○参考人(塩崎賢明君) 立命館大学の塩崎です。

お手元に数枚のメモをお配りしてあると思いますが、それに沿って、大きくは二点についてお話ししたいと思います。

まず一点目は、今回のこの法改正全体についての私の意見です。

今回の改正法案を見ますと全六十四条になっていますが、現行法は十二条なんですね。物すごく大きく条文が増えていますが、中身の大半は、住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業に関するものが三十二条と半分を占めていて、ほとんどがそこに費やされている。すなわち、今回の法改正の主眼は空き家を活用した住宅登録制度の創設という点に置かれていると、こう考えます。

ところが、この住宅セーフティーネット法というものは、本来、住生活基本法の基本理念を実現するという役割を担っているものであります。住生活基本法の理念は四つあるわけですが、その四番目が居住の安定の確保ということであって、住宅セーフティーネット法はこの四番目の理念を実現する役割を担っていると考えます。

住生活基本法の具体的な施策としましては、住生活基本計画、全国計画が昨年閣議決定されました。ここには八つの目標が掲げられているわけですが、そのうちの三番目が住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保ということに置かれています。

したがいまして、住宅セーフティーネット法の役割は、住生活基本法の理念を実現し、かつ住生活基本計画で掲げられているこの三番目の目標を実現するというところにあるだろうと考えられますが、今回の法改正はこの基本理念や住生活基本計画の目標三に対応していて、新しく住宅セーフティーネットの制度を設けるという点は、これらの基本理念や目標三を達成する上では一つの大きな前進だというふうに評価はできると思います。ただしかし、基本理念の四番目や目標の三番目を実現する上でこれで十分かというと、十分でないところがあるというのが私の意見です。

その一つの理由は、基本計画の目標には四つの基本施策が掲げられているんですけれども、今回の法改正はそのうちの二つについて対応はしています。すなわち、住宅確保要配慮者の増加に対応するために空き家の活用を促進するとともにというのが一つ目。二つ目が、民間賃貸住宅への住宅確保要配慮者の円滑な入居を促進するため云々と。こうした点には対応しているんですけれども、三番目の公営住宅、UR賃貸住宅等の公的賃貸住宅を適切に供給するという施策についてはほとんど言及がないわけですね。

現在、公営住宅に対する応募倍率は全国で五・八倍、東京都では二十二・八倍と言われています。なおかつ、公的住宅はこの間、この十年間で表にありますように五万戸も減少しているわけですね。公営住宅をどんどん建てるということは財政的に厳しいことはもちろん分かっているわけですけれども、法においても計画においても適切に供給すると、こう述べていますし、現実に減っているわけですから、これに対する対応というものが本来求められるだろうと思うんですね。この点がちょっと欠けているんではないかなということです。

この点については、衆議院の委員会で国土交通大臣が、この役割はいささかも低下するものではないということをおっしゃっておられまして、この点、衆議院の附帯決議にも付記されているわけですけれども、本来、法改正にきちんと位置付けるべきではないかなというのが私の意見です。

二つ目に、この新しい住宅セーフティーネット制度ですけれども、登録住宅制度なんですが、現状の住宅確保要配慮者の困窮状態を解決するのに十分なのかという点でやや疑念があるということです。

例えば、収入五分位以下の世帯だとか公営住宅以外の借家に住んでいる人たちの数だとか、あるいはその中で特に高家賃負担をしている世帯の数だとか、こういうものを見比べますと膨大な数があるわけですね。少ない数見ても二十八万世帯ぐらいあるんですけれども、今回の登録住宅の計画では二〇二〇年までに十七万五千戸、年間五万戸という目標を掲げているわけで、その間に大きなギャップがあるんじゃないか。なおかつ、自主的な任意の登録制度なので、どこまで計画がちゃんと行けるかという辺りも不安があります。また、家賃低廉化措置というのが設けられているんですけれども、先ほど土肥先生もおっしゃいましたけれども、初年度三億円という予算で、恐らく登録住宅全部が実現したとしてもその二〇%若しくは一〇%程度しかこの恩恵が受けられないという点でやや不安があります。

それから、本法案で私が注目すべき、評価すべき点だと思うのは、都道府県計画や市町村計画がきちんと導入されているということで、ここにきちんとした公的住宅も含めた計画が都道府県や市町村で計画されることが大変重要だと思います。

時間がなくなってきましたので、二つ目の大きな問題は、被災者の居住の安定の確保の問題であります。

改正法案の二条では、被災者を住宅確保要配慮者として位置付けているんですけれども、括弧三年に限るという限定が付いているんですね。しかし、私は、この現在の東日本大震災やあるいは熊本の、熊本はまだ一年ですけれども、状況を見ていますと、災害発生から三年を経過していないものに限るという限定は現実に合わないだろうというふうに思います。この点についても既に議論がされていて、法ではそうなっているけれども、実際、現実に被災者で住宅困窮に陥っている人に対してはそれなりの支援措置を講ずるということをおっしゃっているわけですけれども、私は本来、本法の本則においてその点を改めて、被災者を三年に限るというふうにしない方がいいのではないかなというのが私の意見です。

この点に関してはいろいろ細かい議論がありまして、私はどうして今回新たに三年に限るということを導入したのかということについてやや疑問、疑念を持っているわけですけれども、これは、公営住宅法における規定だとか被災市街地復興特別措置法における規定だとかに関連して、それと整合させているのだという説明もあるわけですけれども、私は、その点はちょっと時間がないので詳しくは申し上げられませんが、多分そういう整合性を取る必要はないだろうというふうに思います。今回の法改正は、公営住宅の入居資格だけに関したものではなくて、民間賃貸住宅に住宅確保要配慮者の人たちをどのように入居していただくかということを含んでいるわけですから、その点でいいますと、公営住宅の入居資格だけに整合させる必要はなくて、広く捉えるべきだろうというのが私の意見です。

被災者は、三年を経過しても居住の安定に大変難渋しているという現実があります。これは、東日本大震災で今も十二万人が避難し、五万人以上が仮設住宅に暮らしています。六年たってもこの状態なのでありまして、東日本については東日本大震災特別区域法があって、十年間、すなわち二〇二一年三月三十一日まで延長されるということになっております。この点では一定の安心材料があるわけですけど、しかし、果たしてその時点で問題が全部解決しているかというと、福島原発からの被災者の人たちのことを考えると、やや不安が残っているところであります。

また、阪神・淡路大震災から既に二十二年が経過しているわけですけれども、ここでも同様に被災者が居住の安定に難渋しているという問題が起こっています。これは具体的には、借り上げ公営住宅、借り上げた公営住宅を災害公営住宅として提供しているものがおよそ七千戸ぐらいあったわけですけれども、この借り上げ公営住宅というのは、県や市が民間若しくはURから借り上げて、それを転貸するという形で公営住宅として活用しているわけですけれども、この借り上げているときの賃借契約が二十年で切れるということがございまして、もう二十年既にたっているわけですけれども、入居している人たちに対して退去を求めているわけであります。

ところが、実際には、入居した人たちは入居当初にその話を聞いていないという人もいっぱいいるわけですね。あるいは、使用契約書の中に全く書かれていないという人もいっぱいいて、突然この話が降って湧いて、もう八十を超えるような人たちは目先真っ暗という状態ですね。もちろん、あっせんして別のところに移ってくださいということはしているわけですけれども、多くの人は、自分のかかりつけのお医者さんだとか、隣近所の人たちと助け合ってその日その日を暮らしているというような生活状態にあるわけなので、箱物としての住宅がどこかにあるよと、こう言われても、生活全体が成り立ち行かなくなるという、こういう問題を抱えておりまして、私はこれを強行するのは大変問題だなと思っています。

現在は、神戸市や西宮市では、出ていかない人たちを裁判に提訴して、強制退去に近いような形が行われようとしている、こんな問題もありまして、被災者の人たちが三年で居住の安定が確保できるということにはなかなかならないというふうに思います。

もう一つは、将来のことですね。南海トラフの巨大地震が三十年以内にほぼ確実に、七〇%以上の確率でやってくると。死者三十二万人とか、全壊、焼失が二百三十八万棟といった被害が予測されています。仮に三十二万人が半分に減ったとしても、残った人の大半は住宅がなくなるわけですね。これは東日本よりもはるかに大きな規模でそういう事態が起こるわけですから、この人たちが三年で居住の安定を確保できるかというと、恐らくそうはならないだろうと。

現在、東日本、熊本でみなし仮設住宅というのが大量に導入されています。多分、首都直下や南海トラフでもそういうふうになるだろうと思いますが、このみなし仮設住宅というのは、先ほど申し上げました借り上げ公営住宅とちょっと似ているわけですね。民間から借り上げたものを仮設住宅として提供するということで、その間は家賃は国費で支給されるわけですけれども、一定の期限があります。ずっと永遠にというわけにはいかない。

今、もうすぐ家賃支給がなくなるということで、住み慣れたみなし仮設住宅からまた移らなくちゃいけないという事態に直面しているわけですけれども、こういう問題を解決するには、私は家賃補助制度がどうしても要ると思うんですね。その場において、全額支給ではなくても、自ら払える公営住宅家賃並みの家賃で生活ができるようにするという、そういう措置が講じられれば、みなし仮設住宅に住んでおられる被災者の人たちの居住の安定確保はある程度図られるのではないか。

こういう点から見ましても、家賃補助制度の導入というのが、先ほど土肥先生もおっしゃいましたけれども、この住宅セーフティーネットの仕組みの中にどうしても導入することが必要なのではないかなというふうに思います。

以上で私の意見を終わります。どうもありがとうございました。

 

 

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。

まず、中川参考人にお尋ねしたいんですけれども、セーフティーネットの言わば意義とか理念みたいなものが曖昧になっちゃならないなと。つまり、状況や施策を実現するための手法はいろんな工夫がされると思うんですけれども、そもそもの理念というのは何なのかと。

私、その辺りずっとこだわってきていまして、実は、二〇〇五年、平成十七年の六月十六日のこの委員会で、当時北側国土交通大臣だったんですけれども、一九九六年の国連人間居住会議、ハビタットⅡのイスタンブール宣言を私が引用して、住まいは福祉だという質問に対して、当時の北側大臣はこうお答えになりました。住宅というのは私どもの人間の生活、健康にとって基盤となるものがまさしく住宅でございます。日本の憲法二十五条にも、全ての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するというふうに規定しているところでございまして、その思想と全く同様の思想、哲学ではないのかと思っております。今後とも、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅の供給、住宅の質の向上に今後とも努力をしてまいりたいというふうに思っておりますというお考えなんですけれども、私は、この理念といいますか、私流に言えば住まいは福祉というこの考え方というのは今ももちろん変わらないと思うんですが、参考人、いかがでしょう。

○参考人(中川雅之君) 基本的に、日本国民のそういう生活を保障していくということがこのセーフティーネット政策全般の目的になっていると私は思っております。

そのときにどういう生活を支援していくのか、保障していくのかということにつきましては、それは全体で考えるべきであって、それはその生活の質、クオリティー・オブ・ライフ全体で考えていく。住生活だけではなくて、どんな消費生活をしていくのか、あるいは教育を受けられているのか、そういうことを総合的に考えるべきものではないかと考えております。

ただでございますけれども、基本的に、住宅というのは、そこに根付いて、そこから働き、あるいは楽しみ、あるいは家族の団らんの場になりますので、そういった面でクオリティー・オブ・ライフを確保する非常に主要な要素の一つではないかなと考えております。それにつきまして、基本的に、公営住宅だけではなくて、こういう様々な政策を用意している、これが今回の提案ではないだろうかと、そのように考えております。

○仁比聡平君 つまり、生活の基盤が住まいだということだと思うんですけれども、そこで土肥参考人に、私も、ホームレス自立支援法は必ず期間を延ばしていく、延長するということが大事だと思うんですが、その上で、家賃補助についてのアメリカの例の紹介が私ちょっと印象に残りまして、つまり、所得の三〇%を限度として、それを超える部分は公的に補助するという考えだと思うんですね。

一方で、我が国の賃貸住宅にお住まいの皆さんの生活の実態というのはもっともっととんでもなくひどいことになっていて、今日も傍聴席たくさんいらっしゃいますが、公団自治協の皆さんの生活実態調査を見ますと、例えば七十七歳の独り暮らしの女性で、年金収入なんですが、その七七%が家賃になってしまう。もちろん、そのほかに介護、国保などの負担が必要なわけですね。あるいは、長年連れ添われたお連れ合いが八年前に亡くなって、したがって年金は三分の一に減ってしまったと、それでもその家賃というのは変わらず払い続けなきゃいけないと。あるいは、知的障害の娘さんと二人で暮らして、年金だけなんだけれども、八年前から市営住宅を申し込んでいるんだけれども、落選続きで高い家賃を払い続けなきゃいけないと。そういう声がぎっしりなんですよね。

ところが、我が国の政治、政府の施策の中では、収入に占める家賃負担率というのをどう考えるのか、どこまでが限度なのかという、ここがない。その辺りについて土肥参考人の御意見がございましたらお伺いできますか。

○参考人(土肥真人君) 住宅は福祉だということ、私もそう思います。それ、本当にそのとおりで、もう一つ、住宅は権利でありまして、基本的な人権に含まれていると思います。これがないと、もちろん健康的な生活、文化的な生活は営めませんし、例えば就労して社会に還元していく、そういうことも損なわれてしまうと。

例えば、ホームレスの方も全然働いていないわけではないんですね。多くの方は働かれていまして、三万円とか六万円とかという収入を得られている方も結構おられます。この額だとアパートに住むのは難しいんですね。でも、アパートの分を支えてあげれば十分に社会に貢献できる、社会の中に居場所ができる、そういうことになります。

先ほどの、おっしゃられている家賃の負担率が七〇%を超えるような、こういうことは、私の思うには、もう本当に何かあればすぐにその家を失ってしまうのではないかと、そういうふうな状態だと思うんです。これは、住まいの貧困ということで本当に対応しなければいけないと思っています。

そういうわけで、この社会住宅という考え方ですよね。今、公営住宅、ほぼ公営住宅しかありませんけれども、僕が今考えるには、やっぱり公営住宅と匹敵する程度の社会住宅というのを家賃補助及び住宅改修補助で維持すると。そうすると、都市における、あるいは日本における二割程度の家が何らかの公的資金が入っているものになる。元々、都市というのはそういうものである。ただただ市場のマーケットによって住む場所が決まるのではなく、社会的に様々な人が住む場所であり、それの大まかな数というのは、ヨーロッパの国を見る限りにおいては二割程度であると、こういうことが分かっています。今の日本では公的住宅は三・八%ですか、ですから全然足りなくて、もっともっと手厚いものが要るのではないかと。

そうしますと、実際に家賃補助というのが収入のパーセントに対して出されるというこのアメリカの事例なんかは大変いいのではないかと思っております。

○仁比聡平君 そこで、塩崎参考人に、そうした住まいの貧困が現実に平時にある中で、大災害によって家財道具も含めて一切を失ってしまう、あるいは大事な家族を失ってしまうというのが被災者ということだと思うんですね。

先ほど、みなし仮設住宅、高家賃で元の生活に戻れないという被災者の実態のお話がございましたけれども、これ例えば熊本でも一年たってそういう事態が現れ始めているわけなんですが、この下で公営住宅、そして賃貸住宅の、今回の法案と予算措置によって賃貸人に対する家賃補助ということが始まろうとしているわけですが、賃借人の方への家賃補助というのをどう考えたらいいのか、あるいはその必要性などについて御意見を伺いたいと思います。

○参考人(塩崎賢明君) 私は、本来は家賃補助は借りている方に、本人に支給すべきだというふうに思っています。だけど、大体日本では建設補助であったり、せいぜい賃貸人、家主側の補助というのにとどまっているところが一つの課題かなと思っています。

熊本では今みなし仮設の方がもうはるかに多いんですよね。あちらの賃貸協会の社長さんにも会ったことありますけれども、それしか今回は多分無理だろうということで、大いに提供されたのはいいんですけれども、これからその入居している人たちが、この先一年、二年とたっていくとどうなるのかということが大変不安で、先ほど東北の例を申し上げたんですけれども、熊本でも恐らく同じようなことが起こるだろうというふうに思っています。

本当はこの住宅セーフティーネット法でカバーする対象はそこも含めるべきであって、土肥先生がおっしゃったように、登録制度ではなくて、恐らく社会住宅制度にするとこういう問題が随分解消するというふうに私自身は思っています。

○仁比聡平君 あとちょっとだけ、時間あるので。

塩崎参考人、先ほど、借り上げ公営住宅の二十年追い出しというお話ありました。こういうやり方というのはそもそも公営住宅法の趣旨に私は反していると思うんですけれども、いかがでしょう。

○参考人(塩崎賢明君) おっしゃるとおりだと思います。

通常の公営住宅だとこういうことはないわけですね。建設型の直接供給されたものについてはこういうことはないので、その間にも大変大きな不公平感があって、あってはならないことではないかなと私自身は思っています。

○仁比聡平君 ありがとうございました。

 

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

私は、熊本の被災住宅の再建とこの法案についてお尋ねをしていきたいと思うんですけれども、まず、午前中の参考人質疑でも御意見をお尋ねしましたが、このセーフティーネットということを住宅について考えるときに、私、ついの住みかということはとても大事なことだと思います。

大臣、UR公団住宅をついの住みかにとお住まいの方々の生活実態調査、これは秋の国会でも直接私どもの議員からお尋ねがあったと思うんですが、この公団自治協の皆さんの調査を拝見しますと、七十七歳の独り暮らしの女性で、年金が百九十六万円、一方で家賃が十二万六千六百円、ですから家賃の負担率が七七%にも上って、医療や介護の負担で使えるお金はほとんど残らないと。あるいは、九十九歳の男性が、六年前にそれまで住んでいた民間賃貸の更新ができなくてURに入居をされる。

高齢者のリスクというお話がこの法案について出ていますけれども、実際、六十五歳以上になると民間賃貸は断られてしまう。長年連れ添った夫を二年前に亡くされた七十八歳の女性は、御主人の分の年金、これがなくなりますから収入が三分の一に減って、食費を切り詰めても暮らせない。あるいは、七十五歳の女性は、障害がある娘さんと二人暮らしなんですけれども、八年前から市営住宅を申し込んでいるけれども落選続きと、それで家賃の支払が遅れてしまう、せめて公営住宅並みの家賃にならないかと。本当に切迫したニーズだと思うんですよね。

住まいの貧困が広がっている。本来、公営住宅でしっかりと住まうことができるようになるべき方々が、そうではない状況に置かれている。私は、このニーズをしっかりつかんで要配慮者に対する支援を充実していくということがこれから問われていくと思うんです。特に被災者について言いますと、元々そうした切迫したニーズがあるところに、災害で全てを失うわけですよね。

住まいは生活の基盤です。被災者にとってみれば元の生活を取り戻す基盤なわけですけれども、今度の法改正でこの被災者を要配慮者に入れた言わば魂といいますか、これは大臣、何なのか。そうした被災者のニーズをしっかりつかむことが大事だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(石井啓一君) 被災者につきましては、住宅の滅失等によりまして住宅を確保する緊急性が高いため、現行法や住生活基本法におきましても住宅確保要配慮者に含まれているところであり、今回の改正法案におきましても、新たに置いた定義の中で明確にしているところでございます。

被災者の応急的な住まいにつきましては、例えば昨年の熊本地震におきましては、民間賃貸住宅等を活用したみなし仮設住宅の提供が一万五千三百六戸、応急的な住まいの約七割を占めるに至っており、民間の空き家、空き室を活用した応急的な住まいの役割がますます高まっていると考えております。

今回の改正法案におきましては、民間の空き家、空き室を活用いたしまして、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度を創設することとしておりますが、この登録制度によりまして、被災者が応急的に入居できる賃貸住宅をあらかじめ明らかにすることによりまして、災害時において被災者の応急的な住まいへの円滑な入居、特に初動期においての円滑な入居につなげていくことができるものと考えております。

○仁比聡平君 大臣も、衆議院で、発災から三年たっても個別の災害状況に応じて丁寧かつきめ細かい対応をしていくと御答弁をされました。私、そうした全ての被災者が元の生活を取り戻せるように再建を支援する、これが国、自治体の責任だと思うんですね。

そこで、お配りしている資料一枚目ですが、一年目を迎えた熊本地震、四月十四日の熊本日日新聞の一面でございます。私も日曜日に改めて益城、訪ねてまいりましたけれども、御覧のように、仮住まい四万七千七百二十五人、二万二百六世帯が仮設住宅や今大臣がお話しになったみなし仮設を始めとしたところで避難生活を強いられているわけです。その下で、持家が全壊あるいは大規模半壊して、まだ一万四千棟の解体が残っていますが、ようやく公費解体が終わった方々、お話を伺ってきました。

この写真のとおり更地がどんと広がっているわけですけれども、多くの方が自宅再建のめどが立たないわけです。ある自治会長さんは、これからの一、二年、みんな苦悩するんじゃないか、支援金の基礎支援金百万円というのはもう避難生活のために大方費やされた。特に七十代以上の被災者は、新しく建ててもローンや固定資産税を払えないのではないか、いつまで住めるか、いずれ介護施設に行かなければならなくなるのではないかと、様々な悩みが深くて、その下で塞ぎ込んで孤独死に至ってしまう方が出ないようにするためにどうすればいいかと必死で考えているわけですね。そうした下で、持家がかつてあったし田畑もあるんだけれども、復興公営住宅に行くしかなくなるのではないかといった声が渦巻いているわけです。

具体的に出ている今の現在の声は、余震が続いている下で地盤が心配だということなんですよね。宅地整備にお金が掛かるという声です。例えば、元のところに自宅を再建したいけれども、基礎工事のくい打ちが必要になると。それで百五十万円から二百五十万円が必要と業者から言われたという方や、あるいは隣のおうちがそうした基礎のくい打ちに十五メーターの深さまで二十七本くいを打たなきゃいけないということが分かって、そうしたらうちの家はどうなるんだろうかと、まだ頼んでいないけれども不安が募るばかりというような声があるわけですね。

そこで、国土交通省の都市局がこの益城の地盤調査をこの間されました。二枚目に資料を抜粋していますが、三月末に最終報告が出されたんですけれども、被災者には全く知られていません。ホームページには出ているんですが、難しくて、とても読んでも、私も読みましたが、とてもこれだけで分かるようなものではないんですね。

この資料の下の方、御覧いただくと、つまり、三つの活断層で激しい地震があったわけですけれども、地盤に最大三十五センチのずれが生じたけれど、建物はそのずれで壊れたわけじゃありませんと。だから、耐震基準を満たす宅地の整備とその上の建物というのが再建されるなら、仮に万が一同じ規模の地震が将来あったとしても倒壊の可能性は低いですというのが国土交通省の評価だと思うんです。報告書の中身を見ますと、地域の地盤全体が広域的に液状化したのでもありませんという評価などもあるんですが、これで住民の皆さんの不安が払拭されるかどうか。

これ、共有してみて初めて分かると思うんですね。そのような形で、住民の皆さんにしっかり共有して検証するべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(栗田卓也君) 熊本地震の発災から一年が経過しまして、益城町における復興まちづくりもますます本格化してまいります。被災者の方々との間の情報共有、ますます大事になっていくものと思います。

今委員御指摘の熊本地震からの益城町の市街地復興に向けた安全対策のあり方等に関する最終報告、これは益城町の市街地直下で断層が活動したことを踏まえた国の直轄調査の成果でございます。内容としまして、今委員にもお触れいただきましたが、地質調査等に基づく活断層位置の推定と将来の活動に対する評価、市街地復興に向けた活断層のずれに対する安全対策の提案等について検討を行った結果を今年三月に最終報告として取りまとめております。

本報告内容につきましては、国土交通省、益城町のホームページからも閲覧可能としておりますが、これまでにも、より地元への直接的な説明にも心掛けてきております。例えば、本省の職員が、益城町の復興計画策定委員会というものがございます、その専門部会にオブザーバーとして参加しておりますが、町、県に対しまして調査の各段階で詳細な説明を行い、十分な理解をいただくように努めてまいりました。また、今年二月に開催された町主催のシンポジウムにおきましても、本省職員等が住民の方々に対して直接説明を行っております。

国土交通省としましては、今後とも、分かりやすさにも心掛けまして、できるだけ多くの方の御理解が深まるよう努力していきたいと考えております。

○仁比聡平君 局長、短く。

この調査、個々の宅地に着目してなされたものではないんですけれども、大臣、お聞きになっていてお分かりのとおり、実際、出てくる写真などを見ると、ああ、これはうちの家だとか、あるいはこれは隣の道だとかいうことが地域の皆さんにとってみれば分かるようなものなんですよね。これ、例えば甚大な被害の宮園地区とかあるいは安永地区とか、そういう自治会ごと、町内ごとに説明すれば、自分の宅地が抱えている課題も随分はっきりしてくるんじゃないかと思うんです。

今度具体化されている擁壁の、二メーター以上、二戸以上あれば支援するといった支援策などと併せて住民説明会をしたらどうかと思うんですが、大臣、いかがですか。

○政府参考人(栗田卓也君) 今後、益城町におかれましては、いろいろな課題の共有、まちづくりの検討などを行う住民主体のまちづくり協議会の設置を進められるということでございます。既にその端緒が始まっております。町ではこうした機会も捉えて最終報告の内容につきましても説明されると伺っております。

国土交通省としましては、町のこのような取組に対しまして、被害が甚大で早急な復興事業が必要な地区などにおいては、町からの求めにも応じまして、国自ら直接御説明するということも念頭に置いております。

報告内容について住民の方々の御理解が深まるよう、町、県と一体となって取り組んでまいります。

○仁比聡平君 是非、まずの出発点でよろしくお願いしたいと思うんですね。

実際に宅地を整備していく支援というのがもっともっと必要ですから、その相談の中から課題も浮かび上がってくるんじゃないかと思うんです。

ちょっと資料の一枚目をもう一度御覧いただきますと、そうした下で四万七千七百二十五人が仮住まいという状況で、下の方、災害公営住宅の整備予定数というのがこの間出されておりまして、県全体で千二十七戸にとどまっているというお話なんですね。例えば、今の益城で三百戸、熊本市で百五十戸というんですけれども、私は、これはもう到底そんなニーズではないと思うわけです。

持家が再建できない、あるいは借家に住まっていらっしゃった方で、壊れて、家主さんがもうそのアパート直しません、直せませんと。これについては今度の支援策で家主さんへの改修の支援ができるようになるわけですけれども、その目標がどれぐらいになるのかというのも、私、全然まだ分かっていないと思うんですね。

あるいは、家賃が地震から一年たって随分高騰しています。ですから、自分の収入あるいは地震の前の収入では家賃が払えるところが見付からなくて、だから仮設から出る見通し、あるいはみなし仮設から出る見通しは立たないという方々もいらっしゃるわけですね。

大臣、この法案に基づく地域の供給促進計画、これを作っていくには、今私が申し上げたような、実際どんな家が必要なのかという要配慮のニーズをこれちゃんとつかむことがまず大事だと思います。その認識と、それから、借り上げ公営住宅、これをしっかり活用していくと。新しく新築するというのには自治体の方でいろいろ限度があるかもしれない、いろんな状況が起こるかもしれないけれども、今日午前中、塩崎参考人からありましたように、今のみなし仮設になっているところをみなし公営として借り上げてもらって、ずっと住み続けるということができれば安心できると、こういうことは可能だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(石井啓一君) 被災地におきましては、自力では住宅の再建が困難となっている方も含め多くの被災者がいらっしゃいますが、こうした被災者の住まいに関する意向は様々であり、また時間の経過につれて変化することも想定をされます。こうした被災者の意向につきましては、地方公共団体が適宜実態調査を行い、その状況を綿密に把握して様々な施策を実施していくことが必要と考えておりまして、例えば災害公営住宅の供給計画につきましても、適時適切に被災者の状況を把握をしながら必要に応じ計画を追加するなどの対応が必要であると考えております。

また、今般の法改正におきましては、地方公共団体が自主的に住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給促進計画を作成できることとしておりまして、被災地においてこの計画を策定するに当たりましても、被災者を始めとした要配慮者のニーズや実態を丁寧に把握することが重要であると考えております。

また、借り上げ公営住宅につきましてですが、現時点では熊本県の各地方公共団体で供給の予定があるとは聞いてはおりませんけれども、地方公共団体が民間賃貸住宅等を借り上げ、被災者に災害公営住宅として提供することは制度上可能でございます。

いずれにいたしましても、自力で住まいの確保が困難な方に対しどのような形で災害公営住宅を提供していくかにつきましては、各地方公共団体におきまして被災者の意向や地域の住宅事情を踏まえながら適切に対応していただくものと考えております。

国といたしましては、借り上げ公営住宅も含めまして、地方公共団体が災害公営住宅を整備、供給するに当たりましてはしっかりと支援してまいりたいと存じます。

○仁比聡平君 ありがとうございました。