○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
前回、三月十三日の法務大臣所信質疑のこの委員会で、DVの本質は支配であり人権侵害であると各省から答弁がなされました。そのことは、親権のありようを考える上でも、子の育ちと福祉のために同居親の安心、安全が本当に大切だというこの観点からも大切なことだと思います。
そこで、今日は、DV被害者支援の抜本的強化についてお尋ねしたいと思います。
ちょっと質疑順を変えて、厚生労働省から認識を伺いたいと思うんですけれども、お手元に資料をお配りをしておりまして、その二枚目ですが、令和六年三月の新潟県困難な問題を抱える女性支援及び配偶者等暴力防止・被害者支援基本計画から抜粋をさせていただきました。
市町村の相談体制の強化に向けた支援として、その課題、多くの市町村では婦人相談員が未配置となっているため、困難な問題を抱える女性にとって、住んでいる地域で相談できない、支援を受けることができないなど地域差が生じていることから、婦人相談員が早期に全市町村に配置されるよう市町村の理解を得ながら進める必要がありますという点。
そして、次のページ(三)、若年女性への支援ですが、困難な問題に直面している若年女性の早期の把握については、多くの市町村で当事者の把握や当事者からの相談への対応の難しさといった課題を感じていますという記述がありますけれども、政府としての認識、そして支援をどう強めますか。
○政府参考人(吉田修君) お答え申し上げます。
女性相談支援員ですけれども、困難な問題を抱える女性にとっての最初の窓口として相談に応じ、女性の状況等に応じた必要な支援のコーディネートを行うなど、女性支援において重要な役割を担っていると認識しております。
この女性相談支援員でございますが、地方公務員でございますので、その任用や労働条件につきましては自治体において判断されるべきものでございますけれども、その職務を行うために必要な能力や専門的な知識、経験を有する人材の登用や職務に見合った処遇に自治体においても御配慮いただきたいというふうに考えております。
そうした認識の下、厚生労働省におきましては、資料にもお示しいただきましたけれども、女性相談支援員活動強化事業に取り組んでおりまして、女性相談支援員が非常勤として配置される場合であってもその役割に見合った適切な処遇が確保されるよう、基本額に加えまして、経験年数や職務に応じた加算、期末手当、勤勉手当加算等の補助を行っているところでございます。
これに加えまして、令和七年度予算案におきましては、有識者や職員OB等が知識や経験を生かし、女性相談支援員が抱える困難事例等に対する助言を行う等、女性相談支援員の質の向上や業務における心理的負担を軽減するためのスーパービジョン整備事業を行うこととしております。
また、困難な問題を抱える若年女性につきましてでございますが、自ら悩みを抱え込むことで問題が顕在化しにくく、公的な支援につながりにくいといったことや、また、世代間の考え方の違いや集団生活への対応の難しさなどから公的機関による支援を受けることが難しいといった指摘もなされているところでございます。このため、公的機関と民間団体が密接に連携をし、民間団体のより世代の近い支援者等によるアウトリーチにより早期にケースを把握するとともに、個々の状況に応じたきめ細やかな支援につなげるため、若年被害女性等支援事業に取り組んでいるところでございます。
厚生労働省といたしましては、全国会議等におきまして自治体に対し、こうした補助事業の活用を呼びかけ、女性相談支援員の職務に見合った処遇の確保と職場環境の整備を推進するとともに、行政と民間団体が協働した切れ目のない支援が行われるよう取り組んでまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 そうした重要性に鑑みて、今予定をされている、計画をされているこの事業というのはとても大事だと思うんですけれども、更に抜本的に額やそれから体制含めて強化する必要があると思うんですね。
今お話にあったような女性たちが直面する困難というのは、これ決して個人的な問題ではなくて、社会構造の課題なんだということを直視して、女性支援新法は女性への包括的な支援という理念を明確にしたと、そのことが現場に大きな前向きなインパクトを今与えていると思います。
多様な支援を包括的に提供する体系、体制を抜本的に強めていくという、その要になるのは、女性相談支援員の専門性と、そしてそれに見合う処遇、中でも給与、ここを抜本的に充実させていくということだと思うんですね。専門職としての認定制度にすべきだという声も女性相談支援員の皆さんの連絡協議会、全国連絡協議会などから要望も届いていると思いますが、是非前向きに取り組んでいただきたいと御要望申し上げたいと思います。
内閣府男女共同参画局にもおいでいただいています。その二枚目の方に、配偶者暴力相談支援センター設置市では、DV被害者への対応スキルが向上し、相談支援対応のノウハウが蓄積される一方、未設置市町村と取組に差が生じていますという記述もありますが、これをどう捉えて支援をしていかれますか。
○政府参考人(小八木大成君) お答え申し上げます。
配偶者暴力防止法におきまして、市町村は、当該市町村が設置する適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすよう努めるものとすると規定されております。DV被害者の支援につきまして、各地域において中核的な役割を担う都道府県による取組に加えまして、被害者にとって最も身近な行政主体である市町村の取組は重要であると考えております。また、市町村の配偶者暴力相談支援センターの運営に要する経費につきましては、特別交付税措置が講じられているものと承知しております。
内閣府としましては、地域の実情に応じて配偶者暴力相談支援センターの設置の促進の一層の取組が行われるよう、先ほど申し上げました市町村の配偶者暴力相談支援センターの業務に係る財政上の対応を含めまして、市町村における配偶者暴力相談支援センター設置の利点や効果、都道府県による取組事例等の情報提供を行っているところでございます。
○仁比聡平君 もっと進めてもらいたいと。実際、その配暴センターでスキルが向上する、ノウハウが蓄積される、もっとも、そのとおりだなと思うんですよね。こういう体制をあまねく日本各地、隅々のものにするということが国内のまず大きな課題だと思うんですけれども。
外務省、前回お尋ねしたハンガリーの邦人女性殺害事件の痛苦の反省も踏まえて、この在外公館における相談体制を一体どうするのかと、このことについてどう検討しておられるんですか。
○政府参考人(町田達也君) まず、ハンガリーにおける邦人の逝去につきましては、大変痛ましい事案であり、心よりお悔やみ申し上げる次第でございます。
外務省における体制でございますけれども、ハーグ条約の事案を含めて、いわゆるDVの被害者である場合に適切に対応できるため、DV被害の防止、そしてDV被害者の保護などに関して専門的な知識を有する者を職員として、外務省として配置しているところでございます。これまでも、これらの職員の知見を活用しながらDV被害者へのきめ細かな対応を行うように努めてきております。
在留邦人の安全確保、在外公館の最も重要な任務の一つでございます。委員の御指摘踏まえながら、引き続き、邦人保護の観点から、個別の事情を踏まえながら、DV被害の関係する事案における一層丁寧な対応、それから必要な手当てを行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
○仁比聡平君 まだ抽象的なんですよね。本当に反省があるのかと。
外務省がハーグ条約の実施に伴う配偶者等からの暴力の被害者への対応に関するガイドラインというのを出していまして、そこには今触れられたDV専門家という職があります。このDV専門家について、当事者がDV被害を受けている又は受けていたとの情報を得た場合には、当該案件については可能な限りDV専門家が直接担当することとし、DV専門家が直接担当できない場合でもDV専門家の助言又は協力の下で職員が適切な対応を行うよう努めるとなっているわけですが、実際にそういう対応がハンガリーで行われていれば今回の殺害には至らなかったのではないですか。パスポートだって発行されていたんではないですか。
その認識の下に立って、私は在外公館にDVの相談の専門性ある職員をあまねく配置すべきだと思うし、それがすぐは無理だということであれば、在外公館がコーディネートして、本国のこの専門家とオンラインで直接相談できるという体制をちゃんとつくって、相談に来られた方に本国の専門家に相談できますからと、私どもがコーディネートしましょうと周知するという、そういう取組は少なくとも必要だと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(町田達也君) 委員御指摘のとおり、ハーグ条約におきましては外務省が日本における中央当局となっておりまして、そのガイドライン、これは外務省のホームページにも載っておりますけれども、委員御指摘のとおり、そういった専門の職員を採用し、可能な限りこの専門家が直接、あるいはそうでない場合は助言、協力の下でやるというふうになっております。こうしたことを踏まえまして、従来より在外公館から本省に相談があった場合は外務本省が支援する体制を既に整備しているところでございます。
それから、在外公館、どのような形でDV被害について訴え、話を聞いてもらえる体制があるかということに関しましては、現地のDV被害者支援団体に関する情報を提供するなどの対応をしているほか、一部の国では、外務省の方で依頼しまして、在留邦人が日本語で支援団体に相談できる体制を整えております。
それから、外務本省側としまして、特定非営利活動法人、いわゆるNPOと連携しまして、孤独、孤立、それからそれに付随する問題でのお悩みの方がSNSなどで気軽に日本語で相談、無料相談できる体制も取っております。実際にDVによる被害に悩む方からの相談も寄せられているところでございます。
今委員御指摘のその在外公館と本省との連携をより緊密にしていくということも含めて、丁寧な対応、そして必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えます。
○仁比聡平君 より緊密にというお話が最後ありましたけど、現実の体制は、このハーグの関係のDV専門家というのは二人しかいないんですよね。世界、時差があるわけで、オンラインで常時対応するということはなかなか厳しいものがあるはずで、私はもう、領事局、抜本的に予算増を要求して、こうしたDV専門家をしっかり配置していくことが必要だと思います。ハンガリーのような事件を絶対に二度と起こさないという取組を政府を挙げて求めたいと思うんです。
最高裁にもおいでいただいています。
こうしたDVやあるいは虐待始めとした、家族間のあるいは父母間の、最も葛藤の高い、紛争性、攻撃性の高いケースに取り組まなければならないその要が家庭裁判所ということだと思うんですね。
オーストラリアで、この家族紛争に関して、DVのスクリーニングをするという取組が行われています。何しろ、前回も確認をしたように、加害者に自覚がないだけでなく、被害者も自覚がなかったり、あるいは自らの被害に自信がなかったりというのがDVの支配たる本質なわけで、だからこそ、双方当事者の話をゆっくりちゃんと聞きます、ちゃんと傾聴しますといってもこのDVを見逃すかもしれない、現に見逃してきたのではないかというのがこれまでの日本の司法の現場だと思うんですね。
オーストラリアでは、当事者にそのスクリーニングの紙に記入をしていただく、加えて専門家がインタビューを行う。そうした中で、DVのおそれがあれば、一つは、調停にはもう付さないということで調停そのものから除外するとか、あるいは、加害者プログラムを受講しないと面会交流などを進めることはできないということで、家庭裁判所自身がこのDVを防止するために特別の取組を行っているということなんですが、最高裁、こうした取組について、研究し導入すべきではありませんか。
○最高裁判所長官代理者(馬渡直史君) 御指摘のとおり、DV、虐待が問題となる事案におきまして、被害者自身が被害の事実やその影響を正しく認識できていないケースがあるということは承知しておりまして、そのような被害の特性を含め、裁判官を始めとする関係職員においてDVや虐待についての知見、理解を深めることが重要であると認識しております。
その上で、議員御指摘のスクリーニングの話でございます。この話、問題も幾つかのレベルでの対応というのもあり得るんだろうと思いますが、各裁判所における手続の中で調停委員会や裁判官がどのような審理を行うかというレベルにつきましては、御指摘のようなスクリーニングの手法を用いるかどうか、これは個別の事件における調停委員会や裁判官の判断により決すべき事柄であり、事務当局の立場としてお答えすることは差し控えたいと思っています。
他方で、調査事務のレベルにおきましては、これまでも、家庭裁判所調査官の研修や研究におきまして、学識経験者を招聘して講義を受けたり、事例を基にした検討を行うことなどを通じて、スクリーニングの視点等を踏まえた調査を進めることの重要性というものも共有されてきているところでございます。実際の調査事務においてもこれを生かすようになってきているということでございます。
このような研修も含め、引き続き、海外における知見等をも参照しながら、研さんを深めていけるよう環境を整えていきたいというふうに考えております。
以上です。
○仁比聡平君 個別事件でどうするかというのは個々の裁判所の問題ですというのは、それはもう一般論としてはそうなんですが、今その後半に局長お述べになられたような研究、これがみんなのものになるということが、裁判所はもちろんのこと、相談の、ほかの相談の現場にとってもとても大事なことだと思いますので、是非導入をいただきたいと思います。
イギリスでも、子供と別居親のコンタクトを確保することを裁判所が過度に優先して、結果、DVや虐待の主張を過小評価するといった、プロコンタクトカルチャーと言われますけれども、こうした事態が重大犯罪への対応を阻害すると、ハンガリーのような殺害事件に至ってしまうということが大きな問題になってきました。
そこで、そうした問題意識で、法務省が共同親権の問題について今活用しておられるパンフレットについて一問だけ聞きたいんですが、お配りしている一枚目ですが、父母間の人格尊重、協力義務としてこういう記載があります。父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子供の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければなりません、次のような行為はこの義務に違反する場合がありますとして、その一つに、父母の一方が特段の理由なく他方に無断で子供を転居させることというのがあるんですね。
親権や婚姻関係の有無にかかわらずとなると、既に離婚が成立して単独親権で暮らしている親子、同居親と子供、まあシングルというふうによく言われますけど、そうした世帯や、あるいは、婚姻中でも関係が破綻し、中でもDVで避難が必要だと、前回、大臣も、DV等からの避難が必要な場合に子を連れて別居するといったことに何ら支障を生じさせるというものではないと改正法の趣旨を答弁されましたけれども、そういうケースですね、そういう場合も、他方に無断で子供を転居させると、この夫婦間、人格尊重、協力義務違反であると、こう読まれかねない。こういうパンフレットになっていまして、これ実際に、女性相談支援だったり配偶者暴力だったりの相談に当たる方々のところで、この法務省のパンフレットどおりだったら逃げられないじゃないかという議論になっているんですよ。
これは改めるべきではありませんか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
委員御指摘の記載の趣旨でございますが、この居所指定権を行使するに当たっては、他方の親に対する人格尊重、協力義務に配慮する必要があるという原則を説明しているものでありまして、このことは共同親権の場合でも単独親権の場合でも異ならないものと考えております。他方で、同記載は、父母の一方が特段の理由なく他方に無断で子供を転居させたという場合にそれらの義務に違反する場合があるというものでございまして、DVや児童虐待からの避難のために子と共に転居するような正当な理由がある場合にそれらの義務の違反になることを意味してはおりません。
このことは御理解いただける文言となっていると考えておりますが、改正法の施行を踏まえまして、種々の不安を抱いている方がいることは承知をしておりますので、更に周知広報が重要であると認識をしているところでございます。
○委員長(若松謙維君) 時間過ぎておりますので、おまとめください。
○仁比聡平君 時間が来たからまとめますけれども、大臣、次回きちんと議論したいと思うんですよ。
というのは、誤解されるような記載になっていないというような趣旨の局長答弁ありましたけど、そんなことあり得ませんって、こういう書き方だったら。だから、例えばXでは、相手に無断の連れ去り別居は父母協力義務違反の最たるもの、法務省の共同親権説明のパンフレットにも明記されていますといった言葉が飛び交っているわけですよ。そういう言辞を支援者、当事者あるいは弁護士に投げ付けて黙らせようとすると。そうした攻撃というのは、これはやってはならないことではないかと私思います。大臣のきちんとした認識を次回の機会にお尋ねしたいと思います。
ありがとうございました。