○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
日本国憲法は、大日本帝国憲法の緊急事態条項を廃し、全国民を代表する選挙された議員で組織される国会こそが国権の最高機関であって唯一の立法機関であると定め、緊急の必要があるときには参議院の緊急集会で対応することとしました。それは、戦前、戒厳令や非常大権などの緊急事態条項によって国民の自由と権利が圧殺され、軍国主義に進んだ深い反省に立つからです。
今日の改憲議論における緊急事態条項案の典型は、自民党の二〇一二年日本国憲法改正草案です。すなわち外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要と認めるときは内閣総理大臣が緊急事態の宣言を発することができ、その場合、内閣ないし内閣総理大臣の法律と同一の効力を有する政令の制定権、財政上必要な支出その他の処分権、地方自治体の長に対する指示権、国民の国その他の公の機関が発する指示への服従義務、衆議院解散権の制限及び両議院議員の任期、選挙期日の特例を設けようとするものですが、それは、立憲主義に基づく憲法秩序を停止し、主権在民、基本的人権の尊重、恒久平和主義など、日本国憲法の基本原理を根底から脅かすことにほかなりません。
二〇二一年五月三日、改憲派の集会で菅政権の下村自民党政調会長が、緊急事態条項創設の実現を訴える中で、今回のコロナをピンチをチャンスとして捉えるべきだと述べ、国民的批判にさらされました。三年に及ぶコロナ危機は、大企業、富裕層ばかり優遇し、国民には何でも自己責任で、格差と貧困を広げ、保健、医療や介護、保育や福祉の予算を削ってきたこれまでの政治がどれほどむごく、もろいかをあらわにしたと言うべきです。
政府・与党は、生活と営業の速やかで十分な補償を行わないまま自粛のお願いや協力の要請を繰り返し、憲法五十三条に基づく臨時国会の召集義務にさえ背を向けて、財政民主主義をも脅かしてきました。パンデミックや大規模災害に臨む対策の根底に据えられるべきは、憲法十三条が「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定める政治の根本的な責任です。
全く逆に、非常事態を好機とし、国会も開かず、国民の生活や権利を政府が勝手に制限できるようにする緊急事態条項を持ち込もうなど筋違いも甚だしいと言うべきであることを指摘し、発言といたします。