○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
私は、選択的夫婦別姓についてお尋ねをいたします。
まず外務大臣に、女性差別撤廃委員会の昨年十月の総括所見でも、家族及び社会における女性と男性の役割と責任に関する家父長制的態度及び差別的固定観念を撤廃すべきと求められました。
条約批准から四十年、こうした指摘が繰り返されていることをどう受け止めますか。
○国務大臣(岩屋毅君) 委員御指摘の点に関するCEDAWの最終見解につきましては、我が国として勧告の内容を十分に検討して、必要に応じ適切に対応していく必要があるというふうに思っております。
個人的な感想でいえば、例えば、我々の親の世代、我々の世代、我々の子供たちの世代という、を見ておりますと、大分こういう傾向というのはなくなってきているんではないかなというふうに思うんですけれども、この勧告の内容は十分に検討して、必要に応じ適切に対応していく必要があると思っておりまして、条約を所管する外務大臣としては、引き続き、内閣府男女共同参画局を始めとする国内の関係省庁とよく連携して、条約を誠実に遵守していく所存でございます。
○仁比聡平君 劇的に進んでいる世界の大きな流れに対して日本社会が遅れていると。この指摘に対して、しっかり取り組む必要があると思うんですね。
選択的別姓の実現は、この根深い家父長制的な固定観念を乗り越えて、誰もがお互いを尊重し合い、ジェンダーに基づく支配や暴力、そして差別のない社会に変えていく大きな一歩だと思います。
一体、日本で氏がどう定められてきたのか。国会図書館からいただいた資料を基に私が作りましたメモを資料として皆さんに配付をしています。
法務省に聞きますが、明治民法以前はどうだったんですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
まず、江戸時代においては、一般に農民、町民には氏の使用は許されておらず、平民に氏の使用が許されたのは明治三年の太政官布告によるものであると承知をしております。その後、明治八年の太政官布告により氏の使用が義務化をされまして、妻の氏については、明治九年の太政官指令により実家の氏を用いることとされました。
しかし、妻が夫の氏を称することが慣習化していったと言われておりまして、明治三十一年に施行された民法において、夫婦は同一の家に属し共にその家の氏を称するという夫婦同氏制度が導入されたものであります。
○仁比聡平君 源頼朝の妻は、源政子ではなく北条政子なんですよね。むしろ、夫婦別姓が伝統で、明治維新後もそれは続きました。
それが、明治の半ばから大日本帝国憲法、教育勅語、朝鮮出兵、日清、日露戦争へと進んだ富国強兵を背景に家制度が採用され、それと不可分に、明治三十一年の、今お話のあった民法によって、家の呼称としての同氏が法制上初めて義務化されたわけです。局長、そうですね。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
委員御指摘のとおり、明治三十一年に施行されました明治民法では、第七百四十六条において「戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス」と、第七百八十八条第一項において「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」と、それぞれ規定をされたところでございます。
このように、明治民法では、家の制度を導入し、夫婦の氏について直接規定を置くのではなく、夫婦共に家の氏を称することを通じて同氏になるという考え方が採用されたと承知をしております。
○仁比聡平君 明治民法で始まった同氏の強制は、まさに家父長制だと思います。
その下で、妻と未成年の子はどんな地位に置かれましたか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
家の制度では、家は戸主とその家族によって構成され、戸主はその家族に対して戸主権を行使し、戸主の身分及び財産は家督として単独相続されるものとされておりまして、妻及び未成年の子を含め戸主以外の家の構成員は、居所指定権や婚姻同意権などの戸主権に服する者とされていたと承知をしております。
また、例えば婚姻に関しては、妻は夫と同居する義務を負う、夫は妻の財産を管理すと規定され、親権に関しては、子はその家にある父の親権に服すなどと規定されていたものと承知をしております。
○仁比聡平君 絶対的な戸主権の下で、妻と子は無権利、無能力者とされました。
その家制度が、一九四七年五月、日本国憲法の施行の下で廃止されたわけです。明治民法から四十九年ですね。日本社会の長い歴史から見れば僅かな期間だと思います。
その年の十二月、民法改正によって、氏、氏名は、夫、妻それぞれの個人の呼称、つまり、その人がかけがえのない個人として尊重されるあかしであり、人格権の象徴として大きく変わったのではないのか。法務大臣、いかがですか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 今御指摘のように、昭和二十二年の現行民法、この制定によって、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」というふうにされました。このことは、当然ながらその前の明治民法のそのお家という趣旨とは異なるものと承知をしております。
○仁比聡平君 何だかはっきりしないですね。
資料の二枚目に、制定過程で夫婦別姓を提唱された家族法の大家、中川善之助名誉教授の文章をお配りをしています。
この七百五十条、現行の、について、夫婦が自由平等の協議で決めればいいという、公平といえば公平、ずるいといえばずるい方法だと。やっぱりずるいですよね。なぜこうなったかと煎じ詰めるところ、夫が妻の氏を称するのは恥辱だという偏見が根底にあるのだと思うと。今を生きる私たちが同じような偏見にとらわれていないのか、我が身を常に顧みるべきだと思います。
第二次別姓訴訟原告の、広島の恩地いづみさんという方がいらっしゃいます。名前を変えるの嫌だなと思う一方、私が変えないためには夫を改姓させないといけなくて、私が嫌なことを相手に要求したくはないしと仕方なく届出を出して夫の姓に改姓して、通称を使おうとした。ところが、使えない場面が多い、二つの名前を使い分けなきゃいけない、やっぱり駄目だと、この名前は私じゃないと、事実婚に変えられた。けれど、日常生活はすごくやりやすくていいんですが、今度は夫婦である何の証明もない、さらに、老後や相続はどうなると語られています。
法務大臣、やっぱり名前は人権ではありませんか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) まさに、それぞれの名、氏というもの、そこは人格権というか、そういったことと結び付いたものであると、そういった認識は私もございます。
○仁比聡平君 二〇一五年の最高裁が、家族の呼称という言葉を使いました。人権なのに、家族の呼称とは一体何かと。あるいは家族の一体感という言い方もあるんですが、これ民事局に尋ねたいんですが、家族というのは、法的にどんな、どの範囲の関係を指すんでしょう。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
委員御指摘の平成二十七年の最高裁判決の多数意見におきましては、家族の一体感に関する言及それ自体はないものの、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位である、あるいは、家族を構成する個人が同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見出す考え方も理解できるところであるなどと判示されているものと承知をしております。
また、民法上、家族という文言や、その定義規定は存在をしておりません。
○仁比聡平君 つまり、最高裁が、人権を曖昧にしてアイデンティティーの喪失をもたらすという事態になりながら、その理由として持ち出した家族の呼称という言葉は法的によく分からないということなんですよね。愛情は国家が強制できるものではないし、すべきでもないということがその背景だと思いますが、男女共同参画担当大臣、家族の在り方とか一体感を育む営みというのは、これ様々じゃありませんか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 委員御指摘のとおり、様々な御家庭があると承知しております。その上で、様々な立場から様々な御意見があるというふうに承知をしております。
○仁比聡平君 家族が壊れるという言い方は一体何なのかと。
法務省、選択的別姓を導入すると戸籍は壊れるんでしょうか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
戸籍は、日本国民の親族的身分関係を登録、公証する唯一の公簿でありまして、その本質的な機能は真正な身分変動の登録や公証でありますところ、仮に平成八年の法制審議会の答申に基づく選択的夫婦別氏制度が導入された場合でありましても、その機能や重要性が変わるものではなく、そのことによって大きな問題が生ずるものとは考えておりません。
○仁比聡平君 つまり、筆頭者が定まっていれば戸籍は壊れませんね。
○政府参考人(竹内努君) 現在の戸籍は筆頭者をインデックスとして構成をされておりますので、筆頭者が定まれば、戸籍の機能や重要性は変わるものではなく、そのまま残されるものと考えております。
○仁比聡平君 家族が壊れるという表現は、間違うと家父長制的な押し付けになりかねないんですよね。これは日本国憲法の下で政治がすべきことではないと思います。
我が国は夫婦同姓を強制する唯一の国になっているんですが、資料を配付しておりますけれども、ドイツ、タイ、スイス、オーストリア、この選択への改正は、男女平等、ジェンダー平等への表れではありませんか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
委員御指摘のドイツ、タイ、スイス、オーストリアの四か国におきましては、いずれも二〇一三年までに夫婦別氏を選択することが可能とされているものと承知をしております。
○仁比聡平君 なぜかと聞いても答えられない。これが法制審答申から三十年議論してきた政府の姿ですか。家父長制的な観念を拭い去って、きちんと議論することが大事だと思います。
法務大臣、この国会で与野党超えてそうした法案をしっかりと整えて、しっかり議論して、この国会で別姓の実現、これ実現すべきじゃありませんか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 家族というものの在り方、あるいは家族についてどう考えるのか、氏というものについてどう考えるのか、これはまさに国民の皆様方の間でも様々なこれは見方、御意見がある状況だと思います。ただ、同時に、現状の氏の在り方で、現行制度のままで解決が困難な課題がある。このことについては私どもとしても十分認識をしているところであります。
まさにそういった中で、それをどのように解決をしていくのか。様々なそれぞれのお立場から様々なそういった御見解がある状況の中にあって、我々としては、やはり、国民から選ばれた、そうした民意を代表する皆様方の立法府の間で、それぞれの立場の間でしっかりと御議論を深めていただき、そのことをしっかりと我々としては見ながら判断もしていきたいと思いますし、また同時に、そういった意味での情報提供もしっかりとしていきたいと考えております。
○仁比聡平君 いかにも慎重な、残念な姿勢なんですけれども、お配りしている資料に、結婚したら彼女が自分のものになったというDV加害者の告白の調査があります。なぜそんな特権意識を持つかと。それは、自分と同じ姓になったことが大きく影響していると思う。妻が姓を変えることで、僕の家の家風、しきたり、習慣などに合わせてくれるはずだと期待してしまったと。
やっぱり、こういう家父長制的な感覚、観念というのは、これは乗り越えていかなきゃいけないでしょう。これは与党、野党関係ない。自民党の皆さんだってそう思われるでしょう。だから、こういう議論をしっかりやって、選択的別姓の実現、是非とも図るべきだということを強く求めまして、質問を終わります。
○委員長(鶴保庸介君) 以上で仁比聡平君の質疑は終了いたしました。(拍手)