○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平です。
私は、会派を代表して、特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律案に賛成の立場から討論を行います。
賛成する理由は、本法案による法テラスの特例援助、特に立担保など訴訟費用の実費負担、対象宗教法人の財産監視制度などに個々の被害者の旧統一協会に対する請求を後押しする一定の意義を認めるからです。
しかし、今求められているのは個別支援にとどまりません。
これまで現に声を上げ、相談を寄せ、集団交渉に参加しておられる被害者の方々が個別に民事保全を進めたとしても、それは個々の被保全債権の限りでしかできません。まだ声を上げることができないでいる多くの潜在的被害者を含め、長年にわたる旧統一協会関連団体の全ての被害者の全面的救済のために、被害者、弁護団任せではなく、国が主体的、積極的に教団資産の隠匿や散逸を防ぎ、被害者の救済を実効あるものにする取組こそ求められているのです。
旧統一教会の被害者有志一同、宗教二世問題ネットワークは、統一協会は、国内に多数の関連団体があるため、国内でも財産隠しや財産移転を簡単に行うことができてしまいます、悪質な献金勧誘活動を関連団体を介して巧妙に行ってきたからこそ統一協会の被害救済は今でも困難になっていると訴えるとともに、私たち統一協会の被害者は、高齢であったり、幼少期からの宗教的虐待により深いトラウマを負っており、社会的に生活していくだけで精いっぱいで余力がない場合がほとんどです、それだけでなく、今なお抜け道をつくって行われる高額献金、霊感商法、一世信者の老後破綻やそれにより二世信者の将来が失われている問題、宗教的虐待や脱会後の精神疾患の問題など、様々な事情によって今も苦しんでいる被害者が大勢いますと正面からの包括的な財産保全を求めています。
旧統一協会と関連団体による被害がどれほど深く人々を傷つけ、どれほど広がってしまっているか、被害者の声を深く受け止めなければなりません。
旧統一協会の反社会的な不法行為と深刻な人権侵害の中核は、正体を隠して勧誘し、マインドコントロール下に置いて、信仰の自由を始め精神的自由を著しく侵害して、教義を植え付け入信させ、人々の人生をめちゃくちゃにしてきたところにあります。
この点につき、文化庁が解散命令請求に当たって、七回にわたる報告徴収・質問権の行使、民事不法行為判決の精査と併せ、百七十人を超える被害者からの聞き取りによって得られた事実を積み重ねることによって、遅くとも昭和五十五年頃から、旧統一協会が長期間にわたり継続的に、財産的利得を目的として、多数の者を不安又は困惑に陥れ、自由な意思決定に制限を加えて、正常な判断が妨げられる状態で献金又は物品の購入をさせて、多数の者に多額の財産的損害、精神的犠牲を余儀なくさせ、親族を含む生活の平穏を害する行為をしたという認識に到達したことは、極めて重要です。
遅くとも昭和五十五年、すなわち一九八〇年以降、今日まで四十数年の歳月にわたって継続してきた被害の深さと広がり、その下で生まれ育ち、苦しみ続けてきた二世被害者の被害の深刻さは、これまで我が国の司法制度の下で正面から捉えられてきたとは言えません。
自民党の発議者は、現在の当該宗教法人の財産状況は債務超過のおそれがあるという状況ではない、我々は十全な財産流出、逸失防止措置をとっていると言いますが、これから救済されるべき被害の全貌は、法案発議者の認識をはるかに超えるものというべきであります。
正体を隠したマインドコントロールの被害の全容を明らかにし、全ての被害者の被害を回復するためには、個々の被害者任せにしては絶対になりません。
二世被害者が共通して、事件後、二世の声を聞き、私と同じような被害に遭っている方がいて驚いていますと語り、被害者有志の要望書が、統一協会の被害の本質は、一世、二世、親族の被害者を個別に分けて検証していても見えてきませんと述べるとおり、被害者を個別分断するのではなく、国として、解散命令請求でようやく到達した認識を更に深め、主体的、積極的に包括的救済の道に進むべきです。
既に一九九九年、日本弁護士連合会は、統一協会の反社会的不法行為を断じた判決やヨーロッパの取組を踏まえ、宗教的活動に係る人権侵害についての判断基準を示し、個別救済にとどまることなく、統一協会による人権侵害の根絶を国に強く求めました。実に四半世紀前のことです。
にもかかわらず、歴代自民党政権が、岸信介元首相以来半世紀にわたって、統一協会と相互に利用し合い、重大な人権侵害の後ろ盾、広告塔になって、逆に被害を発生、拡大させてきた責任は重大です。
遡れば一九七八年四月、当時の福田赳夫首相は、統一協会と関係を絶てと迫る我が党議員に、勝共連合というのは自由民主党といろいろ反共という点で共通する点があるんです、そう悪いことを一般的にしておるというような認識ではございませんので、調査するということは考えませんと開き直りました。
既に被害が大きく広がった一九八七年七月には、当時の中曽根康弘首相が、自民党は縁を切れとかなんとか言っておられますが、これは思想と行動の自由に対する重大なる侵犯発言であると私は考えていますと居直っています。
二〇一九年十月四日、自民党本部で、当時政調会長だった岸田総理がギングリッチ元米下院議長と面会した際、統一協会の関係団体である天宙平和連合、UPFジャパン会長の梶栗正義氏が同席していたことについて、岸田総理は、同行者がどなたであったか私は一切承知しておりませんなどと事実関係さえ認めず、言い逃れようとしていますが、その姿勢自体が、統一協会との癒着が当たり前のように続いてきた自民党の実態を示しているのではありませんか。
ギングリッチ氏は天宙平和連合の平和大使で、統一協会の広告塔です。
岸田政調会長との面会翌日、十月五日は、愛知県で韓鶴子統一協会総裁出席の下、天宙平和連合のジャパンサミットが開かれ、ギングリッチ氏が挨拶し、細田博之元議員が、今日の会議の内容を安倍総理に早速報告したいと基調講演した日です。参加した日米の議員が韓鶴子総裁や梶栗会長とそろって記念撮影し、そこには更迭された山際元大臣の姿もありました。さらに、翌六日には、統一協会信者四万人大会が行われ、自民党議員らが出席、挨拶しています。
ギングリッチ氏の岸田政調会長との面会も、統一協会をアピールする一連のイベントの一つだったのではありませんか。安倍総理の代わりとして面会した、手配は統一協会側が行ったとの報道もうなずけるところです。
こうした深い癒着を絶ち、真剣な反省の上に立って被害者救済の法整備を進めることは、自民党が当然に果たすべき責任です。
法案附則に規定された財産保全の在り方についての検討について、国会として、時を置かず速やかに、被害者や弁護団の意見を十分に聞き、実効性ある包括的保全の在り方を含めて行うことを強く求め、討論を終わります。(拍手)