2018年12月6日法務委員会提出資料

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

まず、大臣にお尋ねしますが、失踪実習生の聴き取り票を野党が分析をしたという中で明らかになった違反事例について、大臣が、入管始めとした当局に指示をしたとおっしゃる徹底的な反面調査、これについて、今日午前中、元榮議員の質問の中で、来年三月末までに公表するという御答弁がありました。私、改めて、この反面調査を行うというこの調査が何を対象とするのか、ここについて確認をしたいと思います。

○国務大臣(山下貴司君) お答えいたします。

この調査について、私、十一月十六日に指示をしたところでありますが、改めて、昨日、門山政務官を議長とする技能実習制度運用に関するプロジェクトチームの検討会において、平成二十九年分及び平成三十年の聴取票について、明らかに違法、不適正な処遇が認められないものを除く、明らかに違法、不正ではないと認められない、認められないものを除く全ての技能実習実施機関に対する調査を実施し、そして、その調査結果について三十一年三月末までに取りまとめて公表すると、こういうふうに指示をしたというふうな報告を受けておりますし、私もそのように考えております。

○仁比聡平君 この実習生の失踪した方々からの聴き取り票を、ベトナムからおいでになった方について抽出をしてみました。そうすると、重複を除く二千八百七十人分のうち千六十一名がベトナムからおいでになった方、三七%を占めるという、本当に大きな数を占めているわけですね。その下で、今日、有田議員から平成二十七年の死に至った方々の悲痛な実態と遺書も御紹介があったわけですけれども、そうした人権侵害が起こっている。

私、繰り返し、このベトナムからの送り出し機関が、ブローカーも介入して、深刻な、実習生を食い物にするそうした実態があるということを告発をしてきたのですが、先に入管局長に確認をしますけれども、前の委員会で、在ベトナム日本国大使館のホームページを私、紹介をして、十月三十一日掲載のところに書いてあるのをそのまま読みます。技能実習生に対する手数料は、ベトナム労働・傷病兵・社会省の通知により、三年契約の場合には三千六百USドル以下と上限額が定められていますと。これはこのとおりですね。

○政府参考人(和田雅樹君) 御指摘のとおりでございます。

○仁比聡平君 つまり、日本円でおよそ四十万円に上限が定められている。これは手数料であって、保証金の方はこれは取っては絶対にならないというふうに決まっている。にもかかわらず、この失踪実習生の、ベトナムからおいでになった方々の送り出し機関に払った金額という個票の項目がありますけれども、四十万円を超える方々が九百三名、八五・一%に上っています。

お分かりになりますか。ベトナムからやってきて実習先から逃げ出さざるを得なくなったと。そうした方々の、この把握をされた、捕捉をされた失踪者の聴き取りの中で八五・一%の方々が、母国で違法とされている、取ってはならないとされているそうした高額の手数料を送り出しに当たって取られている。これ四十万円をちょっと超えるというんじゃないんですよ。これ膨大な数の方々が莫大な金額を取られている。

これは、まず不正であり違法でしょう、局長。

○政府参考人(和田雅樹君) ベトナムの法律につきまして細かく承知しているところではございませんけれども、その上限金額を超えているということであるならば、それは不正な行為に当たろうかと思います。

○仁比聡平君 ベトナム法の問題だけではなくて、日本法、入管の上陸基準あるいは新実習適正化法ですね、これに基づいて、そんな受入れ、実習の受入れ、あるいはそこに関わる監理団体でもこれは絶対に許されないんですよ。にもかかわらず、八五・一%の方々がそうしたお金を取られている。

これ、入管はこれを見て何とも思わなかったんですか。

○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。

この聴取票の中身というそのものにつきましては、これは御本人さんの申告だけであるというようなこともございますが、いずれにいたしましても、現状におきましては多くの、ベトナムを含む多くの国と二国間取決めを結びまして、送り出し国政府につきまして、もし違法な、違法、不正なことがあるならば、きちんと通知をするなどして是正を図るということにしているところでございます。

○仁比聡平君 結局、こうした実態を平成二十六年の三月以降ずっとつかみ続けてきたんだと思いますよ、現場は。今年の前半のおおよそ二千は聴き取っているということまで含めて、そうした実態をつかみながら、私から今日問われるまで、どれだけのボリュームでこんな事態が起こっているのか把握さえしてこなかったんじゃないですか。

大臣にお伺いをしたいんですが、三月末までに調査をして公表するという対象、これは今私が申し上げている、こうした母国でどれだけの不当な、あるいは不正、違法なお金を取られているのか、そこの仕組みの中でどんな形で実習生が縛り付けられているのか、そして、その不正あるいは違法であれば、これは正すものは正す、ベトナムにも正してもらう、そういう調査と公表が必要だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(山下貴司君) まず、御指摘のとおり、違法な保証金とかそういったものを取ること、これについては二国間取決めをもって悪質ブローカーは排除するという立て付けになっておりまして、また、私も実際ベトナムなどに行きました、ベトナム、ミャンマーその他の国に行きました。そのときに、しっかり情報共有してやっていこうということ、そして日本としては、違法、不当な保証金名下の高額な借金、これを負わせることは駄目なのだということはしっかり伝えてまいりました。

そして、そういったことをしっかり伝えた上で、今後また二国間で、二国間取決め等や様々なチャンネルでその趣旨をしっかり伝えていきたいと思っております。

そして、御指摘の反面調査、これはどうしてもやはり外国における機関の調査ということになりますので、私どもの方から期間を区切るということがなかなかできないわけでございますけれども、三月末までにおいては私たちができる限りのところで先方にも伝え、また国内でできる調査についてはしっかりやっていった上で公表させていただきたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 まず、ベトナムとの間のことでできる限りの調査を行いたいという御答弁だったと思います。

国内でできることというのは私、たくさんあると思うんですよ。実際、実習実施先あるいは監理団体がこれを知っていたのか、どんなふうに関わっていたのか、これは調査をして三月末までにやるべきでしょう、大臣。

○国務大臣(山下貴司君) この調査につきまして、可能な限りさせていただきたいと思っております。また、それにつきましては、具体的な取り進めについては、弁護士でもあります門山大臣政務官が率いるプロジェクトチームで把握することになっておりますので、そうしたこともしっかり進めていただきたいと思っています。

○仁比聡平君 可能な限りというこの腰が引けた姿勢は一体何なのかと。ここまで明らかになりながら何なのかと思いますよ。そうではないですか、自民党さん。腰引けてないですか。可能な限りって、だって日本の実習実施先や監理団体調べられるじゃないですか。加えて、高額の手数料、これを取って送り出してきているところというのは、労働関係法令、あるいは入管法関係法令について、あるいは今の新法に言う様々な不正行為というのを同時にやっているところは多いですよ。それを明らかにして公表しなかったら、三月末までに公表するといったって何の意味もないじゃないですか。

加えてお尋ねをしたいのは、重ねてお尋ねをしたいのは、資料をお配りをしていると思います。ちょっと私の手元になくなってしまっているんですけど。

労働基準監督機関と出入国管理機関との相互通報状況という政府の資料があるんですが、平成二十四年は五百五十六件、入管から労基監督機関に通報しているんですね。ところが、平成二十五年以降、これ通報件数は百件台で推移して、平成二十九年、つまりこの失踪実習生の聴き取りを行っておられた期間ですよ、二千八百人以上の聴き取りを行って、その七割が最賃以下、一割は過労死水準を超えているという実態を入国警備官が聴き取っていた時期ですよ、その時期に労基署に通告、通報したのは四十四件。これ大臣、どんな認識なんですか。

○政府参考人(和田雅樹君) まず、事実関係について申し上げます。御指摘のとおり、昨年の件数は客観的な数字で申しますと、前年と比較して非常に少なくなっておるのは事実でございます。

法務省といたしましては、平成十八年六月の厚生労働省との相互通報制度に関する合意の趣旨に基づきましてきちんとした通報を行ってまいりたいと考えているところでございます。

○仁比聡平君 何を言っているんですか。合意の趣旨に基づいて適切に行っていきたいって、現に現場が格闘してですよ、その失踪実習生の実態を把握をしていたときでしょう。

繰り返し申し上げるけど、失踪者というのはこの平成二十五年頃から急増しているわけですよ。これ急増している行方不明者、失踪者が何でこんなことになっているのか、実態はどうなっているのか、現場は格闘していたでしょう。そのときに、労働関係法令違反の実態がたくさんあったのに通報できていない。当然これ正されるということはなかった。これまで結局、人権侵害を目の当たりにしながら、それに対して対応してこなかったじゃないかと大臣に聞いているんですよ、大臣。一体どんな御認識ですか。

○国務大臣(山下貴司君) これは相互通報制度という制度に基づいて行っているものでございます。そういった中で、昨年、四十四件にとどまっている、これが少ないのではないかという御指摘、これは重く受け止めたいと思っております。

これにつきましては、相互通報制度の運用の問題もございます。また、相互に情報共有がしっかりなされていなかった、こういうこともあるんではなかろうかというふうに思っております。そのために、今般、この改正法でお願いしております案の中に、関係行政機関との関係、これについて、緊密に連絡し、及び協力して行うものとするという、六十一条七の七という案文も御提案させていただいているところでございます。

さらに、修正案、衆議院で修正案を提示、修正案を御可決いただきましたけれども、その中身において、外国人に係る在留管理、雇用管理、社会保険制度における在留カード番号その他、在留カード番号というのはもうとにかく外国人が必ず常時携帯し、そして全ての外国人に与えられるものでございますから、このようなものの利用の在り方についても検討するということでございますので、こうした通報の在り方について、情報共有もしっかりやりながら取り組んでまいりたいと思っております。

○仁比聡平君 いや、これまで情報共有と言いながら、入管がしっかりとこれを正していく機関に通報してこなかったということがここに明らかになっているわけじゃないですか。情報は共有する、それが、それそのものが目的ではなくて、事態を正し、権利侵害を受けている労働者を救済するためにあるんでしょう。その実習生が現にこんな仕打ちに遭っている中で、結局、正すということをしてこなかったのではないのか。今になって、この法案で緊密に連携するというような条項を定めているとか、そんなことが何の言い訳になるのか。

大体、こんな体制で、来年三月末までに本当の真剣な、事柄を是正するような調査や取組ができるのかと。食べることもできない餅を絵に描いて、今のこの法案の審議を何とか言い逃れて乗り切ろうとしているだけなんじゃないですか。そんな入管あるいは法務省が今後、司令塔になろうと、共生の。あり得ないですよ。

もう一問お尋ねをしますが、登録支援機関の登録について聞きます。

法案の十九条の二十三は、登録を受けることができるという、できる規定になっています。となると、これ登録しなくても受入れ企業から支援の委託を受けるということはできることになりますけれども、そういう理解でいいですか。

○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。

御指摘のように、改正法案十九条の二十三第一項におきましては、契約により委託を受けて特定技能一号外国人に対する支援計画の全部の実施の業務を行う者は、出入国在留管理庁の登録を受けることができると規定しているところでございます。

また、改正法案第十九条の二十二第二項の規定からも明らかなように、登録支援機関以外の他の者が特定技能一号外国人を含む外国人に対して支援を実施することは特段禁止されているものではございません。

○仁比聡平君 つまり、未登録の支援機関も支援の名の下に受入れ企業から支援の一部を受託することができるんですよ。その契約において委託料を払うと、委託料をもらうということも、これ、局長、できますね。

○政府参考人(和田雅樹君) 私的な契約において委託料を受け取るということはあろうかと思います。

○仁比聡平君 これまで、技能実習制度において、監理団体から監理業務の全部だとか又は一部の委託を受けて、法外な手数料を取ってきたようなやからがばっこしてきました。これを正さなきゃいけないと繰り返してこの委員会でも指摘をされながら、そうしたやからが支援の名の下に、例えば宿舎を提供する支援、ここの労働者、特定技能一の宿舎は我々が支援しますということで高い家賃や光水熱費を給料から天引きしてピンはねをすると。こういう事態がこれ起こり得るじゃないですか。

○政府参考人(和田雅樹君) まず、申し上げますと、その支援の委託を行う者ございますけれども、その支援に関する費用を特定技能外国人に負担させるということはできないという法の立て付けになっておりますのと、それから、法外な家賃等を取るというようなことに関しましては、これを是正するということになろうかと思います。

○仁比聡平君 今の局長の答弁は、私が申し上げているとおり、登録を受けていない支援団体が宿舎の提供などを支援名目で行うことはあるんだということを前提にしているんですよ。そういう答弁なんですよ。

その上でですよ、その高額の家賃などの負担を特定外国人に負担させるということはできないという御答弁を今されたけれども、だけれども、受入れ企業への委託料というのをこれ取ることは前提とされているわけで、その委託料が重い負担になって、特定技能一の労働者への給料、これが低賃金の構造になってしまうというのは、これまで技能実習制度で行われてきたことですよ。高額の監理費というのは大問題になってきて、だから、これを実費に適正化するということを今政府と機構は取り組んでおられる。

だけれども、今度、特定技能一においては、政府が監理団体を許可制にするということによって、そんな不当を排除していくといってきた仕組みさえない。登録というのも、もう許可とは全く違って実質的な審査はしないんだけど、ところが、その登録さえ受けずに支援名目で外国人労働者の監理に関わる、そういう者が横行し得る仕組みだということじゃないですか。

大臣、そういう仕組みをつくって、どうやってブローカー排除するんですか。

○国務大臣(山下貴司君) まず、支援の仕組みについてでございますけれども、この支援につきましては、その登録、これは登録の際にやはり法務大臣あるいは出入国在留管理庁長官が見るわけですが、その登録された支援機関に対してその支援計画の全部の実施を委託する場合に初めて、その三項、要するに特定技能雇用契約で定められた支援を満たすという、適合することとみなすということになっているわけでございます。これが二条の五の五項でございます。

ですから、登録されていない者であれば、それに委託して委任料を取ったところで、それが不適正であれば支援義務を果たしていないということで、その受入れ機関に対してはしっかりとした例えば指導、勧告をし、場合によっては改善命令を出し、それに従わない場合には、例えば罰則であったり受入れをできなくするというようなことを取っているわけでございます。

○仁比聡平君 それでは私の懸念は晴れないんですよ。だって、受入れ企業が、確かに支援計画出さなきゃいけませんよ。けれども、その支援のどれだけを登録支援機関なり、あるいは登録を受けない支援機関に任せていいのかというのが何にも明らかにならないじゃないですか。

確かに、適正っぽい支援計画は出されているかもしれない。けれども、そこの支援を一部、例えば宿舎というのを提供する支援というのは、実際は、本当は、書類上は出てこないけれどもブローカー的なやからだということがある場合に、それも見抜けもしない。だから、受入れ企業の支援計画を届出によって書類見て審査するといったところで、これ擦り抜けられてしまうんですよ。

そんなことになっていけば、特に海外で、送り出しの母国でガイダンスを行うというようなことを未登録の外国組織に委託をすると。これ実際には、日本国内の深刻な人手不足の中小企業の皆さんなんかは、外国、向こうの国のそうした機関に頼っているというのはありますよ。そういうガイダンスなどを未登録の外国組織もできると、そこに委託するということになったら、お金を幾ら取られているかも日本側では全く分からなくなるじゃないですか、見えなくなっちゃうじゃないですか。これまでも暗躍しているのに、それを一層分からなくしてしまうと。

この登録支援団体はできるというこの規定、これというのは、これ撤回しなきゃいけないんじゃないですか、改めなきゃいけないんじゃないですか、大臣。

○国務大臣(山下貴司君) 委員御指摘のとおり、入国前の生活ガイダンスの提供というのは支援計画の中に入っております。

これについては、不当に直接、間接に負担させてはならないということになっておりますし、また、こうした、ブローカーがこうしたものの名目の下にお金を取るということがあってはならないことは言うまでもないことでございまして、それに関しましては、例えば在留資格認定証明書の交付申請の際に、こうした保証金その他の名下によって不当な借金を背負わされていないか、支払がなされていないかということは確認いたすということになっております。

○仁比聡平君 これまで、許可制を取っている下でもそれを見抜けてこなかったというのが現実なんです。これが登録制の下で、あるいは登録しないところまで許すということになれば、これは逆にもっとひどくなりかねないと、このことを厳しく指摘したいと思います。

派遣形態の大問題について通告をしておりましたけれども、時間がなくなってしまいました。各省おいでいただいたのに本当に申し訳ないんですけれども、徹底した審議が必要ですよ。この委員会をどんどんきちんと議論を進めていくべきだと求めて、質問を終わります。

 

 

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

総理にお尋ねをしたいと思いますが、政府は技能実習生の失踪の急増というこの事態の中で、平成二十六年三月に、捕捉された失踪実習生からの聴き取りを始めながら、その調査を基に、意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多い、安価な労働力の確保策としたり、保証金徴収などの不正は一部の制度趣旨を理解しない者によるものだと、おおむねそのように国会でも答弁をしてきました。おとといのこの委員会で、和田入管局長、御指摘のような認識に立っていたものでございますと私に答弁をされましたが、そのとおりですね。

局長って私は聞いて、何で、局長って聞いているでしょう。

○政府参考人(和田雅樹君) 御指摘のとおりの答弁をいたしております。

○仁比聡平君 その上で総理にお尋ねしたいんですが、その認識というのはその後ずっと変わっていないんです。ですから、今年の二月、経済財政諮問会議で新たな外国人労働者受入れ策の拡大について総理は指示をされていますけれども、そのとき同じ認識に立っておられたわけでしょう。

総理の認識、総理が指示したんでしょう。総理が指示したんじゃないですか。総理に。

○国務大臣(山下貴司君) 今の認識につきまして歴代法務大臣などが申しておったところでございます。そして、その認識につきましては、これは様々な例えば聴取もございます。あるいは、技能実習実施機関からの聴取もある。例えば、失踪直前に仕事に出てこなくなったとか、そういった事実関係もある。そういったことを総合考慮して述べたというところでございます。

○仁比聡平君 山下大臣がそんなふうに出てこられるのは、結局、この間の野党の分析によって実態が暴露されたことによる今更の言い逃れ、だから見苦しいと私は前回申し上げたんですよ。

総理がお立ちにならないんだけれども、その総理の指示を受けて、法務省を始めとしたタスクフォースが来年の四月拡大ありきと、結局そうだったんだと思います。泥縄、付け焼き刃で骨太それから今回の法案の閣議決定と国会提出に至ったわけですね。その時点でも政府は、より高い賃金を求めて失踪する者が多数、八六・九%、人権侵害行為など受入れ側の不適正な取扱いによるものも少数存在というふうに資料を作っていたように、実態をねじ曲げて、制度全体はうまくいっていると強弁して、だからその技能実習を三年修了した者を今度は特定技能一だといって働かせ続けるという法案の組立てになっているんじゃないですか。私は、それが根本から間違っていたと。そこの総理の認識聞きたいんですよ。失踪は緊急避難だったんです、多くの方にとって。実態は七割が最賃以下であり、一割が過労死ラインを超える過酷労働ですよね。

これ、ところが総理は、衆議院の段階で聴き取り票が示している実態が大問題になりながら、九割の方々がうまくいっているというふうに答弁をしてこられました。これは、いいですか、総理、総理、この九割がうまくいっているという認識は、これは撤回をされて、よく考え直されるべきじゃありませんか。(発言する者あり)どうして、どうして大臣が答弁するんですか。委員長、おかしいでしょう、委員長、おかしいでしょう、これ。総理の認識。総理の九割の方々がうまくいっているという答弁について聞いているのに。

○委員長(横山信一君) 最初に山下法務大臣、お願いします。

○国務大臣(山下貴司君) その答弁につきまして御説明いたします。

これは、十一月七日の参議院予算委員会の小池委員に対する答弁でございます。これを正確に引用いたしますと、今、山下大臣がお答えしたようにということで、私の答弁を引用されておられます。そして、「今までも九割の方々は、技能実習生、まさに目的に沿った形で日本で技能を身に付け、母国に帰ってその技能を生かして活躍しておられるんだろうと、こう思っておりますが、」という答弁が正確な引用でございます。

そして、私の答弁は、これは統計の取り方にもよるけれども、この失踪された方は全体の技能実習生からすれば数%ということでございまして、九割をはるかに超える技能実習生についてはその技能実習に基づいて実習しておられるんだろう、それを見守る方もおられるんだろうということを答弁し、その後、総理が、今、山下大臣がお答えしたようにということで答弁されているわけでございます。

○仁比聡平君 山下大臣、勇ましく答弁しておられるつもりかもしれませんけどね。私、大臣に、もう外国人の人権とか共生とか、そんなものを委ねられるのか、任せられるのかと。私、本当に見苦しいなと思いますね。

総理、私がそもそも本会議で同じ問いを尋ねたんです。そのときに、総理は、失踪者は全体から見れば僅かと答弁されたじゃないですか。失踪者は全体から見れば僅かという総理の答弁は、私、二つの点で大きな問題があると思うんですね。

一つは、失踪や自殺、過労死や労災、暴行や性暴力、そうした対象とされてしまった一人一人の人権侵害を横に置いてしまう、脇に置いてしまう、それは一国の総理として私は信じられないことだと思います。そして二つ目は、この失踪者というのは氷山の一角だということなんですよ。総理は、逃げられずに働き続けるという、そういう実習生たちがいるということをお考えにならないんですか、それともそこはお認めになるんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 技能実習制度については、その中には一部の監理団体や受入れ企業における賃金不払や長時間労働等といった労働関係法令違反等の問題や技能実習生の失踪といった問題が生じておりまして、これは重く受け止めております。決して脇に置くという考え方はありません。重く受け止めております。

他方で、失踪者の数は技能実習生全体から見れば数%にとどまることも事実でありまして、多くの技能実習生が実習を全うし、母国で活躍しているのもこれもまた事実でありまして、それも認識をしているわけでございます。

その上でですね、その上で、技能実習制度については、昨年十一月に施行された技能実習法の下、受入れ企業等に対する実地検査や技能実習生に対する母国語相談等、相談対応等の取組によって、制度の適正化及び技能実習生の保護に努めています。

また、労働基準監督署においては、技能実習生を雇用する約四万八千の実習実施者に対し重点的に監督指導を行っておりまして、平成二十九年の一年間において各種情報から違法、法違反が疑われる五千九百六十六の事業場への監督指導を実施しまして、今後とも、効果的、効率的に監督指導に努めていくわけでありまして、そういう様々な人権侵害等、また法令違反等の存在を軽く見ているわけではありませんし、その人たちを横に置くということは全く考えておりません。そういうことがないようにしっかりと対応していきたい。

しかし同時に、技能実習という役割に沿う形で受入れ企業等も対応し、そしてまさに母国で活躍しているのも事実であり、多くの方々がそのように活躍しているということも知っていただきたいということで、そう答弁させていただいたところでございます。

○仁比聡平君 いわゆる企業単独型ということを始めとして、母国で活躍している方がいないとは私は言わないんですよ。けれども、失踪実習生の実態が示しているものを脇には置かないというのであるなら、ここはしっかり立ち止まってよく考えるべきところだと思うんです。

総理が所信表明演説でも、まあ自慢げにと私は議場で聞こえましたけど、御紹介されたのがあのベトナムの取組なんですね。私、二千八百七十人の失踪実習生の聴き取り票のうち、ベトナムからおいでになった方の分を抽出をして、驚きました。これは、午前中、法務省とは議論をしたんですが、千六十一名いらっしゃいます。つまり、二千八百七十人のうち千六十一名がベトナムからのおいでになっている実習生。失踪者の四割がベトナムからおいでになっているわけです。

ベトナム政府は、送り出しに当たって、保証金は禁止する、手数料もこれ三年の実習で三千六百米ドルまでという上限を定めているんですけれども、これ、三千六百米ドルというのは日本円でおよそ四十万円なんですね。この金額でも、ベトナムの最低賃金、低い地方のところから来ると年収で二十年以上分ぐらいになってしまうんですよ。最賃が高い都市部の方でも年収十数年分になってしまう。だから、田畑を担保にするとか、あるいは闇金の高利とかいうことで借金をして、それでも日本に希望を持ってやってこられますよ。けれど、現実には最賃以下というような状況の下で、この借金にも縛られて母国に送金をしなきゃいけないと。それがこのベトナムから来ている実習生たちの多くの姿なんですよね。

さらに、金額をちょっと拾い上げてみました。そうしますと、百万円を超えるという方が六五%もいらっしゃいます。さらに、二百万円を超えるお金を送り出し機関に払わされてしまったという方が三十七人、割合としては四%なんですけれども。

そういう実態があるからこそ、昨日のこの委員会の参考人質疑で斉藤参考人がこうおっしゃいました。総理、いいですか。とにかくつらいことや理不尽なことも多い技能実習の三年間を辞めもせず失踪もせずに働き抜いて、更に日本で働こうというおとなしくて我慢強くて多分親日な人は無試験で受け入れようと、それが今度の特定技能一という、そういう仕組みなんではないかと。

私は、これ、実際、法務省の入国警備官たちが取り組んできたこの聴き取り票からその実態というのは現れていると思うんですね。これ、うまくいっていないじゃないですか、総理。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど私の所信表明についての論評をされましたが、私は別に自慢げに話したのではなくて、クアン主席が実際に群馬に行って、言わば日本人と同じ給料をもらっていて、私はそれを誇りに思っているということを言っていた実習生がいるのは事実でございますし、そして、それを御紹介したのは、だからこそ受け入れている日本の企業はちゃんと支払うべきだという思いを込めてそう申し上げているわけでございます。

ベトナムの例について挙げられましたが、ベトナムとについては二国間の取決めを昨年六月に、六月の六日に締結をいたしました。その主な目的は、日本側だけでは把握することが困難な保証金や不当な高額な手数料を徴収する不適正な送り出し機関等を排除することにあります。具体的には、同二国間取決めにおいて定めた送り出し機関の認定基準に基づいて、ベトナム側において送り出し機関の認定を行い、日本側はベトナム側が認定した送り出し機関からのみ技能実習生を受け入れること、また、日本側が不適正な送り出し機関があることを認知した場合、その旨をベトナム側に通知し、ベトナム側において当該送り出し機関に対する調査、指導、認定送り出し機関の取消しを行うことが規定をされているところでございまして、そういう意味におきましては、我々はこうした取決めにのっとってそうした不適切な事業者を排除していかなければならないと、このように考えております。

○仁比聡平君 総理が、夢を持って日本に来てくれる外国人労働者、多くは若い皆さんですけれども、その皆さんの思いに応えるんだと、今、先ほどおっしゃったと思うんですが、とおっしゃるなら、この実態を脇には置かないといいながら、現実にはこの実態を正すこともなしに、あるいは正すこともできずに、その技能実習制度を土台にした新たな受入れ拡大策というのを推し進めるということは、これは本当に立ち止まっておやめになるべきだと思うんですね。

これ、平成二十九年の失踪実習生の聴き取り票が出ているわけですけれども、その同じ平成二十九年に、法務省入管当局が厚労省の労働基準監督当局に法違反として通告した件数というのは僅か四十四件だったんですよ。総理がきれいに描こうとしても、現場というのはこれ惨たんたるものなんじゃないですか。

来年三月末までに反面調査をやるんだと法務大臣おっしゃっているんですけれども、私はそれ自体おぼつかないと思いますよ。やみくもに四月の受入れ拡大というのを押し通すのはもうやめて、この法案は廃案にすべきだと思いますが、最後、総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 技能実習制度は今既にあり、機能しているわけであります。そして、私たちが今お願いをしているこの法案は新たにつくる仕組みでございまして、出入国管理庁が新たにこれは設置をされまして、まさに直接管理監督を行っていくことになるわけでございますし、と同時に、今まであった、様々な御指摘があったこの技能実習制度につきましては、山下法務大臣の指示の下に、法務省内に設置されたプロジェクトチームにおいて技能実習生の実態把握の在り方の見直しをこれは行います。そして、聴取票から違法、不当な行為が認められる技能実習実施機関の調査には既に着手しているものと承知をしておりますが、これらの取組によって制度の更なる適正化を図ってまいります。

○仁比聡平君 もう、実習制度と今度の新しい入管法改定は別の制度だという詭弁は国民的にももう通用しませんよ。きっぱり廃案にすべきことを強く求めて、質問を終わります。