○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

皆さん、お疲れさまでございます。今日は午前中から四人の参考人の皆さんに大変重要な御意見、問題提起を受けた上での対政府質疑になっておりまして、私、未成年者取消し権の意義、とりわけ若年者の消費者被害を防止する上で果たしているこの未成年者取消し権の重要性についてお尋ねをしたいと思うんですけれども、ちょっと抽象的な話から入ると、この時間ですので、具体的な事案についてお尋ねをしたいと思います。

午前中も、例えばマルチ商法などが話題にもなりました。お手元にお配りをいたしましたのは、AV出演強要と契約の関係なんですね。一枚目の資料にありますように、このAV産業ですが、入口として、ネットの広告とかスカウトを入口にして、プロダクション、それから、おおよそメーカーの場合が多いですけれども、制作に関わるこれは個人の場合もある、DVDなどのプレスという業者がある、そしてこれを、アダルトビデオを販売する、あるいは動画を配信する、一々挙げませんけれども、資料にあるように、有名どころも含めて様々なプレーヤーが複雑に絡み合っているわけです。

このAVに出演を強要する、あるいは強要されるという若年女性、男性の場合もありますが、スカウトだという人間から独特の業界用語だとかイントネーションで、法律用語らしきものもちりばめながら勧誘を受けるという、こういうことになるわけですね。

PAPS、ポルノ被害と性暴力を考える会の皆さんの作っていただいた資料なんですけれども、性を取り巻く法律と年齢という表がありますが、御覧のとおり、十八歳までは児童ポルノ禁止法だったり、あるいは青少年保護育成条例だったりというこうした法制度がありますけれども、十八歳以上になると、これ、未成年者取消し権以外はないと言っていいという、こういう状況にあるわけですね。

そうした下で、ちょっと私の方でもう少し説明して、まず男女共同参画局の認識をお尋ねしたいと思うんですけれども、二枚目に、当事者、若者あるいは被害者とプロダクションとの間での契約書の一部が掲載をされています。これ、専属芸術家契約書、専属モデル契約書などという場合もあるんですけれども、このプロダクションに対して若者が被害の損害を請求される、それは出演義務を怠った場合であるというようなことが麗々しく書いてある。

下の営業委託契約書というのは、これ、若者がプロダクションに自らの肖像権だとか財産権などの管理などを営業として委託をするという、この言葉遣い自体、法律関係自体、これ、私たちにもなかなか分かりにくいんじゃないかと思いますが、こうやって包括的に自らの肖像権も永久に渡してしまったというようなことにサインをさせられて、この義務に反すると損害を賠償しなければならないということが書いてある。

その次のページにあるのは、若者を中心にした被害者と、それからメーカー、制作会社との間で結ばれることのある出演同意書というものですけれども、赤枠で囲んであるとおり、「私は、本件コンテンツの出演にあたっては、貴社が本件コンテンツ撮影のため選定したスタッフの指示に従うものとし、演出・撮影方法について一切申し立てを行いません。」とありますね。

これ、演出とか撮影方法というのは、これは相手、例えば女性の出演であれば男優ですね、相手の男が誰なのか、それからその人数、それから果ては避妊するかどうか、そういうことも全部演出あるいは撮影方法だと強弁して、つまり、性的行為、とりわけ性交の具体的な態様について全てをメーカーサイドあるいはプロダクションサイドに委ねてしまうという、驚くべき、あり得ない契約なんですね。

下のAV出演同意書には、これは前回、三月の質疑でもちょっと触れましたけれども、この赤枠のところにあるように、撮影終了後以降における甲、甲というのは当事者、若い女性たちのことですが、甲の妊娠、性感染症への感染に関しては乙、これはメーカーサイドですが、に一切の賠償や責任を求めないものとしますなどと書かれているわけです。

こういう契約条項が仮に書面としてあったとしても、これは、本人の承諾があれば、真摯な承諾があれば別の議論があるかもしれませんが、本人が嫌だと言っている、こんな覚えはないと言っているということであれば、その外形というのは、これは著しい性的プライバシーの重大な侵害であって、人権侵害であるということを私は問題にしているわけですけれども。

こうした同意書なり契約書なるものが実際に、何というんですか、存在するという実態。その説明というのは、これはされていないということが多い、女優とされた当事者の側が持っていないことも多い、アダルトビデオと明示されていないものも多いなど、私が申し上げたような実態というのは、これ内閣府としてはどのような御認識でしょうか。

○政府参考人(渡邉清君) 内閣府男女共同参画局でございます。

ただいま御指摘いただきましたように、先生が御指摘いただいた全く同じような内容につきまして、私ども、ヒアリングで実態を聞いてございます。

内閣府が平成二十八年六月に強要問題の実態に関して民間団体の方からヒアリングを行いました。簡単に御紹介しますけど、ほぼ同じというのが実態、分かっていただけるかと思います。

メーカーとの契約では、肖像権や著作隣接権を包括的に譲渡してしまうということが一般的になっている。一たび被害者が契約に署名捺印すると、プロダクションは多くの場合、契約書を女性に交付しない。被害者側は契約書をよく読む時間が与えられなかったり、親族等に相談する機会も与えられない。また、最終的な危険性としまして、撮影された映像が本人の意に反して繰り返し使用、流通され、インターネット等にも掲載され続けることで二次被害に悩み、苦しみ続けることになる。

こういった実態を直接団体の方からお聞きしておりまして、実態の一端でございますけれども、認識しておるところでございます。

○仁比聡平君 そのとおりだと思うんですね。

民事局長にお尋ねをしたいと思うんですけれども、これは一般的な制度の説明として、未成年者取消し権、この要件と立証の責任がどのようになっているか。その観点からすれば、今、私が問題として、具体例として挙げているこうしたAVの出演強要という契約、これについては、これ全て未成年者であれば取り消せると思いますが、いかがですか。

○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。

未成年取消し権は、法律行為をした者が未成年者であることと取消しの意思表示をしたことを要件とするものでございまして、取消しを主張する者はこれらの事実について主張立証責任を負うということになります。

したがいまして、そのAVの出演契約につきましても、今のような要件が主張、立証できますれば原則的に取り消せるということになろうかと思います。

○仁比聡平君 つまり、そうした契約を結んでしまっても、その契約で、出なければ、出演しなければ損害賠償だとか、あるいは演出なんだから何人もの男性とやらなければ駄目なんだとかいうことを万が一言われるということがあったとしても、私はそのサインをしたかもしれないけど、そのときに二十歳になっていませんでしたということを示しさえすればこれ全部なかったことにできるというのが、これ未成年者取消し権なわけですね。

これ、民事局長、それでいいですね。

○政府参考人(小野瀬厚君) 御指摘のとおりでございます。

○仁比聡平君 この未成年者取消し権が若者の消費者被害を防止するために極めて大きな役割を果たしているというのが、午前中も参考人の皆さんおっしゃったとおりなのであって、もう一つ、ちょっと現場から、警察庁の御認識伺いたいと思うんですけれども、昨年の五月に、このAV出演強要の前線での相談に当たる警察の皆さんに、契約書みたいなものが、あるいは合意というものがあるような相談になっていたとしても、これは無効だったり取り消せたりする場合があるんだから、この外形に縛られて物を考えちゃならないという趣旨の通知も出していらっしゃいます。実際、その現場での相談というのがどんな実態になっているか。

それから、私は、今申し上げているようなケースがあって、相手が未成年者だということであれば、それは未成年者取消し権というのがあるんだから、これは取り消せるよと言って励ますというのが相談の現場だと思いますけど、いかがですか。

○政府参考人(小田部耕治君) まず、相談の内容でございますけれども、例えば、スカウトされてアダルトビデオへの出演契約をしたものの、出演に抵抗を覚え拒否したが違約金を請求されたといった相談でありますとか、スカウトされてタレント契約をしたと思ったが、スタジオに行くとアダルトビデオの撮影をすると言われたため拒否したところ、脅されて出演を強要されたといったような相談事例が見られるところでございます。

警察におきましては、アダルトビデオへの出演に関する契約等の相談を受理した際には、一般論としていえば、民事上錯誤に基づく契約は無効であるほか、その契約が詐欺や強迫に基づくものであったり、女性が二十歳未満であればアダルトビデオへの出演を承諾した意思表示を取り消すことができることなどを踏まえながら、個別的、具体的事案に応じまして所要の助言を行ったり、法テラス等の専門機関の紹介を行うなどしているところでございます。

今後とも、こうした相談があった場合には、被害者の心情に配意しながら、事案に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 そのような現場の実態なんですよ。だからこそ、こうしたアダルトビデオへの出演強要の契約というのは二十歳になった直後に行われることがもう極めて多いです。

町で例えばスカウトなるものをして、その女性が十八歳だと、あるいは中学生のときだってある、その彼女たちを二十歳になるまで囲い込むんですね。二十歳になったら、その途端に、大人になったんだからと、君も自分で決められるよね、成人式も来たんだからと、もう親の相談なんて要らないでしょうなどとまことしやかにいろいろいろいろやってサインをさせる、で、出演を強要するという実態が現実に私は存在すると思うんですが、内閣府、もう一度、そういう、二十歳になって契約という、そういう実態はありますね。

○政府参考人(渡邉清君) 私どもの専門調査会におけるヒアリングにおきましても、被害者の年齢は若年層に集中しておりまして、特に二十歳を超えたばかりの女性の被害が多いという実態が明らかになりました。

また、先ほど先生もおっしゃっておられましたけれども、二十歳を超えますと契約を取り消すことができなくなるため、まさに囲い込みといいますか、二十歳になるまでは露出の多いイメージビデオといったものに出演をさせておいて、二十歳になるとアダルトビデオの方に転向させる、移行させると、そういったケースが見られるというような実態を私どもも聴取してございます。

○仁比聡平君 現実にそういう被害があるわけです。

これを、未成年者取消し権が二十歳から十八歳に引き下げられてしまうということになると、高校三年生も含めたそうした若い若年の女性たちがそのターゲットになり、JKビジネスも含めてもっと若い女性たちにターゲットが移行するのではないか。その被害の重大性というのが更に更に大きくなる、ちょっと計り知れない思いもするんですね。

これ、どうにかしなきゃいけないと思うんですが、ちょっと先に消費者庁に伺いますが、今回、今国会に提案をしておられる消費者契約法改正での取消し権の新設で今申し上げているようなこうした被害は防げますか。

○政府参考人(井内正敏君) お答え申し上げます。

消費者契約法の消費者とは、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く個人とされております。反復継続的に同種の行為が行われるようなときは、事業として又は事業のための契約ということになり、消費者には該当しないと考えられるものの、声を掛けられた女性が単発でアダルトビデオに出演する契約を締結するようなケースでは消費者契約法の適用があり得ると考えられます。

改正消費者契約法についてということでございますと、例えば、事業者が出演契約を締結する前に、出演契約の締結を目指して撮影の準備をしてしまい、出演をしないのであればその費用を支払うよう告げて勧誘したため、消費者が困惑し、契約を締結してしまった場合には、新設される第四条第三項第八号の規定により契約を取り消すことが可能になるときがあると考えております。

○仁比聡平君 今の御答弁でお分かりいただいたと思うんですけれども、つまり、取り消せる場合がごく一部あるというふうに変わってしまうんですよ。しかも、声を掛けられて、単発で、最初に引っかかってしまったときのことしかそもそも消費者契約法の対象にならないと、そういうふうにおっしゃっているわけですよ。

消費者庁、そういうことですね。

○政府参考人(井内正敏君) お答えを申し上げます。

先ほども申しましたように、反復継続ではなくて単発のときに適用があるということでございます。

○仁比聡平君 いや、それでいいのかということを私は問うているんです。

大臣、今示していただいたように、未成年者取消し権がその取消しの対象としている範囲、これは二十歳であれば絶対なんですね。だから鉄壁の防波堤だし、だから悪質な業者はここに近寄れないわけですよ。これを十八歳に引き下げてしまうと、引き下げるということになったら、これ、その保護はなくなるわけですよね。それを大臣はなくそうと提案をしておられる、それを国会に判断しろと言っておられる。

そうやっても消費者被害の防止には十分だと大臣、繰り返し答弁されるけれども、消費者契約法で新設される取消し権では、今申し上げているように現実に保護されなくなってしまうんです。これ、何とかしなきゃいけないじゃないですか。大臣、どうお考えですか。

○国務大臣(上川陽子君) 当事者のこの性的自由、これを不当に拘束する契約、先ほど委員から様々な場面をお示しをいただきましたけれども、当事者が速やかに解放する必要性、これが高いということにつきましては委員御指摘のとおりというふうに思っております。

これは成年年齢を引き下げるかどうかにかかわらず取り組むべき大変重大な問題であるというふうに認識をしております。また、成年年齢の引下げによりまして、十八歳、十九歳の若者に対しましてこうした不当な契約が拡大するということについて大きな御懸念があると、こうした御意見があるということも承知をしているところでございます。

未成年者取消し権以外につきましても、公序良俗違反や錯誤による無効、詐欺又は強迫を理由とする取消しなど、契約の効力を否定をする手段、これは存在するところでございます。また、消費者契約法に基づく取消しができる場面もあるということで、先ほどの答弁のとおりでございます。

このように、現行制度におきましても、不当な契約から当事者を解放する手段、存在するわけでございますが、御指摘の問題に対する対応として、これらの既存の手段で十分か否かにつきましては、政府としても検討を続けなければならない喫緊の課題であるというふうに認識をしております。

○仁比聡平君 時間がなくなってしまいましたのでここで今日は終わらなければなりませんけれども、十分か否かを検討し続けなければならない喫緊の課題だと、その答弁の意味が一体どういうことになるのか、ここをちょっとこの委員会ではっきりさせていただかないと、これちょっと議論が前に進まないと思うんですよね。

今大臣が例示に挙げられた民法九十条、公序良俗違反による無効、あるいは錯誤や詐欺、こうした要件というのは極めて厳しくて、これ民事局長にお尋ねをすれば一発だと思いますけれども、これ被害者、とりわけ若年女性が、あるいはその保護者が自ら主張、立証して不当な拘束から解放されるというのは本当に極めて困難ですよ。弁護士が代理人に立って徹底的に闘ったって裁判所は不当判決を次々に出してきていますよ。そうやって不当な契約に拘束をさせるようなことを若年層にはしちゃならないと。それは自己責任じゃなくて、それは成長を保障するためにそういう被害に遭わせちゃならないというのがこれまでの未成年者保護の理念じゃありませんか。ここは壊しては駄目だということを厳しく申し上げ、次回また質問させていただきます。

ありがとうございます。