○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日、ここまでの質疑を伺っておりまして、改めて、我が国の歴史と民主主義の重要問題である部落問題に関わる法案をこうして審議をすることになったと、極めて重い責任を負っているこの法務委員会が、部落問題とは何か、その歴史と到達点、そして部落問題の真の解決のありようとそこへの道筋について、まさに真剣に十分に学び、徹底した審議を尽くさなければならない、間違っても採決ありきの強行などあり得ないということを改めて確認をしたいと思うんです。その上で、日本共産党は本法案の断固廃案を求めるものです。

法案六条は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するためとして国に部落差別の実態に係る調査を行うことを義務付け、地方公共団体の協力を得てとして地方公共団体の関与を規定しようとしているわけです。今日はこの点について、提案者及び大臣、政府にお尋ねをしたいと思います。

こうして規定をしながら、提案者は、衆議院の委員会で何度聞かれても、何をどのように調査をするのかについて、実際には我々がふだんの政治活動においても実態をよく肌で分かっているように実はもっともっと多いんじゃないのか、もっと詳しく現実を受け止める、そういう調査が必要という趣旨などと曖昧に漠然と言うだけで、調査の対象、調査や評価の体制、調査項目、対象地域や規模などについて全く答弁をしようとしておられません。

提案者は法案を理念法だとおっしゃいますが、国や自治体が行う実態調査それ自体が重大なプライバシー侵害や新たな差別を生む要因になりかねないことは、前回、十一月二十二日の質疑において金田法務大臣もお認めになられたことだと思うんですね。

そこで、現に、平成二十三年、二〇一一年度に全国隣保館協議会、全隣協によって行われた実態調査についてお尋ねしたいと思うんです。

この隣保館の調査に対して、全国地域人権運動総連合、人権連が厳しく反対をするとともに、全国の多くの自治体から苦慮や困惑の声が寄せられました。

提案者に伺いますが、今回の法案を作る上で、こうした、つまりこの二〇一一年の実態調査や、過去幾つも実態調査ありますが、そうした過去の実態調査に対する抗議や批判の声、それらによって重大な問題点を認識した政府がそうした実態調査をやめてきた経緯、歴史を検討、吟味されましたか。

○衆議院議員(若狭勝君) 先生、委員御指摘の調査、隣保館の調査というのは、平成二十三年秋、全国の隣保館に対して調査票を郵送するということで行われたものであり、旧同和対策事業対象地区の住民についての福祉関連課題や生活実態の調査というふうに承知しておりますが、そういうこともいろいろ含めて今回提案をさせていただいたという次第です。

委員御指摘のように、断固廃案にすべきだというお話でございましたが、本日の午前からの審議、いろいろと多角的にしていただきまして非常に有り難いというふうに思っているところでございますが、今回、我々提案者として考えたことというのは、やはり法律というのは、ある意味、今の情報化の進展に伴ってインターネットが非常に大きな力を占めてきていると、そしてそのインターネットの上においてもいわゆる部落差別を助長するような傾向が今生まれてきているというふうに我々としては認識しまして、今ここできちんとした、理念法であってもそうした火種というのをきちんと抑えておかないと、それこそ手に負えないような状態が今後インターネット上で繰り広げられるというような危惧感が非常にあります。

その意味においては、法律というのは、そうした事態をあらかじめ想定しながらそれに対処するというような下で法律が作られる、制定されるということがあろうかというふうに私は承知していまして、その意味合いにおいて今回こうした提案をさせていただいた次第でございます。

○仁比聡平君 今の御答弁で、二つですけれども、まず、私が示した二〇一一年の全国隣保館協議会による調査のような、これは調査を行うという御答弁だったんだと今ちょっと受け止めましたけれども、それでよろしいですか。

○衆議院議員(若狭勝君) 行うというよりも、そのようないろんな調査がこれまで行われてきたということについては承知しておりますという答弁でございました。

○仁比聡平君 どのような調査が行われているのかについてちょっと先に伺いますけれども、先ほど、何か郵送で隣保館に尋ねただけであるかのような、そんな御答弁ぶりでしたけれども、とんでもありませんよね。

全国の隣保館が、市町村を始めとした行政が持っているセンシティブなデータ、デリケートなデータを収集し、それを調査をして、これを整理を一定した上で全国隣保館協議会に送るわけです。そういう調査であって、その中身、例えば調査項目は、生活保護受給世帯の状況や障害者手帳の所持数、その種別や等級、あるいは中学校卒業者と、進学等の状況ということで、つまり高卒、進学率などのデリケートなデータを行政から取って調査するというわけですよね。

そして、その対象は、隣保館が事業対象とする地域住民及び周辺地域住民の生活実態把握であるということで、当該市町村民も含めた三区分のデータ収集を求めている。ここに、地域住民というのは同和対策事業対象地区の指定を受けていた地域の住民のことであり、周辺地域住民というのは地域住民が主に通う小学校区住民なわけですね。

お調べになったかもしれませんが、全隣協はこの調査に当たって、回収は一〇〇%を目指しますので、全隣保館の協力を要請しますと、隣保館長とともに関係市町村長に対して通知を行っています。つまり、日本中の隣保館関係全住民、旧同和地区関係全住民のプライバシーに係る事柄を調査するというわけです。ですから、人権連から、地区指定は失効している、地区住民をどのように把握するのか、調査には属人に関わる項目がある、属人の特定は部落民暴きであり、個人のプライバシーを侵害する、進学率調査は文科省でさえ部落の児童生徒を特定することは困難としてやめた経緯がある、こうした経緯を無視するのか、そして来年度のアンケート調査も行う予定か、どのように実施するのかなどの厳しい反対、抗議の声と質問が全隣協にも向けられたわけですね。

こうした声に対して、全隣協の二〇一二年の一月十一日付けのQアンドAというのがあります。関係市町村長と隣保館長に宛てられたものですが、ここの問い二の(三)、特別措置法が失効しているのに地域住民のデータを出すことについての考え方を聞きたい。問い三の(一)、地域住民というのを同和対策事業対象地区の指定を受けていた地域の住民として行政データを収集することは困難であるため、周辺地域住民(小学校区)と市町村全体の回答だけでもいいのかといった問合せ項目があるわけですね。

厚労省に伺いますが、これは、つまり全国の自治体からこうした困惑や疑問、そして批判があったことの表れだと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(中井川誠君) お答え申し上げます。

厚労省といたしましては、本事業はある意味では補助事業という形で、実施主体は一社会福祉法人でございます。そういうこともございますので、当時自治体から具体的な批判があったかについては厚労省としては確認ができておりません。

以上でございます。

○仁比聡平君 そのQアンドAの冒頭には、数々の質問が寄せられておりますがというふうに書いてあって、今私がお尋ねしていることは明らかなんですよ。そもそも、厚労省、何だかお客さんのような言い方するけれども、費用は全額国庫で出しているんですよ。一社会福祉法人がとおっしゃるけれども、一社会福祉法人が全国の全旧同和地区関係住民のプライバシーの実態調査を全て一手に手にすることができる。大きな異論があり自治体は困惑しているのに、一体それどういうことですか。

その御答弁なので、先に伺いますけれども、二〇一三年の一月に、この実態調査について全国人権連と厚労省地域福祉課の交渉が行われています。ここで、調査票は問題があり過ぎる、旧同和地区住民と市民を分け隔てし、生活保護者や障害者のプライバシーを侵害するという厳しい抗議が上がりましたが、そのときに課は、直接省として関わっていない、オブザーバーとしての関与だと曖昧な答弁に終始したと聞きますが、これは事実ですか。

○政府参考人(中井川誠君) お答え申し上げます。

御指摘の交渉におきまして、当省の担当者が、本実態調査は国の補助事業であり、国が直接行っているものではなく、また強制的に行わせているものでもない旨述べたということは承知しております。この本実態調査は、ただ、先生御指摘のとおり、第三者から成る委員会が設置されまして、そこで実態調査の基本実施設計を決めたわけでございますが、そこに当省担当者がオブザーバーとして参加している事実はございます。

ただ、このいわゆる調査研究事業でございますが、この事業の効果的実施の観点から、実施主体の求めがあれば厚労省がオブザーバーとして参加をすることは、本事業に限らず、これはあることでございまして、その際は、あくまでも求められれば御助言申し上げるという立場でございます。

○仁比聡平君 いや、つまり、国が後ろ盾になって行っているから全国の市区町村がそうやって実態調査のデータを出すわけでしょう。そういう仕組みでつい五年前にそういう調査が行われているということですよ。そこに対して多くの関係自治体が、旧同和地区住民を対象者として抽出する調査はできないと、無理だということを声を上げた。ところが、全隣協はあくまで三区分、つまり旧同和地区の住民を抽出してデータを収集してくださいと答えている。これに対して提案者は、先ほど、そうした調査も含めてというようなお話になるのかどうかよく分からない、どう考えるんですか。

○衆議院議員(若狭勝君) 仁比委員が御指摘のこととしては、隣保館に対してそうしたいろんな旧同和地区の対象者の調査等が行われたということで、今回の法案においても六条において実態調査というのがあるので、場合によってはそういうような、同じようなことが行われるのではないかという懸念の下で御質問をいただいているというふうに承知しておりますが、本法案は、あくまで、そうした対象となる個人とか地域、いわゆる旧同和地区を特定した上で、その中の個人とか地区等々について実態調査をするということは全く考えておりませんので、そういう懸念の下で私どもはこの法案を提案したわけではございません。

○仁比聡平君 法案でも同様のことはとおっしゃったので、ちょっと、それだったらば確認をしたいんですけれども、私が申し上げているのは、つまり、旧同和特別対策の対象地域として指定をされていた、そうした地域の住民を抽出して行うという、これはこの法案ではやらないんだということですね。

○衆議院議員(若狭勝君) 結論から申し上げますと、この法案の下で実態調査を行うというのは、そうした旧同和地区を特定した上で、そこの中の個人の人などを特定した上での調査というのは、全く行う予定ではございません。

○仁比聡平君 予定ではございませんというのがよく分からないんですが、今おっしゃることは法文からは全く読み取れませんが。

逆に、提案者は、部落差別とは何かという定義を置いておられないんだが、その部落差別の定義について、繰り返し、法律上の定義を置かずとも、部落の出身であることを理由にした差別という意味で明解である、行政においても一義的に明確に理解できるものとして、あえて定義という格好で限定することは適切でないとまでおっしゃっているんですね。この部落の出身であることを理由にした差別という言葉は、部落解放同盟綱領が掲げる部落民の定義と私は同じ意味だと思います。解同の綱領には、「部落民とは、歴史的・社会的に形成された被差別部落に現在居住しているかあるいは過去に居住していたという事実などによって、部落差別をうける可能性をもつ人の総称である。」というふうにありますが、これは、部落の出身であることを理由にした差別という言葉と論理的には等しいと私思うんですね。そうすると、何らかの不利益が部落の出身であることを理由にした差別かどうかということが問題になるときに、おのずから、部落出身者を抽出して、あなたは出身者ですが、差別を受けたことがありませんか、そうした論理の調査ということを必要とするんじゃないかと思うんですが、そうではないんですか。

○衆議院議員(若狭勝君) 本法案の六条の実態調査というのは、あくまで、部落差別の解消に関する施策を実施する、それに資するためにどういう相談体制の充実などをすれば一番効果的かとか、そういった面で、一番その施策を、実施に一番効果的なのはどういうようなものかというのを知るための調査というような前提で法案を作っておりますので、委員御指摘の心配、懸念のような、本法案において、御指摘の、部落、一部の部落の地区のところにおいてその中にいる対象者を一部切り出してそこの調査を行うということを考えているものでもなく、その必要性もないという前提で法案を作っております。

○仁比聡平君 意味がよく分からないんですが、旧対象地域に住んでいる人を一部切り出すというのがまたよく分からないんですけれども。

解同の綱領が言っている部落民の定義も、それから繰り返し発議者がおっしゃっている部落の出身であることによる差別というものも、その対象地域とかつて指定されていたとか、あるいはそこの出身であると。

出身というのは、繰り返しのようになりますけど、そこで生まれ育ったとか、現在住んでいるとか、過去住んでいたとか、一度も住んだことはないんだけれども親がその地域に過去住んでいたとか、おじいちゃんやおばあちゃんがその地域に住んでいたことがあるとか、あるいは何代まで遡って血筋とか本籍だとかをたどるのかとか、出身という言葉にはそれだけ、まあ曖昧なというよりも、どこまでも広がっていくという概念だと思うんですよ。

それ以外に、皆さんがこの部落差別の定義、つまり、差別行為のその核心部分ということをおっしゃった言葉がないから、だから部落差別というのは何ですかと。その実態調査と書いてあるでしょう、それをなくすための施策と書いてあるでしょう。

先ほどの御議論の中には、例えば教育格差があるというお話がありました。その教育格差というものがその部落差別であるのかどうか。何しろ貧困格差は大きく広がっているわけですから、だからその下で、一般施策としてその進学の保障あるいは奨学金の充実、それが国政の重要課題ですよ。それを部落差別として捉えるのか、先ほど来御答弁の中にありますからね、そういう言葉が。

だったら、それを解決するための施策、その実情があるかどうかの実態調査ということになれば、部落の出身であることによる差別があるのかないかを何か尋ねていかないと困るんじゃないんですか。そういうふうにはならないんですか。

○衆議院議員(若狭勝君) 結論から申し上げますと、そうした個人とか地域を特定した上で調査を行うという必要もないというふうに考えた上での法案と考えております。

○仁比聡平君 必要がないというのがまた分からないんですけど。

だって、この法案のこの構成の中には、午前中、西田議員がちょっと触れられましたけど、例えばヘイトスピーチ解消法を徹底して議論しましたが、そこで中心課題になったのは定義規定ですね。例えば、過去の人権関連の法案について大議論になってきたのは、その定義や、あるいは判定を一体どうするのかということですよね。ところが、この法案には、一切定義規定もなければ何らの判定の手続もないんですよ。国が責務を負う、実態調査に関しては地方公共団体が協力をする、そして地域の実情に応じて地方公共団体も施策の義務を負うわけでしょう。なのに、何の定義もない。法案の骨格はそういうことですよ。

だったらば、今私が申し上げた、旧対象地域の住民を抽出して行わないということが法案のどこに書いてあるのかを教えてください。

○衆議院議員(若狭勝君) あくまで六条は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するためにその実態調査をするという前提で作られているものと承知していますので、考えておりますので、その視点から申せば、個人とか地域を特定した上で、先生、委員御懸念のような調査が行われるという必要性もなければ、その可能性、実態もないという前提で法案を作っております。

○仁比聡平君 いや、分からないですね。だって、自分たちが肌で感じるような差別があるはずだ、だけれども、みんなが声を上げれてないはずだ、何があるかを調査しましょうというのが皆さんの御答弁じゃないですか、スタンスとして。だから、これをどうやって調査していくのかと聞いているのに、今のようなお話になるし、六条やあるいは法案で、今、若狭提案者がおっしゃるような形に絞れているとは絶対読めませんよ。だったら何が起こるかなんですよ。

先に法務省に聞きますが、今申し上げてきたように、発議者は、部落差別とは何かという定義に関して、部落の出身による差別である、それは分かっていることだと述べた上で、誰にとっても明らかだと述べた上で、行政においても一義的に明確に理解できると言っているんですが、これ、行政として一義的に明確に理解できるのか。できるのであれば、部落というのは何を指して、出身者というのはどこまでを言うのか、明確に御答弁いただきたいと思います。

○政府参考人(萩本修君) 本法律案は、議員立法として国会に提出され、現在審議中のものですので、法務省としてのお答えは差し控えたいと思います。

他の答弁で繰り返し申し上げていますとおり、法務省の人権擁護機関におきましては、人権啓発活動、調査・救済活動を行うに当たりまして同和問題という用語を用いております。この提案されております本法律案における部落差別という用語は、同和問題に関する差別を念頭に置いているものと私どもとしては理解をしております。

○仁比聡平君 つまり、答えられないということなんですよ、法務省は。

あなた方は、提案者は、一義的に明確に行政も理解すると言うけれども、法案で、あれでしょう、どこかの議論に、実態調査は法務省が頑張るでしょうみたいな御答弁もありましたけど、その法務省が今のように述べているわけですよ。こうして定義規定を置かずに解同綱領の部落民定義と同様の部落差別の核心部分についての発言をされながら出されている法案は、結局、部落民以外は全て差別者だとして、被差別者が差別者の行った事実及びその差別性の有無を確定し、差別の本質を明らかにするという特異な解同の運動論によって行政の主体性が奪われる危険が私はあると思うんです。

だって、何が差別かが法律上確定されていないわけですから、皆さんも述べられないわけですから。この参議院に来て、この審議になって、何にも明らかにできないわけでしょう。だったらば、これが差別じゃないかと、確認・糾弾路線まで行き着いた、あるいは八鹿高校事件にまで行き着いた確認・糾弾をてこにした圧力で迫られたら、国や地方公共団体だって不公正、乱脈な同和行政に至った歴史の痛苦の教訓、これが再びよみがえるということだってあり得るじゃないですか。

現に厚労省も、隣保館の事業、あの調査の事業、これ、私たちオブザーバーですといって何がやられたってよく分かりませんという、そういうスタンスですよね。そんな実態調査を強く要望してきたのは部落解放同盟です。

この事業が採択をされる半年以上も前に、機関紙解放新聞の二〇一一年四月十八日号ですけれども、解同中央生活労働運動部の名前で、厚労省同和問題実態調査の意義と成功のポイントという大きな論文といいますか、方針が高々と掲げられているわけです。ここに何と書いてあるかと。二〇一一年ですから人権侵害救済法が問題になっていた頃ですが、人権侵害救済法制定実現のための立法事実の収集にも大いに役立つことが期待できる、新しい運動や要求を組織できるし、同盟員の拡大にも役立てることができると述べられているわけです。だから、解同は当時、政府や地方公共団体にその実施を迫ってきました。これに対して高知県は、二〇一〇年の十二月、法の失効後は地域や人を特定せずに行政課題ごとに施策を実施していく、したがって、施策ニーズを把握するために調査が必要な場合には行政課題ごとに行うといって、この解同の要求を拒否しているんですね。私、立派な態度だと思いますよ。これが、二〇〇二年に国の特別対策を終了したときに、当時の総務大臣の談話があります。劣悪な生活環境が差別を再生産するような状況は今や大きく改善されたとの認識に立って、これからは一般施策としてみんな行っていきましょうという努力をしているわけですね。

我々は何もやってこなかったんじゃないですよ。先ほど来から、時間がたてば解決するなんていう、そんな論があたかも強くあるような言いぶりをされるけれども、そうではないでしょう。部落差別をなくし、その根絶をしていくために、なくしていくためにみんなが努力をしてきた、行政だっていろんな努力をしてきたわけですよ。ところが、この法案の提案に当たって、そうした自治体の全国の意見を提案者は全く聞いておりません。ですから、岡山県は、最近の全国人権連との話合いにおいて、現在県内に同和地区とか同和関係者というのはいない、分からないとしか言いようがない、そう答えています。

だったら、こういう定義さえ置かずに、実態調査の中身もよく分からない、法律でどこに持っていかれるか分からない、法律を足掛かりにしてどこに持っていかれるか分からないと、こういうような中身の法案で自治体に責務を課そうというのは私はとんでもないと思うんですけれども、時間が来ましたから、この一問だけ今日は聞きたいと思います。

○衆議院議員(宮崎政久君) ありがとうございます。

今日は定義についての御質疑をいただいたわけでありますが、繰り返しになりますけれども、私どもはこの部落差別、これ長い歴史の中で育まれてきて、様々、各委員御指摘のような闘いのある中で今この社会が築かれている、そういった歴史的な経緯を踏まえたら、部落差別というのはあえて定義を置かずとも私は一義的に明確であるというふうに理解をしているものでありまして、それをあえて言えば、部落の出身であることを理由とした不合理な取扱い、差別であるというふうに考えているところでございます。

これは、特定の団体の定義を持ったということではなくて、一義的に見られるようなものをこういった形で定めていく。そして、先ほどヘイトスピーチのお話もありましたけれども、ヘイトスピーチのように新しく出てきたものと、私どもは、部落差別というのは、この経てきた経緯が違うというふうに考えておりまして、この部分については理解をしていただけるものと考えております。

また、調査を始めとする施策でありますけれども、これは基本理念の中で、そもそもがこの法案において行うべき施策というものは部落差別のない社会の実現をすることを旨として行うものでありまして、例えば特定の地域であるとか特定の一定の人たちを取り出した上で何らかの調査をするということを予定しているものではなくて、あくまでもこの本法案に関する施策の実施のために必要な限りにおいてやるものでありまして、特定の者や特定の地域を切り出すということを予定しているものではないということを説明しているものでございます。

○仁比聡平君 全然分かりませんが、今日は終わります。