○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、離婚後共同親権とDVについてお尋ねしたいと思います。
父母が離婚後共同親権ないし共同養育を合意できないという場合があると。このときに子供の利益をどう考えるかというのが、改正八百十九条の七項が適用される場面ということになるんだと思うんですね。この点について、子供の成長発達にとって安全、安心を与えてくれる養育者、同居者、同居親との安定した環境が守られることが最も重要という知見について、法案審議の際にも繰り返し指摘をしてまいりました。
資料の一枚目御覧いただきますと、改めて、二〇二二年六月二十五日の日本乳幼児精神保健学会の声明を御覧いただいています。離婚後の子どもの養育の在り方についてということなんですが、詳しくはお読みいただきたいと思いますけれども、二枚目、上の方に、子供の成長発達にとって最も重要なのは、安全、安心を与えてくれる養育者との安定した関係と環境が守られることである、そのためには、安全、安心は子供自身のみならず、子供に安全基地を提供する同居親についても確保されなければならないと、こうした知見が示されているわけですけれども、裁判所はこの八百十九条七項の場面においてこうした知見をどのように考えるべきなのか、改正法の趣旨について、まず民事局長にお尋ねします。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
離婚後の親権者の定めについて、父母の協議が調わない理由には様々なものが考えられます。そこで、改正法は、裁判所が父母双方を親権者と定めることができる場合を父母の合意がある場合に限定はしてはおりません。裁判所が、子の利益のため、父母と子の関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮して離婚後の親権者を定めることとしております。
もっとも、委員御指摘のとおり、子が安全、安心な環境で養育されることが子の心身の健全な成長にとって重要であるというふうに考えております。そこで、改正法は、虐待等のおそれやDV被害を受けるおそれの有無等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときには必ず父母の一方を親権者と定めなければならないこととして、父母双方を親権者と定めることによって安全、安心な養育の環境が害され、子の利益が害されることがないように配慮をしているところでございます。
○仁比聡平君 大事な御答弁だと思うんですね。
改めて、この八百十九条の七項が、子供に対する虐待はもちろんですが、父母どちらか一方のDV、これを必要的単独親権にしている理由は、この条文上も明らかなとおり、子の利益を害するからなんですよね。DVは子の利益を害するという、このことをしっかり裁判所は判断しなきゃいけないと思うんです。
そこでお尋ねをしたいんですが、これまでの、つまり現行民法に基づく調停や裁判の中で、離婚それから子の養育をめぐって、極めて高い葛藤の紛争があります。そのときに、調停委員さんだったり裁判官だったりあるいは弁護士だったりが、あなたへの暴力、DVがあったとしても、相手方と子供さんの面会、養育の問題は別ですと言って強く説得することが頻繁にありました。
そのことについてちょっと紹介しておいた方がいいでしょうが、昨年の四月三日の衆議院の参考人として、DV被害者として、住所を秘匿して、いつ居場所を突き止められて目の前に夫が現れるか分からない恐怖と隣り合わせの毎日を送っていますという斉藤参考人から、議事録の三段目のところありますけれども、子供さんの主治医の意見書を裁判所に提出したと。どう書かれているか。妻は配偶者によるストレスで重度のうつであり、障害のある子供の監護に悪影響になるので面会の負担を考慮すべきだと、子供は障害の状態から面会交流は控えるべきだという主治医の意見書が出ているという事案なんですね。これに対して調停委員や裁判官は、それは離婚事由で、面会では理由になりませんねと言い、調査官も、子供に障害があっても親がうつでも面会には関係ないとはっきり言っていました、恐怖と不安、絶望感でいっぱいになりましたと。
このDVの主張があるにもかかわらず、あなたが言うとおりであったとしても、というのは、つまり、DVであろうがなかろうが、子の養育、面会などの問題とは別問題ですという、こうした見地は法の趣旨に反するのではありませんか。局長、いかがですか。
○政府参考人(松井信憲君) まず、個々の調停手続、裁判手続における発言については行政府としてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、その上で、一般論として申し上げますと、父母の別居や離婚後も適切な形で親子交流の継続が図られることは子の利益の観点から重要ではありますが、親子交流の実施に当たっては、子及び監護親の安全、安心の確保が必要不可欠であると考えております。
○仁比聡平君 私はこの斉藤参考人がおっしゃっている斉藤参考人の事案についての見解を伺っているのではなく、今もお話があったんですけど、DVがあろうがなかろうが、子供の面会、養育の問題とは別問題だというこの見地は法の趣旨に反するのではないか。何しろ、DVを必要的単独親権の事由にしているのは、それが子の利益を害するからですよね。その趣旨は、今日、局長、きちんと答弁いただいているわけです。
となれば、このDVがあったとしても、面会、養育の問題は別ですよと、そう考えなきゃいけませんよという説得はしちゃならない。というか、法の立場と違うんじゃないですか。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
一般論として申し上げれば、親子交流の実施に当たっては、子や監護親の安全、安心の確保が必要不可欠でありまして、夫婦間の暴力やDVの有無というものはその際の重要な考慮要素になるものと考えております。
○仁比聡平君 ちょっと聞き方変えますけれども、このDVや虐待という必要的単独親権の事由があるかないかについて、あると訴えている当事者に立証責任はない、当事者に立証責任を負わせるものではないということはこれまでこの委員会でしっかり答弁をいただいていることなんですね。局長、そうですよね。
○政府参考人(松井信憲君) 訴訟と異なって、非訟事件と言われているこの家事の関係につきましては、立証責任というものはないというふうに御答弁申し上げているところでございます。
○仁比聡平君 中でも、DV被害者が、例えば写真だとかあるいは録音だとか、そうした物的証拠というか客観的証拠というか、こういうものがなければ言い分を認めないよとされてしまったら、沈黙を強いられる、加害者の支配に縛り付けられ続けるしかないという絶望になるでしょう。
裁判所関係者があるいは弁護士が暴力やDVがあったとしてもという発言をするのは、あろうがなかろうがという意味で、つまり当事者の訴えを否定してしまうということだと思います。本当に思いを決して調停の場でその話をしたら、あろうがなかろうがと言われたら、沈黙を強いられるということになるじゃないですか。
仮にそうした説得によって親権などについての合意があったかのような外形がつくられても、私は、それはこの八百十九条が求める真摯な意味での合意にはならないし、この八百十九条の七項の趣旨について、父母間に意見の違いがあるというか、まとまらないという状況があっても、裁判所がそうしたプロセスを置くことによって子の利益、最善の利益を探求するプロセスがつくれるんだというような趣旨の発言、答弁を法案審議の際にされておりましたけれども、強引に説得する、抑え付ける、沈黙を強いるというのは、これはそもそも法の趣旨に反する、あるいは法の趣旨ではないのではないですかということを聞いています。
○政府参考人(松井信憲君) 一般論として申し上げますと、御指摘のような事情によって、DV等の事情があるにもかかわらず、父母の一方が不適切な形で合意を強制される、強要されることがあってはならないと考えているところです。
○仁比聡平君 時間が迫っていますので、大臣に今議論していることについて一問ちょっとお尋ねをしたいと思うんですよ。
これまでの法務委員会の法案やこの委員会での議論で、法務省民事局は、DVの本質が支配であるということをお認めになっています。改めて、大臣がその点をどう捉えておられるかということと、今申し上げているような、DVの主張を認めず否定してしまう、事実上否定してしまうというようなことになってしまったら、それは裁判の手続なりあるいはこの離婚後共同親権の取組が支配の継続に加担するということになってしまうのではないか。離婚がやっと成立したのに、その後、共同親権だということでDV被害当事者が逃げられなくなってしまうということになってしまうのではないか。そうした支配の継続ということは許すものではないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(平口洋君) 改正法におきまして、裁判所は、DV被害を受けるおそれの有無等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときは必ず父母の一方を親権者と定めなければならないというふうに定められているところでございます。
○仁比聡平君 その実質的な意味をこれまで民事局長も答弁をしてこられていますから、大臣御自身のお言葉で御答弁いただければと思うんですが、いかがですか。あと一分ちょっとあります。
○国務大臣(平口洋君) 民事局長の答弁したとおりであると思います。
○仁比聡平君 お答えになりたくないんでしょうか。
民事局長、改めて伺いますが、この八百十九条の必要的単独親権事由としているDVというのは、これは加害の権力的な支配という、そういう構造だと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
委員御指摘のような事情によって父母間に様々な力の差を背景として一方的に他方を支配するような関係が認められるような場合には、父母が共同して親権を行うことが困難であると言えるものと考えられますので、父母の一方が親権者と定められることになるものと考えております。
○仁比聡平君 先ほどヘイトスピーチの議論でもありましたけど、大臣が、政治家として、あるいはこの法務行政の責任者として、あるいは高市内閣の一員として、正面から駄目なものは駄目だときちんと政治家として発言する、発信するということが、今日申し上げていることでいえば、DV被害者の人権を保障し、子の最善の利益を本当に進めていく上で大切なことだと思います。
今日きちんとした答弁がなかったのはとても残念なことで、引き続き議論をしたいと思いますが、裁判ってえてして公平中立だという建前でですね……
○委員長(伊藤孝江君) 時間になりましたので、おまとめください。
○仁比聡平君 これが加害への加担になりかねないという事態があるんですよね。家庭裁判所は真の子の利益とは何かということを本当にきちんと科学的に調査するということこそが大事だということ強く申し上げて、質問を終わります。