○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
昨日の本会議で私、大臣に、この電磁的記録提供命令、これによって一旦提供された個人情報は、たとえ提供命令が後に取り消されても、消去、抹消されることなく捜査機関の元に蓄積され続けていくことになるではないかと問うたんですが、この問いに対する大臣の答弁が全く納得のいかないものですので、まずこの問題をはっきりさせたいと思います。
警察庁、それから法務省、それぞれお尋ねをしますけれども、この創設しようとしている提供命令、これによって取得したデジタル個人情報、つまり電子データですね、これはどのように保管をしていくんですか。
○政府参考人(森本宏君) 電磁的記録提供命令によって提供された電磁的記録については、検察段階におきましては、刑事訴訟法や刑事確定訴訟記録法のほか、法務大臣訓令であります記録事務規程等の各種規定に従い、一定期間、保管、保存することを想定しております。
同命令により提供された電磁的記録の保管が適正になされるようにするための規律を整備することは重要であると思っておりまして、その具体的な在り方については今後引き続き検討してまいりたいと考えておりますが、そういった記録につきまして、今、一定期間、適正に保管、保存することを想定しているというふうに申し上げましたが、必要な期間保管した後は廃棄することなどを想定しておるところでございます。
○仁比聡平君 私が尋ねているのは、物理的にといいますか、どんな形で保管をしていくんですかということなんですよ。
つまり、今局長が紹介されたルール、それはルールはあります。けれども、これは有体物を前提にしているわけですね。データそのものを差押えによって押収するんだというのは今回初めて行われるわけです。その量は極めて膨大になるでしょうし、これを利用可能な形で管理するというのは特別のルールが必要なはずで、その問題意識は恐らくこの委員会でこれまで質疑に立たれた方々も大前提にしておられると思うんですよ。
今の局長の答弁は、その具体的な管理方法、あるいはどこにサーバーを置いて、誰が管理して、どういう予算を掛けてというようなことについては引き続き検討していくという。具体的、つまり言い換えると、法案提出に当たってはそこは定まっていないと。引き続き検討していくというのはそういうことでしょう、首かしげておられるけど。
膨大な電子データ、個人情報を令状でこれから収集しますと言っておいて、例えばどこの県警で、あるいは全部の県警で、あるいは検察庁でどう保管するのかというのが定まっていない。その定め方そのものが個人情報の保護も含めて重大な問題だと思うんですよ。重大な問題、私は問題だと思うけど、皆さんからしても課題だと思うんですよ。ところが、定まっていないと。
ちょっと端的に、法案提出に当たって定まっているのか、それとも、先ほど答弁されたように、引き続き検討すると言うんですから、定まっていないのか。定まっていないんでしょう。
○政府参考人(森本宏君) まず、この法案提出と併せまして、今システム開発等も進めているところでございます。そのシステムの中で、セキュリティーの確保を図りながら、裁判所や弁護士会とやり取りするデータの関係もそうですけれども、我々が保管するものについても、どういうふうにその電子データというものを取り扱っていくのかということをシステムの中で落とし込んでいけるようにする必要があって、今その開発中でございますので、そういう意味で、検討中でございますということになります。
○仁比聡平君 つまり、定まっていないということなんですよ。
警察庁はいかがですか。
○政府参考人(松田哲也君) お答えいたします。
現行の運用では、押収した証拠物件について、適切な方法で保管した上、送致すべきものは検察官に送致し、捜査上留置の必要がないことが明らかであると認められるものについては、必要に応じ、検察官に対し捜査上留置の必要がないことの判断にそごがないことを確認の上、還付又は廃棄しております。
また、証拠物件等を元に作成された電磁的記録の捜査資料につきましては、当該電磁的記録やそれらを保管している共有フォルダ等にアクセス制限を行うなどの措置をとることにより、適切な管理に努めているところ、捜査の終結、公判の維持等の観点から保管の必要がなくなったと認める場合には、確実に廃棄又は消去することとなっております。
電磁的記録提供命令により取得した電磁的記録に係る今後の運用については、法務省等の関係機関とも協議することとなりますが、現行のこうした取扱いと同様の考え方に基づいて検討してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 法務省の検討がまだ定まっていないわけですから、警察庁も今おっしゃっているような考え方で保管、管理をしていくということなんでしょうけれども、システム開発も含めて、まだこれからの話ということだと思います。
警察に関して言いますと、袴田事件において五点の衣類のカラーのネガがあったと。これ一体、何で第二次再審になってしか出てこなかったのかと。静岡県警は一体これをどのようにして保管していたのかと。倉庫の段ボールの中から出てきましたというようなことをおっしゃって、一体なぜそんなことになったのかについてこの国会で何度か聞かれていますが、私も含めて、明らかにできていない。捜査の手持ち証拠というのはそういう扱いをされてきました。還付なんて言うけれども、その留置の必要があるかどうかですね。
押さえたものを捜査機関が手元に置き続ける必要があるかどうかというのが、その還付をするかどうかの基準ですけれども、局長、そうですね。
○政府参考人(森本宏君) 押収してきた証拠について、留置の必要性がなくなったと、委員御指摘のように、いうふうに捜査機関が判断した場合に還付することはあり得るということは、そのとおりでございます。
○仁比聡平君 ですから、捜査の必要がある、あるいは将来の公判維持や、あるいはもっと先の再審も含めて、大臣も先ほど御答弁の中でお話しになられましたけど、そういうときのためにということと称して、あるいは、実際そういう必要があるときももちろんあるでしょう。捜査機関が留置の必要があると判断する限りは、押収された証拠あるいは任意に提出された証拠は、これはずっと捜査機関の中に蓄積され続けるんですよ。
もう一点、大臣は答弁の中で、刑事確定訴訟記録法に基づいて期間が定められていて、それを経過したものは廃棄するという説明をされました。それはそのとおりなんですが、これは裁判に提出されて、つまり公判に有罪立証の証拠として、あるいは情状立証の証拠として提出をされ、その判決で確定をしたという記録のことであって、手持ち証拠、出していない証拠については、この廃棄の対象には、局長、ならないでしょう。
○政府参考人(森本宏君) お尋ねの点につきましては、記録事務規程という大臣訓令のものに取扱いが定められておりまして、公判に提出したものと、それから一般的には公判不提出記録と呼んでおりますけれども、があって、公判不提出記録の保存、保管期間については、公判提出記録と同じ扱いとするというふうになっておりまして、最後に廃棄する段階では一体として廃棄しているというのが検察庁の運用でございます。
○仁比聡平君 それは、捜査機関、警察から検察に送致されている書類、資料が対象になりますよね。そうでなければ、そうでなければ、警察の手持ち証拠というのがずっと後まで残り続けるということにならないじゃないですか。
○政府参考人(森本宏君) そういう意味では、今申しましたのは検察庁の枠組みですので、検察庁が独自で収集した証拠、それから警察から送致されてきた証拠、それを一体とし管理しておりますので、その記録と、それからその証拠ということになります。
○仁比聡平君 そういうことなんですよ、警察庁は心外かもしれませんけれども。
これまでの、戦後憲法の下でも、警察活動、つまり、犯罪の捜査としての刑事警察の活動、それから、私が昨日の本会議で指摘をした、例えば大川原化工機事件なんかは警視庁の外事第一課が取り組んでいて、行政的な警察活動、あるいは岐阜県警の警備課の事件というのは、これは公安警察の活動。
つまり、犯罪の予防のためにということで情報の収集をすると。その中で、犯罪だと思料する、嫌疑を掛けるということになれば、それが切れ目ない形で犯罪の捜査に移行するという。これはもうずっと行われてきていて、検察にそうした中での証拠が全部送致されているのかというと、全くそんなことはない。
だから、検察は、警察を信じてなのか、従ってなのか、起訴する。ところが、大川原化工機事件のように、全くの冤罪だと、フレームアップだということが明らかになって、自ら取り消さざるを得なくなるということ、そういう事件で冤罪をつくり出してきたわけですよ。
このデジタル個人情報を警察が自ら令状を取れば収集、取得できる、そして蓄積していくことができるということが私は大問題になると思います。
ところが、大臣の御答弁は、取得された情報が捜査機関の下に蓄積され続けることとはならないと承知しておりますと答弁をしていますが、これ大臣、ごまかしじゃありませんか。これまでの法務省、それから警察庁の説明聞かれて、蓄積されていくことにはならないというのは、政治家として違うと思いませんか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 今の御質問の観点からすれば、この電磁的記録提供命令、この創設された場合、やはり取得された電磁的記録、この適切な保管管理、これは極めて大事でありまして、そうしたことを通じて、不適切な利用を防止する、さらには必要な期間保管した後には廃棄をする、そうしたことのある意味での規律として、その適正な取扱いに関する規定等、この整備をしっかりしていかなくてはいけない、そのことを我々としても考えているところであります。
そうしたことを通じて、そうした不適切なそうした蓄積ということがないような状況というものをつくっていく必要があると考えております。
○仁比聡平君 つまり、適切か不適切かというこの新しい視点を今おっしゃっているんですけれども、刑事法の国会における皆さんの答弁というのは、その答弁自体が、仮に成立すれば、施行されれば、法の運用の基準になるでしょう。国民が、この新しい制度が国民生活やあるいは自由にとって、私的領域の活動にとってどういう意味を持つのかということを理解する基準ですよね。
デジタル情報が膨大で、私生活上のあらゆる個人情報が今やサーバー、巨大サーバーやクラウド上に収集され、そして蓄積されていっているということはもうみんなが実感していることで、国民みんなが、これが、自分たちの知られない間に警察がこれを蓄積していくということになるのかというのは、これ重大な関心だと思いますよ。
にもかかわらず、大臣が、取得された情報が捜査機関の元に蓄積され続けることとはならないと承知しておりますという趣旨、という答弁を昨日だけでなく衆議院の段階からずっとし続けておられると。これが法案の意味だということが確定することは、私は絶対にあってはならないと思います。国会がそれを許していいのかと。衆議院の審議、そして私たちの参議院のこの委員会の審議というのは極めて重い責任を負っているのであって、もちろん処罰すべきは処罰しなきゃいけない、捜査の必要というのは、当然、憲法三十五条だって前提にしています。けれど、それが一体自由や人権において何をもたらすのかということについてきちんと議論をして、そして議事録、法曹関係者、市民に分かるものにするというのがこの国会審議の大きな役割だと思うんですね。
そこで、私は委員長にお願いをしたいと思いますけれども、この蓄積され続けるという私の問いに対する答弁、これについて、私はごまかしであり、もうちょっと申し上げるとうそだと思います。蓄積され続けているのに蓄積されないと言うのは、これはうそだと思います。これを根本から考え直して、改めて、政府としての統一見解を明確にこの委員会に対して、あるいは本会議場に対して示すべきだと思いますが、委員長、いかがでしょうか。
○委員長(若松謙維君) 後刻理事会で協議いたします。
○仁比聡平君 その上で、どう利用するのかということについて、いわゆる目的外利用ですよね、この捜査のために収集する個人情報なんですから。これを何か全く別の経済的な目的とか、あるいはそういう利益、ビッグデータなんかを求めるような人たちに利用させるとかそんなことがあってはならないという意味での目的外利用、これが駄目だというのはそれは当然のことだし、流出や漏えいの防止も含めて、あるいはサイバー攻撃の防止なども含めてちゃんとやってもらわなきゃいけないというのはそれは当然のことだと思うんですよ。
私は、警察や検察の中で使うということはこれまでもやってきたし、これからもやるんじゃないですかということを本会議でお尋ねをしました。つまり、捜査、取調べ、あるいは起訴、それから公判における立証、こうしたものに利用するということだと思うんですが、そこで、刑事局長、別件というのがどうなるのか。令状審査は事件を単位に行われるというのが私が学んだ刑事訴訟の考え方です。つまり、被疑事実を中心に、捜査関係者が出してくる資料などを吟味して、裁判官はこの事件についてプライバシーを仮に侵害したとしても、この押収が必要だという判断をする。したがって、その令状が命じている捜索、押収の対象というのは、その当該事件に限定されるということが原則だと。ましてや、別件の捜査を目的にして令状を使ってはならないと思うんですけどね。これ電子提供、電子データだったらどうなってしまうのか、事件単位の原則というのはなくなってしまうんですか。
○政府参考人(森本宏君) お答えいたします。
そこに対する考え方は、まあデータ量が多いかどうかという違いはあるというところは御指摘としてありますが、例えば手帳の中に、押収している手帳の、本件のことが書いてあって、あるいはそれと違う時刻に例えばお金をもらったということが書いてあった場合に、じゃ、その別のお金をもらったというのにその手帳の記載を使っていけないかといえば、それは使っていいとなっていますし、これまでも使っています。
先ほどの例でも、性犯罪で捜索、押収に行きました、そのときに電子データが出てきました、電子データの中に別の性犯罪の画像が残っていました、映像が残っていました。それでその性犯罪を立件するということは、それは今実務上認められていまして、そこのところは変わりがないというふうに思います。ただ、枠としては、刑事事件の枠内で使っていくというところは変わらないとは思います。
○仁比聡平君 今刑事局長が出しておられる例というのは、令状審査を受けている事件と関連性がある事件を今あえておっしゃっているんですよね。
今の例でいいますと、その性犯罪のということで令状で入ったら、拳銃が出てきたと。これを取れるのかという議論が刑事訴訟法の議論の中であって、学説、通説はこれは駄目だと、別の令状取ってきなさいと。その間、その場に誰かが入って、証拠隠滅したりしたら駄目だから、だからその捜索場所はちゃんと確保しましょうと、それは許されますという理解が物の捜索、押収ではされてきたと思いますよ。
最高裁、ちょっとお尋ねをしますけれども、捜索、差押えというのは裁判所が命令する、裁判所の命令を捜査機関が執行するということになると思いますが、この審査をした事件とは別の事件と評価されるべきものが出てきたときに、これを全部持っていくということは令状が許すものではないでしょう。
○最高裁判所長官代理者(平城文啓君) 今の例でございますけれども、最高裁という立場でございますので、それを許すか許さないかと一概に申し上げることは困難でございます。
○仁比聡平君 今おっしゃっているのは、つまり最高裁の事務当局としてという御趣旨だと思います。うなずいているだけだと議事録に残らないので、刑事裁判官としては、私が申し上げていることは決して的を外れてないと思うんですけれども、もう一度いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(平城文啓君) 失礼いたしました。先ほどは最高裁事務当局としての答弁でございます。
一般論として申し上げれば、令状を発付する裁判官としては、被疑事実との関連性、これが認められるものについて捜索、差押え、若しくは差押えという許可状を発付しているものと承知しております。
○仁比聡平君 今日時間限られているから、今の点に関して深めていくのは次回以降にしたいと思うんですけれども、つまり、令状審査をした、令状が出されたその事件に限定するんだというのが、つまり、憲法三十五条が捜索場所と物で特定しなさいということの意味なんですよね。
ところが、それがデジタル情報でできるのかと。そもそも、一体どういう令状請求を検察や警察はするというのかと。裁判所はとにかく受け身ですから、令状請求されたものについてこれを認めていいかどうかを判断するということになるわけで、多くの場合、警察がその主導権を握るということになるんだと思うんですよ。警察、どういうふうに令状請求するんですか。
○政府参考人(松田哲也君) お答えいたします。
お尋ねの点につきまして、電磁的記録提供命令の令状請求ということでよろしいでしょうか。その場合の被疑事実や提供させるべき電磁的記録等をどのように特定するかは、個別の事案ごとにその事実関係と証拠により判断されることでありますので、一概にお答えすることは困難でありますが、電磁的記録提供命令は被処分者に電磁的記録の提供を命ずる処分ということでありますので、その処分の性質上、提供させるべき電磁的記録について被処分者において何を提供すればよいのかが判断できる程度に特定させる必要があると考えられると承知しております。
○委員長(若松謙維君) 時間が過ぎておりますので、簡潔におまとめお願いします。
○仁比聡平君 はい。
今の御答弁を聞かれても、どうして特定、どういうふうに特定されるのかというのは全く分からないということだと思います。物の範囲だけじゃなくて、物の対象だけじゃなくて捜索場所の特定も求められているんですが、巨大なサーバーとかクラウドとかという世界をどうやって場所特定するのかという大問題もあって、引き続き徹底した審議を求めていきたいと思います。