参院法務委員会は5月7日、離婚後「共同親権」を導入する民法改定案について参考人質疑を行いました。DV(配偶者などからの暴力)被害者や家庭裁判所元調査官などが、被害者がDVから逃れられなくなる恐れや、両親の争いが長期化して子どもの不利益につながることなどへの懸念を相次いで表明しました。
DV被害者を支援するNPO法人「女のスペース・おん」の山崎菊乃代表理事は、夫の暴力から3人の子どもと避難した体験を陳述。「DV被害に対する認識が薄く、暴力から逃れることも難しい状況を改善せずに『共同親権』を導入すれば、被害者がさらに逃げられなくなる」と訴えました。
日本共産党の仁比聡平議員が「子連れ別居はなかなか決断できないのではないか」と質問すると、山崎氏は「『修学旅行が終わってから』『私が我慢すればいい』などずっと逡巡(しゅんじゅん)していた。それでも逃げざるを得なかった」「弁護士をつけずに調停を申し立てた人から、(DV被害を)信じてもらえなかったというケースはたくさん聞く」と述べました。(動画はコチラ)
仁比氏は、日本乳幼児精神保健学会が声明で、「(子どもにとって養育者と)幸せなやり取りができることは、生存と発達の重要な要素」と指摘したことへの見解を質問。家裁元調査官の熊上崇和光大教授は「特に乳幼児は、安心して甘えられるなどの環境が絶対に必要だ。『共同親権』が非合意ケースで決定すれば、常に親が争いに巻き込まれ、安心して育てることは難しい」と懸念を表明。「安定した養育者と子どもの関係を第一に考えるべきだ」と主張しました。
仁比氏は、衆院での審議を通じて多くの問題点が明らかになったとし、参院に求められる審議を質問。木村草太東京都立大教授は「(共同親権は)合意のある場合に限定することを真剣に考えてほしい」と主張。裁判所によって非合意の「共同親権」が強制された場合、「子どもの医療や教育の決定が停滞する。子どもから適時の決定を受ける権利を奪う」と批判しました。(しんぶん赤旗 2024年5月8日)