○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、袴田再審事件と証拠開示についてお尋ねしたいと思います。
袴田事件は、五十七年前、私がまだ二歳のとき、一九六六年に静岡市のみそ製造会社の専務さん一家四名が殺害された強盗殺人事件です。
静岡県警は、被疑者として袴田巌さんを逮捕、勾留し、連日長時間の取調べで自白させようと躍起になりました。ですが、袴田さんは一貫してやっていないと否定され、その肉声が、警察がひそかに録音していた録音テープの中に、取調べ室の中での不当な人権侵害の様子と併せて残されています。このテープも再審請求審でようやく開示されました。
不当に起訴された袴田さんが無罪を求めていた一審裁判の途中、事件から一年二か月も後になって会社のみそタンクから発見されたという五点の衣類が死刑判決の決定的な証拠とされました。そのうち、刑事局長、ちょっと通告していませんが、その五点の衣類のうちズボンは、これ袴田さんには小さくて入らなかったんですね。けれど、そのズボンに付いているBというタグが袴田さんに合うサイズを示しているという、うその捜査報告書が作られました。事件から四十二年後たった二〇〇八年に始まった第二次再審請求審で、ようやくBというのはサイズではなく色のことだという、それまで隠されていた検察官手持ち証拠が裁判所に提出をされたんです。
これ、刑事局長、御存じですか。
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
お尋ねは個別事件における事案の証拠関係の問題でございまして、ここで法務当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
○仁比聡平君 いや、御存じなんだろうと思うんですよね。二〇一四年の四月二十四日のこの委員会で、同じ問題を法務省に質問をしたことがございます。メーカーは、初めからBは色のことだとしっかり警察に話をしていたのにとテレビのインタビューで答えています。
そうした五点の衣類のDNA鑑定で、これは袴田さんのものでも犯行着衣でもないという結果も出ました。だから、二〇一四年の三月、静岡地裁は画期的な再審開始決定を出して、刑の執行停止、拘置の執行停止で袴田さんは四十八年ぶりに拘置所から出てこられ、けれど、痛ましい様子に、この冤罪というもののむごさ、これ、私は、国民の皆さんおおよそ本当に痛感してこられたんじゃないかと思うんですね。
ところが、あくまで争い続けたのが検察でした。以来、九年がたちました。そもそも、五点の衣類の色合いからすれば、一年二か月もの間、みその中に漬かっていたとは考えられないということが元々この事件の裁判における重要争点だったんですね。
ところが、検察は当然持っていたはずのカラー写真を第二次再審請求事件まで開示しませんでした。さらに、そのカラー写真のネガについて、お配りしている一枚目の資料は二〇一四年八月六日付けの日経新聞の記事ですけれども、ネガはあるはずだと、当たり前だと、だからこれを開示すべきだという弁護団に対して、検察は二度にわたって存在しないと回答していたのに、二〇一四年の三月に静岡地裁が再審開始を決定したら、これに対して即時抗告をして争った上で、その争う中で、地裁の決定後にネガが警察で発見されたと言ってこの存在を認めたんですよね。
これ、刑事局長、事実ですよね。
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
お尋ねは今後再審公判が予定されている個別事件に関する事柄でございまして、委員御指摘の事実関係の正確かどうかということも含めまして、お答えを差し控えさせていただきます。
○仁比聡平君 その再審、まず請求事件が、三月十三日の東京高裁の開始決定が確定をしたと、これから再審公判が始まるという段階で、もう争えないわけですよ。その検証、総括、これは、今後同じようなことを絶対に繰り返さないという上でも、この国会での重要問題だと思うんですね。
大臣に一般論としてお尋ねしたいと思うんですけれども、つまり検察官から開示されたそうした証拠、これに基づいて弁護団が提起した実験や鑑定を東京高裁は無罪を言い渡すべき明らかな新証拠とし、五点の衣類は事件から相当期間を経過した後に事実上捜査機関がみそタンク内に隠した可能性が極めて高いと厳しく指摘をしたわけです。その評価はおいておいても、検察官が第二次再審において開示した証拠がこの真実の発見、冤罪を晴らすという形で生きている。これ、良かったと思いませんか。
○国務大臣(齋藤健君) まず、個別の再審請求事件において、検察官の活動内容あるいは個々の事実認定につきまして、私からお答えすることは適切じゃないと思っております。
一般論ということで御質問ありましたが、検察当局におきましては、個別の事件の再審請求手続において証拠開示を求められた場合には、法令、その趣旨に従って適切に対応すべきだし、対応してきたものと承知をしてきております。
○仁比聡平君 適切に対応してきたものと承知しているという大臣の答弁は、これはさすがにおかしいんじゃないですか。
だって、半世紀近く隠し続けてきたんですよ。半世紀ですよ。持っていたんですよ、証拠。警察そして検察が自ら描いたストーリーに合う証拠、沿う証拠、これは検察に送って裁判所に出すけれども、そうではない、被告人の無罪方向を示すような証拠は隠し立てをして、裁判で争われ続け、開示を求められながらも、ずっと存在しないと言って隠し続けてきたんですよ。不当じゃないですか、そんなの。
何で適切な判断がなされてきたなんて言えるんですか。そんなことだったら冤罪なんて起こらないじゃないですか。局長じゃないでしょう。大臣、どうですか。
○国務大臣(齋藤健君) まず、検察の行った行為、活動につきまして、これはいいとかこれは悪いとか、私が法務大臣として申し上げるのは適切ではないと思っています。
先ほど私が申し上げたのは、あくまでも一般論として申し上げればということを申し上げたところでございます。
○仁比聡平君 だから、そうやって、私が繰り返しこの刑事司法と証拠の問題についてこれまでお尋ねしてきました。そのような答弁されてきましたよ、これまでの大臣も刑事局長も。だけれども、その下でこうした冤罪が深刻な形で明るみになって、ようやくですけど、袴田さんは再審公判を始めることができるようになったわけですよ。こんなことを適切だなんて絶対に言っちゃならない。それを繰り返すことになる。
だからこそ、資料の三枚目にお配りをしましたが、二〇一六年、刑事訴訟法が改正をされたときに附則九条三項というのが置かれました。「政府は、この法律の公布後、必要に応じ、速やかに、再審請求審における証拠の開示、起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置、証人等の刑事手続外における保護に係る措置等について検討を行うものとする。」ということです。速やかに検討を行うものとすると。
これ、再審における証拠の開示についてどんな検討を行い、どんな目途を持っておられるのですか。
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘の再審請求審における証拠開示につきましては、平成二十八年に成立いたしました刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第九条第三項におきまして検討を行うことが求められております。委員の資料のとおりでございます。
そこで、平成二十九年三月から、この検討に資するよう、最高裁判所、法務省、日弁連、警察庁の担当者で構成する刑事手続に関する協議会を開催して協議が行われてまいりました。そして、令和四年七月からは、同法附則九条により求められている検討に資するため、刑事法研究者等の有識者、法曹三者、警察庁及び法務省の担当者によって構成される改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会を開催しておりまして、その協議会においては、取調べの録音・録画制度や合意制度など、平成二十八年の改正法によって導入された各制度に加えて、再審請求審における証拠開示についても協議が行われる予定となっております。
法務省としては、附則の趣旨を踏まえまして、充実した協議が行われるよう適切に対応してまいります。
○仁比聡平君 二〇一六年の法改正があってからもう七年でしょう。後の方に改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会というお話をされましたけど、これ、証拠開示、再審における証拠開示の問題は議論さえしていないでしょう。していませんね。
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
その協議会においてテーマとしておりますのは、先ほど申し上げましたように附則第九条でございまして、第九条に基づく検討事項でございまして、平成二十八年改正法の規定の施行状況を踏まえて検討すべき項目が複数指摘されているところでございまして、それを順次検討しており、この協議会ではまだ再審の関係は議論されておりません。
○仁比聡平君 検討されていないんですよ。検討しているのは刑事手続に関する協議会ですが、これ、その協議会そのものは五年前、平成三十年の三月二十九日に一回行われただけでしょう。幹事会だって十八回行われてはいますけれども、令和四年の一月十七日の第十八回の開催が最後でしょう。もう一年前じゃないですか。
これ、何でこんなことをしているんですか。これ、もう終わっちゃったんですか。
○政府参考人(松下裕子君) 恐れ入ります。
直ちに回数について今数字を持ち合わせておりませんけれども、検討していないということ、していないとか、する予定がないということではございません。
先ほど申し上げた協議会の方におきましては、今順次検討課題を議論しているところでございまして、再審に関する証拠開示ですとか、その附則において検討するとされていることについても、今後検討される予定でございます。
○仁比聡平君 違うでしょう。局長、在り方協議会の方はこれから検討するというお話かもしれないけど、刑事手続に関する協議会の方は、これ既に七回にわたって再審請求審における証拠の開示について議論しているでしょう。ところが、その議論の中身あるいは成果、今後の目途、これ非公開にしているでしょう。
私が手持ちにある、法務省からいただいている資料ですけれども、刑事局長はその構成員ですよ。局長、構成員でしょう。これ、昨年の、一年前に幹事会も終わって、その後開かれていないから御存じないのかもしれないけれども、これ、終わっていないんだったら、ちゃんと成果を出さなきゃ駄目でしょう。どうするんですか。
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
刑事手続に関する協議会は終わってはおりません。第九条に求められている検討に資するために、先ほど申し上げた在り方協議会の方で、九条三項に含まれたものも、あるものも、規定されている、失礼しました、規定されているものも含めまして、そちらの方でまた関係者を増やして議論をしていくということでございまして、検討をやめたということではございません。
○仁比聡平君 この九条三項の、先ほど御覧いただいた条文のうち、被害者の起訴状における氏名の秘匿に関する措置というのは、今国会に法案がもう提出をされているわけですよ。この再審証拠開示については、一体ほったらかすつもりですかと。そんなことは絶対にあってはならないんですね。
今日、警察庁にもおいでいただいて、お答えいただける時間があればなんですけれども、資料の二枚目、この証拠の問題について、警察から検察に送致さえされていないという証拠が数々大問題になってきました。先ほどのネガも静岡県警が偶然発見したといいます。
そうした証拠のうちの一つに、大津の呼吸器事件の冤罪、再審無罪判決がありましたけれども、その未送致の証拠について、お配りしている資料の真ん中辺の段ですが、滋賀県警が、未送致となっていた理由は調査したが判然としなかったと記者会見で述べていますが、こんな扱いが適切だと言えますか。
○委員長(杉久武君) なお、時間ですので、答弁は簡潔にお願いいたします。
○政府参考人(親家和仁君) 滋賀県警察におきまして、いろいろその辺りの経緯について確認した結果だというふうに考えております。
○仁比聡平君 というような不適切、不当な証拠隠しと、その下での人権侵害が我が国の刑事司法を大きくゆがめてきたと。だからこそ、まず再審における証拠開示、それは捜査機関手持ち証拠の全ての開示が絶対に必要だということを強く求めて、今日は終わります。