○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、参議院選挙制度二法案の委員会審査の省略に断固反対の意見を述べます。
選挙権は国民の参政権の根幹を成す基本的権利であり、選挙制度は議会制民主主義の根幹であって、その改革に当たっては、何より主権者国民に開かれた議論が不可欠です。憲法四十七条は、「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」としていますが、ここに言う法律は憲法十四条、十五条、四十三条、四十四条を始め憲法の要求にのっとって定められなければならず、およそ選挙制度を変えようとする法案であるならば、それが憲法の要求に沿うのか、理念や内容、問題点、執行に当たっての必要な措置などについて国会における必要かつ十分な審議が尽くされなければならないのは当然です。それは会派間協議で代替できるものではなく、まして、現在の多数会派が合意さえすればよいというものではありません。
しかも、今回の選挙制度改革は、二〇〇九年九月の最高裁判決が、最大較差が五倍前後に達している参議院選挙区定数配分規定について、投票価値の平等の観点から、選挙制度の仕組み自体の見直しを提起したことを契機として、国会、とりわけ参議院の国民に対する責任が問われてきた大問題です。
五年間の各党協議で合意に至らず、二法案はいずれも、選挙制度検討会が五月末に打ち切られた後、昨日提案され、その具体的内容は検討会や協議の場で一度も協議されていないものであって、国会における十分な審議がいよいよ重要と言うべきです。国会における十分な審議なしに国民はその具体的内容を知ることができないのであり、周知期間を理由として委員会質疑を省略するのは本末転倒です。過去に委員会審査の省略が認められてきたのは全会一致のごく限られた議案だけであり、国民の基本的権利に関わり、賛否が深刻に対立する法案の委員会審査省略は前代未聞です。
両案には、二倍を超える一票の較差が許されるのか、合区と一部合区後の選挙区はどのような理念に基づくのか、近い将来人口変動により新たな合区が必要となることをどう考えるのか、合区対象県の選挙の執行、例えば届出先や届出順の判定、開票の在り方はどうなるのかなど、選挙制度の根幹に関わる重大な論点があり、その立法者意思と合理性の有無は、本会議における質疑に加え、委員会での一問一答の質疑、参考人質疑や公聴会、とりわけ合区対象とされる県の有権者から十分な意見を聞いて審議を尽くしてこそ明らかになるものです。そうした審議を今尽くすことなしに、改定後の選挙が裁判所の憲法判断を受けることになったなら、到底司法審査に堪えられないのではないでしょうか。
以上から、委員会審査省略の要求は否決し、十分な審議のために両案を政治倫理・選挙制度特別委員会に付託するのが我々議院運営委員会の責任であることを強く申し述べ、反対討論といたします。