○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法改定案について、反対の討論を行います。
今国会での成立を急ぐべきではない、この世論は急速に広がり、八割に上っています。多くの皆さんが、外国人労働者が置かれている深刻な労働実態、無権利、そこに付け込むブローカーや暴力団の暗躍を知るにつけ、ルーツが違っても人間として共に暮らせる社会、同じように八時間働けば人間らしく暮らせる社会をどうやったらつくれるのか、真剣に考えておられるのではないでしょうか。
家族の帯同や教育、社会保障の在り方など、徹底した審議こそ本院に求められていました。大体、地域経済や中小企業、農業、建設、介護など、深刻な人手不足をつくり出してきたのは自民党、公明党の政治ではありませんか。大企業の利益を優先し、構造的な低い賃金や単価の改善をないがしろにして外国人労働者の受入れで補うなら、困難を固定化し、更にひどくすることになります。
外国人労働者の受入れの在り方は、我が国で働く全ての労働者と社会のありように大きな影響を及ぼす大問題です。にもかかわらず、国会をまたもや暴力で壊し、民意を踏みにじり、強行採決で押し通そうとする安倍内閣と自民、公明の与党、こんな強権政治こそ人権と共生の社会の対極にあるんだと言わなければなりません。
反対する理由の第一は、本法案は、人手不足分野の劣悪な労働条件でも従順に働く単純労働力として外国人労働者の受入れを拡大し、そのために、深刻な人権侵害の構造が明らかな外国人技能実習生を、更に最大五年、安価に働かせ続けようとするものだからです。
政府は、技能実習制度と新制度は別と言い繕いますが、それはごまかしです。実際、政府は、現時点で受入れを検討している十四業種のうち十三業種で実習生からの移行を前提とし、その多くが八〇%からほぼ一〇〇%の移行を見込んでいるではありませんか。法務大臣の、法改正が半年遅れれば万単位の方々が帰ってしまうとの答弁は、何が何でも来年三月に実習三年目を終える人たちを無試験でそのまま新在留資格、特定技能一に移行したいという本音をむき出しにしたものではありませんか。
その技能実習生の失踪が急増している原因はどこにあるのか。本法案の説明に当たって、政府が、意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多数で八六・九%、人権侵害行為など受入れ側の不適正な取扱いによるものは少数などと、一部の身勝手な不心得者であるかのように実態をねじ曲げて説明してきたことは重大です。その政府の基本認識は全くの捏造だったではありませんか。
失踪が七千八十九人に上った平成二十九年、政府が行った二千八百七十人の聴取票を書き取り分析した野党の結束した取組によって、最低賃金違反は政府の言う二十二人どころか千九百二十七人で全体の六七%、過労死ラインを超える人は一〇%に上ることが明らかです。政府は今なお聴取票の提出を拒みますが、それは、技能実習制度全体はうまくいっている、だから修了者を特定技能一へという法案の根本が覆ってしまうからにほかなりません。
安倍総理は、一昨日も、実習生の九割はうまくいっている、失踪者は全体から見れば僅かと答弁しましたが、失踪や自殺、過労死や労災事故、暴行や性暴力などの対象にされてしまった一人一人の人権侵害を僅かなどと言って脇に置くことは、民主主義社会の政府として絶対に許されないのではありませんか。
政府が、逃げることもできず、じっと耐えざるを得ない実習生たちの存在を正面から認めようとしないことは重大です。明らかになった失踪実習生の実態は、権利侵害からの緊急避難であり、氷山の一角です。
最賃違反は千九百二十七人、しかし、その平成二十九年、法務省入管当局から労働基準監督署への通報件数は僅か四十四件でした。法務大臣は、一昨日、失踪実習生の実態を重く受け止める、徹底した反面調査を来年三月末までに行い公表すると答弁しましたが、真剣な反面調査と権利救済が本当に行えるのですか。重く受け止めるというなら、四月からの新たな受入れ拡大をやめるのが当然ではありませんか。
反対理由の第二は、新たな在留資格、特定技能一で働くこととされる外国人労働者の地位は極めて不安定であり、就職や解雇、住まいを始め生活のあらゆる場面で不正な利益を目的とするブローカーの介入の危険があることです。
政府は、特定技能一の雇用は合意と自由意思に基づくと言いますが、それは机上の空論です。技能実習を修了しても、日本語がおぼつかない人はたくさんいます。厳しい就職差別の中で、適正な受入れ企業を自力で見付けて就職や転職することは事実上困難です。ハローワークの母国語相談は、例えば九州でいえば福岡市と別府市にしかありません。大方の実習生に母国語で求職活動できる場はありません。
実習生の場合、母国の送り出し機関や監理団体、暗躍するブローカーの支配や影響下から抜け出せず、そこを通じて就労、生活せざるを得ない状況に陥る人が大多数になる危険があります。法案は、この点、受入れ企業が支援するとしていますが、支援を委託される登録支援機関には技能実習制度の監理団体が横滑りできることが明らかとなりました。さらに、登録を受けない未登録団体が営利目的で委託料を受けて行うことも認められることが明らかとなりました。これでは、支援の名の下に、狭い宿舎に労働者を押し込め、高額の家賃や水光熱費をピンはねする類いの不正行為を排除できないではありませんか。
転職は可能といっても、社長のハラスメントに耐えかねた労働者がその社長の転職支援など期待すべくもありません。倒産、廃業で失業すれば、登録支援機関の支援もなくなります。結局、外国人労働者をあちこちの会社や現場に送り込む、許されない労働者供給事業の温床にされかねないのです。
政府は、出入国在留管理庁が届出や入国審査でチェックすると言います。しかし、与党推薦の多賀谷参考人も、確かにそれがうまく機能するのはなかなか難しいと述べたほどです。
ベトナム実習生に詳しい斉藤参考人は、技能実習機構が実地検査を始めたと言うけれど、事業所ごとには十年に一度、実習生にとっては、自分たちの本当のつらい状況をきちんと分かってもらえなかった、自分たちは会社が怖くて言えなかった、言葉が分からなくて言えなかった、これでもうチャンスは終わった、もう救われないと絶望することになると語りました。
さらに、政府は、母国で保証金を払わされていないかを本人に聞いて確認する、署名をさせるから防げると答弁していますが、払っていませんとうそをつかせる非常に残酷なことです。うそをつかなかったら借金が返せなくなる、そして、うそをついた自分にもう救済はないと絶望すると述べましたが、そのとおりではありませんか。これまで権利侵害を正せずに来た当局が、今度は直接指導監督する、外国人支援と共生の司令塔になるといっても、無責任極まると言うべきであります。
反対理由の第三は、総理が安い労働力を確保しながら就労期間を都合よく延長するためのものではないと答弁するのとは正反対に、外国人労働者を雇用の調整弁にするものだからです。
特定技能一の在留資格は一年ごとに更新されます。在留の前提となる雇用契約は基本的に一年以下、そして三か月の短期契約も可能といいます。労働者派遣も認めるのか、法文には何の規定もなく、政府が分野ごとの特性に応じて真に必要不可欠な業種かどうかを判断して決めるというのです。受入れ企業には、技能実習と違って国内労働者比率の基準もないため、日本人社長一人、特定技能一が百人の派遣会社もあり得るということになります。
政府が受入れ見込みを判断する根拠だという客観的指標は、これが受入れ停止の根拠にもなるのに、法文には何の規定もなく、法務省が、有効求人倍率、各業種における公的統計、業界団体を通じた……
○議長(伊達忠一君) 仁比君、時間が超過しております。簡単にまとめてください。
○仁比聡平君(続) 所属機関への調査などが考えられるというだけです。結局、本法案は、外国人の非正規労働者を極めて不安定な雇用の調整弁とするものにほかならないではありませんか。
最後に、皆さん、本法案によって、この討論時間では指摘し切れない、枚挙にいとまのない重大問題の数々が政府に白紙委任されることは断じて許されません。
この二月、経済財政諮問会議の総理の指示以来、財界要求を受け……
○議長(伊達忠一君) 仁比君、時間が超過しております。
○仁比聡平君(続) 総理と官邸の主導で来年四月受入れ拡大ありきでまさに泥縄をない、労働政策そのものにあるにもかかわらず、労政審への諮問は必要ないとして、公労使三者の審議も行ってきませんでした。
今になって総理は制度の全体像を法施行前に示すと言いますが、それは、強行しようとするこの法案が制度の全体像すら示されていないと自ら認めたものにほかならないではありませんか。
○議長(伊達忠一君) 仁比君、時間が超過しております。まとめてください。
○仁比聡平君(続) こんな法案をまたもこんなやり方で、国会議員でありながら採決マシンとなってこの後強行しようとするなら、あなた方の、この国民の信頼は地に落ちることになるでしょう。
市民と野党の本気の共闘を必ず実らせ、安倍政権を打倒する、その決意を述べて、反対討論といたします。(拍手)
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