(4月18日 裁判所職員定員法)

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

私は、裁判所職員の定員を抜本的に増員すべきだと一貫して求めてまいりました。

最高裁は、政府の定員合理化計画に協力するのだということで、二%掛ける五年、つまり一〇%、この定員削減を現に行ってまいりまして、今日取り上げますのは、資料一枚目にお配りいたしましたが、裁判所の運転手さんが一体どんな状況になっているかということなんです。少年事件を取り扱っている家庭裁判所の所在地ごとに自動車運転手さんの配置状況がどうなっているか、最高裁に資料をいただきました。

御覧のとおり、これ全国で百五十二庁あるんですが、うち半数に上る七十二庁において運転手の配置がなくなっているんですね。それはこの四年、昨年までの四年間の間に五十一人も減らしてしまっているからなんですよ。その結果、一人しかいないという庁もたくさんありますが、そこは、所長裁判官の送迎などで精いっぱいということで、今日、先ほど伊藤孝江議員から家庭裁判所調査官の家庭訪問を始めとした出張調査の重要性、専門性というお話がありましたが、それは、もう官用車はないということで公共交通機関で行かなきゃいけない。そうすると、地方ではバス停で、田んぼの中の、真ん中の、一時間以上も時間を潰さなきゃいけないと、それが現実なんですよね、今。そういう実態ありますよね、最高裁。

○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) 官用車を使えない場合において、公共交通機関を家庭裁判所調査官等が利用しているというところは御指摘のとおりでございまして、なかなか公共交通機関が不便な場所におきましては、そういった待ち時間が生じているというような実態もある程度はあろうかと思います。

○仁比聡平君 ですから、本当に家庭裁判所の機能、これは地・高裁もそうですけれども、その機能を本当に果たしてもらおうと思ったら、必要な人員、予算というのは確保しなきゃいけないんですよ。

それで、家庭裁判所においては、少年を、押送と言いますけれども、運ぶということが、連れていくということがあります。非行少年が例えば逮捕をされたということであれば、身柄付きで家庭裁判所に全件送致をされてくるわけですね、在宅で審判に呼び出すということももちろんありますけれども。その際に、その少年の鑑別を行うことが必要であると、鑑別措置相当だという決定をした場合には、家庭裁判所の責任において少年鑑別所に送るというのが、少年法二十六条だったと思いますが、の規定なんですね。

その仕事は、従来、家庭裁判所の運転手さんが運転する車で行っていたわけですけれども、これがどんどん減員されて、実際にはなくなるわけですから、タクシーを使うということになって、まず地方ではそのタクシーの手配をすること自体が大変というような地域だってあるわけです。逃走防止のために職員を同乗させようということになれば、大型のタクシーということが手配できない、あるいは、少年とあるいはその家族と顔見知りというようなこともあり得て、プライバシー保護、あるいは少年の心情への配慮ということを考えたときに、これ、少年事件の扱い方がこんなことでいいはずがないというのが少年法二十六条の趣旨なんじゃないですか。このタクシー利用が、これ、最高裁、好ましいと思っていらっしゃるんですか。

○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。

少年事件における少年の護送事務につきましては、その性質あるいは各庁の実情を踏まえまして、御指摘のとおり、タクシーを利用する場合もございます。

各庁でタクシー業者と契約をした上でこれを行っているわけですが、その契約の際には契約業者に対してもちろん守秘義務を課しまして、また、契約の履行に際しては厳格な監督を行うことでその守秘義務の履行の徹底を図るといったことで、プライバシー保護の工夫をして適切に運用されるものと認識しております。

また、逃走防止という観点を考慮をしましても、必ずしもその裁判所職員である運転手を確保しなければならないというふうには考えておらないところでございます。

○仁比聡平君 いや、その少年の様子、その移動中の。例えば何時間も掛かるというような押送だってあるようです、全国で。そうすると、その時間中の車内でのその少年の様子、あるいは同乗している裁判所職員とのやり取りとか、あるいはやり取りがないとか、あるいは困難な事案で、少年が何か発語を始めるというようなことだってあり得るわけで、それは全部タクシーの運転手さん聞くわけですよ。契約上、プライバシー保護だとか守秘義務だとか課しているからといって、それでいいんですか。

これまでこうした職員のことを技能労務職員というふうに最高裁呼んでいらっしゃいますけれども、その削減は業務を効率化すると、外注化するということによって裁判所の業務には支障を来さないんだと答弁され続けてきましたけれども、もうこれ限界じゃないですか。

実際、例えばこの表を御覧いただければと思いますが、東京の立川支部、これ大きな裁判所ですけど、ここでも二人しかいないんですよ。この立川支部では、今申し上げている少年の押送は五人、六人を押送することもあって、マイクロバスを使ってこられたようですけれども。あと、二人というのは五十四歳と再任用の六十一歳の方で、このまま後補充がなかったらもう押送要員が確保できなくなる。それは、全国のこの一とか二とかになっているところは全部そうなるんですよ。このまま政府の定員削減計画に協力するんだといって、行(二)職員、技能労務職員の後補充はしないということを言い続けたら、そうしたらもう近い将来そうなるでしょう。

これ、今年度で政府の定員合理化計画の今期の計画は終わります。来年度、一体どうするのか。これ絶対作っちゃならないと、そんな目標を立てさせちゃいけないと私は思いますが、最高裁がこれに協力するというのはあってはならないんではありませんか。

○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) 平成三十二年度以降の政府の定員合理化計画につきましては、その内容もまだ不明でございまして、政府からの協力要請もされていないというところでございますので、現時点におきまして説明できる段階にはないというふうに考えております。

他方、国家公務員の定員をめぐる情勢の厳しさ、これは増しているという中で、引き続き裁判部の充実強化は図っていかなければいけないというところもございまして、そことの見合いも考えながら、国家の一機関として他の行政官庁と同様に事務の効率化等必要な内部努力を行っていく必要はあるかというふうに考えております。

○仁比聡平君 公務員の果たしている役割の重要性についてこそ、最高裁も政府も国民に訴えるべきです。そうやって予算確保すべきですよ。加えて、裁判部だけで裁判ができていると思ったら大きな大間違いですよ。それは裁判官のおごりです。この運転手さんたちも含めて裁判所職員が担っているからこそ公正な裁判ができるのであって、この限界をそのまま更に進めていくなんということは絶対に許されないと申し上げておきたいと思います。

続けて、そうした限界を超えた定数削減の下でお一人お一人の職員さんに掛かるストレスというのは、これは極めて重大なものがあって、長期病休九十日以上の方の数というのは、二〇一七年の八月末で九十二人だったのが、一八年の八月、一年後は百四十一人と大きく増えていて、およそ全職員の〇・六五%に当たるようです。このうち、精神行動障害の方が百七人に上ると。

私、六年前にこのテーマで質問をしたことがあるんですが、そのときも〇・六五%程度だったんですよ。つまり改善されていない。現場の感覚でいうと、もちろん復職される方もいるんだけれども、メンタルで倒れてしまう人が更に増えるという状況なんですよね。

その下で、資料二枚目に、労働安全衛生法の関係で、ストレスチェックと面接指導、それから集団分析、それを職場環境の改善のために活用するという厚生労働省の資料をお配りしましたが、このストレスチェックについて、まず最高裁、全司法労働組合に対しても、それから昨日、私に対しても、このストレスチェックの受検率については各裁判所ごとにどんなふうになっているかというのは把握していないと答弁をされました。これとんでもない話であって、受検率を個別裁判所、つまり職場ごとに把握していなければ、その集団的分析を職場の改善に生かすなんてあり得ないじゃないですか。これ、本当なんですか。

○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。

裁判所ごとの受検率については、把握はしてございます。ただ、裁判所におきましても、人事院の示されている指針と同様にストレスチェックの制度を効果的なものとするために全ての職員がストレスチェックを受検することが望ましいと考えているところでございまして、こういった環境づくりにつきましては、まず裁判所全体で行う必要があると考えておりますことから、裁判所ごとの受検率よりも裁判所全体の受検率を重視して取り組んでいるところでございます。

○仁比聡平君 裁判所全体の受検率って、日本中の受検率を重視するというのは、これ、ストレスチェックと集団的分析と職場環境改善に生かすというこの方針そのものを損なうんじゃないですか。

これ、厚生労働省、この制度の趣旨、私は、労使対等で準備をして、安心してストレスチェックを受けてセルフケアを行っていくために、これ実施者、医師や保健師などに実施してもらって、かつ、集団的分析を職場改善に生かすために、衛生委員会だったり職場単位で議論するというのがこれ趣旨なんだと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(椎葉茂樹君) ストレスチェックの制度の目的でございますけれども、労働者御自身のストレスへの気付きを促す一次予防を主な目的とするものでございます。また、委員御指摘のように、集団分析等からストレスの原因となる職場改善につなげるものという目的でございます。

○仁比聡平君 人事院にもおいでいただいていますけれども、各府省においては、九〇%以上のストレスチェック受検率という府省は幾つありますか。

○政府参考人(柴崎澄哉君) 平成二十九年度におきまして職員のストレスチェックの受検率が九〇%以上となっている府省庁は、三十九府省庁のうち二十府省庁でございます。

○仁比聡平君 つまり、取組によって、私、各府省、国家公務員全体においてのストレスというかメンタルヘルス問題というのは改善がそんなに進んでいるとは僕は思わないけれども、もっと抜本的にやらなきゃいけないと思うけれども、ともかく受検率は九〇%を超えてきているわけですよ。

最高裁、受検率、幾つですか。

○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 裁判所全体で平成三十年度で五五%でございます。

○仁比聡平君 受検率が五五%にとどまっているというのは、つまり、この健康安全の管理について最高裁の取組がどれだけ、ちょっと申し訳ないけど、時代遅れかということを物語っているんではありませんか。

各府省においては、健康安全管理委員会というのを職員の意見を聞くために必要な措置を講じなければならないという義務規定の必要な措置の一つとして掲げ、例えば厚生労働省なんかは労使対等の形で、オール厚労省版は使用者四人、労働者側六人、本省版では使用者側が四人で労働者側が三人という形で委員会を置いて取り組んでいるんですね。これ、最高裁もそうした取組を各裁判所ごとにやるべきじゃありませんか。

○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。

人事院の方で出されております通知におきましても、職員の意見を聞くための措置としては、委員会の設置のほか職場懇談会の開催等も例示されていると承知しているところでございますが、裁判所におきましては、裁判所職員健康安全管理規程に基づきまして、各裁判所において職員が参加する健康管理懇談会等を開催いたしまして、職員の健康管理に関する意見を聞いているところでございます。その結果を職員の健康の保持増進に関する取組に活用し、その成果も上がっているものと認識しております。

このような状況からいたしますと、裁判所において健康に関する委員会を設置するよりも、今後とも健康管理懇談会の充実、改善を通じて職員の意見を踏まえながら職員の健康管理に努めるということが重要と考えているところでございます。

○仁比聡平君 時間が来たから終わりますけれども、これまでやっていた取組では駄目なんだということが長期病休者の実態やストレスチェックの受検率によって明らかなのであって、集団分析結果を職場にちゃんと明らかにすることさえ私は多くの職場でされていないんだと思います。

最高裁がそうした態度を根本から改めるということを強く求めて、質問を終わります。