○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
皆さんには、今年二月十三日付けの弁護士ドットコムニュースを今お手元にお配りをしておりますが、この記事に、今年一月六日、逮捕された女性が大阪の豊中警察署の留置場に入る際、着用していたスポーツ用ブラジャーを脱ぐよう指示されたという記事があります。
そこで、警察庁にお尋ねをしますけれども、逮捕、勾留などによる留置に際して、留置される者が着用、もちろん所有しているブラジャーをこれ脱がせるわけですね。これ、なぜですか。
○政府参考人(谷滋行君) お答えをいたします。
都道府県警察におきましては、ブラジャーなど、その一部がひものような形状となっているもの、又はその素材にワイヤーが含まれていたり伸縮性を有するものについては、自殺や自傷行為に用いられるなどのおそれがあるということで、留置施設での使用を制限し、警察で保管しているものと承知しております。
通常、ブラジャーは、ワイヤレスであっても、ひも状であったり伸縮性があるものもあることから、被留置者には着用させず、保管をしているものと承知しております。
○仁比聡平君 特段、自傷行為に使用される危険のない下着、肌着というのもあるわけでして、性的な部位を覆う、そうした下着を一律に脱がせて取り上げてしまうということをどう考えるのかというのがそもそも問われていると思うんですね。
留置をされるというのは単独に限りません。ほかの被留置者と一緒の房にいるということだってもちろんあるわけですね。外出するということがあります。留置場から出ると。警察署の別のフロアにある取調べ室だったり、あるいは検察庁に押送されて検察官の取調べを受けるという場合もあるし、我々がよくテレビなんかで見るように、その間、メディアも含めて公衆の目にさらされるということがあり得ます。弁護士との接見も警察署内で行われる場合もありますが、裁判所での勾留質問、あるいは現場への実況見分や、もちろん裁判、公判ですね、それから被疑者が病を発して留置場外の診療を受けるということだってあるだろうと思うんですけれども、そうしたその不特定多数の目にさらされるということがある。しかも、腰縄を締められますよね。腰縄を締めると体のラインが浮き出ますし、性的な部位が透けて出るということも多いわけです。
報道では、夏場にはTシャツ一枚にもなるため気になるどころの話じゃないと話された女性被疑者がいるといいますし、弁護士は、私だったら弁護士との接見であっても早く終わってほしいと思うはずですと。ある女性被疑者は、留置所では人権ないと聞いていたけど本当だった、スマホが触れないとかそういう甘いことではなくて、ノーブラで透けている状態で男の人の前に立たなければいけないのは本当にストレスだったと話しておられますけれども、私、全くそのとおりだと思うんですよ。にもかかわらず、ブラジャーの着用を認めてこなかった、それは一体なぜなのか。
留置されている者の性的な羞恥心に何ら配慮をしないと。それは個人の尊厳、人格権を損なうものだと私は思いますけれども、警察庁はどう考えているんですか。
○政府参考人(谷滋行君) お答えいたします。
刑事収容施設法第百八十七条では、留置施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合には、被留置者が自ら購入した衣類の使用を制限することができることとされております。都道府県警察では、この規定に基づきまして、ブラジャーにつきましては、自殺や自傷行為に用いられるなどのおそれがあることからその使用を制限しているところでございますが、多数の方の目に触れる可能性のある場合、例えば実況見分や公判出廷に際しましては、被留置者からブラジャーの使用の申出があった場合には原則としてこれを認めているものと承知をしております。
また、ブラジャーの使用が認められない場合であっても、例えば留置施設が保管する衣類を貸与して重ね着をするなどにより、被留置者の性的羞恥心や人権への配慮がなされているものと承知しているところでございます。
○仁比聡平君 留置施設の規律及び秩序の維持などという、あるいは管理運営上の支障というこの言葉をもって何でもありというふうにしては絶対に駄目だということだと思うんですよね。自傷他害のおそれがあるようなものというのは、それは駄目でしょうという判断は働くでしょうけれども、そうじゃない肌着が現にあると。
そこで、この間、大問題になってきたのが、その資料の二枚目に写真がありますけれども、Tシャツ型のシャツにカップが縫い付けられているという、これ、ブラトップというふうに呼んでいるようですけれども、こうしたものを着て逮捕されるということは、なかったときに、自分で買えないかとか、あるいは差し入れを弁護士ができないかとか、あるいはそういう身寄りもないときに警察署が貸すべきじゃないかという要求が、女性弁護士たちを中心にずっと行われてきました。ところが、その弁護人からの差し入れを拒否して、一、二時間にわたって警察署で大もめにもめるというような出来事もついこの間起こっているわけですね。ですから、ブラジャーはさせないという、そうした運用が警察の現場に、あるいは留置の現場に染み付いているんじゃないのかと。
そうした下で、法務省刑事局長にお尋ねしたいと思うんですけれども、今申し上げているような刑事手続において女性被疑者にブラジャーをさせないという扱いというのは、被疑者、被告人の防御権を著しく侵害するのではないか。恥ずかしくて嫌なのに問答無用で脱がせられて、そのまま、先ほど重ね着なんというような話もありましたけれども、体のラインがくっきり出ているというふうに自分は思うような状態で取調べにさらされると。大方は男性警察官、男性検察官じゃないですか。それって、極めて屈辱的なことであって、対等ではないと。
つまり、留置をしている側、取調べをしている側、捜査機関の側に問答無用で従わざるを得ない無力な存在だと知らしめるためにそんなことをやっているんじゃないのか。だからこそ、被疑者から、逮捕されたら人権はないというふうに言われてしまうんじゃないのか。これは防御権侵害なんじゃないのか。
刑事局長、いかがですか。
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
一般論として申し上げますと、被疑者の取調べが適正に行われなければならないということは当然でございまして、「取調べにおいては、供述の任意性の確保その他必要な配慮をして、真実の供述が得られるよう努める。」というふうに「検察の理念」等においてもされているところでございます。
警察の留置施設における被留置者の下着の着用の問題に関しましては、警察の活動内容、御判断に関わる事柄でありまして、法務当局としてお答えする立場にはないものではございますけれども、検察当局においては、被疑者の人権を不当に制約することがないように、性的羞恥心、おっしゃるような状況で非常に恥ずかしいという気持ちになるということはとても理解できるところでございますけれども、被疑者からそういった申出があった場合には、そういったことへの配慮も含めて必要な配慮をし、取調べの適正に努めているものと承知をしておりまして、いたずらにそういった羞恥心を感じさせて防御権を侵害しようとしているということではないというふうに承知しております。
○仁比聡平君 とても残念な答弁なんですよ。
その羞恥心をいたずらに損なってはならない、あおってはならないという認識は述べられたのは大事だと思いますけれども、何で警察のことだから答弁できないなんて言うんですか。検察官取調べにおいては、取り調べるのは検察官じゃないですか。検察官が、目の前で取り調べている被疑者が肌着を着けられないでいるということに気付いたとき、あるいはこの弁護士ドットコムの一枚目の女性弁護士がしているしぐさ、再現しているしぐさがありますよね。ブラジャーを着用できなかった女性が弁護士面会のときに両手を胸の前で交差させるようにしていた様子、少し前かがみになっていたというふうにもおっしゃっていますけれども、恥ずかしいし、胸を張れない、もう早く終わってほしいと思っている。そういう状態に目の前に被疑者を置いてですよ、そのまま取り調べ続けるんですか、検察官が。
先ほど任意性という言葉も言われました。任意性というのは、被疑者、被告人の人権が保障されているということが大前提じゃないですか。こんな屈辱的なことをやっておいて、任意性なんて担保されるわけがない。
私は、自分で恥ずかしいと思っているのは、こうした事態に女性被疑者、被告人がこれまでずっと置かれてきたということをきちんと知らずに、この委員会でも取り上げるのは私初めてですけれども、こういう状況に置いてきたということ自体について根本的に反省をすべきじゃありませんか、刑事局長。
○政府参考人(松下裕子君) 委員の御指摘、女性の被疑者の羞恥心にきちんと配慮をするべきだという御指摘はごもっともなことだと思います。
常にその性的な部位が露骨にさらされるような着衣の状況であって、本人がその大変恥ずかしいというようなことを明示的に訴えていたり、しぐさでこうしていたりということであれば、その点についての対処を、必要な対処、上に何かを羽織れないのかとか、そういった対処をするということは十分にあり得ることだと思います。
ただ、例えば冬場であって、上に何かを着ているようなときでそれが分からないこともあったと思いますし、女性の被疑者の要するにブラジャーを着けていないということが直ちに誰にも明らかに分かるような状況であったかどうかということについては、それは必ずしも常にそうであるということもまたないのではないかと思いますので、その点については、今後、法務当局といたしましても、警察と、警察の方でも、先ほど、必要性があっていわゆるそのワイヤーがあるようなブラジャーは着用は認められないというような運用をしているということでございますので、そういった必要性とどういうふうにバランスを取っていけるのかということは考えていく必要があるだろうと思っております。
○仁比聡平君 被疑者は警察のものじゃないんですよ。
この女性弁護士がこの記事でこう言っています。相手の性別に関係なく、人と話すときにブラジャーを着けていないことは耐え難い、女性が辱めを受けることなく取調べに応じるにはブラジャーは必要不可欠ですと。私もこのとおりなんだろうと思います。
こうした批判が出る中で、資料の二枚目、三枚目に、カップ付き女性用肌着の使用についてという通達を警察庁出されました。ですが、それは去年の十二月十九日になってからのことですよ。令和五年の十二月のことですよ。とんでもないことだと思います。
しかも、配付資料の最後にお示しをしましたけれども、東京都、神奈川、千葉始め全国で二十都道県において、このブラトップの貸与というのをこれ全く実施をされていないと。一部実施したが全部の留置施設では導入されていないというところが福井、高知、長崎、この状況にある。各留置施設の状況によってこれだけの違いがあるなんていうのは、これ、もうすぐに正さなきゃいけないし、必要な予算を付けなきゃいけないと思いますが、警察庁、いかがですか。
○政府参考人(谷滋行君) お答えいたします。
カップ付き女性用肌着につきましては、昨年十二月の通達発出以後、貸与品として導入する都道府県警察は着実に増加はしておりますが、現時点におきましては、基準を満たす製品を確保できていないことなどから貸与品としての導入に至っていない都道府県警察もあるものと承知しております。
警察庁といたしましては、既に貸与品として導入している都道府県警察が調達した製品について全国警察で情報共有を進めるなどにより、各都道府県警察において貸与品としての導入が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 大臣に認識聞く時間なくなっちゃいましたけど、お分かりでしょう、この問題の深刻さ。すぐにやらなきゃいけないじゃないですか。
今の警察庁の御答弁からしたって、基準を満たす貸与品というのはほかの多くの導入している県ではあるわけですから、存在しているわけですから。これをもし緊急に必要だというんだったらば、警察庁が自分のところの予算できちんと確保して、できないと言っている留置施設に全部送ったらいいじゃないですか。
今でも、女性たちが留置をされ、ブラジャー取り上げられて、取調べにブラジャー着けられないまま留置所から連れていかれているかと思うと、もう本当に対応は急ぐんだということを厳しく申し上げて、今日は質問終わります。