○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
先日、参考人においでいただいた横浜華僑総会の曽徳深参考人がこの法案について、こうお述べになりました。余りにも材の方に重点を置き過ぎて、人というものを見失っているのではないか。人があるから材があるのであって、もっと人として尊重できるような施策、例えば、家族帯同はいけないというが、家族がいることによって実はその人はもっと成長するし、もっと働きがいが出るんだろうと思う。
私はそのとおりだと思うんです。政府がこの法案でも受入れ拡大を目指す外国人をあくまで外国人材と呼び、正面から外国人労働者と呼ばないのは、総理、なぜですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 政府としては、我が国で働くこの外国人の方々を指す用語として、外国人材という用語を用いることもあれば、外国人労働者という用語を用いることもあり、必ずしも両者を明確に区別して使い分けているものではないと認識をしております。
また、政府は、この専門的、技術的分野の外国人については、経済活性化の観点から積極的に受け入れ、それ以外の外国人については、社会的コスト等の幅広い観点から国民的コンセンサスを踏まえて検討しつつ、検討する、こうした方針を示しておりますが、いずれに該当する方であっても、我が国で働く方々を労働者として適切に権利保護することこそが、我が国が選ばれる国になるため当然の前提であると考えております。
○仁比聡平君 かつて研修生と呼ばれた今日の技能実習生は労働者とは認められませんでした。その労働者性が認められてからも既に久しいです。数も多くなっています。とりわけ人手不足分野でなくてはならないレギュラーメンバーになっている。
ところが、総理は、この私の質問に対して、総理自身の認識を本会議場で答弁されませんでした。そこには、移民政策は取らないなどと繰り返して、現実に外国人労働者が果たしている役割に目を塞いでいくという、目を塞いでしまうと、そういう姿勢があるのではないか、そんなことで選ばれる国になどなれるはずがないと私は思うんですね。
特別永住者の外国人登録証の常時携帯義務を廃止した二〇〇九年の法改正のとき、永住者の法的地位について、その歴史的背景を踏まえつつ、生活の安定に資する検討を求める法文が置かれました。ところが、本法案の在留資格の取消し事由拡大というのはこれに逆行するものなんですね。
だから、華僑社会や、あるいは在日韓国人・朝鮮人の社会、あるいは日系ブラジル人の交流協会、先日、地方公聴会でお会いしましたけれども、その当事者団体から厳しい抗議の声が出ている。
五月二十九日に横浜中華街で開かれた集会がありました。そこでの参加者は、私たちの話を聞かずに法律を変える、二級市民の扱いでおかしいと、話も聞かずに何でこんなことするのかと。この声に総理がどう応えるのかなんですよ。
昨日は、神奈川県弁護士会の会長声明、外国人市民への苛烈な差別であり、撤回をというこの会見に、大陸系出身の曽参考人と、台湾籍の永住者であって、台湾出身の投資家や経営者と交流がある楊縵儀さんが同席をして記者会見されました。ここで、楊さんは、永住権取消しの不安があるのは大きなストレスになる、日本で生活し、投資をしてくれる人はこれからも必要だと、挙げてこうした声が沸き起こっていると。
今日午後は、在日本大韓民国民団の皆さんがこの国会前で集会をされると。この抗議、撤回をという声に応えるべきではありませんか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、一点、私の参議院本会議場における答弁について御指摘がありました。五月二十八日の参議院本会議における私の答弁は、外国人を使い捨てにしてきた自民党政治を根本から改めるべきではないかといった委員からの御指摘に対して、外国人が使い捨てにされるといったことがないよう、受け入れた外国人材の育成や日本人と同等の待遇確保にしっかりと取り組んでまいると申し上げたものであり、委員の御指摘、なくてはならないレギュラーメンバーになっている、こういった実情があることは当然の前提に、前提としていると考えております。
その上で、後半の御質問ですが、この平成二十一年の入管法改正法の附則第六十条第三項は衆議院による修正により追加されたものでありますが、その趣旨は、永住者の中でも我が国への定着性が特に高い方について、特別の歴史的背景を踏まえて、在留カードの常時携帯義務など、在留管理の在り方について検討を進めていくべきというものであり、その対応については法務省において検討中であると承知をしております。
そして、今回のこの制度の適正化、これは共生社会の実現のために必要なものであると説明をさせていただいているわけですが、法務省においては、永住者の視点に立った有識者からの意見も踏まえ、永住者の我が国への定住性に十分配慮して制度を立案したものであると承知をしております。また、実際の制度の運用に当たっても、御指摘の華僑の方、在留韓国人の方、日系ブラジル人の方等を含め、永住者の定着性に十分配慮した慎重な運用が必要であり、そのことについては法務省も十分認識しているものと承知をしております。
○仁比聡平君 声も聞かずに生活の基盤を奪うのかという問題なんですよ。在留資格、在留カードの常時携帯義務を始めとしてと言うけれども、入管法上の義務違反を在留資格の取消し事由にするんだというわけでしょう。
こういう底深い外国人差別と排外主義を拭い去る徹底審議こそ、我々参議院法務委員会の重大な責任だということを強く申し上げて、質問を終わります。

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、入管庁に確認をしたいと思うんですけれども、先ほど総理の質疑の中で、先ほど来議論になっている永住資格の取消し事由の拡大の問題について、まず、永住者の、あるいは当事者の団体とのヒアリングは、これはしていないんだと、法案提出に当たって。そのことは前提にした御答弁だったと思うんですけれども、何だかちょっとよく聞き取れなかったんだけれども、これまでの取組で、直接ヒアリングはしなくても当事者の意向は適切に踏まえられているといった趣旨の答弁を総理がしたと思うんですけど、それで理解はいいですか。
○政府参考人(丸山秀治君) お答え申し上げます。
総理の答弁の内容でございますが、直接ヒアリング等を関係者からしたことはございません、この関係。ただ、第七次出入国管理政策懇談会の中でこの永住者の問題について御議論いただいたときに、外国人の方、メンバーの外国人の方であるとか弁護士の方、有識者を含めいろいろ御意見をいただいたと。その中の御意見というのは、永住者等の立場も踏まえた様々な御意見が含まれていたというふうに認識しているということでございます。
○仁比聡平君 いや、それは驚くべき答弁を総理にさせたのだなと思います。
小泉大臣も五月二十八日の牧山理事の質問に対して、令和元年の十一月の世論調査と令和二年の第七次出入国管理政策懇談会などを挙げて、この一連の議論をちゃんとしてきたんだという趣旨の答弁をなされているんですけれども、その第七次出入国管理政策懇談会、この時点での議論がどんなものだったのかと。
まず、当時、次長、担当課長だったですよね。委員会にお名前、議事録が出ているかと思うんですけど、議事録にお名前が出ているように思うんですけれども、永住資格の取消しという今回の法案に制度化されようとしているそういう中身というのは、まるでありませんでした。確かに取消しってみたいな言葉は出ているけれども、取消し事由として今回の法案のような具体的な規定ぶりというのは、これ前提にはなっていない。自治体からこれこれというような声があるというようなお話が出ているわけですけれども、小泉大臣が五月二十八日にお述べになった令和二年七月の懇談会で、どんなこの懇談会の、何というんですか、有識者というんですか、委員ですね、委員の発言があっているか大臣は御存じなのでしょうか。
グレンダ・ロバーツ早稲田大学大学院教授は、そういう厳しい政策を決定する前に、少なくとも根拠のデータを見せる必要があります、例えば割合、今の段階で永住者のうち何%が生活保護をもらっているのか、それから期間、どのぐらいの年月もらっているのかなど、つまり、国にとって経済的に大きな負担だということを示さない限り、こういう政策を設定するのはおかしいですとおっしゃっています。
上智大学の岡部みどり教授は、永住権を取得した後に例えば経済的な困窮に至って要件が満たされないという人々についても、これは通常の日本人であっても、景気が悪化したときに失業の憂き目に遭う人が多い中で、これは各国のどの国のデータでも示していることですが、通常の国民に比べて外国人の失業率は常に高いわけです、そうすると彼らはより脆弱な環境に置かれるということを考えると、やはりそこで厳しい要件を課すというのはいかがなものかと思います。
大臣が根拠のようにおっしゃった令和元年の十一月の世論調査については、筑波大学大学院の明石純一准教授始め数々の疑問が出されていますけれども、この明石さんは、調査自体の質問構成などを見ると一部誘導的な性質があるということが否めなくもないと。
まず、確認しますけど、次長、この第七次のこの懇談会のこの多くの委員の議論というのは、そういう議論だったんじゃないですか。つまり、永住者の資格の取消しなんというのはおかしいという話じゃないですか。
○政府参考人(丸山秀治君) お答え申し上げます。
私の記憶等、まだ今回確認した範囲内で申し上げますと、当時、永住者について政策懇談会で御議論をいただきました。それは、地方自治体の声もあり、あるいは世論調査を、結果も出ましたので、そういったところで一度有識者の御意見を聞こうということでセットされた、設定したような記憶がございます。
その中におきましては、合理的な、永住者を仮に取り消す制度をつくるとすると合理的な理由があるのではないかという御意見もある一方で、やはり委員、慎重に対応すべきという意見も多々御意見披露されたところでございます。
○仁比聡平君 慎重な御意見どころじゃないですよ。
最初にこの議論がこの第七次懇談会で出たのかなと思うんですけど、第十二回、平成三十年の九月二十五日の議事録もちょっと拝見をしました。ここでは、座長が法務省の説明に対してこう言っています。
地方自治体等からこのような御意見が出ているということは重要なことだと思うのですが、私として法務省に今後御努力をお願いしたいのは、こういう本当に具合の悪いことが起こっているというのは、本当にどのぐらい具合の悪いことがどのくらいの規模で起きているのかということを調査していただく必要があろうかと思います。ある種のエピソードとして、こんなひどいことがありましたよというだけのエビデンスで政策を判断するというのにはやや問題が出てくるかもしれないので、とりわけ悪質なものがあるのだとしたら、それはどのぐらいあるのかということが、なかなか調べるのは難しいと思いますけれども、そういうこともやっていただく必要があろうかなと思っております。
これが懇談会の座長の発言で、座長というのは、この間も参考人においでいただいた田中明彦参考人です。
こういう議論じゃないですか。根拠になるデータも示さずに、大事な永住資格を剥奪してはなりませんというのがむしろコンセンサスなんじゃないですか。
そうした下で、大臣、今回結局データは示せないでしょう。七つの自治体からヒアリングをしましたと言うけれども、今御紹介した田中座長がおっしゃっているとおり、そんなことではエビデンスにはなりませんというのが、そんなことで政策決定はできませんというのが専門家も含めた意見でしょう。
にもかかわらず、入管庁がレクをしたのか、法務省を挙げてやったのか、今日、総理は、その懇談会をもってして、今、撤回をと、差別だと声を上げている当事者たちの声を適切に踏まえたものだという答弁をさせたんでしょう。法務省がそうやって説明したから、総理あんな答弁したんじゃないですか。
とんでもない話であって、よく事実関係調べて、総理のさっきの答弁、私は撤回すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) まず、その客観的なデータの問題でありますけれども、この七自治体のヒアリングとほぼ同じ時期になりますが、令和五年の一月から六月、お示ししているように、在留許可後の、永住許可後の子供の、そこで生まれてきた子供の永住許可に関する調査において納税証明というものを徴求できるので、そこで初めて客観的な我々が自前でできるデータの確保ができたわけでございます。千八百二十五件中の二百三十五件に未納があったということであります。そして、これを裏付けるために地方自治体へのヒアリングを併せて行いました。
その更に遡ること、第七次出入国管理政策懇談会、二〇二〇年の開催です。遡ること三年前、この時点で既に、その前の年、二〇一九年に基本的法制度に関する世論調査というものも行っていました。これも御説明を申し上げたとは思いますが、許可、永住許可を取り消す制度の賛否について国民に内閣府の調査として問うたものであります。これは様々な内容がありますけれども、一定の割合の方々が永住権取消しの必要性を、賛成だと答えておられる方、七五%ぐらいの数字が出ています。
ただ、これ数字だけでは判断できないので、その翌年、二〇二〇年に第七次出入国管理政策懇談会を開いて、外国人の方、ロバーツさん、大学の教授ですよね、また弁護士の方、幅広く、そして田中明彦先生も座長になっておられますが、この委員会で厳しい御意見もしっかりと聞かせていただいたわけです。厳しい御意見をしっかりと我々も聞かせていただいて、その後の検討にそれを生かしていったと、これが実態でございます。
○仁比聡平君 長々御答弁されたけど、厳しい意見ばっかりだったけど、それを聞きおいて今回こういう法案の提出に進んできたということなんじゃないんですか。それ、本当にひどい話ですよ。
一点、ちょっと次長、先ほど、今大臣が紹介した、入管が調べたという、その千八百幾つのというその話が一体何を示しているのかという評価はできないでしょう、母数にしたって、その中身にしたって。外国籍だから特に未納率が高いんだとか、あるいはそれは永住者だからそうなんだとか、いろんなこと、そういう理由につながるようなことを分析はできないでしょう。
○政府参考人(丸山秀治君) お答え申し上げます。
私どもとしてこの数字をお示ししていますのは、これは永住者の子供さんが生まれたときの在留資格の永住の取得申請のときにいただいた書類でございます。ということは、当該永住者の方は、永住許可を取る時点ではそういった公租公課含め公的義務を履行されていたから永住許可を取られた方でございます。その方たちが永住許可後にどうなった、どういう対応をされているかと知る場面が、この子供さんが生まれたときに書類をいただいている方について私どもの通常業務で把握できますことから、今回集計をさせていただいて、その中に未納の方がいらっしゃるということで御説明をさせていただいております。
これの意味するところは、地方自治体等で、地方自治体のヒアリングの中で、永住許可の申請の時点、あるいは何か入管の申請の時点で滞納を払って、納めてくれるんだけれども、その後払わない方もいるんですよということに対して、現実的に、その永住許可取得した後に一定の未納の方がいらっしゃるということは示していると思っております。
○仁比聡平君 つまり、田中座長や、今日も、今日も含めて皆さん議論しておられるような、とりわけ悪質なものがどれだけあるというのかという調べではないわけですよ。その未納の方々にはいろんな事情があるでしょう。その事情は分からない話じゃないですか。それをもって今回の法案の立法事実であるというふうに言い張るような大臣の答弁は成り立たないと。引き続きこの点も議論したいと思いますが、もう一問、今日尋ねておきたいと思います。
先ほども議論ありました本人意向による転籍の制限期間についてですが、この五月二十八日の川合理事の質疑に対して、結局、制度所管省庁としての入管、厚労からは、規定の、期間の検討に当たって考慮すべき事情などを示すんだというふうに言うんだけれども、その事情というのがどういう中身のものなのかということは結局御答弁がなかったと思うんですよ。
そうすると、一体、この人手不足で本当に大変になっている農業あるいは建設、そうした業所管省庁がその人手不足分野で外国人労働者に元気に働いてもらえるというような計画をどうやって立てるのかと。結局、法案は全部を白紙委任するというのかと私思うんですけれども、時間がないので、農水、国交、それぞれ一体どうするつもりなんですかと、この転籍の期間制限について。いかがですか。
○政府参考人(勝野美江君) お答えいたします。
本人意向の転籍の要件である同一の受入れ機関における育成就労の期間につきましては、一年以上二年以下の範囲内で育成就労外国人に従事させる業務の内容等を勘案して主務省令で定めるということになっていると承知しております。
本人意向による転籍の要件である、要件の一つである同一受入れ機関における在籍期間につきまして、農林水産省としましては、計画的な人材育成の観点や地方などにおける人材確保に留意しつつ、外国人の人権保護、労働者としての権利性向上を通じて、農業分野が外国人から選ばれる産業となることなどを念頭に検討していく必要があるというふうに考えております。
今後、政府内で具体的な制度設計を行っていく際には、農林水産省として、現場の声をよくお聞きしながら、法務省、厚生労働省などと連携して検討してまいりたいというふうに考えております。
○政府参考人(蒔苗浩司君) お答え申し上げます。
本人意向の転籍の要件である同一の受入れ機関における育成就労の期間につきましては、今後、制度所管官庁から検討に当たって考慮すべき事情等が示されると聞いておりますが、これまで建設業団体等と意見交換をしてきた中では、例えば、現場作業に必要な技能習熟には一定の期間を要するとの意見や、外国人材から選ばれやすい機関とする必要があるとの意見など、様々な御意見があったところでございます。
建設業を所管する国土交通省として、今後の検討に当たっては、現場の声を十分に聞きながら、制度所管官庁と連携し、対応してまいります。
○仁比聡平君 結局、これから現場の意見をよく聞いていくというふうにしか答えられないということが極めて残念です。
今日は終わります。