○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
次に、鳥井参考人にお願いいたします。鳥井参考人。
○参考人(鳥井一平君) 移住連の共同代表理事の鳥井です。特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク、略称、移住連といいます。
本日は、このような場で発言をさせていただくことに、冒頭、まず感謝申し上げます。
実は私は、国会の法務委員会の参考人として意見陳述をさせていただくのは五回目となります。二〇〇九年の入管法改正、二〇一四年、二〇一六年技能実習法、二〇一八年、そして今回となります。ただ、これまでの四回は衆議院でした。ようやくお呼びいただいたというのが実感です。
さて、私たちの移住連は、一九八〇年代からこの日本の労働市場の高まりによって急増した移住労働者とその家族、いわゆるニューカマーの人々に対する差別、人権侵害や労働問題を取り組んできた全国各地のNGOや労働団体によって一九九七年につくられた全国ネットワークです。二〇一五年にNPO法人として再スタートしています。現在、全国で百十の団体と、研究者、弁護士、地域の活動家など、七百人強の個人が会員となっています。
また、私自身は、個人加盟の労働組合、全統一労働組合の特別中央執行委員でもあり、バブル経済下のニューカマーの外国人労働者との関わり以来、三十五年近くになります。そして同時に、外国人技能実習生権利ネットワークの運営委員をスタート当初から務めており、技能実習生、当時は研修生も含めて、一九九八年頃から具体的な支援の取組を始めています。また、人身売買禁止全国ネットワーク、JNATIPといいますが、の共同代表として、政府の人身取引対策に関する関係省庁連絡会議との情報提供、意見交換も行わせていただいております。国交省の委託を受けて、建設就労者のヒアリング調査のアドバイスのための同行活動もさせていただいたこともあります。
私自身の活動については、後日配付させていただけると思いますけれども、NHK作成の動画なども御参照いただければ幸いです。
また、本法案のスタートとも言える当時の古川法務大臣の大臣勉強会にお呼びいただき、実態を直言させていただきました。
さて、限られた時間ですので、どの程度実態と思いを伝えられるのか不安ですが、課題ごとに話させていただきます。
まず、育成就労制度についてです。
外国人技能実習制度の廃止と言わず発展的解消としているところに、本法案の根本的矛盾が象徴されていると言わざるを得ません。
技能実習制度では、いかなる問題が起きていたのでしょうか。配付させていただいています事例集を御参照ください。今日まで、日々、支援団体に、息つく暇もなく相談が寄せられています。しかも、それでもこれらは氷山の一角と言えるでしょう。
時給三百円に象徴される低賃金、不当解雇、強制帰国、セクハラ、人権侵害、賃金未払、長時間労働、労働災害、暴力、パワハラ、むき出しの強制労働、タコ部屋、劣悪な住環境、殺傷事件、妊娠、出産問題、そして群がり食い物にするブローカー、保証金など前借金制度など、枚挙にいとまがありません。女工哀史と表現する識者もおられました。
私自身、一九九八年から今日まで、ずっと相談支援活動に直接関わってきました。技能実習生だけでなく、多くの社長さんたちや農家、船主など、技能実習生らを受け入れている使用者の方たちとも様々話し合ってきました。
さて、この外国人技能実習制度の問題を端的に言うと、まず第一に、開発途上国の技術移転を名目として外国人労働者受入れを偽装したことです。こんな傲慢な態度はありません。専ら日本国内の事情による労働者受入れを開発途上国のためとかたったことには強い反省が求められます。開発途上国に対しても非礼な施策です。
第二に、偽装した名目によって奴隷労働構造をつくり出したことです。失踪防止として、制度当初は、公然とパスポートを取り上げ、保証金制度までつくって技能実習生、実習生をがんじがらめにしたことです。今日現在まで、保証金、前借り金制度は、手を変え品を変え、変わっていません。また、労働者に辞める権利、つまり転籍を認めるようにとの私たちの要請に、国会答弁でも、辞める権利を認めず、ありもしない効率的な技術移転のためと偽装に偽装を塗り固め、強弁してきました。結果、国連など国際社会からも、奴隷労働、人身売買と厳しく批判され続けてきたわけです。
そして、三つ目には、以上のことから、利権構造をつくり出してきたことです。監理費や教材費、出国手数料など、様々な名目で技能実習生から直接に、あるいは小零細企業、農家など、実習実施者から費用徴収をする。また、リベートやバックマージン、接待などが横行する構造です。しかも、合法ブローカーが介在しているのですから、巧妙な手口によって問題を複雑化させています。
この制度下でも労働者を受け入れている多くの社長、農家などの使用者たちと交渉も行ってきました。低賃金やセクハラ、暴力、労災などで交渉するわけですが、驚いたことに、この制度下の社長さんたちに暴力団の類いの人はほとんどいないのです。皆さん普通の方、もっと言えば、地域の子供会や自治会、町会の面倒を見るような、いい人たちなのです。その社長さんたちがびっくりするような人権侵害、労働基準破壊を行っているわけです。つまり、制度が人を変えてしまう、恐ろしい制度となってきているわけです。
では、育成就労制度はどうなのでしょうか。本国会で何度か、技能実習制度の良かったところを生かす旨の政府答弁がありました。しかし、それは大きな見誤りです。
日本で働き、帰国して活躍している労働者は確かに多くいます。しかしそれは、外国人技能実習制度固有の成果ではありません。開発途上国の技術移転を目的意識して行われた結果ではありません。出稼ぎ労働の結果、価値としての成果です。一九八〇年代から一九九〇年代半ばの非正規滞在三十万人の時代にも、多くの労働者が日本で働いた成果を出身国に持ち帰っています。日本で働き学んだことを出身国、地域で生かしています。また、在留資格を得て、この日本社会で、労働者として、経営者として、職人として活躍し、そして家族をつくり、子弟たちがスポーツ選手として活躍する姿もあります。これが出稼ぎ労働の社会的価値、出稼ぎ労働の歴史的価値です。
技能実習制度の良かったところなどと評価するのは大きな間違いであり、ミスリードです。事実を直視するべきです。
利権構造ができてしまったゆえに廃止できなかった外国人技能実習制度の三十年を真摯に反省することが、新たな受入れ制度の始まりでなければなりません。また、制度の構造的問題で被害に遭った技能実習生たちに謝罪することはもちろんですが、労働力補填としてだまし、時に加害者にさせてしまった社長や農家、船主などの使用者にも謝罪するべきだとさえ思います。
ところが、育成就労制度では、依然として転籍制限を設け、労働者の基本的権利の辞める権利、選ぶ権利を制限しています。これでは、またもや使用者は見誤りに陥ります。また、政府の責任を曖昧にします。さきに述べた効率的な技術移転との欺瞞が、効率的な育成と言葉を換えたにすぎません。偽装を続けるのでしょうか。地方から都市部への流出などと一部から声があるとも言われます。しかし、そのことをもって労働者の基本的権利を制限することは民主主義を放棄することにもなります。また、転籍制限は、地域政策や産業政策に対する中央政府の怠慢も導きかねません。
カニ漁の船主会元会長のお話をしましょう。二〇二〇年のコロナ禍の中で、この船主の方から、どうしても話がしたい、高齢なのでコロナで東京に行けないので来てほしいと言われ、会いに行きました。この方は、技能実習生には感謝している、彼らが来なかったらカニ漁は二十年前に終わっていた、でも、今またこのままではカニ漁が終わってしまう、当時五十歳代、六十歳代だった船主たちが七十、八十となってしまった、担い手が欲しい、技能実習では駄目だ、余計な監理費も無駄だ、労働者に直接払ってやりたい、船主が外国人でもいいと思っている。
また、同じ頃、農業法人の代表者の方からも来てほしいと要請があり、伺いました。外国から来た労働者を三年間全面的に支援して、三年後には農業で自立していけるようにしていきたい、もちろん自立後も共同してやっていく、近くのある村の村長さんは、外国人でもいい、あと十人移住してきてほしいと言っている、技能実習では見合っていないと。
これが人々の声でしょう。
二〇二一年一月から半年間、宮崎日日新聞と信濃毎日新聞が、それぞれ県内を記者が丁寧に取材した提言を出しています。どこに行くかも分からず、どんな仕事かも分からず、辞めることができない、そんなことで労働者を縛り付けてきた技能実習制度の轍を地方対策と称してまたもや踏むというのでしょうか。
それでは、受入れはどのようにするのかということでしょう。
まず第一に、外国人労働者受入れ制度は、国家的一大事業であるとの決断と実行、政治的リーダーシップが必要です。出入国管理、在留管理だけの問題ではないのです。法務省、入管法だけで決めてはいけません。私は古川法務大臣に直言しました、法務省だけで無理しないでくださいと。つまり、政府全体で取り組むべき施策、法制度が求められているのです。しかも、待ったなしの逼迫した状況です。費用が掛かるので民間活用などというのは、政治判断の大きな誤りと言わざるを得ません。
債務労働のない、国を越えた労働者の移動には、ハローワークの機能強化と機能拡大が不可欠です。国としての国際窓口を創設し、送り出し国はもちろん、関係国への理解と協力を求めていくことでしょう。国際的労働者移動における先進国としての日本の役割評価にもつながります。
国内においては、労働基準法三条に明記されているように、全ての労働者に区別なく、差別なく労働法の全面適用を行うことです。それこそが労働者の活力を引き出していきます。当然のことですが、日本語教育の義務化と国の費用負担は欠かせません。
この四十年近いニューカマー労働者の実像、活力、成果を直視することが政治的リーダーシップに求められています。
次に、永住取消し問題です。お手元の資料も御参照ください。
今回の改定法案には、技能実習と特定技能に係る項目以外に永住許可制度の適正化が盛り込まれています。有識者会議の議論でも、その最終報告書にも全く言及されなかったにもかかわらず、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において、政府の対応で、育成就労を通じて、制度を通じて永住につながる特定技能制度による外国人の受入れ数が増加することが予想されることから、永住許可制度の適正化を行うことが明記され、改定法案に永住許可要件の明確化と永住許可取消しが追加されました。
永住者が入管法上の義務を怠ったり故意に公租公課の支払をしなかったりした場合、あるいは一定の罪を犯し拘禁刑に処せられた場合、たとえ執行猶予が付いたとしても在留資格を取り消すというものです。例えば、引っ越しをして十四日以内に住居地変更を届けなかった場合も取り消されてしまいます。うっかり在留カードを忘れて外出してしまった場合も取り消されてしまいます。病気や事故で働けなくなり税金などが払えなくなった場合も取り消されてしまいます。景気変動などにより急に仕事を失って税金が払えない場合も取り消されてしまいます。リーマン・ショックのときも、コロナ禍において、コロナ禍においても、外国人が真っ先に解雇されたことを思い出してください。
入管庁は軽微な違反は取り消さないと答弁していますが、軽微の基準は何でしょうか。誰が軽微だと判断するのでしょうか。全て入管庁の裁量です。また、生活に困窮して公租公課を払えない場合は故意と扱わないと答弁していますが、その線引きが難しいことも既に指摘されており、結局これも入管庁の裁量です。
そもそも、なぜ永住許可取消しが今回の改定法案に入り込んだのでしょうか。
二〇二〇年十二月の出入国在留政策懇談会の報告書では、永住許可の取消しに対しては、委員からの懸念も示されたので、外国人やその関係者等、各方面から幅広く意見を聞くとともに、諸外国の永住許可制度の例も参考にするなどして、丁寧な議論を行っていく必要があるとされました。
その後、関係閣僚会議による外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の二〇二二年度改訂版で初めて永住者に係る施策が追加され、永住者の在り方について、その許可要件及び許可後の事情変更に対する対応策等について、諸外国の制度及び許可後の状況調査を参考としつつ、見直しについて必要な検討を行っていくと明記されました。同日決定された外国人との共生社会の実現に向けたロードマップでは、二〇二四年度中に検討、結論、二〇二六年度までに必要かつ可能な範囲で実施とあります。
諸外国調査の進捗については、私たち移住連は何度か入管庁に問合せしていますが、改定法案が閣議決定された後の二〇二四年四月の時点でも調査中との回答でした。つまり、関係閣僚会議自らが決定した総合的対応策における手続やロードマップの工程を無視し、諸外国の制度の調査も、当事者や関係者のヒアリングもせずに強行しようとしています。なぜでしょうか。住居地の変更届が遅れたり税金を支払わなかったなどの軽微な理由で永住資格を取り消すような国など聞いたことがありません。
衆議院法務委員会における入管庁の説明では自治体からの声があったと言いますが、その数は、全国千七百四十一自治体のうち僅か七つです。永住者の未納についても、一部の永住者の状況を紹介したのみで、正確なサンプル調査の結果ではありません。つまり、立法事実はないのです。
入管法上の義務違反に罰則規定があるので、永住者にのみ在留資格取消しというペナルティーを新たに加える合理的理由はありません。税金や社会保険料の滞納や退去強制事由に該当しない軽微な法令違反に対しては、日本人の場合と同様に、法律に従って、督促や差押え、行政罰や刑罰といったペナルティーを科せばよいだけのことです。外国籍者である永住者にのみ在留資格取消しという過大なペナルティーを科すとしたら、これは明らかに公的な外国籍者に対する差別です。国が先頭に立って差別をすることがあってはなりません。現に、この法案が提出されたことで、外国籍者に対する偏見やヘイトスピーチが増えています。
私たち移住連では、今回の永住許可取消しに対する声を集めました。切実な声が紹介していますので、是非御確認ください。
二〇二三年現在、およそ三百四十一万人の在留外国人のうち永住者は約九十万人で、全体の四分の一強を占め、在留資格別では最も多くなっています。在留資格「永住者」は、一定年数日本で暮らし、安定的な生活を送っているなどの厳しい要件を満たすことで付与される在留資格であり、後天的な国籍取得率が極めて低い日本において、旧植民地出身者とその子孫に与えられる在留の資格、特別永住者を例外とすれば、日本で暮らす外国籍住民にとって最も安定した法的地位です。永住許可取消しは、永住者のみでなく、在留資格「永住者」の配偶者等を持つ配偶者や、今後永住許可を申請しようとする全ての外国籍住民の地位を著しく不安定にします。
全く事実検証もなく、適正化という言葉が独り歩きし、たちまちにヘイトスピーチがあふれました。結果として、ヘイト扇動とも言えるのではないでしょうか。なぜこのような永住資格取消し制度を、育成就労制度創設を口実として、どさくさ紛れに加える必要があるのでしょうか。
育成就労制度の創設によって永住につながる外国人が増えるといいますが、育成就労制度で入国した外国人が永住許可要件を満たすためには、原則、計十三年を経る必要があります。育成就労制度が創設されても、直ちに永住者が増えるわけでありません。加えて、二〇一〇年代辺りから永住許可審査がいわゆる厳格化しており、永住許可率が低下傾向にあります。二〇〇六年は八六・五%ですが、二〇二〇年は五一・七%です。居住要件を満たしたからといって、容易に永住許可が得られるわけではないのです。
しかしながら、二〇二四年一月二十九日に開催された自由民主党外国人労働者等特別委員会で入管庁が配付した資料を見ると、永住者が増えることが問題であるかのような記述があります。しかし、安定的に日本で暮らす永住者が増えることは、受入れ国である日本にとって好ましいことではないでしょうか。政府はいまだ、移民政策でないと繰り返しています。しかし、在留期間に制限のない外国人、すなわち一般永住者と特別永住者は、在留外国人の三四・一%を占めています。移民につながりのある日本人も増えています。日本は既に移民社会なのです。前提事実のない管理強化優先の永住資格取消しではなく、現実を直視した上で、より良い社会をつくっていくにはどうしたらよいかを、この社会に暮らす全ての人とともに考えていく必要があるのではないでしょうか。
私たちは、次に、最後に、私たちは、常時携帯義務のある在留カードとマイナンバーカードの一体化にも反対です。これもまたどさくさ紛れであり、マイナンバーカード運用の問題が顕在化する中で、外国籍者は拒否しにくい状況であり、実質強制的にマイナンバーカードを取得させようとすることは公平性を欠くものです。
最後に申し上げます。
今回の改定法案は、共生社会の実現を掲げる関係閣僚会議において対応が決定されたものでしょう。しかし、残念ながら、今回の改定法案は共生社会に逆行するものです。真の共生社会の実現に向けて、労使対等を阻む技能実習制度も育成就労制度も、永住許可取消しも、マイナンバーカードと在留カードの一体化にも断固反対します。
ただ、私の反対やノーは決して否定的な言葉ではなく、私たちが進む次の社会をイメージしています。違いを尊重する社会、国籍や出身地、外貌や性的指向など、様々な違いが差別されることなく尊重される社会です。そのことが民主主義社会を、民主主義を深化させていく一つの道です。SDGs、ビジネスと人権の行動計画、グローバルコンパクトなど、人々が求める道筋を今や多くの人が語ります。国会議員もそのことを否定する人は少ないでしょう。今国会において岸田総理も、誰一人取り残さないと言明しています。この誰一人には、国籍や人種の違いも関係ありません。人権に国境は存在しません。移民がいる事実に真摯に向き合うことが政治に求められています。
本法案審議の過程でも、もっと受け入れたいので、反対する人に対して適正化を言うことが必要だという答弁がありました。しかし、心配しないでください。今、多くの人々が求めていることは、違いを尊重し合う共生社会なのです。移民がいるのに移民政策を取らないと強弁することが、移民、外国籍の人々と直接向き合う現場の窓口で働く職員に誤解と混乱をもたらしているのです。入管の職員だって自治体の職員だって、共生社会を求めているのです。
政治的リーダーシップを発揮して、この日本社会が国境に関わりなく移動する人々で成立している事実を発信し、そのことに真摯に向き合うことを呼びかけ、政策していくことです。国会議員の皆さんにはそれができます。真摯に事実をチェックする議論に期待します。人々が求める社会、違いを尊重する共生社会、誰一人取り残されることのない社会を実現できるのは国会議員の皆さんです。
御清聴、感謝します。
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
次に、曽参考人にお願いいたします。曽参考人。
○参考人(曽徳深君) 皆さん、こんにちは。外国人として国会で意見を述べるチャンスを与えていただきまして、ありがとうございます。
実は、今お二方の発言を聞いて、私は非常に自分が幼稚だったなということを感じます。私は今日訴えたいのは、永住許可に関する部分だけなんです。だけど、皆さんの話を伺っていると、いや、実は、多くの外国人をどうやって受け入れてこの日本の社会をもっと豊かに発展させるかという制度づくりのことを話しています。それについて全く今まで知らなかったということを恥じています。
空気が見えないんですけど、私たちは見えない空気感じません。それでも息をしています。法律も見えません。だけど、法律は我々人間が社会をつくっていく上において欠かせないものです。空気みたいなものです。それで、実は、空気が汚染されると我々は初めて、あっ、自分の命が脅かされるなということを感じます。僕は今、この入管法の改正は、まさに何かおかしな空気になっているなというふうに今日のお話を聞いて感じています。
私の経験だけで物を、実は勉強をしていません、していませんけど、自分の経験だけで私の意見を述べさせていただきます。皆さんにお届けした資料は全部で五つあるんですけど、それはお読みになっていただければ幸いなんですけど、その中で僕が特に言いたいことを、幾つかこの資料を見ながら話したいと思います。
まず、入管法が変わるよということを僕が知ったのは五月十二日でした。本当にそのときに入管法が変わるんだということを知ったんですね。だから、どうやって変わるかということは知らなかった。見たら、すごい大変なことになっていた。だけど、先ほど鳥井さんが説明したようなところがメインの部分であって、永住資格を取り消すのはほんの一部だったんですけど、僕が一番注目したのはこの永住取消しの部分なんです。
私は八十四年永住しています、日本に。私の父は一九一九年に日本へ来ています。ですから、もううちの家族は百五年、日本にいます。その経験で話します。それで、確かに、入管法によって、いっときひどい目に遭わされたこともあります。最近はそういうことはございません。だから鈍感になっていたんです、この法律について。それはすごく今反省しています。
一ページ目の入管法改正案に関する声明文というのは、十二日にその話を伺ってからみんなで作った声明文です。その中の一ページ目の一番下の段落を読み上げます。
日本と中国の交流は長い歴史があります。近代では、日本の開港後、この横浜に多くの中国人が渡来し、以来百七十年余にわたり、この地に生活の基盤を置いてきました。横浜中華街の今日の発展は、日本人と来日した中国人が力を合わせた結晶です。現在、日本で生まれ、日本語しか分からず、日本にのみ生活基盤を有する二世から六世の永住者も多く、全てが日本市民とともに善良なる市民として地域社会の発展に貢献しています。
そして、次のページをめくってください。
今回の入管法改正案による新たな在留資格取消し拡大制度の導入は、日本政府が目指す共生社会の実現に逆行するばかりか、歴史的な背景により日本に居住するに至った在日中国人の永住者や、また生活上の様々な事情に余儀なく日本に居住するに至った在日外国人の永住者、さらにはその家族まで対象とし、納税不履行や軽微な刑事罰等によって簡単に永住資格を取り消そうとすることは、善良なる市民に深刻かつ憂慮すべき問題を惹起するものであります。ましてや、国又は公共団体の職員が入管へ通報できる制度まで創設するというのは、余りにも過度な取締りと言えます。最後のところで、この度の日本政府の入管法改定案は、永住者の生活、人権を脅かす重大事案と認識し、是正を強く求めます。
この声明を書いたときは是正だけ求めたんです。
次のページをめくってください。これは、内閣総理大臣と法務大臣宛てに送った陳情書です。陳情書をめくって、陳情書の一番最後のところを読み上げます。最後のページを読み上げます。
五、以上、私どもは、永住権取消し事由の拡大に反対するものであり、本改正案のうち、第二十二条の四第一項第八号及び第九号並びにこれに付随する諸条項の削除を強く求める。
これが、今日、私が来た目的でございます。
なぜこれを強く求めるのかというと、次に資料の三をめくってください。これは出入国在留管理庁が出したもので、永住許可に関するガイドラインというのがあるんです。
ここで、法律上の要件として、一、素行が善良であること。法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。二、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。三、その者の永住が日本国の利益に合すると認められること。アとして、原則として引き続き十年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能一号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き五年以上在留していることを要する。イ、罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的な義務、納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務を適正に履行していること。ウとしては、現に有する在留者資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第二に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。エは、公衆衛生上の観点から有害になるおそれがないと。
これだけ厳しい条件を付けて、それも十年掛けて実はその人の歴史を細かく調べてやっているわけですよね。これだけ厳しい条件で出した永住権に対して、今度の改定は、いとも簡単に軽微なことで取り消そうというのがどうも納得できません。
それから、ページをめくっていただきたいんですけど、実は、僕は入管法について本当に不案内だったので、本屋、書店に行って「はじめての入管法」という本を手に入れまして、そこでちょっと勉強しました。この本を作った方は、要するに入管の業務を担当した入管局長とかの執筆なさったもので、ある意味では政府側のことをよく知っている方のことなんですね。
それで、そこの在留資格の取消しというところをちょっと見てほしいと思うんです。
現行法の在留資格の取消しは、アンダーラインで引いてあるところ、在留資格の取消しの対象行為は、大きく分けて次の四つになります。ア、虚偽の申請などにより上陸又は在留などの許可を受けた場合。イ、一定期間(三か月又は六か月以上)現に有している在留資格に該当する活動を行っていない場合。ウ、中長期在留者で居住地に係る届出義務に違反した場合。エ、難民又は補完的な保護対象者の認定を受け、偽りのその他の不正の手段により在留資格を取得した場合と。
こういうことが元々取消しの事由なんですね。
今回出されてきたものは、納税していませんよ、入管の提示義務をしていませんよとか懲罰がどうのこうのというのは、全くこれとは違う異質の法律、いわゆる取消しの条件ですよね。これもすごい侵害だと思います。
それじゃ、ちょっとページまためくってほしいんですけど、政府全体としての出入国在留管理って何なのかというと、またアンダーライン引いていますけど、二番目のアンダーラインのところをちょっと読み上げます。
ここに言う閣議において決定された基本方針に相当するのが、外国人受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について、平成三十年七月二十四日閣議決定となります。この閣議決定に基づいて同年に設置された外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議が累次の外国人材の受入れ、共生に関する総合的な対応策を決定しています。この総合的な対応策は、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実現を図ることにより、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するため、外国人材の受入れ、共生において目指すべき方向性を示すものですと、こう書いてあります。
それから次に、ページまためくってください。
二〇二三年の改訂ロードマップで次のようになっていますと。一、目指すべき外国人との共生社会のビジョン、三つのビジョンがあります。ア、安全、安心な社会。これからの日本社会を共につくる一員として外国人が包摂され、全ての人が安全に安心して暮らすことができる社会。多様性に富んだ活力のある社会。様々な背景を持つ外国人を、全ての人が社会に参加し、能力を最大限に発揮できる、多様性に富んだ活力のある社会。ウ、個人の尊厳と人権を尊重した社会。外国人を含め、全ての人が互いに個人の尊厳と人権を尊重し、差別や偏見なく暮らすことができる社会と。
こういうふうに、政府自身もこういうことをおっしゃっているんですよね。一方で、こういうことを言いながら、今度のこの法律を改定することによって、全く逆のことをやっていると私は認識しています。
それで、私はもう、戦前生まれですから、終戦、終わったときから永住権を与えられています。だから、どうやって苦労して永住権を得たという、そういう苦労が実はない。ないんですけど、最近に来た人たちがどうやって苦労して永住権を取ったかということをインタビューしてみました。それが次のページです。
入管法改定に関する聞き取りメモとして、一、ZY氏。永住資格取得は二〇二〇年。五年の在留後、二年間帰国、その後、二〇〇八年に再来日し、新たなスタート。二〇一七年に在日十年となったので永住申請をしようとしたが、大腸潰瘍の病気入院のため、収入不安定の理由を受け付けてもらえなかった。申請手続は行政書士に依頼、申請理由書、添付書類など書類は十幾つで、再来日した二〇〇八年から足掛け十三年掛かった。両親を扶養していると永住申請ができないということだったので扶養を外した。この両親は国にいる両親です。永住資格取得の回答は半年後。永住者に対して厳しい扱いをするなら、他国の人たちが日本に来るだろうかと、この人は率直にこういう感想を述べています。
それから次に、二番、中華街、中華料理店Kに勤務するコック。二〇〇四年、コックとして来日、Kに勤務。二〇一四年に永住資格を取る。二〇一七年に子供が来日、当時十一歳、地元の元街小学校、港中学、今は日本の高校に在学中。親が永住であるので子供も永住申請したところ、二回目の申請でも五年の定住許可しか出なかった。
ちょっと補足説明しますと、中華街の周りにある学校が、元街小学校、港中学、吉田中学、南吉田小学校とあるんですけど、実は、元街小学校にいる中国籍の子供は一五%、港中学が二〇%、吉田中学に至っては五〇%、そして南吉田小学校は、外国人の数は六〇%以上に増えている。もうそれも中国人だけではない。そういう形で、親と一緒に来た子供たちは、日本の教育のために一生懸命勉強しているんですよね。
ちなみに、私は三月まで横浜山手中華学校の理事長をしていますけど、そこの学校は中国と日本国籍の子供がいて、五五%が日本国籍なんです。それで、その人たちは、日本の学校へ行くと言葉の関係で十分な教育を受けられないので、うちの学校へ来ることによって、我々は日本の義務教育も導入していますから、その教育を受けて日本の高校を受けています。例えば元街小学校については、運動会なんかやるときには、アナウンスは中国語、日本語、あと韓国語も使って、そういう地元の、地場の地方自治体は、みんなそういう努力をやっています。
さて、次に、三、中華街、中華料理店Kの経営者のことを話します。
日本人の母は、日中戦争の前に日本への中国人留学生と結婚して中国に渡った。私はその母とともに、内モンゴルから、日本と中国が国交正常化した後、一九七五年に里帰りで来日。そのとき日本籍を確認して、中国に帰らずに母と日本に残った。中華街でいろいろな仕事をし、食料品販売、中華料理店を経営するまで事業を拡大した。中華料理店を開業するとき、従業員が長く勤務できる仕組みをつくり、家族で日本に長期定住する受入れ体制をつくった。まず、父親が単身で来日し、自身が職場や日本に慣れた頃、学校が夏休みなど長期休暇中に家族を旅行で日本に招き、日本に対する抵抗感をなくし、家族が来日すると、日本で高等教育を受けたメンバーで構成されたサポートチームが学校入学の手続や保護者に代わっての学校との折衝などを行っています。
これだけ努力して、何とかして日本で定着して、そのコックさんも長くその店に勤められるような体制づくりをやっているところがある。
四、MX氏。この人は建て売り住宅販売をやっている人ですけど、永住資格があることで銀行融資を受けている。在留カード不携帯、交通事故などで簡単に永住資格がなくなることになれば、融資を引き揚げられるリスクが発生するだけでなく、永住資格がそのような不安定な資格であることで信用が失われ、新たな融資は受けられなくおそれがあるという懸念を示しています。
それから五番目、XC氏。店舗Xを開業した創業者である私の父は、一九五〇年代に、中華街の風呂屋で外国人登録証不携帯で警察に一日勾留された、こういう経験があります。
それから、ZD氏。一九六五年に兄弟で結婚式を挙げました、大々的に、中華街の同發というお店で。町じゅうの人が集まりました。婚姻届をすぐに出さずにいたら、なぜ出さないのかと、後日、警察官が家まで来た。そこまで個人の私生活を監視することがあるのかと思っています。
あの頃は外国人登録法です。したがって、この入管法も、そういう政治的意図で使えば、使える法律だと私は認識しています。
七番、CA氏。一九八〇年、これはもう国交正常化した後です。私たちは国交正常化前ですから、まあ日本の政府からしたら要監視する相手だと思ってそういうひどいことをやったんですけど、国交正常化後にも、一九八〇年に、婚約者を送って家から十五メートルのところで警察官に外国人登録証の提示を求められ、不携帯が分かって、家まで取りに行ってこいと言われたということがあります。
私から、八、私の見た横浜中華街。横浜中華街の中華料理店は、戦後は主に家族労働に頼って経営していた。父親が鍋を振り、男の子は厨房で雑用と皿洗い、母親、娘はホールで接客。一九六〇年代後半から、街の発展に伴い店舗の規模も大きくなり、香港、台湾からの招聘コックが厨房チーフや主要スタッフとなり、日本人の若者が料理を学びながら厨房を支えた。香港のコックはほとんど単身で来日、台湾からのコックは、夫婦で来て、落ち着くと家族を呼び寄せた。当時、日本の給与は香港、台湾に比べはるかに良く、出稼ぎのメリットが大きかった。今日、香港、台湾の料理人の給与は日本を超え、日本への出稼ぎにメリットがなく、ほとんどの店から姿を消しつつある。代わりに、中国の経済が遅れている地域から日本に働き場を求めて来日、彼らはいずれも家族を呼び寄せて日本に定住する考えが強い。今後、今、横浜中華街料理店を支えているのは、新たに来日する中国人と日本人、そして東南アジア人である。今回の入管法改定は、外国人を歓迎しないメッセージを発するため、今後の人材確保に大きな影響が出る。中華料理のメッカとしての横浜中華街の存続に関わる大きな問題です。
ちょっと時間オーバーしたんですけど、ちょっと一言だけ付け加えたいと思います。
僕は、実は学校の教育に関わっているので、藤原和博さんという、リクルートから民間校長に変わった人が言ったことの言葉をちょっと引用して、最後に締めたいと思います。学校の校長のやれることは何かといったら、学生に学習習慣を付けることと生活習慣を付ける、そして最大のことは、自尊心を持たせるということです。
今、外国人を日本に呼び寄せてやったときに、やっぱり似たようなことなんですよね。生活習慣違うんです。だけど、この生活習慣を教えると同時に、学ぶ意欲も起こさせる。その中で一番大事なのは、ああ、私は日本に来てよかったな、俺はまだ日本で役に立つなという、そういう自尊心を持たせることが本当に日本にとっていいことなんじゃないですか。ただいっときの労働力として、使い終わったらもう帰りなさいじゃなくて、これからの人口減少で出生率だって上がらない、移民をやるんだったらどうするかということを本当に真剣に考えて、こういうちぐはぐな法律を作らない方が僕はいいと思います。
以上でございます。ありがとうございます。

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平と申します。
今日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
まず、曽先生にお尋ねをしたいと思います。
冒頭のお話の中で、入管法にいっときひどい目に遭わされたことがあるというふうにもおっしゃられました。一昨日、永住者の法的地位の問題について、私、法務大臣と議論をしたんですけれども、そのときに指摘をしたのは、特別永住者に対する外国人登録証の常時携帯義務をなくすなどの改善をしたのが二〇〇九年の法改正でした。ですが、その際に永住者には様々な人権侵害がそのまま残されるということになった。それは大問題じゃないかということで、与野党超えた大きな議論が、当時、二〇〇九年の国会で衆参行われたわけです。
そうした経過の下で、曽参考人が入管法にいっときひどい目に遭わされたことがあるというふうな経験あるいは周りの方々の経験や思いというのをお聞かせいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○参考人(曽徳深君) 実は、一九四五年に戦争が終わりました。それで、中国は内戦があって、最後に、一九四九年に中華人民共和国ができて、蒋介石が台湾に行きました。日本は、日華条約で台湾を認めて、中華人民共和国を認めませんでした。したがって、僕らは広東省出身なので大陸側の人間です。そうすると、我々がその台湾のパスポートをもらうということはあり得ないので、非常に不自由な思いをしています。例えば、国の里帰りなどもパスポートないわけですから行けない、そうすると日赤のルートで行くみたいな、そういうことをやっていますよね。当然、外国へ出て何かするということもあり得ない、そういう状態の中で。
そして、政治情勢の影響で日本の政府は台湾側の肩を持ちますわけですから、それを、ちょうどそのことによって、一九五二年に、元々一つだった学校が、その先生たちが台湾の言いなりにならなかったので、台湾から人を派遣してきて校長を交代しようということで、学校が闘争になっちゃった。そのときにも、八月一日なんですけど、警察が来て全部排除してその場所を占拠した。九月一日、新学期が始まるときに出かけていったら、実は、警察も来ていて台湾の海軍もいて、我々が学校に入れなくて、別に一年間、中華街の中の華僑の家で勉強するような羽目になったということがあります。
そういう意味のちょっと政治的な対立が入ってきたときに、日本の警察が台湾側の肩を持つんですね。そうすると、いつも大陸側に対してマークをするみたいなことをやります。例えば、パスポートを欲しいんだったら大陸の学校をやめてこっちへ来なさいみたいな、そういうのが実は日本の官憲と一緒になってやっていたという。だから、個々人に対してはもうやっぱりマークするような立場で、結局は、在留、在留カードじゃなくて登録票ですね、そういう例がたくさんあります。ただ、それはもう七十二年前ので、私はそのときに、今は八十四ですけど、そういう経験を持っている人たちってもうこの年齢なんですよ、もう亡くなっているわけです。だから、今回その事例をもっと集めようと思って探したら、そういう人たちはもういない。いないんですけど、逆に、今新たに来て取得しようとしている人たちが、結構やはり手続的にいろいろ難しいところ。
それで、僕が今心配しているのは、今非常に政治情勢良くないですよね。台湾海峡なんかで何が起きるか分からない、あるいはアジアで何が起きるか分からない。政治的ないろんな不穏な空気になったときに、やはりこの法律を利用して、またいろいろと監視されるのかということを思います。
出入国の管理というのは必要だと思います、こういう法律は必要だと思います。ただ、その中に、出入国だけの管理じゃなくて外国人管理という要素がもうはっきりと入って、確かに決められていました。だから、ある種の外国人取締法なんですよね。だから、外国人とこれからよくやろうとしたときに、外国人取締法は、そのものの存在が必要なのかどうかは分からないんですけど、もっと慎重にいわゆる考えるべきだと私は思います。そういう使われ方をされるべきではありません。
戦前は、いわゆる治安維持法でいわゆる特高に監視されていた。現実に、戦前に日本に初めてピアノを入れてきたピアノの周さんという方は、しょっちゅう部品を買いに上海行くので、これ、スパイ容疑でやっぱり、スパイでも何でもないわけなんですけど捕まって、結局は戦後すぐに亡くなったという、そういう経緯があります。
そういう政治的なことにも利用される危険性のある法律だと私は思っているので、もっと慎重にやってほしいなと思います。
○仁比聡平君 もう一点、曽参考人のお話の中で率直に驚いたんですけれども、今回の改定案に永住資格の取消し事由の拡大があるということを御存じになったのが、知ったのが五月の十二日でしたという。五月の十二日というのは、今から二週間余り、たった二週間前のことなんですよね。
二〇〇九年の先ほど申し上げた法案審議の際には、永住者の法的地位をどう安定させるのかということが法律の附則に修正条項として入るぐらいの議論がありました。当然、華僑社会に重大な影響があるというこの今回の法案について曽参考人が御存じなかったということは、華僑社会には知られていなかった、話もなかったし、ましてや実態の聞き取りなどは行われなかったんだろうと思います。
横浜中華街の成り立ちのお話が今日御紹介がありましたけれども、もし横浜市がこのような法案の中身や危険性、リスクみたいなものをちゃんと認識していれば、すぐに曽先生たちにお伝えしたんじゃないかとも思うので、横浜市もいまだちゃんと知らないのかもしれない。
そういう経過でこの法案が衆議院を通過し、参議院が今審議になっているということ自体が極めて重大な問題をはらむと私は改めて思うんですが、参考人、いかがでしょうか。
○参考人(曽徳深君) テレビ見ると、よく中華街が出ますよね。非常に、ある意味では、皆さんが中華街においでになって、中華街は支持されている気持ちがあって、平和ぼけしちゃっているんですよ、恐らく、我々中国人自身は。だから、そういうことに気が回らない。確かに、この街に来る人たちをどういうふうにして満足して帰っていただくかという努力はいろいろしているんだけど、我々は、選挙権とか被選挙権がない、ないんだけど、あとは平等に扱われているというふうに思っているんですよ、錯覚していたんですね。
ところが、今回、この件でやっと、ああ、外国人じゃなくて、出入国管理法って外国人取締法だから、今は我々に対して何もしないんだけど、する武器にはなっちゃうんだなということを初めて気が付いて、すごい焦った、焦りました、本当のところ。だから、こういう機会を与えていただいて、皆さんと一緒にどういうふうにしてこのことをうまく落ち着かせるかということを是非お願いしたいなとは思っています。力を貸してください、外国人のために。お願いします。
○仁比聡平君 ちょっと大事な機会なので、もう一問、曽参考人にお尋ねしますが、私のおとといの大臣の議論の中で、小泉大臣がこう答弁しました。永住者というのは、在留管理の対象になり得るわけでありまして、日本人と同じではありません。それから、悪質な滞納などが問題だという議論の中で、現に、納付確保のためではありません、納付しなかったという事実に対して、入管、在留管理上の評価をさせていただくということでありますというふうに、今回の取消し事由の拡大の目的を述べているんですけれども、このことについては、曽参考人、いかがお感じでしょうか。
○参考人(曽徳深君) 管理される外国人としては、受け入れ難い考え方です。ただ、僕は、なぜそういう考え方になるのかということを不思議に思います。
これから少子化する中で、外国人がたくさん、あるいは国際化の中で、多くの外国人が日本に来ます。したときに、なぜ同じような人間として扱わないのか、そこが不思議ですね。それをやることが果たして本当に国益に沿うものかと、それは僕の立場から言うととても疑問です。簡単に言うと、一種の人種差別でしょう。そうじゃないですか、違うから。だけど、僕らは、その国民じゃないかもしれないんですよ。ちゃんとした市民として市民の義務と権利果たしているし、権利もやっていて、一緒になってこの国づくりに参加しているんですよ。やっぱり愛情も持っているんですよ。すばらしい国だと思っていますよ。
僕の知り合いで、中国の富裕層で、シンガポールに住んでいる人がいます。先日訪ねてきて、実は日本に孫が勉強するのに場所を探していますと。日本はいいところですと。まず、安心して暮らせる、安心して夜歩ける、文化もすばらしい、だから日本好きですと言って、日本に来ようとしています。それで、金持ちですから、麻布辺りを探していました。
僕、質問したんですよ。だけど、一番いい国、あなたは世界あちこち行っているから、いい国どこだと思いますかと言ったら、アメリカだと。だって、アメリカはあんな騒動を起こしていて、何でいいんですかと。いや、アメリカは、外国に行った自分の国民についての保護が徹底していると、何か事故があったときにはすぐに大使館が連絡してくれると、日本はよく分からないけどと。だから、一番はアメリカなんですけど、住みやすいのは日本だと思いますと。
だから、そういう意味で、日本はとても外国人を引き付ける魅力があるのに、外国人を迎え入れる心の準備というか、そこの大人としての振る舞いができていないというのは、僕はすごい残念、残念なんですよ。僕も日本大好きで、日本の文化についてもすごい僕は敬意を表している。まあ半分中国、半分日本みたいなところなんですけど、そういう意味ではとても残念ですよ。もっと日本の方は、もっと自分たちの気持ちを大事にしてほしい、もっとみんなに喜ばれるような、他人さんを理解するような立場になってほしい。他人を尊重する前に、他人を理解することにしてほしい。自分の都合ばかりで外国人をいいように扱うことはやめてほしいなと思います。そうすれば反応してきます。
それから、さっき日本語の話、ちょっと質問とは関係ないんですけど、ちょっと私の考え方を述べます。
家族帯同して子供を日本に連れてくれば、大人の日本語も進歩すると思います。子供は、日本の学校へ行って、すぐに日本語を覚えます。家庭へ帰ったら親と話します。そうしたら、一々その親は別に教室に通わせることもする必要ありません。それで、その子供は将来日本で教育を受ければ、将来、成人して、絶対日本の人材になります。だから、僕は提案するのは、むしろ積極的に家族を連れてきなさい、そしてちゃんと日本の学校に入れて、小さな留学生として扱って、大人を教育するのは難しいですけど、子供を教育するのは簡単なので、そういう方向でむしろもっと国際化した方がいいんじゃないかなと思います。ちょっと余分なことですけど。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
時間がもうあと二分切って。
鳥井参考人、御一緒に国会内外、力を合わせて闘いましょう。
田中参考人に一問だけお尋ねしたいことがありまして、鳥井参考人が技能は仕事を通じて培われるものだ、あるいは労使対等こそ大事だというお話のときに、深くうなずいておられたと思うんですね。
そこで、転籍の自由の性格や根拠について改めて確認をしたいと思うんです。法案は、育成就労先の変更というような概念で条文化されているわけですよね。けれど、この本質は転籍の自由であって、労働者にとっての中核的な権利なんだというふうに思いますけれども、田中参考人、いかがでしょうか。
○参考人(田中明彦君) 私は、今回の制度は、育成就労というその技能を修得させる、これは育成就労計画があってそれでやるわけですけれども、その技能修得のプロセスというのは大変複雑で、このカリキュラムをそのとおりにやればできるというものではないというのは、私もそのとおりだと思っておるんです。
ただ、やはり、そういう趣旨がある中で労働者としての権利もしっかりと確保するために、有識者会議では一年ということで転籍できるようにするのが望ましいという議論が多く出たということでございます。
○仁比聡平君 時間が参りましたので、まだまだ聞きたいことがありますが、終わります。