○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、四人の参考人、本当にありがとうございました。
正規の在留資格がない、いわゆる不法と言われる滞在者との共生についての基本的なお考えに絞ってお尋ねをしていきたいと思うんですけれども、逆に鈴木参考人の方から、現場に近い方からお尋ねしたいと思うんですが、正規の在留資格を失っていく外国人が大変多いということは私も大変残念なことだと思っておりまして、今日、鈴木参考人のお話を伺っていて、失いたくて失っているのではないんだということを改めて強く感じたわけですね。そうした意味では、傍聴席にもいらっしゃる皆さんが、決して自己責任でそうした苦しみに追い込まれたわけではないということかと思います。
DVやあるいはオーバーステイで生きるか死ぬかという生活実態にあるんだというお話がございました。もう少しその点で御紹介いただけることがあればということが一点と、もう一つ、今ほどお話が少し触れられています外国人研修生・技能実習生制度についてですね。


これは御存じの数字だと思いますけれども、失踪者の数が二〇〇七年度で二千百三十八人、前年比で二八・四%増加したということで大変な大問題になりました。ところが、これもJITCOが把握をしている技能実習生の失踪者数にとどまるものでございまして、一年目の現行の研修生、ここは把握する仕組みそのものがないわけですね。日本にこうした形で来た労働者が失踪をこんなに大きな数せざるを得ない事態になっているというこの現場は一体どんな問題になっているのかという、この二点について鈴木参考人にまずお尋ねしたいと思います。

○参考人(鈴木健君) 非正規滞在者のことですが、今、年間大体八千件程度在留特別許可が認められております。ということは、裏を返せば、かなりの数が実は在留特別許可が得られる状態にあるということでもあります。
ただ、そこの申請に至るまで、申請期間中、非常に大変です。まず、形式的には在留資格がないので仕事をすることができません。そうすると、子供を育てながらどうやって生活していくのか、非常に大変です。私も経験するのは、お母さん、朝も昼も夜も一生懸命働く、そしてその間、子供が電気も付いていない部屋の中でうずくまっている、そういったこともございます。そして、病気になって、時には瀕死の重症の中で病院に搬送されるということもありました、子供も含めまして。
私、思います、在留特別許可、これが迅速に行われ、そして申告中の身分の在り方というのがある程度整理されれば、こうした生活環境というのがクリアできる部分はあるのかなと思います。
研修・技能実習生制度についてですが、私、研修・技能実習生制度について詳しいことというのを存じ上げない部分もあるんですが、ただ、研修・技能実習生制度というのはどうしても職場とその人のいれる場所というのが縛りが掛かってしまいます。そういった縛りの中で、転職の自由もなく、そこにいなければいけない、そういった制度の仕組みというのがこういった逃亡等につながってしまうのではないかなと思います。

○仁比聡平君 第二次受入れ機関というふうに言われるその受入先ですね、ここに縛られてしまうというお話だったかと思います。
武井参考人にお尋ねしたいんですけれども、現行の外国人登録制度を軸にした自治体の取組においては、在留資格が今その外国人住民にあるのか否かということは主要な把握のテーマではなくて、住民としての実態があって、とりわけ自治体との関係でいいますと、地方税が納税をされているかとかあるいは保険料が納められているかとか、そうしたところが重要なのかと思うんですけれども。
政府の、多賀谷参考人も、武井参考人もだったでしょうか、参加をしておられるかと思うんですが、第四次出入国管理政策懇談会のこの報告書といいますかまとめを拝見しますと、不法滞在者の問題についてこんなふうな表現がございます。不法滞在者の中には不法滞在以外の罪を犯しておらず、既に日本人と結婚して子供もおり、地域社会で良識ある社会人として生活している者もいる。このような不法滞在者の状況を的確に把握し、人道上の配慮を欠くことなく、ここでは在留特別許可の許否を決定していくことも重要だという、在留特別許可の問題として触れられているわけですが、この在留資格はないんだが住民として納税もし社会の中に溶け込んでいるという、こうした住民が今後どのように扱われていくことになるのか、この法改定後ですね、ここについてはどのようにお考えでしょうか。

○参考人(武井雅昭君) 法改正後は住民基本台帳に登録していただく対象になりますので、それぞれの自治体では、住民基本台帳に登録されている方については把握ができます。ただ、登録されていない方については、それぞれの自治体で把握するということは大変難しいことになります。登録されていない方が国内のどこかで暮らしていらっしゃるということは推測できますけれども、それをそれぞれの個々の自治体がどのように把握するかというのは大変難しい問題であると思います。
このことは、在留管理を国で対応するということ、そのところをやはりしっかりやっていただき、そして区市町村は住民基本台帳を整備する中で必要なサービス提供を行い、そして地域の中での外国人住民の生活の質を高めていく、こういうことに努力していくべきだというふうに考えております。

○仁比聡平君 今の点について、田中参考人は先ほど見えない人間をつくるべきではないというふうにおっしゃったと思うんですが、ちょっと続けて武井参考人にもう一問。
政府は特に住民基本台帳法改定に関しての、総務省は在留資格のない外国人は対象外というふうに私どもに説明をしておりまして、その辺りについて総務委員会の参考人質疑で私が豊田の鈴木市長にお尋ねしたところ、豊田市長はこんなふうにお話しになりました。今回の法改正に伴って住基台帳に載らない人が出てきます。その場合にサービスが行えないケース、医療保険、介護保険、児童手当、年金それから生活保護、これらについては受給資格、加入資格が喪失するということが起きますと。ちょっと飛ばしますが、このサービスが打ち切られたときに様々な生活上の課題、コミュニティーにおける課題は起きるであろうという不安がないとは言えないと、こうした御発言があったんですね。
港区において、先ほど御紹介のあったような高い比率の外国人が集住しているということの中で、従来あるサービスが在留資格の管理と一元化されることによって取り上げられてしまうということになりますと、区長さんとしてどんなふうな御説明をされるのか、御苦労されるんじゃないかと思いますが、いかがでしょう。

○参考人(武井雅昭君) これまで行われている様々なサービスにつきましても、それぞれ個別の法律に基づいてサービス提供がされているわけでございまして、住民基本台帳に登録されているか否かということをもって運用されているわけではないというふうに承知をしております。
また、今回の法改正におきましても、そうしたサービスなどの内容については変わりがないというふうに承っておりますので、その点は従来どおりというふうに考えております。

○仁比聡平君 田中参考人に。
今の見えない人間をつくっていいのかという問題について、これまでの議論を聞いて御感想があればというのが一点と、もう一点、永住者の問題について、特別永住者と永住者、ここに区別ないし差別をする合理的な理由があるかと。これは、活動内容に制限のない在留資格を持つ方々にとっては、これは全く同じなんではないかと思うんですね。この点について、先ほど多賀谷参考人は木庭理事からの御質問に対して少し考え方述べられたんですが、田中参考人、お考えがあればという、この二点お願いいたします。

○参考人(田中宏君) 見えない外国人の問題というのは、先ほどは、いろいろ手当とか何かありますけれども、例えば子供が学校に行くというときに、実は今文部省は、外国人登録がなくても在留が確認できれば、例えば家賃の契約書とかあるいは電気代を払っている領収書だとか、そういうもので何丁目何番地にこの人がいるということが分かった場合には、それによって弾力的に入学を認めるようにということを例えば実務やっているんですね。
ところが、今度のような形で在留カードを持っていない人は全部はじき出すということになるとやっぱりすごく大きな問題が出てくるので、今区長さんが言われたように、行政サービスはあるないにかかわらずおやりになるということなので、私は自治体が文字どおり独自にそういう見えない外国人を把握してやっていくということを是非お願いしたいと思います。それは、私が紹介した裁判所の判例の例えば趣旨はそういうことだろうと思います。
それから二つ目の問題については、もうちょっとちゃんとさっき言えばよかったと思うんですが、アメリカのグリーンカードというのを考えれば分かりやすいと思います。特別永住者というのはあるときまで日本国籍を持っていて日本側の都合で一方的に外国人宣告をした人たち、これを特別永住にしているわけですが、それと同じステータスを、一般永住を持った人はそっちに組み込んでいくという形にする方が、入管の方でも、定期的にチェックする外国人と、それ必要なくなった外国人を同じ法律で把握するというのはむしろやりにくいはずなんですね。例えば、さっき言ったように、就業地、職業の届出というのはもう現行法でもなくなっていますから、永住者については。そういう点で、何でそれ一緒にしなかったのかなというのが率直な、その方がよっぽど実務もすっきりするしというのが私のあれで、是非これはこの後検討していただきたい。
それから、ちょっと先ほどの話、一言だけ、委員長、済みませんけれども。
外国人の在留把握が難しいというのは、現行の外国人登録制度がおかしいんですよ。なぜかというと、日本人は転入と転出と両方やるようになっているんですね、住基で。ところが、外国人登録法は転出の手続をしなくていいように今法律ができているんですよ。それが問題なんですね。
法務省の方が、AからBに移ったら報告が上がってきますから、法務省は一々やる必要ないんです、法務省の目から見たら。ところが、自治体から見るととんでもない話なんですね。Aという住民がいなくなっても、何の届出もなしにいなくなれるんです、外国人は、現行法は。日本人は転出をやって転入をやるんです。それに全部行政サービスが付いて回るわけですから。ところが、今の外国人登録法は、法務省が上から眺めていて、あっ、AからBに移ったね、はいと、それを知ればいいわけですから。
自治体の方は、何月まで国民健康保険料取らなきゃいけないか、児童手当を何月分までこの人に渡すか、そういう問題が全部くっついているのに、今の外国人登録法はそういうことを全くやってないんですね。それでいろんな問題が起きているんで、そこのところは外国人登録法そのものをもっとちゃんと本当は早く直さなきゃいけなかったという問題で、何かいかにも外国人がサボっているみたいですけれども、制度的にそういうふうに転出と転入が両方できるようにつくってないんですよ、外登法。そのこと、ちょっと済みません、余分ですけれども。

○仁比聡平君 時間がなくなって大変申し訳ないんですが、多賀谷参考人にお尋ねしたいのは、先ほど御紹介をしたような第四次の懇談会の報告書などもある中で、非正規滞在者、不法滞在者について、在留特別許可のありようも含めて、多賀谷参考人がどんなふうにお考えなのかという点。

○参考人(多賀谷一照君) 非正規滞在者という方は住民基本台帳に載らないわけですけれども、ただ、そういう方々について、それでは今回の制度改正で従来に比べて著しい不利益が生ずるかというと、やはり私はそういうことではないだろうと思います。
先ほど武井参考人がおっしゃいましたように、例えば国民保険とか雇用保険とかそういう問題は、それは受給するかどうかというのは別に住民であるかどうかで決まるわけではないわけです。そして、それでは、非正規で滞在されている方については、我が国では例えば母子保護とか結核予防とか、あるいは先ほど田中参考人がおっしゃったように学校での受入れとか、そういう人道的なことについては、やはり非正規の方々については従来どおりそういう手当てはされるということですので、基本的な変わり方はないと思います。
それからもう一つは、やはり我が国では今でも、非正規といいますか、いわゆる仮放免とかそういう形で、正式な滞在でない形で存在する方というのは、これはほかの国でも基本的に同じなんですけど、そういう方々がある程度存在していて、その方々をどう処遇するかというのは正規滞在の方とは別にやはり問題なので、それをすべて正規滞在にするわけにはいかないというのはほかの国でも共通ですので、やはりそれは今後の課題だろうと思います。

○仁比聡平君 外国人との共生という問題は、これは歴史的にそれぞれの地域や自治体で積み重ねられてきたという、この大きな取組があって、そのサービスの一つの、何というんですか、根拠としてといいますか、道具として、事実上外国人登録を利用してきたというふうに武井参考人も先ほどお話しになったんですが、これが住民台帳からは除かれて見えなくなっていると、外国人登録制度はなくなってしまうと。このときに、どういうふうに外国人との共生を図っていくのかというのは、やっぱりこれは僕は大変だというふうに改めて今日の参考人質疑を通じて感じました。
終わります。