185-参-議院運営委員会-004号 2013年10月30日

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

 これまでもお話が出ましたけれども、会計検査院は、憲法九十条、会計検査院法によって、何より内閣に対する独立の地位に立って国の決算及びあらゆる行政機関に対して何のタブーなくメスを入れる、検査のメスを入れるということが求められているわけですが、参考人の長年の検査業務や検査院の運営に当たってこられた中で、検査への壁にぶつかって、それを乗り越えてメスを入れたと、そうした御経験がありますでしょうか。

 どんな御経験があるかということと、そうした実務経験も踏まえて、会計検査院の国民に対する責務、言わば検査官魂といいますか、そうしたものについてお考えがあればお聞かせいただきたいと思うんですが。

 

○参考人(河戸光彦君) 検査の壁というものは、現実にどういうものになるのか、ちょっと私としては考えが及ばないところでございますけれども、私ども、先ほどちょっと申し上げましたけれども、検査は書類を見るだけでなくて、現地に行って実態の様子を見て、その結果、正すべきところは正すという考えで検査を行ってまいりました。

 一方で、会計検査院法の中には第二十六条という規定がございまして、検査を受ける側に対しまして質問とかを発したり、いろんな権限が認められております。そういった際に、現場ではなかなか我々の議論とかみ合わないといいますか、いろいろ議論をされることがございます。これは当然、行政庁としてどういう責任を持ってその業務をやってこられたかということをお聞きするわけですから、我々の意見と異なるときがございます。それは真摯に受け止めて、我々の検査結果とどういうふうに是正すべきかという議論を闘わせます。

 そういった過程で、やはり若干時間が掛かることが今までも経験をしてきておりますけれども、我々、真摯に、まさに国民の税金を使っているという、これを正すという意識で検査しておりますので、受検庁の方においてもそういった考え方をいろいろ理解していただく、説得する、こういった形で先ほどちょっと、エネルギーを使ったことがございます。

 そういった面で調査官は現場ではいろいろ苦労することがあるんではないかと私も現在思っております。

 

○仁比聡平君 時間を使う、エネルギーを使う、現場で苦労されるというその言葉の裏というか背景に、巨悪に切り込むという、やっぱりそうしたものが国民から期待されているのではないかと。だからこそ、今お話がありましたが、帳簿や書類その他の資料提出や報告の提出を求める権限だとか、質問や出頭を求めるそうした権限を与えられているということかと思うんですね。

 そうした検査を進めていく上での観点について先ほどもお話がありましたけれども、さきの通常国会で、河戸参考人とは別の検査官候補の参考人の方が、従来の会計検査院というのは正確性、合規性、これはもちろん基本のキだが、そちらに重点というか、主にフォーカスを当てた検査をしていた、それはそんなに昔のことではなく、検査の観点にスリーEが入ったということなので、今はその意味では過渡期ではないかと、そうした御発言があったんですね。

 この過渡期という表現を使うかどうかは別段として、参考人は、正確性や合規性のみならず、経済性、効率性、有効性、その他会計検査上必要な観点から検査を行うという法二十条の任務についてどのように具体化をしていかれるか、そのためには、検査官やあるいは検査院長お一人でできることではないと思いますから、どのような体制をつくっていくことが必要かという点についてお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。

 

○参考人(河戸光彦君) 先ほどの御質問にちょっと答えたときにも申し上げましたけれども、基本的に国の会計経理が紊乱している時代については、まさに会計法規にのっとった処理をしていただくという意味で合規性の観点の検査が中心でございました。それは昭和二十年代ぐらいまでの話でございます。会計検査院は割と早いうちから経済性、効率性、有効性の観点の検査をずっと着手してきておりまして、現実にもう昭和三十年代ぐらいからそういったものの検査を進めてきております。

 ただ、最近は、平成十四年から政策評価法ができまして各府省の方で政策評価をされる、そういった形で資料がいろいろ整理されてきておりますので、そういったものがその資料のとおり現実にどういうふうに動いているかといった検査も我々最近よくしておりまして、例えば道路とか河川とか農道とか、いろんな面での費用便益分析について検査にも最近は取り組んでいるところでございますので、まだ過渡期という、御趣旨がちょっと分かりにくいんですけれども、先ほど申し上げました経済性、有効性、効率といった観点からの検査はもうかなり歴史があるものと思っております。

 ただ、最近は、先ほど若干申し上げましたけれども、さらにそれ以外の観点、公平性と先ほど申し上げましたけれども、そういった新たな観点の検査も必要になってきているのではないかと感じております。

 それから、検査の体制についてお話がございました。

 私どもの組織も国の行政機関の一つでございますので、国の財政状況に沿って予算と人員が割り当てられております。その中でいかに検査能率を上げていくか、検査効率を上げていくかということで、職員の能力を向上させることが一番有効ではないかと思っておりますので、検査方法の調査研究、こういったものにも十分取り組んでいく必要があるのではないかと考えております。

 

○仁比聡平君 最後に、今お話のあったその公平性という観点についてなんですが、この公平という言葉は様々な意味に使われる多義的な言葉でもありまして、これが行政や決算の在り方について語られるときに、私はやっぱり実質的な公平といいますか、国民の福祉をしっかり守ること、向上させることということがやはり行政の任務であるという観点から考えられるべきではないか、そういう観点から費用対効果あるいは有効性だとかということも考えられるべきではないかと思うんですが、その公平性という言葉の意味合いですね、少し語っていただければと思います。

 

○参考人(河戸光彦君) 公平性と申しましても、例えば租税制度についての公平性というものもございますでしょうし、いろんな社会保障制度についての公平性というものもあると思います。

 ただいま委員が御指摘のように、まさに国民の福祉に沿った形での考え方でそういった行政が行われていると思いますので、そういった御議論は非常に重要な御指摘だと考えております。