2018年11月22日法務委員会配付資料

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

まず、裁判所の警備問題についてお尋ねをしますが、もう一問別にありますので、最高裁、是非簡潔に御答弁を願いたいと思います。

お配りした資料一枚目にありますように、二〇一七年に仙台地裁で、法廷に刃物が持ち込まれて傷害事件が起こるという事態がありました。その後、大阪あるいは神戸などでの刃物が法廷に持ち込まれる、あるいは高知の検察審査会事務局や東京地裁などで職員あるいは裁判官が暴行を受けると、こういう事件も相次いでいるわけですね。

そうした中で、裁判所はゲートによる所持品検査などを各地導入しておられますけれども、例えば、高松高裁、地裁のところではこれまだでございまして、そうすると、大阪では防げたはずの事件が高松では防げなかったなどということになりかねない。それでは済まされないですし、何より、一般の職員が無防備なままでそうした者に対応を強いられるということになれば、職員の心身の安全、そしてひいては裁判所の公平が脅かされるという事態になりかねないと思うんですね。一方で、過剰警備ではないかという声も聞こえてきます。

そうした中で、裁判の公開あるいは公平という原則を考えたときに、当事者を始めとした地域や国民の理解をしっかり得ながら進めるということも大事だと思うんですが、最高裁としてはどのように認識して、どのようにこういう事態を防止していきますか。

○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。

入庁時のゲート式による所持品検査につきましては今委員から御指摘のあったとおりでございますけれども、それ以外にも法廷警備という形での警備にも努めておるところでございまして、これは事案に応じて裁判体が適切な判断をしているものと承知をしております。一般的には、具体的な警備の方策を検討する際には、裁判の公平ということについても意識をしながら検討されるものと考えられます。

なお、御指摘の中で、警備を行うことが裁判の公開の関係からも問題があり得るかという点ですけれども、傍聴席にいる方に危害が加えられるようなことになりますと、これは裁判の公開という理念を脅かすということにもなりかねませんので、裁判の公開を確保するためにも法廷の安全確保が必要であると考えております。

また、法曹三者あるいは関係者との合意形成といった点についての御指摘ございましたけれども、裁判所での安全を確保するというのは、これは裁判所の責任で行うべきものでございますので、事案に応じて裁判体が判断するということになりますので、法曹三者等と合意をしなければ実施ができないというものではないと考えておりますけれども、裁判所がこの責任を果たすためには、関係者の御意見をちゃんと踏まえて、その上で実施するか否かを検討しているということになろうかと思います。

それからまた、最初に御指摘のあった入庁時の一般的な所持品検査については、弁護士会あるいは検察庁に対しても事前に丁寧な説明を行った上で実施に至っているものというふうに承知をしております。

○仁比聡平君 勉強で伺いますと、お話のあったゲートの所持品検査というのは、これ全国で今はまだ十三庁にとどまっているんですね。法廷警備という形で一般の職員がハンド検査機で入廷者に対して検査をすると。その中で、そうした来庁者から職員がいろんな言葉をぶつけられたり、あるいは時には触られたり怖い思いをするというようなこともあるのではないかなと思うんですね。

そうした事態をなくしていくために、人というのは本当に必要なんですけれども、元々守衛さんがいらっしゃいました、ところが定数削減の中でどんどん減らされていって外注委託に置き換えられてきたわけですけれども、実はこの間、その外注警備員さんもなくなったり減らされたりしているんですね。横浜や高知では廃止がされました。京都や島根などでは減少したり、それから総合案内というのがなくなったり、あるいは空き時間ができてしまったりというような形になっているんです。

これ、結局、裁判所の予算、特にこの分野でいえば庁費ですね、これが限られている中で、この今起こっている、近年起こっている事態に対して、例えばゲートであれば一機百万円ぐらいはするみたいなお話のようなんですけど、そうした予算を確保するために外注警備の予算をやりくりするとか削るとかいうことが起こっているのではないかと思うんです。裁判所でこうした刃物が持ち込まれるなんという事態は近年起こっている新たな事態なわけですから、これに対応するには当然必要な予算を別に確保するべきだし、財政当局もちゃんとそれに応えるべきだと思うんですが、まず、最高裁、いかがですか。

○最高裁判所長官代理者(笠井之彦君) お答え申し上げます。

裁判所を安全、安心な形で利用していただくということ、そのために庁舎内の安全を確保すること、これは裁判所の重要な責務の一つであるというふうに考えているところでございます。

先ほど委員から御指摘がありました金属探知機を用いた所持品検査、それにつきまして、入庁時に行うというものもございますし、それ以外に、各庁の実情に応じて法廷入廷時の所持品検査、こういったものにつきましても、外注警備員によるスポット的な対応を行うなどして体制を整えているところでございます。

今後でございますけれども、このような予算を確保していくということ、これ自体は非常に重要なことであるというふうに考えておりますので、裁判所としても、引き続き必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○仁比聡平君 当然、必要な予算を確保しないと大変なんですよ。体制を整えているというふうにおっしゃるけれども、痩せ我慢すべきじゃないんですよね、ここで。

例えば、高知の検察審査会事務局は、マニュアルでは求められている警報ブザーとか、それから管理者に対して連絡を取るトランシーバー、こういうのもなかったんですよ。それでどうやって危機管理ができますかと。それが裁判所の今の物的な予算が絞られてしまう中での現実なのであって、我々は、この充実のためにちゃんと力を尽くさなきゃいけないと思います。

そうした中で、法廷警備員の問題についてお尋ねしますが、実際、ちょっとある方から、制服が渡されただけで学ぶ機会がないという声を聞きました。現場の職員の責任感に寄りかかって、その職員が万が一のけがをするとか裁判の公平が害されるというようなことがあってはならないわけで、今、現状、当事者確保や護身についてのスキルが研修として教育されていないとか、体系的な研修を行うのではなくて、実際は先輩からの助言、申し送りということにとどまっているというところが現場あるとしたら、私はそういうふうに伺いましたけど、それはやっぱり打開するべきだと思うんですが、最高裁はどのように取り組んでおられる、あるいは取り組んでいかれますか。

○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。

法廷警備員の警備業務に関する研修につきましては、各裁判所の実情に応じて行われているところでございます。

例えば、東京地裁におきましては、法廷警備員の採用時に約半年間にわたって警備技術の教育を行っておりますほか、所持品検査の基本的動作等をまとめたDVDを整備しておりまして、このDVDについては、研修等での利用を希望する他の裁判所にも送付をして、警備に関する知識、技能の共有を図っているところでございます。

また、警備に関するマニュアルを整備したり、あるいは県警の職員を講師に招いて警備に関する講義を実施している裁判所もございまして、こうした取組により、法廷警備員に必要な知識、技能の習得が図られているものと認識しております。

今後とも、昨今の裁判所における加害行為の状況を踏まえつつ、各裁判所の実情に応じて、法廷警備員が必要な法廷警備に関する知識、技能の習得を図れるように取り組んでまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 習得を図っていくためには、現場の声を不断にその危機管理に反映させていくということがとても大事だと思うんですよね。

現実に東京で半年間の研修をやっておられるということだったらば、全国の庁から法廷警備員に来てもらって、そこで研修したらいいんじゃないですか。いかがですか。

○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。

法廷警備員をほかの裁判所の研修に参加させるという場合には、当該法廷警備員の所属する裁判所における警備業務の状況等を踏まえる必要があるところでございまして、例えば、御指摘のように、東京地裁の研修の機会に他の裁判所の法廷警備員も参加させるということを制度化するというようなことが相当かどうかというようなことにつきましては、今申し上げたような点を踏まえて慎重に検討する必要があろうかと考えているところでございます。

○仁比聡平君 制度化するかどうかとかって、また裁判所らしい固いお話をされるけれども、実際、そういう各庁の実情をしっかり踏まえながら、是非東京での研修なら研修にきちんと参加してもらって、自信と誇りを持ってその職務に臨めるように、これは強く要望をしておきたいと思います。

ちょっと、残る時間で外国人労働者問題についてお尋ねをしたいと思いますが、お配りしている二枚目以降の資料を是非御覧いただきたいと思います。

オリンピック・パラリンピック対応だということで、特定活動という在留資格で、建設と造船に二〇一五年から多くの外国人労働者が受け入れられています。この実態を国交省が把握をしながら公表していないではないかという記事なわけですけれども、この二つの分野が熟練技能として特定技能二の対象になるというのは、政府が今おっしゃっていることなんですね。

その仕組みを、次にお配りしていますけれども、建設のその真ん中、国土交通省というところあるように、国土交通省が特定監理団体と適正監理計画を認定して受け入れるという仕組みになっている。これは、入管法改定案で業所管省庁が計画を立て受入れを具体化していくんだ、そこに責任持つんだとおっしゃっているのともうほぼ類似しているわけですが、この実態把握の資料を求めていましたところ、昨夜提出をいただきました。

このポンチ絵で一番下にありますが、巡回指導をまずやっていますが、平成二十九年度の一年間で、建設企業五百十八社に対する巡回指導において、賃金支払の状況に関しては、約四割に当たる二百四社に改善指導が行われた。適正監理計画を下回る雇用条件での賃金支払、つまり契約より下回るということですよ。過大な控除、住居費等、これ家賃なんかが天引きされる。手当の未払、それから割増賃金の算定ミス等による一部不払。これ、重大じゃありませんか。

この中身について、三十二ページというページがある表をお配りしましたが、御覧のとおり、この賃金問題というのが百三十七件、時間外、休日、深夜割増賃金の支払問題がこれ百四十件。ほかにも、強制貯金をさせているとか最賃違反だとかというのも、こういうのも、今国交省が認定して行われている受入れの中で現に起こっているわけですよね。

これは当然、労働関係法令にも違反するし、人権侵害にも当たるのではないかというふうな事態も含まれているのではないかと思うんですが、これ、認定者として国交省の御認識はどんなことですか。

○政府参考人(北村知久君) お答え申し上げます。

委員御指摘のとおり、外国人建設就労者受入事業では、受入れ企業による適正な賃金支払や就労を担保するため、国土交通省の委託を受けた法人が、受入れ企業の巡回指導や就労者からの相談対応を実施しているところでございます。この中には、委員御指摘のとおり、賃金支払の課題というものが四割ございますし、また労働関係法違反を疑われる事案もございますが、一方で、賃金の関係であれば、例えば割増賃金計算の間違いをしたというような軽微なものも含まれるなど、その内容は様々でございます。

いずれにいたしましても、基本的には委託先による指導により適切に改善されているということでございまして、全体としては事業の適正な執行がなされているものと認識しております。

○仁比聡平君 今日、今朝ですね、慌てたように官房長官と国土交通大臣が記者会見もされているわけですけれども。軽微なものも含まれるって、だったら全部明らかにしなさいよ、こんな墨塗りせずに。

今御答弁の中にもありましたが、この委託を受けている事業体は母国語相談を行っています。その聞き取りがうかがわれるものを続けてお配りしていますけれども、百十一ページというところを御覧いただいて、十二番ですけど、特定活動の在留資格の方、監理団体の言葉は信じられない、ベトナムでは給料十八万円と言われたのに契約書は何万何千円、墨塗りされていますけど、昇給、賞与もないなら日本に来なかった、再入国のために何ドル支払ったという声。

あるいは、次のページ、十六番のところ、割増賃金が支払われていない、毎日の生活が奴隷労働みたいで苦しい、悪口を言われたり殴られたりする、何億ドンが台なしになるので我慢している、このままだと私は死ぬかもしれないとか。

その次のページ、二十三番は御本人から、職長や同僚から暴力を振るわれる、泣きながらの電話の訴えですよ、誰からも助けてもらえない。こういう実態が実際相談の中でつかまれているわけでしょう。

次のページの三十六番のところは、家族の用事があるので途中帰国したい。社長の理解は得たが、監理団体は勝手に帰国させないと言った。

あるいは、もう一つだけ御紹介すると、最後、ずっとめくっていただいて、百十九ページですけれども、三年間の技能実習後帰国せず、七十四番ですね、二年契約を結んだ。ビザ申請は企業と監理団体がした。つまり、特定活動として二年延長するのに、企業と監理団体がそのビザ申請をしているわけですよ。そのときに、送り出し機関に幾らドル支払うよう言われた。技能実習で来日前に幾らドル支払って、家の赤帳というんでしょうか、これ預かられたままになっているのにと。

これが、国交省が認定して行っている、そうした外国人労働者から寄せられている声ですよ。

大臣、ちょっと通告していませんけど、業所管省庁が責任持ってやるんだなんて言うけれども、実際に二〇一五年以来三年間近くやっている現場というのはこれじゃないですか。入管法改定案なんか、もうこれ白紙に戻してやり直す、出直すべきだし、我々がやらなきゃいけないのは、こうした人手不足現場の実態を、こうした実態からしっかり学びながら、どうやったらこれ解決できるのか。私は、賃金単価の抜本的引上げが必要だと思います、建設においては。そうした議論をやるというのが国会の仕事じゃありませんか、大臣。

○国務大臣(山下貴司君) 御指摘のとおり、これ、賃金云々の関係については、やはり国内人材の確保に関する取組、これをもうしっかりやっていただく、これは大前提でございます。

その上で、今、特定活動、建設就労者に関する御指摘等がございました。この中、要するに、不正行為、違法行為あれば、関係省庁ともしっかり情報を共有した上で、これは違法行為があれば、それはもう取り組んでいかなければならないのは当然でございます。

ただ、そうした上で、しっかりと制度をつくった上で、やはりこの深刻な人手不足、人材不足の状況の中において、やはり今回入管法改正について御提出させていただいております法案につきましては、是非御理解を賜って御審議いただきたいというふうに考えているところでございます。

もとより、違法行為等があれば、それに対しては、所管するところがしっかりと取り組んでいくということは当然でございます。

○仁比聡平君 技能実習生の失踪問題での個票のお話が先ほど小川議員からありましたけれども、実態を隠してごり押しをしていくなんというようなことは、これはもう絶対にやってはならない、もう今ここで立ち止まるべきだということを強く申し上げて、今日は質問を終わります。