○仁比聡平君 日本共産党は、北朝鮮の核実験という暴挙に断固抗議し、一切の核兵器開発計画の放棄と六か国協議への無条件復帰を強く求めるものでございます。
 被爆者は、核兵器と人類は共存できない、激しく怒りの声を上げています。今こそ、核兵器の罪深さを伝えなければならないという被爆者の叫びにこたえて、被爆の実相を直視し、世界に発信し、核兵器廃絶のイニシアチブを発揮することが今、日本の政治に求められています。
 そうした中、本日、原爆症認定訴訟で国の十八連敗目となる東京高裁判決が下されました。私は、線引きのない、被爆の実相に即した、一人残らずの一括解決を強く求めるものでございます。
 官房長官にお尋ねしたいと思います。官房長官も東京高裁判決がタイムリミットだと述べてこられましたが、既にこの裁判の原告三十人のうち半数に上る十四人、全国三百六人の原告のうち六十八人が無念のまま他界されています。
 齊藤泰子さんは二年前に亡くなられました。四歳のとき、六歳のお姉さんと二人、お母さんに連れられて広島の爆心地から一・四キロの自宅に戻り、瓦れきの山になった家を素手で掘り返し、破れた水道管から水を飲んだりして被爆し、発熱、下痢の急性症状、その後、がんになって、裁判所は原爆症だと認めたのに国はまだ認定をしておりません。九十六歳になったお母さんは、あのとき二人を広島へ連れていかなければ苦しませずに済んだのではないかと今も御自身を責め続けていらっしゃいます。これ以上、被爆者を苦しめてはなりません。
 今日の判決を受けて、解決に臨む思いを伺います。

○国務大臣(河村建夫君) 東京高裁の判決が先ほど出たところでございます。詳細はまだ承知しておりませんが、国の主張の一部は認められ、一部は認められなかったということであります。
 まずはこの判決を、この対応は関係省庁で検討していただくことが必要であると思っております。東京高裁判決の対応を決めた後に、残された原告についてどのような解決を図っていくか、これも関係省庁とよく相談をしたいと、こう思っております。
 いずれにいたしましても、原爆症認定については個別の方の状況も踏まえて行われる必要がございます。政治的にこれ一括して認定ということについては私は難しい面もあるとは思っておりますが、これは従来から私も申し上げておりますように、今回の東京高裁判決を含めた一連の司法判断、これを踏まえて、その内容を精査して、私としても早期解決に向けて必要な対応を検討していかなきゃいかぬと、こう思っております。
 被爆者対策については原告の皆さん方もいろいろお話を伺ってきております。高齢化されております。現行法の体系の中で対応可能なことは、一定の限界はあるのでありますが、この見直しも含めて、今どんどん認定を進めておるわけでございます。その中で可能な限り問題の解決をしていかなきゃならない、被爆者救済の考え方に立って対応していきたいと、このように思っております。

○仁比聡平君 一人残らずの解決ということでなければ全面解決は私はできないと思います。
 総理、オバマ大統領の核兵器のない世界への呼びかけを受けて、世界は動き始めております。ノーベル平和賞の受賞者十七人が五月十七日に発表したヒロシマ・ナガサキ宣言にはこうあります。人類がこれまで三度目の核兵器による悪夢を避けることができたのは、単なる歴史の幸運な気まぐれではありません。第二の広島、長崎を回避するために世界へ呼びかけ続けてきた被爆者たちの強い決意が、大惨事を防止することに確かに役立ってきたのです。
 総理、被爆国の首相としてふさわしいイニシアチブを発揮する上でも、原告、被爆者の方々と今直接お会いになって、被爆の実相と核兵器廃絶への思いを直接受け止めるべきだと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(麻生太郎君) 五月の十五日に出された大阪高裁の判決というのがありますけれども、これにつきましては上告はしないということを本日決定をいたしております。あわせて、本日出されました東京高裁の判決につきましては、これ一連の司法判断というものを踏まえて、我々としてはその対応を検討させていただきたいと存じております。これが基本です。
 その上で今、もう仁比先生よく御存じのとおりに、昨年、一昨年か、昨年から審査の内容を変えてきております。それに伴いまして、一昨年度まで年間約百二十件ぐらいのものが昨年から二千九百件ぐらいまで増えてきておりまして、先ほど言われた例の方も、爆心地から三・五キロメートル以内ということになろうと思いますので、そういった対応もしていかなければならないと思っておりますので、意を酌んでいただければそれでよろしいかと存じます。

○仁比聡平君 直接お会いいただきたいと思います。
 終わります。

○委員長(溝手顕正君) 以上で仁比聡平君の質疑は終了しました。(拍手)