193通常国会2017年6月5日決算委員会『市民監視は許されない。基準は警察のさじ加減』

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

私は、共謀罪法案と市民のプライバシーについてお尋ねをしたいと思います。

政府は、一般の方々が対象となることはあり得ないと繰り返しますが、結局、警察に捜査対象と目されれば誰もが一般人ではなくなるということではないのかと、専門家、そして国連特別報告者から厳しい指摘、懸念が示されてきました。国民の不安も広がっています。

先週末の北海道新聞の世論調査では、共謀罪反対が四月から一四ポイント増えて五九%、内閣支持率は一二ポイントマイナス、自民党支持層でも説明不十分が六八%、公明党支持層の八六%が今国会成立に否定的と、こうした整理がされているわけですが、そうした中で、金田法務大臣は、一週間前の参議院本会議で初めて、環境保護団体や人権保護団体を隠れみのに組織犯罪を企てた場合は共謀罪と答弁をいたしました。これは、衆議院では全く述べてこなかった重大問題であります。

パネルにその答弁の中心部分を紹介をしておりますが、(資料提示)対外的には環境保護や人権保護を標榜していたとしても、それが言わば隠れみのであって、実態において云々と。金田大臣、この隠れみのとか実態としてというのは、これは一体どういうことなんですか。

○国務大臣(金田勝年君) 仁比委員にお答えをいたします。

去る五月二十九日の本会議において、ただいまの言及のあったその答弁をしておるということですが、環境保護や対外的には人権保護を標榜していたとしても、隠れみのであって、実態において、構成員の結合関係の共同の目的が一定の重大な犯罪等を実行することにある団体と認められるような場合には組織的犯罪集団と認められるのではないかという問いに対して、私は、そういうケースであれば、その構成員はテロ等準備罪で処罰され得るということを申し上げただけであります。

そして、その趣旨は、御指摘の答弁は、ある団体が組織的犯罪集団に該当するか否かというのは、当該団体が標榜している目的や構成員らの主張する目的のみによって判断するのではなくて、当該団体の活動実態等を総合的に考慮し、構成員の結合の目的が一定の重大な犯罪等を実行することにあるか否かにより判断するということを申し述べたものであります。すなわち、御指摘の実態というのは、ある団体の活動実態を指しているものであります。

○仁比聡平君 団体の活動実態を総合考慮するのであるという御答弁なんですね。

これ、つまり環境団体や人権団体、その活動実態あるいは組織構造を解明するというような言葉も法務委員会では先週御答弁されましたけれども、そうした実態を解明していくということです。

大臣は、法務委員会で暴力団のフロント企業というのを例示をされましたが、そうやって例示してみたところで処罰範囲は明確には全くならないわけですね。それは、法案が言う組織的犯罪集団が、その言葉で多くの国民の皆さんがイメージをされるような、例えば広域指定暴力団や、あるいは国際テロリスト、テロ組織としてFATFに基づく資産凍結やマネーロンダリング対策などの対象としてリストアップされている、これ、今およそ三百九十四個人、八十団体ありますけれども、こうしたあらかじめ分かっているものとは全く違うからなわけです。

これ、大臣、例示ということであれば、○○マンション建設を考える会とか原発再稼働反対の何々住民の会とか米軍基地強化反対の○○住民の会、こういったものでも、活動実態、組織構造を見て共謀罪で処罰され得るということは否定できないことになりませんか。

○国務大臣(金田勝年君) お答えをいたします。

テロ等準備罪における組織的犯罪集団の意義についてお聞きということになります。

国内外の犯罪情勢を考慮するときには、条文に例示しておりますテロリズム集団のほか、暴力団、薬物密売組織といった違法行為を目的とする団体に限られるわけであります。

テロ等準備罪における組織的犯罪集団というのは、組織的犯罪処罰法上の団体のうち、構成員の継続的な結合関係の基礎となっております共同の目的が改正後の組織的犯罪処罰法の別表第三に掲げる一定の重大な犯罪等を実行するものにあるものをいうわけであります。

ある団体が組織的犯罪集団に該当するか否かは、テロ等準備罪の成否が問題となる時点において団体の結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げられた犯罪を実行することにあるか否か、これによりまして判断されるわけでありますが、ある団体がテロ等準備罪の構成要件の一部であります、三つあるうちの一部であります組織的犯罪集団、該当するか否かは、収集されました証拠に基づいて個別具体的に判断されるべきものであるわけであります。

一般論として申し上げれば、ある団体が該当するか否かというのは、テロ等準備罪の成否が問題となる時点において団体の結合関係の基礎としての共同の目的が先ほど申し上げた別表第三に掲げられた犯罪を実行することにあるか否かによって判断するということになります。

○仁比聡平君 大臣、やっぱり言葉がぐるぐる回っているばっかりで、手ぶりは付けられても説得力は全くないんですよ。

大臣、三つ挙げられたテロ組織などに限られるというふうにおっしゃいましたけれども、テロリズム集団も例示、暴力団や薬物密売組織というのも例示、ですから、限られるとおっしゃっているのは、考えにくいとか想定し難いとかいうふうにおっしゃっているだけであって、共謀罪法案の対象となるのか、処罰の対象となり得るのかということでいえば、これは否定できないわけでしょう。その共謀罪法案の、大臣が隠れみのなら共謀罪とおっしゃったんですから、ちゃんと答えていただきたいと思うんですね。

共謀罪というのは、ほかの犯罪とは全く違うわけです。それは、人の生命や身体、財産などの法益を侵害する危険が客観的にはない合意や実行準備行為を限りなく人々の内心に踏み込んで処罰する、それが共謀罪だということです。

ですから、政府はそれが総体として危険だから処罰すると説明してこられました。けれども、環境保護とか人権などの市民運動の実態というのは、先ほど申し上げたように、構成員などを事前に審査されている指定暴力団とは全くこれ違いますよね。となれば、環境団体や人権保護団体の活動実態や組織構造、あるいは委員会では任務分担や指揮命令などという言葉も出ていますが、これが危険ではないかと警察が実態をつかむと、そういうことですね、法務大臣。

○国務大臣(金田勝年君) お答えをいたします。

テロ等準備罪は、組織的犯罪集団が関与する一定の重大な犯罪の遂行を計画したことに加えて、実行準備行為が行われた場合に成立するものであるわけであります。組織的犯罪集団というのは、組織的犯罪処罰法上の団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が一定の重大な犯罪を実行することにあるものをいうわけでありまして、ある団体についてのこの結合関係の基礎としての共同の目的が何であるかについては、個別具体的な事案における事実認定の問題でありますが、継続的な結合体全体としての活動実態等から見て客観的に何が構成員の結合関係の基礎になっているかについては、社会通念に従って認定されるべきものと考えられる。

その上で、犯罪の成否を、一概に結論を申し上げる、具体的に事実関係を離れて申し上げることは困難でありますが、あくまで一般論として申し上げますと、御指摘のような団体の構成員は、基地建設反対又はそういう環境保護団体、いろいろとそういうことによります地域の負担軽減や自然環境の保全を目的として結合しているものと考えられるので、一定の重大な犯罪等の実行を目的として構成員が結合している団体であるとは想定されませんので、テロ等準備罪は成立しないというふうに考えられるわけであります。

○仁比聡平君 大臣、また答弁をごまかされているんですね。

大臣がおっしゃるとおり、地域の負担軽減だとかあるいは自然保護、これを目的に環境団体やあるいは人権団体が活動している。けれども、それが重大犯罪の実行の目的を共同の基礎にしているかということについて、大臣も最後、想定し難いとおっしゃっているだけで、それは法律上は当たり得るということを大前提にしているわけです。それを個別事案で実態を見て隠れみのかどうか見極めるというのが隠れみの答弁ですよね。

結局、与党は、よく労働組合や市民団体は組織的犯罪集団にならないとしきりに言うんですけれども、一変にせよ隠れみのにせよ、結局、人々が何かを話し合い合意をしたことを警察が重大犯罪の共謀だと疑いを掛けたときに、その人々が組織的犯罪集団だと警察がつかみ判断する、そうおっしゃっているだけです。では、隠れみのかどうか、活動実態や組織構造をどうやって見極めるのかと。

国家公安委員長にお尋ねをしますが、現に大問題になっているのが岐阜県警の大垣署事件です。住民は中部電力の子会社の風力発電施設建設をめぐって勉強会を開いただけでした。ところが、岐阜県警は、その住民の機微なプライバシーをひそかに収集し、事業者側にこっそり提供して、住民運動をどう潰すかと相談をしたわけです。それが発覚した。国会でも大問題になって議論になった。ところが、政府は、ずっと通常業務の一環だと言って正当化をしてきたわけですね。

同じような認識で、住民運動が隠れみのかどうか情報収集をし、共謀罪の嫌疑がその中から出てくれば捜査に移行していくというのが警察活動の現実ではありませんか。

○国務大臣(松本純君) 捜査は個別の事実関係に即して行われるものでありますから、テロ等準備罪をどのように捜査するかについて具体的にお答えすることは困難であり、その上で一般論として申し上げれば、ある団体が組織的犯罪集団に当たるかどうかについては、その団体の実態に即して、法と証拠に基づき個別に判断されるものとなると思います。

○仁比聡平君 全くお答えになっていない。

警察は、犯罪捜査とともに犯罪予防の名の下に情報収集活動を徹底して行っているわけです。公安活動とか行政警察活動と、そういうふうに言われます。そうした警察の通常業務の一環であると正当化しているのが私が申し上げた岐阜県警大垣署のやった実際の情報収集活動なんですね。

現にやっている、それを今も正当化しているということになれば、これからもやる、今もやっているというのが当然であって、そのことが一つよろしいかということと、もう一つは、その情報収集活動の中で、一定の集まりの中で何が行われているのか、活動実態をあるいは組織実態をこれつかむということになるでしょう。実際、これまでそうやってきている、その下で共謀罪が行われているのではないかという嫌疑を抱けば捜査に移行するんじゃありませんか。

○国務大臣(松本純君) 警察では平素より様々な情報収集活動を行っておりますが、その目的は、公共の安全と秩序を維持するという警察法に定められた責務を果たすということにあり、情報収集活動はその責務の範囲に限られ、その手段、方法については法律の範囲内で必要かつ妥当な限度内において行われるものであると認識をしております。

○仁比聡平君 皆さん、答弁されていないでしょう。おかしいでしょう。

この公安警察活動の実態について聞かれると、全て口を拭って、法令に基づき適切に職務を遂行しているなどと述べ続けるだけ、総理もそれを正当化される、この間の本会議場での御答弁、そういうことでした。

一個、松本国家公安委員長、確認したいんですが、先週の法務委員会で私の質問に対しておっしゃった、公共の安全と秩序の維持という責務を果たすために行う警察活動の結果、これはつまり情報収集の結果ということですが、これを個別具体の状況に応じて捜査に活用するということは否定されていないと答弁されました。そうですね。

○国務大臣(松本純君) 一般論としてはあり得ると存じます。

○仁比聡平君 つまり、犯罪予防の名の下に広く行われている公安情報収集活動と共謀罪の犯罪捜査というのは、これ連続して行われるんですよ。お認めになりました。

この大垣事件で監視をされたのは四人の方々です。中には勉強会には全く無関係だった人もいるんですが、総理、聞いていらっしゃいますか。この方々はなぜ情報収集の対象になったのか、その基準はどこにあるんですか、松本大臣。

○国務大臣(松本純君) 岐阜県大垣警察署の警察官が公共の安全と秩序の維持に当たるという責務を果たすため、関係会社の担当者と会っていたものと警察庁から報告を受けております。

個別具体的な内容については、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えを差し控えさせていただきます。

○仁比聡平君 結局、警察のさじ加減一つということなんです。

総理にお尋ねしたい。それは、プライバシーを侵害される国民の傷の深さについてどんな御認識かということなんです。

大垣事件の被害者のお一人、船田さんという方がいらっしゃいますが、監視されたことが分かり、人の目を気にする自分がいる、人を信頼して本音を打ち明けられなくなる監視の怖さ、共謀罪の怖さということを語っておられます。

お寺の住職の松島さんという方が西日本新聞のインタビューに応じられました。そこでは、勉強会から約一年たって、新聞の取材を受けて初めて自分と友人が警察から調べられていたということを知ったんだそうです。県警からは謝罪はない。学歴や病歴まで県警に教えたのは一体誰なのか、尾行されていないのか、盗聴はされていないのか、ふとしたときに集落の人を疑心暗鬼の目で見るようになったと、うつむいて語っておられるんですね。

警察によってひそかにプライバシーを侵害され、なぜ調査対象にされたのかも分からない。総理、こうした深い傷を負った被害者に私は謝罪すべきだと思いますよ。いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 既に松本国家公安委員長が答弁しているとおり、警察がその責務を果たすために行う行動は、もとより法令に基づき適切に遂行されなければならないものであります。警察には、引き続き、国民の信頼に応えるべく、法令を遵守し、適正に職務の遂行に当たってもらいたいと考えているところであります。

そしてまた、テロ等準備罪処罰法案につきましても、従来から法務大臣が答弁をさせていただいておりますように、被疑者でなければこれは捜査の対象にはならないわけでございまして、まさにこれは、実行準備を行っていなければこれは言わば被疑者とならないわけでございます。という意味におきましても、言わば一般の方々が捜査の対象になることはないと、このように考えております。

○仁比聡平君 総理が、ここに来てもなお正当化しておられるわけですね。

総理、今御答弁の中に、被疑者にならなければ捜査の対象にならないというお話ありました。これは、犯罪と思料されるという段階にならないと捜査の対象じゃないということをおっしゃっているんでしょうけれども、けれども、岐阜の大垣署の事件で、今も国家公安委員長がお認めになっておられるとおり、風力発電計画の施設の建設問題について勉強会を開いたというその住民の方々をプライバシーに立ち入った情報収集の対象にして、それを通常業務の一環ですと言っているのが警察なんです。そうした方々が警察活動のひそかなプライバシー侵害の調査の対象になっている、このことについての認識はないということじゃないんでしょう。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、この個別の事案について私はお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、言わば警察は、言わば一般論として言えば、警察がその責務を果たすために行う行動は、もとより法令に基づき適切に遂行されなければならないと、こう考えているところでありますし、テロ等準備罪処罰法案につきましても、言わば謀議をする、そしてさらに実行準備をするということになってこれは被疑者となるわけでありまして、言わば被疑者とならなければ捜査の対象にならないわけでありますから、一般の方々が捜査の対象になることはないと、このように考えております。

○仁比聡平君 警察公安活動の情報収集活動と捜査が連続するということは、先ほども国家公安委員長がお認めになったとおりであって、総理、今日の議事録よく読んでいただいて、本当にこのまま共謀罪法案通していいのか、よく考えたら撤回した方がいいと考え直された方がいいですよ。

そうした議論について、私、今日、総理にきちんと伺いたいことがあるんです。それは、昨晩のラジオ番組、放送されたラジオ番組で総理は、共謀罪法案の国会審議について、野党の議論はまさに攻撃をするためにそういう不安をあおっているにすぎない、不安を広げるための議論を延々としていると発言をされました。

今日私が指摘をした問題も含めて、もちろん私は野党の議員ですが、これは、私のみならず多くの専門家、そして法曹実務家、こうした方々の共通の厳しい指摘であり、国民の不安の焦点なんですね。それを、不安を広げるための議論を延々としているなんというのは、野党の質問権、国会の審議を否定する重大発言ではありませんか。私、この発言内容を認めて、撤回されるべきだと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) もとより、質問権を、言わばこれを妨害することはできないわけでございまして、事実、こうやって質問をしておられるわけでございます。

私がラジオで申し上げたのは、これまで一般人はテロ等準備罪の処罰の対象とはならない旨を繰り返し丁寧に国会を始め様々な場で御説明をさせていただいてきましたが、様々な場面において、いまだにあたかも一般の方々がテロ等準備罪の処罰の対象となり得るかのような議論が繰り返されており、これはいたずらに不安を広げるための議論になってしまっているという面があるのではないかとの私の思いを申し上げたわけでございます。

あわせて、ラジオ番組では、まだ私の説明が不十分である旨を申し上げつつ、丁寧に分かりやすい説明に心掛けていきたいと、こうも述べているわけでございまして、真摯に、謙虚に答弁をしていきたいと、このように考えているところでございます。

○仁比聡平君 私も昨日放送を聞きましたけど、そんな議論になってしまっているのではないかなんというような、そんな御発言ではありませんよ。不安を広げるための議論を延々としているんだろうと思いますねと強調しておられたじゃないですか。それをこの国会で指摘をされると、そんなふうに言い逃れようとする。実際に、警察は普通に暮らす市民を監視している、今日の議論でも明らかになった。そうした秘密体質と共謀罪法案の不明確性が結び付いて深刻なプライバシー侵害が引き起こされる、これが国連特別報告者の厳しい指摘であって、この指摘に応える情報提供をし……

○委員長(岡田広君) 時間が来ていますので、質問をまとめてください。

○仁比聡平君 それを国会に提出し、徹底して審議をする、そのことを強く求めて、私の質問、終わります。