○仁比聡平君 同性婚の法制化について述べます。
昨年五月八日の憲法審査会で、私は、同性婚を認めない民法、戸籍法を憲法違反とした同年三月十四日札幌高裁判決を踏まえ、これは国会が取り組むべき喫緊の憲法問題であり、政府・自民党が、極めて慎重な検討を要すると背を向け、特定の家族観を押し付けて当事者を苦しめ続けることは許されないと強調しました。
それから一年、四つの高裁全てが違憲判断を下し、もはや司法の流れは定まったと言って過言ではありません。
政府は、婚姻は子を産み育てる男女の結合、同性間には自然生殖の可能性がないと言い続けてきましたが、昨年十月三十日、東京高裁は、近代、婚姻制度は、家父長的な支配関係から離脱し、平等で自由な婚姻意思の合致とされてきた、子の生殖よりも当事者間の人的結合関係自体に意義を認め、法的保護を与えたものとして、国の主張を明確に退けました。
さらに、十二月十三日、福岡高裁判決は、婚姻をするかどうか、誰を婚姻の相手として選ぶかは両当事者の自由かつ平等な意思決定に委ねられ、婚姻の自由、婚姻の成立、維持について法制度の保護を受ける権利は憲法十三条が定める幸福追求権の内実の一つであると、初めて憲法十三条違反の判断を下したのです。同判決は、同性カップルに法的な婚姻制度の利用を認めないことによる不平等は、パートナーシップ制度などの拡充の導入によって解消されるものではなく、端的に、異性婚と同じ法的な婚姻制度の利用を認めるのでなければ、憲法十四条一項違反の状態は解消されない、国会の立法不作為は国家賠償法上の責任を生じさせ得るものであると強く法制化を促しています。
今年三月七日、名古屋高裁は、同性カップルの具体的不利益を詳細に認定した上で、民法の夫婦など、性別中立的な文言を、婚姻当事者などに変更すれば膨大な立法作業は必要ないと踏み込み、二十五日、大阪高裁は、同性婚法制化は国民一人一人にとっての婚姻の意義や主観的価値を損なうものではなく、国民感情が一様でないことは同性婚を法制化しない合理的理由にならないと厳しく指摘しました。もはやこれ以上の不作為を続けることは一切許されないと言うべきです。
個人の多様性、人権尊重社会のため、同性婚の法制化は、性同一性障害特例法の抜本改正、そして選択的夫婦別姓の実現とともに今国会の緊急課題であり、与野党を超えて取り組むべきことを呼びかけ、発言といたします。