○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、国籍法三条の改正問題についてお尋ねをいたします。
前回の私の最後の、質疑の最後の部分で確認をしましたけれども、二〇〇八年以来の法務省の運用、これ、従前からの確立した規律に基づくという御答弁になっているんですが、その運用によって遡って国籍が失われた者の件数、あるいは出国の有無、そうした方の在留資格がどうなったか、帰化がどうなったかなどの実情が統計的には把握されてこなかったということ、そして、入管庁においては退去強制手続ということになるんですけれども、この退去強制手続に係る者が遡って国籍を失った者なのかどうかと、その点に留意したどんな取扱いがされてきたのかという統計的な把握はなされてこなかったということが明らかになりました。
そこで、その点についての大臣の認識をお尋ねしたいと思うんですけれども、参考人質疑でのUNHCRの金児参考人の御発言でも明らかなことですが、国際人権水準はこの無国籍者をなくすという取組に進んでいるわけですよね。無国籍を防止すると、そして削減すると。それだけでなく、無国籍者の権利を守るという、その取組が世界の流れであって、言わばこれに逆行するといいますか、二〇〇八年以来、もう十四年間になりますけれども、この間、統計的に、政府の判断によって無国籍になる、遡って無国籍になるという方が把握されてこなかった、このことは極めて重大なことだと思うんです。
国籍ないし戸籍がなくなってしまえばどうなるかということは、この委員会でもう本当にことごとく明らかになったと思うんですが、とりわけ幼い子供、ですから、親の認知が無効になるとかあるいは虚偽だったとかいうことについて何の責任がなくても、生活の基盤あるいはアイデンティティーが奪われるという重大な不利益があるわけです。そうした事態である、そうした問題であるのに、これが統計的に把握されてこなかったということについて、大臣はどんな御認識ですか。
○国務大臣(齋藤健君) 私は、今の委員の御指摘は重要な御指摘だというふうに思っています。
まず、現状からお話ししたいんですけど、今、出入国在留管理庁におきましては、在留特別許可の許否判断の透明性を高める目的で、毎年、在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例についてということで公表をまず行っており、その中には、裁判の結果、日本国籍が認められなくなったものの在留特別許可された事例も含まれているということです。
もっとも、この在留特別許可の許否判断というのは、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して行っておりますので、その件数も実は膨大であったり、それから判断の透明性を高めるという目的に鑑みて、適切な事例を選定して公表するということを今現在行っておりまして、網羅的な事例の公表はまだ行っておりません。
その公表の在り方につきましては、更なる透明化を図ることを目的として平成二十二年に見直しが行われておりまして、在留特別許可された事例等を分かりやすく分類、整理して一覧表形式にするなどの工夫を行ってきたところでありまして、引き続き、在留特別許可の許否判断の透明性の向上を図ってまいりたいと考えております。
そして、御指摘のような事例について、その公表などの在り方については今国会での議論を踏まえて今後検討していきたいと思っています。
○仁比聡平君 この今後検討したいという大臣の御答弁の背景には、関係部局でのもう既にその大臣の答弁を裏付けるような検討がなされているのだろうというふうに思うんですけれども。
ちょっと一点だけ伺いますが、入管次長に伺いましょう。これまでの取組の中で、入管にとってみると、国籍が失われたのではないか、したがって非正規滞在なのではないか、だから強制退去手続の対象者ではないかという疑いがあって違反調査などに入ると。その時点で、法務当局と、法務局と密接に連携するということにはこれまでなっていなかったんじゃないかと思うんですけれども、そこはどうなんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 網羅的にその取扱いについて把握しているわけではございませんが、事案に応じては法務局と情報交換をする、情報共有をするといった事例もあるというふうには聞いております。
ただ、委員の御指摘のような、組織的といいますか、システム的にその法務局と事前に情報共有するというような取組をきちんと決めていたわけではありませんので、今回、委員の御指摘も踏まえ、国会の議論も踏まえまして、その辺りは、法務局との情報共有、それから事前の調整といったものをきちんとやるように、今、取組のこの枠組みを検討しているというところでございます。
○仁比聡平君 そういうことなんだろうと思うんですよ。私も、全ての事案が非人道的にしゃくし定規に行われてきたかというと、そうではなくて、とりわけ小さい子供が路頭に迷わないようにいろんな取組がされてきただろうと思うんです、現場では。けれども、それを二〇〇八年以来どうなっていますかと聞かれると国会では説明できないという事態になっているということが、私は今回の改正提起の大問題だと思っているんですが。
民事局長、通告は、こういう趣旨の通告はしておりませんけれども、法務局は、先ほど来の御議論の中でもありますけれども、市区町村がそうした事態を把握するということについて、市区町村側から相談があればいろんな積極的な対応してこられていると思うんですよね。けれども、それを統計的に把握したり、あるいは入管とシステム的に協議をしたりというふうにはこれまではしていなかったということについては、どんな検討されていますか。
○政府参考人(金子修君) 刑事事件やら民事事件を通じて偽装認知による国籍取得が発覚したというような場合は市役所の方で戸籍の消除の手続に入るわけですけれども、その市町村における戸籍担当部門からシステム的に法務局が連絡を受けるというようなことにもなっていなく、かつ、そのようなものですから、あるいはそういうこともあって、法務局から入国管理局にその旨の情報提供もされないと。相談があれば今までも在留資格とか帰化とかあるいは外国籍の確認等の手続についてそれぞれの部署でしていたと思うんですが、その辺りの情報共有がシステム的にはうまくというか、構築されていなかったという現状があったと思います。
その点を踏まえまして、きちんとシステム的に連絡を、法務局の方が言わば情報のハブとなって連絡を受け、その旨を入管局の方に伝えるということで、例えば事前の調整をして、可能なら戸籍を消除する前にどういう対応ができるのか、あるいは消除した後でも、その後速やかに在留特別許可とか、そういうような手続につないでいくような調整ができるようになるんではないかと。
また、そういうことがシステム化されると言わば件数的にもきちんと把握されていくようになるんじゃないかというふうに考えて、この点は検討、そういうような方向で検討を進めていきたいと考えています。
○仁比聡平君 大臣、今まずお伺いをしてみましたけれども、当局の御答弁ですね、そうした取組を是非本当に実効ならしめるために、まずはリーダーシップ取っていただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 局長が答弁いたしましたように、大事なことは、この各地の法務局ができるだけ早くその状況を察知するということが一番重要なところなんだろうと思いますので、その帰化の手続とか、在留資格に関する手続とか、外国籍の確認等の手続について、できるだけ早くその相談先に案内をするとか、入管当局と連携をしたりですとか、その情報を共有するなど関係機関と連携するとか、これ必要なわけですけど、早ければ早いほど、その法務局が状況を把握することが早ければ早いほどその手が打てるということでありますので、市町村との関係も含めまして、そういうきちんとした対応取れるように、私、目配りをしていきたいと思っています。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
そうしたこの二〇〇八年以来の言わば総括の上に立って、今後どうするかということがとても大事だと思うんですね。金児参考人は、無戸籍ゼロと無国籍ゼロを一体で取り組んでほしいという趣旨のアドバイスをされました。私もそのとおりだと思うんです。
というのは、資料の三枚目にお配りをしましたけれども、今回の委員会質疑に提供いただくためにわざわざ民事局に無戸籍ゼロタスクフォースの概念図をポンチ絵にしていただいたのがこの資料なんですけれども、先ほど来、金子民事局長の御答弁にあるように、ハブですよね、法務局がハブになるという、その真ん中に法務局がハブになって、市区町村との関係、それから弁護士会や法テラス、家庭裁判所などとのネットワーク、地方協議会ですね、それから、全国各地の法務局がハブになりながら、その情報集約や情報提供指示という形で本省がきちんと役割果たすという、こうしたネットワークがつくられてきたんだと思うんです。
それは、前回の質疑で明らかになったように、二〇〇七年に大きな問題提起がされた無戸籍者問題、そして二〇一五年の取組もあってこうした取組が構築されてきたと。そういう意味ではシステムとして構築されてきたっていうことだと思うんですけれども、この無戸籍者対策の取組に言わば学んで、あるいは倣って、無国籍ゼロというこのタスクフォース的なものを是非御検討いただきたいと思うんですね。
そこで、ちょっと具体的に、まず民事局にお尋ねしたいと思うんですが、このハブのところ、ハブというか法務局って書いてあるところに伴走型支援とあるじゃないですか。全国の自治体でいうと寄り添い型の支援というような言葉を使っているところもありますけれども、例えば無戸籍者が把握されたときに、市区町村からの相談も受けて、法務局が家庭裁判所に法的手続のために同行支援を行うというような例もあるというふうに伺いましたけれども、この伴走型支援っていうのはどんな考え方なんでしょうか。
○政府参考人(金子修君) もちろん、無戸籍の方が国籍を、ごめんなさい、戸籍をですね、作るまでの過程では、御本人にどうしてもアクションを起こしていただかなきゃいけない場面が出てきます。しかし、なかなか、幾つかそれのためには乗り越えなきゃいけない問題があります。あと、法律的な知識が必ずしもなければそれは難しいっていうこともありますし、具体的にどこの裁判所にどういう書類を出したらいいかということも分からないということもあると思います。そういうことがあるので、いろんなその情報を、手続案内といいますか、そういうことを丁寧に行う、で、場合によってはその書類を提出するのに付き添うというようなこともしているところもあるというように聞いております。一緒に同じ方向を向いて取り組んでいきましょうということで、伴走型あるいは寄り添い型と呼んでいるものと承知しています。
○仁比聡平君 いや、本当に大切な取組だと思うんですよ。現場の法務省の職員頑張ってくれているなと思うんですよね。
もう一点。先ほど国籍を遡って喪失したときの案内という関係で大臣の御答弁もあったんですけれども、特に母の母国の大使館、そこに国籍があるかも、国籍が取れるかもしれないという可能性が高いものですから、だから案内するというお話ありましたけれども、その大使館に寄り添って一緒に行くというような取組はこれまではどうやらないんじゃないかと思うんですけれども、実際に、あっ、もしかしたらあるかもしれません、ただ、これまで伺ったことはないんですが、実際に、日本人として暮らしてきて、学校に行っている、仕事をしている、その中で突然国籍を遡ってあなたは失いましたというふうに言われたときの大変さというのは、もう想像に余りありますよね。
それで、市区町村からもう私たち分からないから法務局行ってくださいと言われて、法務局からあなた国籍を失ったからどこそこの大使館に行ってくださいとか案内されるだけでは分からないじゃないですか。せめて、日本当局として、当該大使館に事前の連絡をする、あるいは必要なら一緒に行く。実際、母国語といったって、お母さんはしゃべれるかもしれないけど、子供はもう全然分からない、日本語しか分からないというようなことだって山ほどあるわけでしょう。
そういう意味での寄り添い支援が今後は僕は必要なんじゃないかと思うんですけれども、局長、いかがですか。
○政府参考人(金子修君) 外国籍を持っているかも、あるいは取れるかもというようなことについての手続の案内、これは例えば、相談先をお知らせして、ここへ行ったらいいよというようなことは今までもある程度あったのではないかと思いますが、おっしゃるとおり、先ほど、無戸籍者対策としての伴走型支援ですね、場合によってはその大使館、領事館に同行するとか、あるいはそういうことまで、今後少しこの新しいスキームを考える中でどこまで寄り添っていけるかということも併せて検討してみたいというふうに思います。
○仁比聡平君 今日は、総務省それから文科省、厚労省の皆さんにもおいでいただいているんですけれども、というのは、無戸籍ゼロタスクフォースについてはこの省庁の、関係省庁の皆さんが一緒に力を連携しているわけですよね。
これ、その無国籍の問題でも強化をしていただきたいなというふうに思うんですけれども、自治体の市区町村の窓口で研修やマニュアルということを取組を進めていくことや、それから、学校で児童が突然国籍を失ったみたいな話になるとそれはもう大混乱でしょうから、教育委員会を始めちゃんと対応をいただけるようなアドバイスを本省としてもしていただく。あるいは、児童福祉の現場あるいはその市区町村などの窓口でそうした取組が必要になることもあると思うんですが、それぞれ一言ずつで結構ですので、法務省を中心にした取組が進む中で是非連携を強化していただきたいと思いますが、御認識を伺います。
今の順番で総務省から。
○政府参考人(三橋一彦君) 無戸籍のタスクフォースにつきましては法務省において設置されたものでございますけれども、総務省は住民基本台帳制度を所管する立場から参加をいたしております。
住民票の記載は、戸籍法に基づく出生届が提出され、これを基に行われるのが原則でございますが、何らかの理由により出生届が提出されていない子に係る住民票の記載や就籍の届出に至らない者に係る住民票の記載についてその考え方をまとめ、自治体に通知しているところでございます。
また、法務省が作成しております無戸籍の方の戸籍作成に係るリーフレットを始め、戸籍、無戸籍の方の戸籍作成に係る資料や動画が法務省のホームページに掲載されていることを市区町村に周知し、その活用を依頼しているところでございます。
○政府参考人(森友浩史君) お答え申し上げます。
無戸籍ゼロタスクフォースのメンバーといたしましては、文科省として、無戸籍の学齢児童生徒の居住が判明した場合の対応ですとか、あるいは無戸籍の学齢児童生徒に対するきめ細かな支援、例えば教育委員会が無戸籍の学齢児童生徒の情報を把握したときに、速やかに戸籍担当部局に連絡するといったことですとか、あるいは当該児童生徒が抱える教育上、生活上の課題に適切に対応するといったことにつきまして教育委員会等に通知をしているところでございまして、こういった状況も踏まえまして、文科省として、委員御指摘のような課題に関係府省庁とともに向き合うよう努めてまいります。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
児童福祉法、こちらの方は、御案内かとは思いますけれども、国籍とか戸籍のあるなしにかかわらず、虐待を受けているとか、家庭の養育では困難であるとか、あるいは保育が必要であるという場合には児童福祉法による福祉の対象になるというような仕組みでございます。
そうした仕組みでもございますので、この無戸籍者タスクフォース、こちらの中での議論なども踏まえまして、例えば無戸籍者については、自治体に対して、その無戸籍の児童を把握したならば戸籍担当部局に連絡する、あるいは法務局に相談を案内するなど、そういった無戸籍者への支援といったものをお願いをしているところでございます。
厚生労働省といたしましても、今後、必要に応じて、そういった無戸籍者あるいは無国籍者、そういった者への対応について、法務省など関係省庁と必要な連携協力は行ってまいりたいというふうに考えてございます。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
大臣、そうした関係省庁との連携を深めていく上では、まあ幾つか課題も出てくるかもしれないんですけど、是非、先ほど伺ったようにリーダーシップを図って、取っていただきたいとお願いをしておきたいと思います。
ちょっと時間が迫りましたけれども、婚姻法、特に嫡出概念の見直しについて、残る時間お尋ねをしたいと思います。
資料に、先ほど福島議員から質問のありました戸籍の記載についての平成十六年の通知、通達に基づく記載例を法務省からいただいて、お配りをしています。
つまり、嫡出でない子ということが分かる、男とか女という記載を本人の申出によって更正すると、これを再製というんですが、すれば、その戸籍に残っていた、この更正したという記録というのもなくなっていくということなんですけれども、民事局長、これ、こうした取組を平成十六年、あるいはその後、平成二十二年にも関連する通知を出しておられますけれども、これやっぱり、嫡出子、嫡出でない子という、こうした記載が母親そして子供にとってやっぱり大きな負担になっていると、だからこういう記載をできるようにするということだと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(金子修君) 御指摘のとおり、戸籍の記載から嫡出子と嫡出でない子が立ち所に判明するようなものについてはできるだけ避けるという趣旨で累次の通達を、通知あるいは通達を出して対応してきたところでございます。
○仁比聡平君 もう一つ、数枚めくっていただくと、平成二十二年三月二十四日付けの七二九号通知というのがあります。これは、嫡出でない子の出生の届けに当たって、続き柄欄に嫡出子又は嫡出でない子の別を記載するようというふうに本則なっているんだけれども、記載してねということで補正を求めても、いや、いろんな事情で、そうではなくてというお母さんの出生届について、その届出書きの附箋あるいは余白に認定した内容を明らかにした上で出生届を受理すると。つまり、嫡出、非嫡出と、あるいは嫡出推定で前夫の子というようなことでない出生届を受けるという通知だと思うんですが、そういうことでいいですよね。
○政府参考人(金子修君) 御指摘の平成二十二年の七二九号、民事局民事第一課長通知ですけれども、これは御指摘のとおり、出生届出には嫡出子と嫡出でない子を区別する届け、記載欄はあるんですけれども、その続き柄欄の記載がされていないなどの不備があっても、補正を、で、補正に応じない場合であっても、市区町村長において補正すべき内容を認定できれば出生届を受理するという取扱いを示したものでございます。
○仁比聡平君 この取組も、長い間のこの嫡出子あるいは嫡出推定ということをめぐる、本当に苦しんできた女性たち、お母さんたちのですね、その声の中で動いてきているものだと思うんですよ。実際、市区町村の戸籍窓口から目の当たりにするわけです、その苦しみを。
この嫡出推定制度とその戸籍記載の問題をこれは変えなさいという要求が現場からどんどん上がってきましたよね。だからこそ、民事局長はこの嫡出制度のそうした抱えてきた問題ということについてよく御存じなんだと思うんです。
かつて、平成二十四年の七月二十七日の衆議院の法務委員会で、当時の原民事局長が、嫡出である子あるいは嫡出でない子という言葉が使われておりますので、この言葉を今後、法改正する場合にどうするのかというのは検討事項であるというふうに考えておりますと御答弁されたことがあって、今日も、局長、この検討という御答弁がありました。とても大事な御答弁だと思います。
この嫡出概念や嫡出推定というのをどう考えるのかということについて、やっぱり大臣を始めとして政治家がこの問題の解決に向けてどうリーダーシップ執るのかということがとても大事だと思うんですよね。現場、あるいは当事者はもちろんですけど、現場はこれはもう変えるべきだと考えてきたんだと思うんですよ。
そこで、ちょっと時間がなくなりましたから一問だけ大臣に伺いますけれども、前回の参考人質疑で二宮参考人がこの嫡出という言葉について説明をされました。嫡という言葉は、大宝律令辺りから出てきている言葉で、跡継ぎ、正統なる相続人という意味合いだと、家制度の中で嫡出子と、それ以外の庶子、私生児と、子供を三つに分けて、嫡出子が基本的に家督相続、家の跡継ぎとなると、その下で庶子とか私生児という立場にいる人はかなり差別的待遇を受けて苦しんでこられたと。なので、社会的な、社会の受け止めはそこから始まっているのではないか。家父長制の意識というのはまだまだ残っていて、それが、婚姻をして子供をもうけて育てていく、それが正統な家族で、そうでないのは正統でないというような差別的な概念になっているのではないかという指摘、これはもっともだと思うんですが、大臣はこの二宮参考人の意見に対してどう思われましたか。
○国務大臣(齋藤健君) 嫡出という用語が用いられてきた社会的、歴史的な背景というのがあるわけで、それを踏まえて嫡出の用語を見直すべきだという指摘があるということは承知をしています。
一方で、嫡出でない子という用語について、最高裁判所では、民法の規定上、法律上の婚姻関係にない男女の間に出生した子を意味するものとして用いられているものであり、差別的な意味合いを含むものではないという判示も一方であるわけであります。
したがいまして、法令用語につきましては、当然、社会情勢の変化等に対応して不断に見直しをしていくことが重要であろうと私は考えておりますので、法務省として引き続き検討を進めていきたいというふうに考えています。
○仁比聡平君 引き続き検討を進めていきたいと、その検討を本当に深めていただきたいと思います。
資料の最後に、もう時間、聞けなくなりましたけれども、最後に、十一月三十日の東京地方裁判所での結婚の自由を全ての人に訴訟の判決部分から、私がとても胸を打たれた部分だけ引用させていただきました。
婚姻は、親密な人的結合関係について、その共同生活に法的保護を与えるとともに、社会的承認を与えるものである。このように親密な人的関係を結び、一定の永続性を持った共同生活を営み、家族を形成することは、当該当事者の人生に充実をもたらす極めて重要な意義を有し、その人生において最も重要な事項の一つであるということができるから、それについて法的保護や社会的公証を受けることもまた極めて重要な意義を持つものということができると。
これ、とても自然で、多様なカップルの姿、それが一人一人の尊厳に関わる大切なことだということが浮かんでくる考え方だと思うんですね。だからこそ、先ほど石川議員からありましたけれども、これが一生、生涯できないということは個人の尊厳に関わる重要な人格的利益を侵害する人権問題だということが大きな課題になっているわけで、大臣に是非向き合っていただきたいということ、最後にお願いして、質問終わります。

 

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
ただいま議題となっております民法等の一部を改正する法律案に対し、日本共産党を代表して、修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。
これより、その趣旨について御説明申し上げます。
本法律案は、女性に対してのみ婚姻の自由を不当に制約してきた再婚禁止期間に関する規定が削除されるほか、児童虐待を正当化する口実に利用されてきた懲戒権に関する規定が削除されるなど、女性や子供の権利利益の保護の観点から大変意義のあるものであり、全体として賛成するものです。
しかしながら、本法律案に含まれる国籍法第三条第三項の新設は問題です。
政府は、この国籍法の改正は、今回の民法改正により、事実に反する認知についてその効力を争うことができる期間が設けられることを前提として、たとえ事実に反する認知の効力を争えなくなった場合でも、事実に反する認知によっては日本国籍を取得することができないことを明らかにする規定である旨説明しています。
認知により日本国籍を取得した子について、血縁関係がないことが明らかになった場合、その子に何ら責任がなくても、国籍取得時に遡って日本国籍を失い、在留資格のない非正規滞在の扱いを受けることになります。とすれば、日本で生まれ、日本人として円満に暮らしてきた生活の基盤、日本人としての名前や、就職していればその職、自らのアイデンティティーが奪われるという重大な不利益を受けます。さらに、日本国籍を失った結果、いずれの国籍も持たない無国籍になってしまう危険があります。それは、国際人権基準に反する非人道的なことです。
先日の当委員会で、政府は、従前からの確立した規律を明文化すると答弁しました。ところが、その運用によって国籍を遡って喪失した件数も、その後の出国の有無や在留許可の実情、帰化が認められたのか否かも、統計的に把握していないことが明らかになりました。改正案の重要な立法事実である確立した規律の実態さえ説明できない条文を、拙速に成立させるべきではありません。
当委員会で、国連難民高等弁務官事務所の金児参考人は、無戸籍ゼロと一緒に無国籍ゼロ、それを一緒に進めていくために修正が望ましいと述べられました。
井戸参考人も、無戸籍者、そして無国籍になるおそれがある場合も含めて、まずは何よりも先に登録されるという法律的枠組みが必要なのではないかと述べられました。
窪田参考人も、非常に深刻なものであって、特に無国籍になる場合ということに関しての一定の対応が必要と述べられました。
また、二宮参考人は、本法案が認知の無効の訴えに関する出訴権者や出訴期間を限定している点を指摘し、国家的利益が関わることだといっても、身分関係の安定性という国民の親子関係に関わることを不当に介入することは許されないとまで述べられました。
参考人が、そろって深刻な問題を指摘したのです。
このような理由から、国籍法第三条第三項に関する改正規定は本法律案から削除すべきであると考えます。
以下、修正案の概要について御説明申し上げます。
第一に、認知について反対の事実があるときは、認知された子の国籍の取得に係る規定は適用しないものとする国籍法第三条の改正規定を削除することとしております。
第二に、所要の規定を整理することとしております。
以上が修正案の趣旨であります。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○委員長(杉久武君) これより原案及び修正案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに民法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。
まず、仁比君提出の修正案の採決を行います。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(杉久武君) 少数と認めます。よって、仁比君提出の修正案は否決されました。
それでは、次に原案全部の採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(杉久武君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。