減、事務官八の減、名古屋高裁管内は、書記官増減なし、事務官三の減、広島高裁管内は、書記官二の減、事務官五の減、福岡高裁管内は、書記官九の減、事務官八の減、仙台高裁管内は、書記官七の減、事務官四の減、札幌高裁管内は、書記官三の減、事務官五の減、高松高裁管内は、書記官二の減、事務官一の減となっております。
なお、最高裁につきましては、書記官増減なし、事務官は三十八人の増ということになっております。
○仁比聡平君 下級裁を取ると、今御紹介をいただいた数字は全部足すと百三になるんですよね。これ、ちょっとおかしな話じゃないですか。概算要求のときには、十一月十七日に総務局長と質疑をさせていただきましたけれども、五十人減と言っていましたよね。これが何で百三人も減るんですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
各庁の人員配置につきましては、事件動向や事務処理状況等の事務量に応じて適正な配置となるように常に見直されるべきでございまして、厳しい財政事情の下において国民の理解を得るためにも、こうした人員配置の見直し等の内部努力は必要不可欠な事柄であるというふうに考えております。
令和五年度におきましても、事件動向や事務処理状況等を踏まえて各庁において必要な人員配置の見直しが行われたものというふうに認識しており、その結果として先ほど述べたとおりの人員が減少したものでございます。
人員配置の見直しにおきましては、各庁各部署の事務処理状況等を踏まえた検討がされており、今回の減員により裁判所の事務に支障を来すことはないというふうに承知しております。
○仁比聡平君 いや、支障は来すでしょう。
ちょっと先に確認しますけれども、これは実員でこれだけ減っているということですか。それとも、欠員も含めた定員の枠の数字ですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) 先ほど私の方から御説明をさせていただきました数字は、各庁、各高裁における配置定員の数ということになりますので、枠ということになります。
○仁比聡平君 ということは、その定員で下級裁の書記官、事務官が百三人も減らされると。
この中には、定員が充足できていないところがありますよね、休職されているとか、実際にはだから現場にはいないという。そうすると、もっと減るということですよね。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
各庁の実情を全て裁判所がリアルタイムで把握しているわけではございませんので、裁判所が、最高裁が把握していない欠員等が生じ得るということはあるかと考えております。
○仁比聡平君 いや、もう一回、皆さん、この資料の一枚目、御覧いただきたいと思いますけど、令和五年度で下級裁も含めた書記官はプラス・マイナス・ゼロじゃないですか。概算要求でプラス・マイナス・ゼロで要求をされて、決定もプラス・マイナス・ゼロになっている。だけど、現実には軒並み減るわけですよね。これ、裁判の実務そのものをやっている職員ですよ。その人たちがこんなに減るのかと。これ、深刻なことだと思いますよ。
これまでもぎりぎりを割っているというのが下級裁の書記官、事務官の現実だと思います。現場の皆さんに伺いますと、民事のデジタル化のために説明資料やマニュアルなど業務改革に頑張ってきたが、減員と、がっくりだとか、用度係として、十二月にデジタル化予算が付いてディスプレーの配置を三人掛かりでようやくやって、毎月三十時間近い残業なのに人は増えないと、この人員状況の下でいつまでもつか分からないと、毎日二時間残業している、夕方五時から調書を作っているような状況だ、あるいは毎朝一時間超勤している人がたくさんいると、そうしたお話がこれまでの人員配置であっていました。
そうした繁忙の中で主任クラスのメンタルも増えているとか、二十代の職員がパワハラで休職し、ようやく復職できたのに、周りの、あの人は仕事ができないという目にさらされて、その様子を見ているのももう本当につらいと声を詰まらせて話してくださった職員さんもいらっしゃいました。
昨年の十一月に、私、局長と議論する中で、デジタル化の定員というのは別枠で確保されるのはこれ当然だと、裁判の事務処理の経費、定員をこれ以上削るということはあり得ないと財務当局に対して強く言うべきだというふうに聞きましたけれども、結果が、その概算要求、皆さんが積み上げた概算要求よりも大きく減り、そして現実には、下級裁の書記官、事務官をこれだけ減らすということでしょう。これ、深刻なんじゃありませんか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
裁判所といたしましては、各庁の事件動向や事務処理状況等を踏まえながら、全国的な見地から負担の公平性も考慮しながら人員配置を行っているところであり、今回の減員に当たりましても、各庁においてデジタル化に伴う検討が行われていることも含め、必要十分な人員を配置しているというふうに考えております。
また、今回の改正におきましては、民事訴訟手続のデジタル化の実現に向けた取組を更に進めていくなど、裁判手続等のデジタル化を確実に推進していくために、その検討の中心的役割を担っている最高裁事務総局に増員を行い、下級裁に適切な支援を行うことによって裁判所全体の体制を整えることとしております。このような体制の整備により、最高裁における各種の検討のみならず、各庁における検討も促進されていくものというふうに考えております。
したがいまして、今回の減員によりまして各庁の事件処理やデジタル化に伴う審理等の検討に支障が生じるものではないというふうに考えております。
いずれにいたしましても、最高裁としましては、今後も各庁において適正な事件処理等が図られていくよう、引き続き必要な体制の整備に努めてまいる所存でございます。
○仁比聡平君 いや、現場の、下級裁のその裁判実務に重大な影響が及びますよ。だって、既にメンタルで休職をしておられる方なんかがたくさん増えているわけだから。そこに更に減員を、しかも概算要求のときにはそんなには減らさないと言っていたのをですよ、本予算になったらこれだけ減らすと。で、四月の人員配置になったら、びっくりするぐらいの数減らすと、百三人も。これ、とんでもないことだと思います。
最高裁にデジタル化のために増員が必要なのは分かりますよ。だけど、それは別枠として確保されるべきであって、下級裁の定員削って最高裁に吸い上げてどうするんですか。そこに何の反省もないのかということが厳しく問われていると思います。
裁判のIT化は、これ、令和八年五月までに民事訴訟に関するものが施行を迎えます。今国会提出の非訟手続、さらには刑事においても検討されているわけですよね。これ、現場の業務もストレスもどんどん増えていくばかりだと思うんですけれども、お尋ねしますが、デジタル化のシステム構築や備品取得などといったその担当部署、デジタル化の担当部署だけじゃなくて、デジタル化に伴う審理や事務処理方法の検討が、先ほども説明資料やマニュアルなどを現場で作っているというお話紹介しましたが、全庁で同時並行的にこれは行われているし、いくわけですよね。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
デジタル化のシステム構築等を進めていくに当たりましては、下級裁において当該分野の事務を担当している職員と意見交換をするなどしているところでございまして、御指摘のデジタル化に伴う審理、事務処理方法の検討につきましては、下級裁を含め全庁的に行われているものと承知しております。
○仁比聡平君 だから、これまでの裁判実務処理でもいっぱいいっぱいのところに、デジタル化に向けていろんな業務があるんですよ、増えるんですよ。しかもストレスも掛かると。だから、その中でこのメンタルケアをきちんと図る上でも、少なくとも、時間がありませんから一問だけ聞きますが、サービス残業はあってはならないでしょう。
このサービス残業はあってはならないということについて、早朝、昼休みあるいは土日などの超勤について最高裁の基本的な認識はどうなっているのか、その考えというのは下級裁に徹底されているんですか。実際には、例えば子育て世代が、夕方は保育所に迎えに行かなきゃいけないなどのことで定時に上がるんだけど、その分、朝出てきて調書を作っている、記録を作っている、そういう話がいっぱいあるじゃないですか。だけど、それがサービスになっているというのはおかしい話じゃないですか。
下級裁にそういうことがあってはならないと、ちゃんと払いましょうと、ちゃんと徹底すべきじゃありませんか。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
委員御指摘のように、サービス残業や持ち帰り仕事についてはあってはなりませんし、そのようなことがないよう、管理職員が勤務時間管理の重要性を認識した上で、超過勤務については的確かつ遅滞なく把握し、適切な超過勤務時間の管理を行うよう今後も指導を徹底していきたいと考えております。また、超過勤務の把握についての考え方は、早朝、昼休み、休日における勤務についても変わるものではないと考えております。いずれにしても、今後とも、職員の超過勤務の適切な把握に努めてまいりたいというふうに思っております。
また、今申し上げたような考え方につきましては、協議会や各種打合せの機会などを通じて下級裁に対して伝えてきているところでございますが、超過勤務については的確かつ遅滞なく把握し、適切な超過勤務時間の管理を行うよう、引き続き下級裁に対して指導してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 私、こういう議論が国会であっていることも契機にして、文書で下級裁にちゃんと伝えるべきだと思いますよ。私、そういう紙を裁判所の書記官室にでも貼っておいたらいいと思うんですけどね。ちゃんとみんな、残業しようがない、やらざるを得ない、だったら、これちゃんと全部残業代で付けて払ってもらいましょうというのを最高裁の名前で出したらいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げたとおり、超過勤務については的確かつ遅滞なく把握して、適切な超過勤務時間の管理を行うということは重要でありまして、下級裁判所に対しても指導してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 是非徹底をしていただきたいと思うんですが、ちょっとそれに関わって一問だけ。
三月十日の衆議院の法務委員会で、裁判所職員の一人当たり一月の平均超過勤務時間が、下級裁全体で五時間程度だと、最高裁で十六時間程度だという答弁をなされました。これ、現場からあり得ないという声が口々に上がっています。
これ、一体、何を何で割って出した平均なんですかということなんですよ。まさか、毎日二時間残業していると、月三十時間は超えているという人たちの声を否定するんじゃないんでしょう。いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
今お話のありました、下級裁判所において五時間程度、最高裁判所で十六時間程度という数字でございますが、これは超過勤務時間の平均を示す数字でありまして、職員の個別の超過勤務時間を示すものではございません。
なお、正規の勤務時間、どういうふうにこの数字を出したかということでございますが、正規の勤務時間以外の時間に勤務した時間が超過勤務の時間数となるわけでございますけれども、委員御指摘の下級裁判所全体で五時間程度という数値につきましては、下級裁判所全体の行(一)六級以下の職員等の超過勤務の時間数を合計したもの、これを総超過勤務時間として、この数字を行(一)六級以下の職員等の現在員数で割ってその平均値を算出したものでございます。最高裁判所についても同様でございます。
○仁比聡平君 時間が参りましたから、ちょっと大臣にもうお尋ねする時間がなくなってしまったんですが、あれですよ、今の点について、衆議院での質問者自身が、裁判官は別としても職員の労働時間は通常の勤務の範囲内というふうに受けてしまっている、受け止めてしまっている。だから、そんな、月五時間みたいなそんな答弁をして、これが独り歩きしてサービス残業隠しのような圧力になっては絶対にならないんですよね。
二枚目にお配りした資料は、そうした中での超過勤務手当の予算の執行率を裁判所に作っていただいたものです。おおむね八五%前後で推移をしていたのが、どうやら人事院の超勤上限が定まったということを契機に大きく減ってきているというみたいなことがあって、私は、超勤上限が定められたのは、これはサービス残業というか、超過勤務そのものをなくすためなのであって、これが逆にサービス残業を増やすようなことになったら当然本末転倒だと、きちんと安心できるように働ける、そういう職場をつくってほしいということを強く訴えまして、今日は質問を終わります。
ありがとうございました。
○委員長(杉久武君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○仁比聡平君 日本共産党を代表し、裁判所職員定員法の一部改正案に反対の討論を行います。
本法案は、判事補を十五人減員し、裁判官以外の職員についても三十一人減員するものです。事務官は、概算要求は二十三の増員要求だったものが八名の減員となっています。さらに、デジタル化推進のために下級裁から最高裁へ人員シフトが行われています。
質疑を通じ、各高裁管内での書記官、事務官の深刻な減員実態が明らかになりました。また、書記官は、定員上は増減なしのはずなのに、各高裁管内では軒並み減員となっています。この下で、現場の繁忙の実態は深刻です。サービス残業や持ち帰り仕事はあってはなりません。適切な超過勤務時間の把握が必要です。それは、早朝、昼休み、休日における勤務についても変わるものではありません。最高裁はこの趣旨を下級裁に徹底すべきです。
定員合理化計画への協力は、裁判所職員の現場の繁忙を深刻化、固定化し、司法サービスの後退を招きかねないものです。裁判所職員の定員削減でやりくりしようとするのではなく、国家予算の僅か〇・三%にとどまる司法予算の抜本的な拡充こそ必要です。
最高裁が憲法が保障する国民の権利を守るという本来の重要な役割を果たすために、裁判所職員の増員、裁判所予算の抜本増額を強く求め、討論といたします。