○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
法案に関連して、今日は、今法制審で議論されているいわゆる離婚後共同親権問題について、現行民法の子は親権に服するという条文をそのままにしたままでよいのかという点についてお尋ねしたいと思います。
法制審の諮問前に行われた家族法研究会の令和三年二月の報告書においては、親権の用語については、親の子に対する責任を強調する用語に置き換えることとし、親の責務、責任などの用語を候補としつつ、更に検討を進めてはどうかとされています。
民事局長、これはなぜだったんでしょうか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
家族法研究会では、親権という用語が表現しようとしている概念の本質が親が子について果たすべき務めであるという認識の下で、親の子に対する責任を強調する趣旨で親権という用語を別の用語に置き換えることについて引き続き検討を進めてはどうかという提案がされたものと承知をしております。
○仁比聡平君 この親権という今の現行民法の用語についての歴史的な経過を私たちしっかり捉える必要があると思うんですよね。
お手元の資料の一枚目にありますように、旧民法、明治民法八百七十七条は、子はその家にある父の親権に服すと規定をしておりました。これは、親権を父の子に対する身分的支配権、父権などとも言われますけれども、家制度の下でそうした性格を色濃く持っていたのではないかと思いますが、局長、いかがですか。
○政府参考人(竹内努君) 御指摘の明治民法の規定でございますが、原則として子はその家にある父の親権に服する旨を定めるものでありまして、父権主義的な規定であったと指摘をされております。
現行民法は、このような明治民法の父権的、支配権的な考え方を改めて、親権制度を個人の尊厳に立脚した、未成熟な子の保護のための制度に改めたものであると一般的に説明されているものでございます。
○仁比聡平君 そのように説明されているんですけれども、戦後民法は、親権という用語、そして子は親権に服するという条文構造を明治民法のまま引き継いでいます。お手元の資料のとおりなんですね。
そのことは、親権をなお親の子に対する支配権であるかのように捉える社会の中の観念につながっているのではないかと思いますが、法務省、いかがですか。
○政府参考人(竹内努君) 現行民法の親権でございますが、親の権利のみではなく義務としての性質も有しておりまして、その権利義務は子の利益のために行使されるべきものであると考えられているところでございます。もっとも、成年に達しない子は父母の親権に服するという現行民法の条文につきましては、親権が専ら親の権利であるかのように誤解されるおそれもあるとの指摘もございます。
委員御指摘のとおり、御指摘の点も含めまして、親子関係に関する基本的な規律の整理につきましては、現在、法制審議会家族法制部会において議論がされているところでございます。
○仁比聡平君 つまり、憲法十三条、二十四条の下で行われたはずなんだけれども、戦後の民法改正というのはこの点において不十分だったと思います。
今、民事局長の御答弁にあった子の利益のためにという概念が条文化されたのは二〇一一年の改正だと思うんですよね。極めて近年のことなわけです。各国では、一九七〇年代から、国際人権規約や女性差別撤廃条約あるいは子どもの権利条約などに基づいて、子供の権利を中心に捉えて親子関係の規律を捉え直すという改正が広がりました。日本の親権概念、用語というのは、これは世界に遅れたものなのであって、この見直しこそが私は抜本改正の要だと思うんです。
この点で、法制審議会家族法制部会の十月末に出された家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けたたたき台(2)では、親子関係の基本的規律や法的性質をどのように定めようとするかということはまだ示されていないんですね。
そこで、大臣にお尋ねしたいと思うんですけれども、親権という用語や概念の見直しが定まらないままその共同とか共同行使とかいうことを議論することが混乱を広げているのではないか、あるいはそうした議論をすることは混乱を広げてしまうのではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 御指摘のとおり、現在の民法が明治民法の構造を引きずっていると、そして概念的にもその父権による支配という、そういうものを引きずっているんではないかと、それ、大切な論点だと思います。一方で、世界は親子の関係の中で子供の利益を中心に組み立てていこうということがもう普遍化しつつあるわけでありますので、まさにそこは非常に重要な論点であります。
この、今、家族法制部会のたたき台の中には明確な文章としてそれは示されていないのは御指摘のとおりですけど、まさにそこに様々な議論が今起こっているわけでありまして、親権という言葉、あるいは子供の利益を中心に考えること、あるいは親権者じゃなくても親の責務があるという議論もあります。そういう様々な議論、様々な概念、様々な用語を今議論の中で整理をしていくという段階に今入っていこうとしているところでありますので、今日の御議論もしっかり受け止めたいと思います。
○仁比聡平君 混乱が起こらないように基本の概念をしっかり定めるというのは大切なことなんですよね。
実際、各国では、共同親権と呼ばれてきたものの見直しが起こっています。先月十九日、オーストラリアで家族法改正が可決をされ、十一月六日に成立をいたしました。お手元に国会図書館の資料をお配りしておりますけれども、ここでは、父母の平等な共同親責任の推定という規定が廃止をされました。その理由について、国会図書館の資料にあるように、法廷の内外で行われる子の養育に関する決定において、子供の最善の利益が中心にあることを保障し、関連制度の利用を促進させるためだというふうにオーストラリア法務省は説明しているということなんですよね。
民事局長、今の法制審部会でこの調査審議というのは行われたでしょうか。
○政府参考人(竹内努君) 委員御指摘のとおり、最近、オーストラリアの連邦家族法改正案が上院、下院を通過したという情報には接しておりましたが、詳細な内容についてはまだ把握をしておりません。
したがいまして、現時点で法制審議会家族法制部会においてこの改正案について調査審議はされておりませんが、必要な情報収集に努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 そうした各国の動向も含めて、しっかりそこをついた議論といいますか、基本概念を曖昧にしたまま進むということはこれはできないと思いますので、調査審議が行われることを私も強く期待したいと思います。
そこで、私が、混乱しているんじゃないかという議論の一つをちょっと紹介しますと、離婚後、共同親権がないから面会交流ができないといった趣旨の議論があります。いや、本当にそうかと、面会交流は果たして親権の効果なのかと。民事局長、いかがでしょうか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
別居親が離婚等に伴って離れて暮らすこととなった子と交流することは親権の効果そのものではなく、別居親の親権の有無の問題と親子交流の頻度や方法をどのように定めるかといった問題は、別な問題だと考えられます。
○仁比聡平君 実際、非親権者が自分の子供に面会交流をしたいという、それが面会交流の多くの場合で、実際、家庭裁判所での調停、審判などが行われているケースなわけですね。
そもそも面会交流の法的性質について、二〇二一年の三月二十二日の当委員会で法務省は、誰の誰に対する権利又は義務として整理するかなどについて更に検討を進めることが提案されているというふうに答弁をされておりますが、今日、時間がたちましたけど、面会交流が誰の誰に対する権利義務なのかということは定まったんでしょうか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
一般的に親子交流の法的性質につきましては、それを権利義務として構成するかどうかなどをめぐって様々な見解があるものと承知をしております。
法制審議会家族法制部会におきましては、親子交流が子の利益のために行われるものであるという認識の下で、様々な角度から親子交流に関する規律の整備について調査審議が進められておりますが、その法的性質や権利性の有無について、特定の立場を前提とする議論が行われているわけではございません。
引き続き、法制審議会において充実した審議が行われるよう努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 つまり、親権という権利概念あるいは権利義務概念とその面会交流の実施というのは、これは別の問題なわけですよね。特に、別居親の監護親に対する権利として何だか強く捉えてしまうと、典型的にはDVのケースなどにもなりますけれども、子の利益や監護親の権利侵害に至りかねないという矛盾をはらんでしまうことになるわけです。そうした複雑で繊細な、また多くの場合、高葛藤の家族のための面会交流調停について、あるいは面会交流を含む調停について、先ほど伊藤議員からも随分、実態の御議論がありました。
資料配っておりますけれども、この間、家庭裁判所あるいは調査官などの取組の中で、子の利益を最優先に、ニュートラルフラットな立場から運営するという、そうした取組が行われていますが、これは、最高裁、どんな意味なんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(馬渡直史君) お答えいたします。
御指摘のニュートラルフラットな立場での審理運営とはどのような意味であるかについて説明いたしますと、まず、先入観を持つことなく、同居親及び別居親のいずれの側にも偏ることなく、ひたすら子の利益を最優先に考慮するという立場から調停運営に当たることを明らかにしたということになります。
すなわち、このような立場に立って、例えば同居親が安全、安心な交流の実施に不安を抱くような事情があるのであれば、それを丁寧に聴取、把握する、あるいは、別居親が抱く子と会えないことによるつらい気持ちに理解を示し、別居親側の事情も丁寧に聴取、把握するといったように、同居親、別居親の双方から丁寧に事情を聴取しながら、子の利益を最優先にして調整を図るといった調停運営を意味するものと考えております。
○仁比聡平君 お手元資料の六枚目、「ケース研究」三百四十一号という雑誌の百四ページのところに、なぜニュートラルフラットという言葉を使うのかと。それは、当初から面会交流ありきという先入観を持って調停運営に当たっている、家裁は別居親側であり、同居親を不利に扱っているという批判があり、今後そのような批判を受けるようなことがあっては絶対になりませんというふうに記載されているように、公平に取組を進めるんだということなんだと思うんですよね。
ちょっと時間の関係で、先に養育費の問題について、こども家庭庁においでいただいています。
今年の四月、養育費の受領率を二〇三一年に四〇%とするという達成目標を定められました。その意義と、そのために、実現のためにどんな方策を取っていくのか。いかがですか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
御指摘の養育費の履行確保でございますけれども、これは離婚後の子供を支えていくという観点からも重要な課題というふうに認識をしておりまして、そうした観点も踏まえて、まずは二〇三一年に、子の養育費の取決めの有無にかかわらず、受領している世帯を四〇%とするという目標を掲げさせていただいたところでございます。
この履行確保につきましては、現在、法制審議会家族法制部会においても御議論が深められているところではあると承知しておりますけれども、こども家庭庁としてもできることには取り組んでいきたいということでやっておりますのが、代表例ということで申し上げますと、離婚前後親支援モデル事業というものがございまして、この中では、養育費確保に関する弁護士などによる相談の支援でございますとか、公正証書の作成支援などの養育費の履行確保に資する取組を行う自治体への支援を行っております。
こうした事業の展開を図っていくことを通じまして、子の養育費の受領率を高めていくこと、こういったことに資すればと考えております。
○仁比聡平君 こうした取組を更に広げる必要が私もあると思います。加えて、スウェーデンやドイツ、フランスなどで行われている国による養育費の立替払制度や養育費の取立て援助制度などを我が国でも一日も早く実現するというこの検討の場を、大臣、つくるべきだと思いますよ。これらは現行法の下で十分やれるし、早急にやるべきことなのであって、離婚後共同親権の導入を拙速に進めるのではなくしっかり議論するということと、その中で親権概念そのものを見直すという改正が要だと改めて申し上げたいと思います。
時間なくなりましたけれども、地家裁の本庁五十、あるいは支部二百三というふうに日本中にあるんですけれども、お手元に資料をお配りしたように、ここで家事事件を担当している判事、特例判事補、未特例判事補というのは計七百三十二人しかいません。だから先ほど伊藤議員が詳しく指摘をされたような実態になってしまうわけで、家裁調査官、書記官、事務官とともに抜本的な増員が必要だということを強く求めて、総務局長の御答弁いただく時間ありませんけれども、是非頑張ってくださいと申し上げたいと思います。
終わります。