○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

私も性刑法の三年後見直しについてお尋ねしたいと思います。

性犯罪に関わる刑法が昨年の通常国会で抜本改正されましたが、これは欧米諸国から見れば二十年、三十年遅れであって、先ほども御指摘のあった法案修正で盛り込まれた三年後の見直し附則、そして参議院の九項目の附帯決議は持ち越した重要課題のリストだと、昨年十二月五日のこの委員会の質疑でも大臣に強く求めてきたところなわけですが、そこで私は、七月の十三日に改正刑法が施行されましたから、その前後で事件の認知や検挙の状況をつかむ必要があると法務省刑事局に繰り返し資料の提出を求めてきたわけですが、皆さんにお配りしている三枚目、これ、法務省で速報というふうに呼ばれている表なんですけれども、御覧のとおり、枠で囲んでありますが、罪名こそ改正刑法に合わせて強制性交等罪などと変わっていますが、七月十三日の後がどんな状況かというのはこれでは全く分からないんですね。改正前の強姦罪と改正法施行後の強制性交等罪などが分類されていないで一緒くたにされている、これはおかしいじゃないかと。

そこで、まず警察庁に聞きますが、警察庁に同じ問いをして提出をいただいている資料、数字がもう一枚前にあると思います。これ、警察庁、新しい罪ができたわけですね、構成要件が変わったと、だからこういうつかみ方をしている、そういうことですね。

○政府参考人(大賀眞一君) 警察におきましては、改正刑法により強制性交等罪が新設されたということを踏まえまして、従来の強姦罪とは別に強制性交等罪の統計を取ることとしたものでございます。

○仁比聡平君 この数字そのものも、認知件数で強制性交等罪が七月十三日以降適用された件数が、適用されたといいますか、認知件数ですから、それとして認知した件数が四百三十九件、検挙件数が二百六十九件と。これ自体も議論したいところですけれども、今日はそこはちょっと外しまして。

法務省の刑事局が、私どもが繰り返し求めても、何しろおとといの夜までこの速報しかございませんと言い続けてきたわけですから。これ、大臣、新しい構成要件ができたら、これ速やかにその運用について聞かれたら答えると、これ国会議員から聞かれて当然だと思いますけれども、これ国民の皆さんあるいは研究者の皆さんから聞かれても、法務省刑事局としてつかんでいるのはこうでございますと答えるのが私当たり前だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(上川陽子君) まず、しっかりとしたデータを把握をし、そしてそれを公表していくということについては大変重要なことだというふうに思っております。

法務省におきまして、毎年八月をめどに、前年一年間に全国の検察庁で取り扱われました刑事事件に関する統計報告、これを集計、整理して収録いたしました検察統計年報、これを公表しているところでございます。

お尋ねの強姦罪と強制性交等罪につきましては、平成二十九年七月の改正刑法の施行を受けまして、現在それぞれの罪につきましてその起訴人員数や不起訴人員数等の数値を集積しているところでございます。今後、平成三十年八月をめどに公表する予定でございますが、その中では、委員御指摘をいただきました強姦罪と強制性交罪等を区別をして、そして起訴人員数や不起訴人員数等を公表をすることとしているところでございます。

○仁比聡平君 いや、今の大臣の答弁、当たり前のことなんですけれども、その答弁にたどり着くのに相当な議論を刑事局の現場の方々としなきゃいけなかった、あるいは司法法制部の方にも御苦労いただくことになったんですね。これ、極めて閉鎖的と言わざるを得ない。

刑法の見直しは、これは国民の課題ですから、この法務省刑事局の議論のスタンスといいますか、議論の仕方ですね、先ほど検討会議の御提案が公明党、若松先生からございました。これ、私も被害者当事者が参画した検討の場をつくるべきだと求めてまいりまして、今日答弁求めませんけれども、大臣、先ほど関係府省と協議をしたいという御答弁だったわけですが、この問題も含めて、刑法の三年後見直しは国民的課題であり、被害者当事者にとっての極めて重要な課題なんですよ。この対応に当たって、極めて閉鎖的な態度は改める必要があると厳しく申し上げておきたいと思います。

そうした議論の中で、配付資料の四枚目以降にお配りをしていますのが、昨日ようやく明らかになりました、法務省刑事局が全国の地検、地方検察庁に対して、表題を読みます、「「強制性交等罪、監護者わいせつ罪、監護者性交等罪」を適用した事件に関する資料の送付について(依頼)」という文書を発しておられるということが明らかになりまして、一部墨塗りですけれども、昨日提供いただきましたので委員会にもお配りしたわけですね。

これ、昨年の六月二十六日に発せられているわけですが、初めて、少なくとも私は、初めて明らかになりました。そもそも、この改正刑法案の一年以上前の審議のときからずっと求めていた議論なんですね、これ。それがようやく昨日になって墨塗りとはいえ出てくると。やっぱりこれは一体どういうことなのかということはありますが、まず刑事局長にお尋ねします。この依頼の趣旨、これはどういうことですか。

○政府参考人(辻裕教君) ただいま御指摘いただきました文書で資料の送付を求めております内容でございますけれども、昨年改正いただきました刑法の性犯罪に関する規定の適用状況を把握するために、新たに設けられました類型について、趣旨としてはその適用状況を把握しようというものでございまして、具体的に申し上げますと、肛門性交や口腔性交のみに係る強制性交等の事案、それから、新設されました監護者わいせつ及び監護者性交等の適用状況を調査するというもの、さらには、強制性交等、準強制性交等を適用した事件の中では被害者が男性にある事件もその対象と新たになりましたので、その事件についての調査をしようというものでございます。

○仁比聡平君 この三年後の見直しに当たって、とりわけ、まだ改正刑法後も残っている暴行・脅迫要件が、実際の刑事手続上、命懸けで抵抗していなければ同意したことになるかのように扱われて、それが被害者を苦しめる源となってきているわけです。

その関係で私が注目したのは、最後に御説明のあった、この依頼文書でいえば2の(2)、監護者性交等罪などに関する依頼なんですが、これは起訴された事件の判決などだけではなく、不起訴事件についてもその報告を求めているわけです。

これ、つまり、警察から検察に送検された事案の処理に当たっての、検察がどんな点を考察しているのか、補充捜査だとか、あるいは警察が抱いた嫌疑、これが認定できるか否か、あるいは起訴したら裁判の上でどんな攻撃、防御が行われて裁判所が判決をしたかとか、家庭裁判所の審判ではどうかとか。あるいは、不起訴になる中では、嫌疑はあるけれども起訴猶予にするという場合があるわけですが、その事情というのはどういうものかなどがここに含まれるんだろうと思うんですよ。墨塗りになっている部分は、そうしたことに関わる証拠資料とか、あるいは裁判所の判断などについての記載があるのではないかなと私は思うんですが、それを今日聞く時間はありませんから。

つまり、検察の中では全件決裁文書が蓄積されている。なぜ嫌疑不十分と判断したか、なぜ起訴猶予としたか。不起訴事例を分析することで性暴力の実態を把握し、刑法や刑事手続の在り方を見直すこれは重要な材料になると、私はドイツの例なども示して大臣にお尋ねしてきましたが、大臣、こうやって刑事局が取り組んでおられるわけですから、だから、三年後の見直しに向けてのこれは重要な材料になる、そういうふうにしていくということでよろしいですよね。

○国務大臣(上川陽子君) こうした一連の調査、また被害を受けた方からの生の声を聞き、そして三年後の見直しに向けてしっかりと対応していく、附帯決議に指示していただきましたことにつきましてはしっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。

今委員御指摘の点につきましても大変重要な項目であるというふうに認識をしております。

○仁比聡平君 ありがとうございます。

これまで、この検察の起訴、不起訴の判断、特に潜在化しやすい性暴力、性犯罪に当たってどうしてこういう事態になっているのか、暴行・脅迫要件が源になっているではないか、この指摘に対して、国会での議論でもきちんとしたお答えがないままここまで来ているというのが私は現実だと思うんです。

上川大臣の下で、そして政府全体としてこの性暴力の根絶のために大きな取組が前に進んでいっている中で、この不起訴事件、不起訴事案、これの分析をしっかり行うということを強く求めておきたいと思うんです。

といいますのは、それは欧米諸国の経験であって、学ぶべきとても重要な教訓だからなんですね。ドイツで百七件のそうした事例の報告書が刑法改正の大きなインパクトになったということを指摘もさせていただいてきました。私、この百七件の事例の報告書を私としても政府に提供しますので御一緒に研究していきたいと、これも御提案だけ差し上げておきたいと思うんですけれども。

そこで、配付資料の一枚目に、国連女性差別撤廃委員会の前委員長を務められた林陽子さんの、欧州評議会の、女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンス撲滅条約と林さんは訳しておられます。別の論者は、女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンスの防止及びこれとの闘いに関する条約という訳もありますが、これについて、一番最後の結論の部分で、「北京会議から二十年あまり、世界地図の中でジェンダー平等政策の無風地帯になってしまった日本。日本のような国こそ、イスタンブール条約を批准する価値があるだろう。」と。どういう世界の動向か。これ冒頭の部分で、「今日、女性が平等に社会に参画していくにあたって、「女性に対する暴力」が大きな障害となっていることは、世界共通の認識となっている。」と。

これ、上川大臣を始め政府が今取り組んでいるテーマそのものを林さんはおっしゃっているんだと思うんです。そのためにイスタンブール条約を批准する価値があるだろうと言っておられるわけで、この指摘は極めて重いと思うんですね。

これ、大臣、お一人の政治家として、この林さんの意見、指摘に対して、どんな御感想でしょう。

○国務大臣(上川陽子君) 私も、林陽子さんが国連の女性差別撤廃委員会の委員長、またその後、様々な活動をしていらっしゃるということについては、いろいろ御意見も直接承っているところでございます。

日本も今、女性の活躍推進ということにつきまして政府一体となって取り組んでいるところでございます。そして、女性に対する暴力の撲滅ということにつきましても、男女共同参画社会の形成のために大きな克服すべき重要な課題であるというふうに認識をしているところでございます。

今委員御指摘でございますが、様々な視点から、そうした状況につきましても、外国の状況も調べてしっかりと対応をしていくべく、必要な協力を他省庁ともしながら取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○仁比聡平君 ありがとうございました。

時間が参りましたので、外務省にはおいでいただいていましたけれども、批准の取組についてお尋ねする時間はありませんが、この焦点になるのは、性暴力の定義は同意に基づかない性的行為である、暴行や脅迫を要件としないという、ここに関わってくるわけで、大臣の決意をもって是非とも強く取り組んでいただきたいということをお願いをして、今日は質問を終わります。