法務委員会 2019年4月16日

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日は、三月二十八日に法務省が公表いたしました技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームの調査・検討結果という報告について、大臣に基本点をただしておきたいと思います。

お手元に資料をお配りをいたしました。最初の二枚が法務省の概要ですけれども、この報告は、一般紙においては、例えば、失踪実習生七百二十一人に対し不正疑いとか、ずさん運用七百五十九人というふうに見出しで報じられているわけですね。

これは、対象とされた失踪技能実習生五千二百十八人のうち七百五十九人というのは、既に不正行為措置済みであったものも加えた数字ということなわけですが、これ五千二百十八人のうちの割合を計算すると、単純に言うと一四・五%ということになります。最低賃金違反は五十八人で、これは一・一%ということになります。

そもそもこの調査は、平成二十九年の失踪実習生に対する聴き取り、二千八百七十人の分のこの聴き取り票を野党が閲覧、分析をして、最低賃金違反はこれおよそ七割に上るではないかという厳しい指摘が国会内外の大きな焦点になる中で、大臣御自身が徹底した反面調査を行うと言われて取り組まれたものなんですよね。

これ、こうした概要を発表されたといいますか報告をされたのは、つまり、最低賃金違反は七割ではなかったんだと、そうおっしゃりたいわけですか。

○国務大臣(山下貴司君) このプロジェクトチームの調査・検討結果につきましては、これは反面調査を行うということをお約束したということについて、我々の可能な限りにおいて調査、検討した結果を公表させていただいたものでございます。

ですので、まず聴取票と今回の結果が異なる点については、これは原資料というものがやはり違っているのだろうと思います。というのは、最低賃金違反が約七割といった御指摘というのは、聴取票を閲覧した先生方において失踪技能実習生からの聴取票の記載を閲覧した結果として述べられているものと承知しておりますが、今回のプロジェクトチームの調査では、失踪技能実習生の供述内容をそのまま記録した聴取票によってではなく、可能な限り賃金台帳やタイムカードといった客観資料を入手して、控除額やそれを差し引いた後に実際に支払われていた賃金の額などを調査したものということでございます。その結果、最低賃金違反、又はその疑いのあることが判明したものが五十八人であったという結果を客観的にファクトとしてお示ししているというものでございます。

加えて、旧聴取票には例えば月額給与の項目がございましたけれども、これが額面賃金額と手取り賃金額のいずれを示すのかが必ずしも明らかではなかったと。また、労働時間の項目も、所定労働時間と実労働時間のいずれを指すのかなど明らかでないなどの一義的ではない聴取項目が存在したということでございます。

そうした反省も含めて、今回、新たな聴取票の様式に十分な聴取項目を設けるなどの改善策を講じることとしたというところでございます。

○仁比聡平君 今大臣が、客観資料を入手し、それらに基づいて、実際に払われた金額だとかあるいはファクトだとか、そうした御答弁というのは、私ちょっと到底納得がいかないですよね。

今日、具体的にただしたいと思いますが、そもそも原資料が違っていると、野党の分析とおっしゃるけれども、この報告書の公表前日に、私に法務省から説明がありました。恐らく他の会派の議員の皆さんにもあったと思いますけれども、そのときの概要には、最低賃金未満が七割といった状況は認められずという文章があったんですよね。これ、後にそこは削られたようですけれども。あるいは、資格外活動を立件された者の就労状況に関する調査結果からは、就労先において技能実習当時よりも高額の報酬を受領する者が八割近くに上ることなどが判明したことから、より待遇の良い就労先を確保できる可能性が失踪の誘因になっている側面がうかがわれるなどという、公表報告書にはない記述が当時あったわけです。より高い賃金を求めて失踪するんだと。

それで、大臣は、八七%でしたか、に上るという答弁を秋されましたけれども、そうした不心得な者たちだと。七割と、野党が最賃以下七割だというふうに指摘したのは、これは間違いだという形で幕引きを図ろうとする意図が先にありきの取りまとめをしようとされたのではないのか。私は重大な問題だと思うんですね。

可能な限りの調査でファクトを使うんだとおっしゃいましたけれども、そこでまず聞きますが、この調査実施状況の項目の③、④というふうにあるように、協力拒否、倒産、所在不明が、これ調査対象の実習実施機関ですけれども、これ合わせて三百八十三機関四百七十五人の失踪者の分があるわけですよね。これ、こうした事案こそ深刻な権利侵害が疑われるべきだと私は思います。だって、実習先の実体がないとか、あるいはもう倒産しているとか行方不明だとか、あるいはあるのに調査を拒否すると。こういうところほど疑って掛かるべきなのに、ここは違法行為の有無だとかの判断の対象にそもそもしておられないでしょう。

これ、法務省プロジェクトチームとしてはこれ今後これどう取り組んでいくんですか、この二つの件について。

○国務大臣(山下貴司君) 今回、失踪事案調査の対象実習実施機関等で技能実習生が在籍中の機関に対しては、これはもう外国人技能実習機構又は地方出入国在留管理局において、平成三十一年度末までに技能実習法ないし入管法に基づく実地検査等を行う方針でございます。もとより、委員御指摘の疑念も否定できず、今回調査拒否をした実習実施機関に対しては速やかに実地検査等を実施してまいりたいと考えております。

倒産、所在不明等につきましては、若干その対象自体が消滅あるいは不明であるという事情がございますが、協力を拒否した、調査拒否をしたところについては実地検査等を実施してまいりたいと考えております。

また、調査拒否などにより調査ができなかった機関から技能実習計画の認定申請や特定技能の在留資格に係る申請がなされた場合には、この外国技能実習機構や地方出入国在留管理局において、これは調査への対応姿勢を十分踏まえた慎重な審査を行う予定でございます。

○仁比聡平君 新たな実習申請があったら、これは慎重に審査というか、もうこれやめさせる、絶対駄目だというのが当たり前ですよ。

今後、速やかに実地検査を機構がやるという御答弁を今日初めてされましたけれども、速やかにって、これいつまでにやるんですか。これ、その結果、報告を国会にすべきじゃありませんか。

○国務大臣(山下貴司君) これは平成三十一年度末までにというふうに申し上げたところでございます。また、調査拒否をした実習実施機関に対して、これ機構が、これは機構においてノースケジュールでやっていただくわけでございますし、また私どもも可能な限り早急に実地検査等を実施してまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 いや、速やかに調査をすると言いながら、結局今年度中というみたいな話じゃないですか。この場の答弁だけできれいに格好付けようと思っても、これ徹底して追及をされますよ。

もう一つ、今回の調査の大問題だと私思いますが、この概要の(三)調査結果というところをよく委員の皆さん御覧ください。軽微な書類不備に係るものを除くとされていますね。長官、これ、軽微な書類不備除くって、これどれだけ除いたんですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 軽微な違反ということで除いたのは二千余りでございます。

○仁比聡平君 全体、五千二百十八人、四千二百八十の機関について、二千六十人分除いているじゃないですか、はなから。これ、書類不備について、資料の五枚目に報告書を抜粋をいたしましたが、二千六十人、千七百八十八機関なんですね。これ、書類不備には重大というのが二百二十二人分あって、軽微というのがその二千六十人あるというんですが、これどのような不備なんですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) まず、重大な書類の不備でございますけれども、実習実施機関にそもそも賃金台帳が備え付けられていないもの、又は保存期間の満了前に賃金台帳を廃棄したものなど、労働基準法令による書類の作成保存義務の履行において重大な不備があるおそれのものを指しています。

一方で、軽微な書類の不備等は、賃金台帳の必要的記載事項の一部に不記載が認められるなど、労働基準法令による書類の作成義務の履行において軽微な不備があるおそれのものを指しています。

○仁比聡平君 記載事項に不備があるというおっしゃり方しかしないんですが、お手元に、今お話しのあった使用者が義務付けられる法定帳簿というのはどんなものかということで資料の最後に労働基準監督署のホームページからお配りをいたしましたが、労基法百七条による労働者名簿、労基法百八条による賃金台帳、あるいは出勤簿などがあるわけですね。

これ、タイムカードなどもここに含まれることになるわけですが、これの不記載ということについてレクを受けましたら、例えば賃金の計算期間が書かれていないとか、所定内労働時間、恐らくそれに対応する基本給、それから残業時間と残業手当、出勤日数がそもそも書かれていないとか、休日出勤の日数や時間、したがって休日出勤手当が明らかになっていないとか、不記載というのはそういうことですね、局長。

○政府参考人(佐々木聖子君) いろいろな不記載ありましたけれども、今御指摘いただきましたようなところで、特に賃金計算期間の不記などが多かったです。

○仁比聡平君 いや、とんでもない話じゃないですか。それが軽微なんですか。

厚労省においでいただいていますが、この賃金台帳というのは三年の保存期間が罰則付きで義務付けられているものなわけですよ。今お話しのような賃金計算の基礎になるような事実関係というのがこれ帳簿に書かれていないというのは、これ重大な権利侵害がそもそも疑われる事実だと思います。使用者としてそれをきっちり書いて残していくというのはこれは極めて基本的なものなんですよね、義務なんですよね。

実際、そもそも調査対象になっているのは、失踪した実習生のうち、捕捉をされて聴き取りを行って、その中で明らかに違法がないとは認められない者ですよね。我々野党が分析した中で、七割が最賃違反じゃないかという実態がそこに書かれているところに立ち入っているわけでしょう。その賃金台帳に書かれるべきことが書かれていないということであれば、これは実習生、元実習生の言っていたとおりなんじゃないのか、賃金台帳の方が間違っているんじゃないのかと、あるいは虚偽なんではないのかと疑うのがむしろ当然だと私は思います。

ところが、これを、今回の調査においては、客観的資料である、さっき大臣もおっしゃいました。ということで信用して、で、問題ないと。この書類不備、軽微だとして、これ違法判断の対象にさえどうやらしておられないようにも思うんですが、厚労省、労基署が調査をするというときには、そんなやり方で調査を終わるというのはあり得ないと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(田中誠二君) 労働基準監督署が事業場の監督指導を行うに当たっての一般的な取扱いということでお答えをさせていただきますが、例えば賃金台帳に記載すべき賃金額や労働時間数などについて労働者の主張と使用者の主張にそごがある場合は、当該台帳の内容のみをもって法違反の有無を判断するのではなくて、タイムカード、日報などの労働時間の実態が記録された資料を見たり、現在就労している労働者からの聴取を行ったりすることにより、実際の労働時間数を把握した上で、本来支払われるべき賃金が適正に支払われているかどうかを確認し、法違反があった場合には是正を指導しているところでございます。

○仁比聡平君 いや、当然のことなんですよね。ところが、今回の調査は、実習機関の方、不正行為が疑われている方から聞いて、それでよしとしているんじゃないのかと。

抜粋資料の直接調査という報告書六ページのところに、実際実地調査に臨んで、賃金台帳やタイムカードなどの写しを入手するとともに、実習実施機関の役職員で事情を知る者から事情を聴取するという調査手法が書いてあります。加えて、現在も技能実習生がいる場合、その実習生から事情を聴取するということも行ったようなんですが、これは千五百五十機関のうち何件やったんですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 実地調査を実施した千五百五十五の実習実施機関のうち、調査場所に技能実習生が存在し、実習実施機関の協力が得られ実際に現役の実習生から事情を聴取できましたのは、今回取り急ぎ集計した速報値として申し上げますと、約半数の約八百六十機関となっています。

○仁比聡平君 つまり、半分は実習先の方の一方的な言い分だけということじゃありませんか。

しかも、この実地調査に至っていない、電話・書面調査にとどまっているものがたくさんあるわけですね。これ、そのとどまっているものだけで五〇・九%に上りますよ。二千百七十七機関ですよね。

その一つの様子が次のページに出てきますが、つまり、基本的に実地調査を行うものとしたんだけれども、訪問を打診して、業務の都合などで日程調整が折り合わなかったというような相手に対しては電話、書面にしたというんでしょう。これ、違法が疑われているんだから、これ無通告で入るというのがこれは当然だと思いますけれども、こうした日程調整が折り合わなかったからということで電話にした、これ何件あるんですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 電話・書面調査を実施したものは二千百七十七機関で、このうち、当初実地調査を予定していたものの、予定が折り合わない等の理由で電話・書面調査に変更したものは、今回取り急ぎ集計した手元の速報値で申し上げますと百六十機関、約百六十機関でございます。

○仁比聡平君 そういう形で、失踪者まで生み出した実習先の実態が明らかにできたなんて思う方がおかしいんじゃないですか。

大臣が冒頭、可能な限りの調査をしたという、その可能な限りというのはその程度の話なんですよ。調査は緒に就いたばかりだと言わなければならないと思います。

そうした中で、厚労省、もう一問。八百数十件の通報がされています。八百三十四件ですね。加えて、先ほどの軽微という書類不備の問題も通報を受けているようですが、これは今後どういうふうに取り組んでいくんですか。

○政府参考人(田中誠二君) 労働基準監督機関では、通報を受けた全数について順次適切に監督指導を実施しておりまして、その結果、労働基準関係法令違反が認められた場合には、是正指導を行うことを徹底しております。

労働基準監督機関に対する通報は、法務省において聴取票や関係書類の精査を行った上で、相互通報制度に基づき労働基準関係法令違反の疑いがあるものとして行われているものであり、厚生労働省としては、これらの通報に基づいて適切に監督指導を実施してまいります。

○仁比聡平君 これ、大臣、お尋ねしたいと思いますが、今のような厚労省の調査が徹底して行われるということはこれから前提にしなきゃいけないと思いますけれども、この小括という報告書十八ページのところを見ますと、「その結果が入管当局に回報される」、答えが返ってくるわけですよね。これ、書類不備、軽微という問題についても徹底した調査が恐らくされるんだろうと思うんですが、これ、そうした労基当局の調査も踏まえて、この実習制度において何でこんな失踪が生み出されているのか、ここの原因を徹底して究明して、それが起こらないような、構造的な問題を打開していく、そうした対策を打つと。これは外国人共生の司令塔だとまでおっしゃる法務省の責任。労基だとか、あるいは先ほど出た機構だとかに任せることなんてできないじゃないですか。

これ、これからも調査が続くわけだから、徹底した調査をして、期限を切って国会に私は報告すべきだと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(山下貴司君) まず、通報した、不正が疑われる事案についての労働基準監督署等の関係機関の調査結果を待ちたいと、これが一点。

二点目は、これは実態把握のための失踪技能実習生からの聴取、これについても書式の不備等などがあったのではないかということで、これは書式を変更した上で、詳しくその失踪に至った経緯、動機等を聴き取るということで、その失踪原因についてつまびらかに把握していきたいと考えております。そして、その上で必要な施策、対策を取ってまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 今の段階でもう公表までして、報告書を、で、これの時点でこれのプロジェクトチームはこれで終わりであるかのような態度を示しておきながら今のような答弁では、到底無責任だと言わざるを得ないと思うんですね。

これから考えるというみたいな話をされるけれども、私が問題にしなければならないと思うのは、徹底して不正行為をただすとともに、それを通じて実際に権利侵害を受けた元実習生の権利救済、回復を図るということですよ。

その点で外務省にお尋ねをしたいと思うんですが、失踪者は特定されているわけです。これ、強制帰国の手続で、母国、例えばベトナムに多く帰国をされていますけれども、そのみんなは適正な実習ができなかったことによって巨額の借金を背負ったままという人たちがたくさんいるんですよね。

その被害を生み出した不正、権利侵害を、ともかくも日本政府がこんなふうにして正そうとしていますと。で、調査に入ったら、例えば所在不明でしたとか賃金台帳がありませんでしたとか、到達点を、個別、お手紙なんかにしてお伝えし、その下で権利侵害を更に明らかにしていく。例えば、給与明細なんかをまだ手元に持っておられる方だってあるかもしれませんし、破産した企業だったらば賃金確保法に基づく救済だって、いろいろ大変でしょうけれども救済もあり得るわけじゃないですか。

そうした方策も併せてお伝えする、あるいは現地で相談会を行うと。私、ベトナムに関してはこれやったらどうかと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(森野泰成君) 在ベトナム日本大使館では、技能実習生として訪日するベトナムの若者が様々なトラブルに巻き込まれないよう、従来よりセミナーの開催やホームページにおける情報掲載等を通じて正しい情報発信に努めてきております。

最近の例では、本年一月にベトナム労働・傷病兵・社会省等と協力いたしまして、技能実習・留学についての正しい情報発信と題するセミナーを開催しております。同セミナーの様子はベトナム国営放送のニュースでも取り上げられまして、技能実習生として訪日を希望する多くのベトナム人が制度に関する正しい情報を認識するきっかけとなったものと考えております。

また、ベトナム大使館のホームページにおきましては、給料未払や長時間労働等のトラブルがあったときに一人で悩んだり失踪したりしないよう呼びかけるとともに、対処法を案内しております。

外務省といたしましては、今般の調査結果報告書を踏まえまして、関係省庁やベトナム政府とも協力、連携しつつ、適切な情報発信を引き続き行っていきたいと考えております。

○仁比聡平君 時間が来たので終わりますけれども、適切な情報提供を、私、個別に、だって相手は分かっているわけですから、ベトナム語で、母国語で伝えていくというやり方をして初めて実際の権利の回復というのが、道が開かれると思います。

多額の借金を負わされて、低賃金、劣悪な環境でも声を上げられないできた、その実習生の構造的な問題を正すということは、特定技能一だったり留学生だったり外国人労働者問題をめぐるこれからの状況の根本的な問題になると思いますから、PT報告で幕を引くなんということはあり得ないということを強く申し上げて、次回に質問を続けたいと思います。

ありがとうございました。