○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。今日は、タイムテーブル上、最初に質問をさせていただくことになりまして、御配慮を感謝をいたします。

大臣に、引き続き共謀罪について伺いたいと思います。

私は、合意の処罰は、これは憲法違反であり、罪刑法定主義に反するものだと繰り返し指摘をしてきたわけですが、今日は、法案で処罰の対象だとなっている計画というのは一体何かと大臣にお尋ねをしたいと思うんです。

これ、以前の質疑、三月九日のこの委員会で、局長から、「計画という行為、計画文言を使ってその行為を例えば犯罪の成立要件のように用いている罰則の例というものについては承知をしておりません。」という答弁を確認をしました。つまり、犯罪構成要件として計画という用語を使うのは、これは初めてのことなんですね。

一方で、広辞苑などによりますと、計画とは何かというと、物事を行うに当たって方法、手順などを考え、企てることというふうにありまして、つまり、思い立ち、考え、もくろむことというのが一般用語でいう計画なわけですね。

これ、大臣、その組織的犯罪集団が計画したら、こういう思い立ち、もくろむ、こういうことを全て処罰するわけですか。

○国務大臣(金田勝年君) テロ等準備罪における計画といいますのは、組織的犯罪集団が関与をする特定の犯罪の遂行を具体的かつ現実的に合意することを言っておるということであります。

○仁比聡平君 全然分からないんですけど、具体的かつ現実的にというのは、これはどういうことなんですか。

○政府参考人(林眞琴君) テロ等準備罪における計画とは、ただいまありましたように、組織的犯罪集団が関与する特定の犯罪の遂行を具体的かつ現実的に合意するということをいうわけでございます。

その場合の具体的といいますのは、この場合のその計画というものが組織的犯罪集団が関与する特定の犯罪の遂行、特にそれが組織により行われることを合意、計画するということでございますので、その組織に関する部分、指揮命令でありますとか役割分担、こういったものが具体的に計画されるということを意味しております。

また、現実的にというのは、その実際に対象となる犯罪の結果発生に向けて、その可能性という点で現実的な可能性がある合意ということを意味するというところでございます。

○仁比聡平君 仰々しい法律用語を敷衍するばかりで、結局その内実というのは、意味、全然はっきりしない。

つまり、今の御答弁を伺っても合意を処罰するんだということがはっきりしていると思うんですが、その中身については別の機会に議論したいと思うんですけれども。

大臣、この計画というのは、これ書面でされることが必要なんですか。例えば、綿密で具体的な犯行の分担なんかを記した計画書みたいなものが、これ絶対必要なんですか。大臣。

○政府参考人(林眞琴君) 計画というのは、先ほど申し上げたような具体的、現実的な合意ということでございます。そういったものを、合意というものがどのように行われるのか、ことについては、ここにおいて手段等を限定しているわけでございません。

したがいまして、委員が御指摘になった書面というようなものは、こういった合意というものを立証する手段というふうに考えております。

○仁比聡平君 つまり、計画イコール合意は、これは書面でなされる必要はもちろんないわけですね。大臣と私がどこかで二人で話し合って何か合意したとなると、これは計画だということなんですよ。

もちろん計画書がある場合もあるでしょう、それが証拠となって立証されるということがあるでしょうけれども、計画書がない場合というのもそれはいっぱいあると。これ、大臣、どうやって立証するんですか。

○国務大臣(金田勝年君) どういうふうに立証するのかということでございますが、テロ等準備罪の立証につきましては、他の多くのひそかに行われる罪の場合と同様の方法で、刑事訴訟法の規定に従って必要な立証を適切に行うことになるものと考えております。

例えば、犯行手順が記載される、そういうメモのような証拠、あるいは計画の状況を聞いた者や他の計画に加わった者の供述などにより立証するということが考えられるわけであります。

○仁比聡平君 ですから、いや、他のひそかな犯罪と同じだとか言ってみたところで、実行行為やあるいは客観的な危険性のある予備行為などを前提にしてきたこれまでの証拠収集というのとは、これはまるっきりがらっと変わるわけですよね、合意そのものを処罰するとおっしゃるわけだから。

だから、その立証方法は何かと、どんな証拠をもって認定するのかというのが私のお尋ねですけれども、今大臣、手順を記載したメモなどとおっしゃいましたが、それはつまり計画書の類いであって、そういうメモがない場合どうするんですかと言っているんですよ。大臣のお答えは、結局、計画状況などを聞いた者あるいは加わった者の供述だと。そのほかは通信傍受だとか、あるいは固定カメラで隠し撮りするとかいうこともおっしゃるのかもしれないが、それはちょっと今回おいておきます。

つまり、供述ということなんですが、これ大臣、この共謀罪について、特に、自首をした者の必要的減免の規定が置かれているというのは、これは御存じですね。大臣、御存じかどうか。

○国務大臣(金田勝年君) お答えしますが、そのとおりであります。

○仁比聡平君 その規定が密告の奨励になるではないかという厳しい批判がありますけれども、私はその機能を実際果たしていくだろうと思いますが、今日聞きたいのはそこの問題じゃないんです。

必要的減免を受ける密告者、これはさきの刑訴法改悪によって導入された司法取引などもここに関わってくるでしょうけれども、この密告者の供述、これ大臣、イメージ湧きますよね、これこれという人たちがこのような重大犯罪の実行を計画をしていますという、そういう密告ですよね。例えば警察に自首してきてという形で、調べたらそういうことを言っていると、これが調書になると。これだけでも、大臣、有罪にできるんじゃないんですか。大臣。

○国務大臣(金田勝年君) 最高裁の判例によれば、いわゆる補強法則による補強を要する供述というものは、当該被告事件における被告人の供述についてであると解されておりまして、そして、被告人本人の自白というもの、それについて、それと相まって犯罪時点を認定できるように証拠を収集し提出をするということになろうと思います。

○仁比聡平君 大臣、今御答弁なさっていることの意味、お分かりですか。何ですか、その当該犯罪時点において証拠を収集することを検討するって。それは当たり前のことでしょう。

○国務大臣(金田勝年君) そうです。

○仁比聡平君 そうですと今大臣おっしゃったんだけれども、いや、私が聞いているのは、密告者の供述というのが、当然、法そのものがそれを期待しているわけですよね、法案そのものが。私から言わせると、何にもないのに、その中の一人がこんなことがありましたということを詳細かつ具体的に語るということ、あるんですよ。現実の戦後の刑事裁判、冤罪事件の中で、全く存在しなかった事実をさもあったかのように供述証拠が積み重ねられるという事案というのは鹿児島の志布志事件始め数々あるわけですが、そうした供述証拠の信用性というのは極めて危険な下で、私が今日尋ねているのは、密告者の供述のみをもって共謀罪が有罪とされるということがありませんかということなんです。

○政府参考人(林眞琴君) 基本的に、その共犯者あるいはその自首した者の供述、これが今回のテロ等準備罪の証拠手段になるということはそのとおりでございますが、それだけでこのテロ等準備罪の立証ができるかということにつきましては、基本的に、この証拠によりまして合理的な疑いを差し挟む余地のない程度への証明ができているかどうかということの裁判所の判断に関わることになります。

なお、こういった共犯者の自白というものについては、一般に巻き込みの危険性があるということは当然前提として書かれておりますので、共犯者の、巻き込みの危険性があるというこの共犯者の自白につきましては、やはりその他に客観的な裏付けの証拠があるかどうか、こういったことが慎重にその信用性の吟味の中で図られると考えております。

○仁比聡平君 それで、大臣、今局長が、あたかも合理的な疑いを入れない証明が必要だと、そういう証拠が集まるかのようにおっしゃっているんだけれども、だけれども、局長の言うとおりなんですよ。それが有罪と立証されているかどうかの判断というのは、これ裁判官の判断なんですよね。これ、刑事訴訟法の三百十八条という条文をそのまま申し上げると、「証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。」というふうになっている、いわゆる自由心証主義という範疇の話になるわけです。

先ほど大臣、御答弁の中で、最高裁の判例などによりますとという、共犯者の自白の問題でおっしゃいましたけれども、これ、一番端的に共犯者の自白の証明力について述べている大変有名な昭和三十三年の最高裁判決がありますが、ここでは、かかる者たちの、つまり共犯者ですが、かかる者たちの犯罪事実に関する供述は、独立、完全な証明力を有すると述べているわけです。独立、完全な証明力を有すると最高裁が言うわけだから、私が申し上げているような密告者の供述のみしか証拠がない場合だって、裁判官がこれを証明力はあるというふうに認定すれば、それのみをもって有罪にされるでしょう。大臣、どうですか。

○国務大臣(金田勝年君) 先ほど刑事局長からも申し上げました。共犯者の自白については、一般に巻き込みの危険があるとの指摘がございます。そういうことも踏まえまして、客観的な裏付け証拠の収集に努めていき、その信用性については慎重に対応していくということを努力することによってしっかりと慎重に判断されるものと考えておりますし、捜査実務に関しましては、その責任者であります刑事局長の答弁を私はそのとおりだというふうに申し上げざるを得ないと思います。

○仁比聡平君 慎重に判断するとおっしゃるけれども、慎重に判断するのは大臣じゃないんですよ。現場の警察官や検察官であり、あるいは裁判官なんですね。そして、その捜査機関や、残念ながら裁判所は、事実誤認あるいは誤判の冤罪を数々行ってきた、証拠の評価を誤ってきました。とりわけ自白は危険です。けれども、制度上、つまり刑事訴訟法上、密告者の供述のみをもって有罪とできるというのが共謀罪なんですよ。実行準備行為を求めることにしたから、これ、だからいいんだなんて大臣言うけれども、それって所詮、花見か下見か、その区別は内心を問わないと分からないというわけでしょう。組織的犯罪集団だと言うけれども、二人以上が、大臣と例えば私がどこかで話し合ったら、それを組織的犯罪集団だと認定するかどうかは、それは捜査機関の判断じゃないですか。

そんな危険なことを我が国の刑事司法に持ち込んでいいのかと、罪刑法定主義も適正手続も根本から破壊するものになってしまうという警告を厳しく申し上げまして、時間参りましたので質問を終わります。