○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 まず大臣に、戸籍についての基本的な捉え方についてお尋ねをいたしますが、これまでも質問がありましたけれども、戸籍というのは個人の出自あるいは身分関係のあらゆる情報の集積でありまして、だからこそプライバシーの塊なんですね。これが不当に取得されたり偽装されたりするという危険性があるからこそ、例えば平成十九年の戸籍法改正で公開制度を見直しました。また、戸籍の記載の真実性の担保のために幾つかの改定もあって、そうした取組をしてきた根本には、戦前の家制度、あるいは先ほど壬申戸籍のお話もありましたけれども、そうした時代ではなくて、日本国憲法の下で戸籍と家族の在り方というのは根本的に転換をされた。だから、憲法十三条、二十四条、こうした新しい憲法に基づいてその在り方というのは考えられなければならないんじゃないか。
 戸籍をどうするか、どのように扱うかというのは、これ、憲法の要請なのではないかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(山下貴司君) お答えいたします。
 まさに委員御指摘のとおり、戸籍に関する情報には親族的身分関係などプライバシーに関わる情報が含まれていること、戸籍制度においてプライバシーの保護は極めて重要であることは、もう御指摘のとおりでございます。また、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由については、憲法上認められた人権であると承知しております。
 その上で、本法律案においても、このような戸籍情報の特質に鑑み、新たなシステムに関する秘密についての安全保護措置を講ずることを義務付けるなど、様々な法制上の保護措置を講ずることにしているというところでございます。
○仁比聡平君 そうした戸籍の実務が、コンピューター化というのがこれどんどん進んできまして、これが近年、しかも、そのシステムを担っているIT企業というのはほぼ独占と言っていいぐらいの寡占化が進んでいるんですよね。全国の市区町村の戸籍実務の九五%、もうちょっと最近進んでいるかもしれませんが、そうした戸籍のコンピューターシステムというのが特定のIT企業によって寡占化されてきましたが、そうした下で、偽装届けだとか、あるいは先ほど来お話のある不正取得、こうしたものを第三者請求だったりあるいは身分関係の届出だったりということで行ってくる者に対して、戸籍の真実性や不正取得を防止するために頑張ってきたのが市区町村の戸籍実務担当者だと思います。
 コンピューター化が進む下で、これ民間委託して効率化すればいいではないかという動きが全国の自治体で進んできた中で、私、以前、随分この委員会で、民間業者に本当に委ねていいんですかという議論をさせていただいて、その到達点として、平成二十七年三月三十一日の戸籍事務を民間事業者に委託することが可能な業務の範囲についてという事務連絡が発せられています。申し上げたような市区町村の実務職員を担い手としたこうした取組、それからこの事務連絡というのは、今回の改正のような考え方でいささかも変わってはならないと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 現在の戸籍実務は、必要な法令に習熟し、十分な執務能力を有する市町村の職員によって円滑に遂行されてきているものと認識しております。
 今回の法律案は、現行の戸籍法の枠組みについて見直しを行うものではございませんで、この法改正がされた後におきましても、戸籍の届出の受理、不受理や証明書の交付、不交付を適正に判断するためには、高い執務能力を有する市町村職員によって戸籍事務が遂行されることの重要性、これについては何ら変わることはございません。
 したがいまして、市町村職員の執務能力が低下することのないよう、職員向けの研修を充実させるなど十分な対策を講ずる必要があることにつきましても、従来の法務省としての考えについては何ら変わることはないというふうに考えております。
○仁比聡平君 とても大事な答弁なんですよね。
 戸籍実務の現場というのは、これは、これまで以上に一層実務職員の担い手によって頑張ってもらわなきゃいけないと思うんですけれども、本法案は、そうした戸籍の現場とは何だか全く違うところから改正の話が来たんじゃないのかと。あの未来投資会議という、安倍総理がトップにあって、そこでのトップダウンというので、今申し上げてきたようなコンピューター化そのものが駄目だとは私は全然言いません、もちろん効率性は必要ですけれども、それを大IT企業が独占、寡占しているというような状況の下で、今度は国が一元的に蓄積、管理するということになるわけですよね。
 お手元に、これまでの戸籍副本のデータシステムを構築をされてきた根拠というのは何なんだろうと思ってお尋ねをしましたら、施行規則の七十五条、七十五条の二だというわけですね。これ、元々この副本のデータシステム自体が全ての国民のプライバシー情報、戸籍情報を蓄積するというものだったわけですから、これを法律事項にして国会で審議をすることなくこの政省令で行ってきたということ自体、私は甚だ疑問だと思うんですけれども、この副本データシステムを土台にして、今度は百十八条の言う電子情報処理組織というのをつくるわけです。この電子情報処理組織というものは、これ局長、巨大コンピューターで全ての国民のあらゆる身分情報を国が一元的に蓄積し管理するということになります。百二十一条で作成すると言っている戸籍関係情報というのは、これ作成すると言っているのは、蓄積した情報を統合処理する、そのことによって行うと。ですから、そうしたシステムということになるんじゃありませんか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 このマイナンバー制度に基づく情報連携のために法務大臣が新たに作成する戸籍関係情報でございますが、磁気ディスクをもって調製された戸籍又は除かれた戸籍の副本に記録されている情報を用いて作成するものでございまして、これらの戸籍又は除籍の副本に記録されている情報は、現在でも法務大臣が保管、管理しているものでございます。
○仁比聡平君 現在もデータベースは保管、管理している。しかし、現在は、七十五条にあるように、市区町村から管轄法務局に電気通信回線を通じて送信しなければならないとしているだけであって、逆のルートはないわけですね。それから、蓄積したデータベースから何か別の提供する、あるいは利用する情報を統合して分析して作成をするというものは、ここにももちろん書かれていないわけです。
 今度の法案は、国が例えば名寄せしたり検索したりすることによって戸籍情報から新たな利用すべき情報を作成する、そういう仕組みであって、マイナンバーとひも付けて提供するという情報ももちろんあるでしょう。けれども、その提供する情報を作成できる以上、コンピューターシステムの能力としては、あらゆる情報を国民が知らないうちに作成するということが可能になるんじゃありませんか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 新たなシステムをつくることによりまして、その副本からこのデータを、副本のデータを利用して戸籍関係情報とつくるわけですが、そういったようなものから、例えば名寄せですとか、あるいはそういったような機能、検索機能を付けるかどうかは、これは、そういう機能を設ければ当然にできるということではないと思います。
 今回のこのシステムは、マイナンバー制度を利用した情報連携ですとか、あるいは戸籍内事務連携に必要な事務を行うために新たなシステムを構築するものでございまして、そういったような名寄せですとか検索といったような機能というものを設けるということは考えていないというものでございます。
○仁比聡平君 考えていないということなので、絶対につくらないという保証を私は是非求めたいと思うんです。今はシステムの中身は分からないわけで、どんなものがつくられるかというのはこれからの話ということになってしまうし、それは巨大IT企業の手によってつくられるということになるわけです。
 一たびそうやって蓄積された情報が不正に閲覧され、取得され、漏えいされてしまったというときの危険というのは、先ほど局長が答弁でおっしゃっていたような、事後の処罰だとか不法行為法による規制だとか、あるいは懲戒だとか、そういうものでは取り返しの付かない甚大なものになるわけですね。
 一つ確認をしますけれども、このシステムが動き始めたら、全国の市区町村の戸籍実務担当者、それから民間委託を受けているところであればその受託業者の社員、これ、全国あらゆる戸籍情報にアクセスすることができるようになるし、これが万が一不正に取得され、漏えいされるということになったら、これまでは市区町村管理ですから市区町村の範囲なんですよね、それでも。これ全国版ということになるんじゃありませんか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 まず、ちょっと先ほど検索機能のことを申し上げましたけれども、戸籍の事務に必要な範囲での検索機能といいますものは、これは当然にできるようにはしたいと思っておりますけれども、御指摘のその閲覧の範囲につきましては、ここでやはり戸籍の事務に必要ということになりますれば、当該市区町村以外の戸籍情報にも接することはできるわけでございます。
 ただ、現行法の下でも、アクセス記録の保存など、職員が不正にシステムを使用して戸籍に関する情報を参照するような行為を防止するために必要な措置が講じられているところでございますが、新しいシステムにおきましては、さらに不正閲覧の疑いがある場合には、警告表示をして、それを法務省において把握できるような対応等も取ることを予定しております。また、これに加えまして、これも事後のことではございますが、この法律案では、不正に取得された戸籍情報を不当に第三者に提供するなどした者に対して一年以下の懲役を含む罰則を設けるなどの法制上の保護措置を講ずることとしております。
 このようなことから、新しいシステムについては、戸籍情報の不当閲覧等に対する抑止力を高めているところでございます。
○仁比聡平君 これまで、そういう事後の規制だとか処罰だとか抑止をしようという取組はあったんですよ。けれども、現実に不正取得や漏えいというのは起こっているんですね。そこを重大に受け止めていただきたいと思います。
 大臣に、ちょっと今日、一問お尋ねしたいことがあります。
 前回、おとといのここの委員会で厚労省が、東電の廃炉作業の外国人就労について極めて慎重な検討を求めるという通達を出されたと。そうしたら、昨日、東電が見送りという表明をしたということなんですが、今朝の朝日新聞の報道の中では、相変わらずといいますか、特定技能については法務省に確認し、受入れ可能と判断したという認識を東電は示しているようなんですよ。
 これ、繰り返し申し上げてきましたけれども、もう見送りではなくて、こうした受入れ方針そのものの撤回を求めるべきではありませんか。
○国務大臣(山下貴司君) 御指摘の特定技能外国人を原発構内の放射線業務や各種工事等に従事させることについて安全性の確保を徹底する必要があるとして、厚生労働省が東京電力に対して慎重な検討と検討結果の報告を求めたことを受けて、昨日、東京電力が、当面の間、福島第一原発への特定技能外国人の受入れを行わない旨を表明したということは承知しております。
 そういった上で、一般論として申し上げれば、これはもうあくまで一般論でございますが、特定技能外国人の受入れの可否というのは、在留諸申請に係る活動内容が特定技能として認められる分野、業務に該当するかどうかなど所定の要件を関係省庁に確認しつつ、個々の事案ごとに個別に審査、判断するものであります。
 その上で、仮に福島第一原発での作業に従事しようとする外国人について特定技能に係る在留諸申請があった場合には、先ほど申し上げた厚生労働省の通知や東京電力の発表を踏まえ、労働安全衛生上の措置が適切に講じられていること等について厚生労働省や東京電力にしっかりと確認するなどしながら、適切に審査を行ってまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 適切に審査を行ってまいりたいなんて言うからこんな話になってくるんですよ。作業に必要な日本語能力の基準も持っていないし、それを確かめるための試験の制度も持っていないと全部の省庁が言っているんですから、受入れなんて不可能だということを改めて強く申し上げまして、質問を終わります。

○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、戸籍法改正案に反対の討論を行います。
 その最大の理由は、国が、電子情報処理組織、すなわち巨大コンピューターシステムで全ての国民のあらゆる戸籍情報を一元的に蓄積、管理すること自体が、国民のプライバシー権、情報コントロール権を侵害する危険は看過できないからです。
 戸籍は、個人の出自、身分関係のあらゆるプライバシー情報の塊であり、その在り方は、憲法十三条、二十四条に基づかなければなりません。しかし、現実には、不正取得や偽装の危険にさらされてきました。これを防ぐために、平成十九年改正による公開制度見直しや戸籍記載の真実性担保、あるいは市区町村の戸籍事務担当者の格別の努力が行われてきました。ところが、本法案は、未来投資会議のトップダウンで、これまでの議論を根底から覆しかねないものです。
 本法案により、国は、国民の戸籍情報を国民が知らないうちに名寄せ、検索し、統合処理できるようになり得ます。それはマイナンバーによって利用しようとする戸籍関係情報にとどまらない危険があります。新たに戸籍情報連携システムという全国単一のネットワークが構築され、このシステムを受託するのは特定のIT大企業です。これまで戸籍の情報漏えい等のリスクを負うのは市区町村の業務内においてでしたが、全ての市区町村の戸籍担当者、戸籍の民間委託業者も全国全ての戸籍情報を閲覧できるようになり、不当な閲覧、取得、漏えいの危険は全国レベルに飛躍的に拡大します。その被害は、一たび起これば事後処罰では抑止できない、取り返しの付かないものとなります。マイナンバーとひも付けられることによって、情報漏えい等のリスクは一層高くなります。
 以上、反対の理由を述べて、討論を終わります。