○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、永住者の法的地位について聞きます。
午前中、福島みずほ議員が大問題として取り上げられました在留カードの常時携帯義務、これはかつて外国人登録証の常時携帯義務でしたが、これが平和条約に基づく特別永住者に対して廃止されたという改正も、これは決してそう古いものではありません。平成二十一年、二〇〇九年改正なんですね。二十一世紀まで日本社会は、特別永住者に対して指紋押捺やあるいは外国人登録証の常時携帯を義務付けていた。この改正のときに、ところが、ほかの永住者への権利侵害は残されました。これが法案審議において大問題になりました。
永住者の生活基盤の安定と人権の保障をどう図るのかというこの大争点の中で、当時、森英介法務大臣ですけれども、こういう答弁をされています。一般永住者の中にも、その歴史的背景から我が国に長期間在留しているなど、特に我が国への定着性が高い方々がおられることも事実でありますと、この委員会での答弁です。
大臣、この認識は変わったのかと。どうも、今日の午前中の議論を聞いていますと、昨年の秋に有識者会議にも諮らずして今回の法改定につながる案をリードしたのはどうやら大臣のようだということのようなんですが、この永住者の高い定着性、これ、どう考え、あるいはどう検討したんですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 午前中からいろいろ御説明申し上げているように、取消しをする前の段階でまず在留資格の変更というものを想定する、定住者と、多くの場合、原則として定住者。そしてまた、一定期間があれば永住者に戻れる。当然、その戻る措置も考えられるわけであります。
また、故意にという法文の要件を更に狭めて、悪質性、本人に帰責事由があるかどうか、そういうところを狭めて適用をしていきましょうということも考えているわけでありまして、これらは定住性に配慮した措置であります。
○仁比聡平君 今の答弁で、小泉大臣がこの永住者の法的地位について歴史的な認識が全くないということが逆に浮き彫りになったと思うんですね。
先ほど御紹介した森大臣の答弁は、公明党の木庭健太郎議員の質問に対するお答えです。ちょうど今、伊藤さんが座っていらっしゃる席だったと思うんですけど、私もその委員会でこの問題について質問をしておりまして、当時、木庭議員がどれほど熱くこの問題、質問していたかと、ちょっと頭に、脳裏によみがえるような思いがするんですけどね。
当時、木庭議員は、二つの場合といいますか類型といいますか、を指摘をしておられるんです。一つは、森大臣が述べたとおり、そういった歴史的背景から華僑を含めいろんな方たちがいる、すぐにやらなきゃいけない人たちがいるというこの問題ですね。もう一つは、定着性が高いというのは、別にそういう歴史的背景だけでなくて、本当に長年日本に、ニューカマーと言われる人たちだって、その中には長く日本に住み、日本に永住し、日本でやっていきたいという方もいらっしゃる、是非早急に検討して答えを出してほしいと。
つまり、永住者みんなの生活の安定について、〇九年改正では置き去りになったけれども、早く検討しなきゃいけないというのが当時も与党の強い主張だったんですよ。このことについてどう思われますか。
○国務大臣(小泉龍司君) そのときのその時代背景、また国民世論、そういったものの中で、政府もそういう方針を取っていたのだというふうに思います。
○仁比聡平君 とんでもない認識でしょう。そのときの時代背景って、当時、政権は、不法滞在者の半減計画といって、この外国人労働者、とりわけ非正規の滞在者に対しては本当に厳しい措置をとり始めていた、そういう中での議論ですよ。特別永住者について人権保障を図るのは当然だけれども、けれども特別永住者以外にも歴史性も持って定着性の高い方々がいらっしゃるではないかと。それが法と、そして国会の意思ですよ。
私が本会議で紹介をした横浜華僑総会を始めとした在日華僑団体が、もう一度読みますけど、現在、日本で生まれ、日本語しか分からず、日本にのみ生活基盤を有する二世から六世の永住者も多く、全てが日本市民とともに善良なる市民として地域社会の発展に貢献しています、この度の日本政府の入管法改定案は、永住者の生活、人権を脅かす重大事案と認識し、是正を強く求めますと。
これは、日本社会の歴史的な背景も含めた、この現実に基づいている声じゃないですか。にもかかわらず、小泉大臣がそこの認識がない。だから、有識者会議も始めとして、まともな立法事実の検討もなさらずに、こんな法案をリードしておられるんじゃないですか。
永住者は、一つには、在留期限がなく、したがって更新も要りません。もう一つには、活動に制限がなく、自由に仕事や生活ができます。この点で、平和条約に基づく特別永住者を除けば最も安定した在留資格だと私思いますけれども、この点はどう考えますか。
○国務大臣(小泉龍司君) 永住者というのは、しかし在留管理の対象になり得るわけでありまして、日本人と同じではありません。外国人として入ってこられて、永住者ですけれども、やはり在留管理というものはそこにかぶさっているわけであります。ですから、日本人と同じではありません。
そして、申し上げたいのは納税義務を果たさない方の話です、これは。納税義務を果たしている方にとっては何の関係もない話、そうです、それを理解していただきたいと思うんです。納税義務を果たせない場合にも、自分の責任でないことがあれば、それは認めます、許容しますと。意図的に悪意を持って、悪質なケースについては是正をします、そういう制度です。
○仁比聡平君 この改定が納税の問題あるいは滞納の問題とどう関連するのか、後ほど議論をしたいと思うんですけれども。
日本人と同じではないというふうに、外国籍住民に対して何か、大臣、特別な意識をお持ちなんですか。何だかちょっとよく分からない、そこが。永住者という在留資格は当然外国人の在留資格の一つであって、日本国籍の住民とは違うと、法制度的に。それはそうでしょう。けれども、厳しい審査を経て、在留期限がなく、かつ活動に制限がないという意味で、特別永住者を除けば最も安定した在留資格だと、それは当たり前のことじゃないですか。入管次長、どうですか。
○政府参考人(丸山秀治君) お答え申し上げます。
在留資格制度の中におきましては、永住者が最も安定的な在留資格でございます。
○仁比聡平君 農水省、国交省に本当は聞きたいところですけど、通告していませんから聞きませんけど、いや、実際に……(発言する者あり)大臣、通告していますよ、私。
実際に、例えば、農村や建設で永住者としての資格を持って働いていただいている外国人の方々たくさんいらっしゃると思います。日本籍住民と同じように、この日本社会の中で様々な経済的な風雨にもさらされながら頑張っておられるということだと思うんですよ。
今申し上げている〇九年改正、〇九年改正の当時、この永住者に外国人登録証、今日の在留カードの常時携帯義務を刑事罰をもって課しているということについて、国際人権規約に反するという自由権規約委員会からの度々の勧告が九〇年代、重ねられていることも併せて大問題になっていました。その中で、即時確認の必要があると入管が言って、永住者に対する携帯義務は残されたわけですよね。そういう歴史的な経緯を一体何だと考えてこの案を出しているのか。
大臣、もう一点、このときのことについて伺いますが、〇九年改正で衆議院の修正によって作られた附則六十条三項というのを御存じでしょうか。
○国務大臣(小泉龍司君) いや、ちょっと通告をいただいていないので存じ上げません。
○仁比聡平君 これは通告はしておりませんでした。
私も、昨夜来、検討を深める中でそうだったなと思ったんですけれども、条文そのまま読みますが、附則六十条の三項、「法務大臣は、永住者の在留資格をもって在留する外国人のうち特に我が国への定着性の高い者について、歴史的背景を踏まえつつ、その者の本邦における生活の安定に資するとの観点から、その在留管理の在り方を検討するものとする。」と。つまり、特別永住者以外の永住者についても、より安定に資するために検討を行わなきゃいけないというのが法律であり国会の意思なんですよ。
これ、入管次長、これ生きているでしょう。
○政府参考人(丸山秀治君) お答え申し上げます。
ただいま委員からの御指摘ありました附則につきましては、引き続き私たちの宿題事項といいましょうか、検討事項として残っていると認識しております。
○仁比聡平君 ところが、この法案というのはまるで逆じゃありませんか。全く逆で、永住資格の安定性を、永住者という在留資格の安定性を掘り崩し、相対化してしまうというものだと思います。
だから、この永住資格までが軽微な義務違反でも取り消し得るというようなことになるなら、いわんやほかの在留資格は更に取り消し得るということになりかねなくて、外国籍住民が安心して日本で暮らす、そうした法的地位というのはもうどこにもなくなってしまうんじゃないか、そうした強い不安が今この国会を取り巻いているわけですよ。
永住者という最も安定した在留資格をやっとのことで得た人でも、国の方針を変更してその地位を剥奪できるようにすると。それは許せないという声が寄せられていますけれど、大臣はどう考えますか。
○国務大臣(小泉龍司君) これは、租税、公租公課の義務を、納入の義務を故意に悪意を持って免れる、そういう悪質なケースを対象にしているわけであります。普通に生活している方の生活の安定を脅かすものではありません。こういう不法な行為をしている方に是正を求めるものであります。
そして、どの在留資格においても更新制度がありますから、その更新のときにはこういうチェックが掛かるわけであります。永住者については今まで掛かっていなかったのですが、しかし、永住者に対する国民の偏見が生じ得る、公平性の原理にも反する、様々な御意見があり、定住、定着性に十分配慮した上で是正のための措置をとろうと、しかも、それは取消しではなくて、あくまで変更であって、そこからまた戻ってくることもできます。ごく一部の方の話です。それを全体に広げて議論をされますけれども、我々が対象にしているのはこういう行動をしている方です。全体に広げないでいただきたいと思うんです。(発言する者あり)
○仁比聡平君 今議場から声が上がったとおり、条文は全体のものになっているんですよ。
今、大臣、答弁で大きく二つのことをおっしゃいました。一つは、ごく一部の悪質な者へ適切に措置するという、これは午前中、自民党の北村議員の質問に対してもお答えになったことなんですけど、もう一点は、一度許可されればチェックされないという趣旨の議論ですが、ちょっとまず前者の方について伺いたいと思うんですが、大臣はごく一部の悪質な者へ適切に措置すると言うんですが、条文のどこをどう読めばそうなるのか、これが大問題なんですよ。次長、いかがですか。
○政府参考人(丸山秀治君) お答え申し上げます。
条文で、特に今、公租公課の支払のところが御指摘いただいていると思いますけれども、この部分につきましては、条文上は故意に公租公課の支払をしないことということを要件にさせていただいていまして、この故意の意味について、いろいろ今日、本日もいろいろ御指摘をいただいているところでございますが、私どもとしましては、そういう支払義務があることを認識しながらあえて支払わないような人たちを対象にしていると。
その上で、実際に取り消すのかどうかということにつきましては、意見の聴取等を踏まえ、実際の未納額とか未納の期間とか種々の事情も勘案して、個別に慎重に判断していきたいということを考えているところでございます。
○仁比聡平君 改正案、改定案と言いますが、二十二条の四の八号について、まず次長は、故意に公租公課の支払をしないという条文の意味について、今そういうふうに御答弁されました。
ですが、にもかかわらずとかあえてという用語をイントネーション強調されて今日答弁されているんですけど、法文、法文というか法的な文書、例えば裁判所の判決などで、にもかかわらずとかあえてという用語が、故意を超えた、強調される意味で使われることはないとは私も言いませんが、それは文脈によるのであって、様々な具体的な事実を認定した上で、結論としてそういう用語が使われるということであって、あえてというのは害意や反社会性をそのまま意味する言葉ではありません。
規範、つまり税金ならそれを支払わなきゃいけないという規範、自分がその規範には反するけれども支払わないとか支払えないというそうした状態、この事実を認識していれば、今日幾人もの議員が与野党を超えて述べているとおり、故意というのは認められるのであって、そこに、あえてと幾らイントネーションを付けて強調しておっしゃったからといって、害意や反社会性を意味するものにはならないでしょう。
だから、条文ではごく一部の悪質な者へは限定されないじゃないですか。限定されなければ、判断権者の恣意的な濫用も含めた、まないたの上にのせられてしまうということじゃないですか。
大臣、そこも、つまり、法案を提起しておられるわけですから、法文でどうなのかというこの批判にどう答えるんですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 様々なケースがあり得るわけです。それを一つ一つ、論理的にこういう形で規定してここまでというのは、なかなか文章では表現が行き届かなくなりますので、故意という条文に基づいて、その解釈としてガイドラインを作り、そのガイドライン、できるだけ具体的な事例を挙げて、議論していただき、それを示していこうと。その法令、そこが一体となって適正な執行を可能にするというふうに我々は考えています。
○仁比聡平君 国会無視であり、法律の意義をそっちのけにした議論ですよね。そんなことないですよ。大臣、私ちゃんと聞きますから、そのときに答弁してください。
今日も言葉が出ているけれども、予見可能性は必要であり、法律には明確性が必要です。
とりわけ、在留資格という生活の基盤ですね、特に永住権、永住者でもいいです、永住者という在留資格については、先ほども強調したとおり、生存、生活の基盤そのものだと思うんですよ。在留資格の、永住者という在留資格の基盤の上に立って家族や仕事や、あるいはコミュニティーができ、言わば人格的生存そのものの根っこにある。それは、私的なものあるいは自由なものというのがたくさん積み重なっている。この在留資格を取り消すというのは、つまり剥奪し得るという要件じゃないですか。中間に変更という、そういうクッションが入ることはあるかもしれないけど、何しろ取消し事由の拡大でしょう。
生存基盤であるところの在留資格を取り消すという理由に、今回の改定案の特に八号、九号のような条項を入れるに当たって、その明確性がここまで大問題になると。自民党や公明党の議員が、故意というのは共産党の仁比が言っているのと同じようなことだと議論してしまうようなことで、どうして人権保障が図れますか。何でそんな法案を出すのかと。いかがですか、大臣。
○国務大臣(小泉龍司君) 現に納税義務を果たさない人がいて、その方が永住者でしたとして、その方に是正を求めるというのは在留管理上、常識的なことだと思います。それをそのままにしていいという議論については、私は理解ができないです。
○仁比聡平君 大臣、全く永住者という在留資格の本質なり法的地位の大切さということについて分かっておられない。
今日、もうここは聞きませんけれども、行政裁量としてのガイドラインを決めますと、定めますと繰り返しおっしゃっていますけど、ガイドラインの決め方も問題だし、中身は大問題ですけれども、私はそもそもガイドラインで決めていい事項ではないと思います。法律事項じゃないですか。国会の専権じゃないですか。これを、その中身さえこの法案審議の中で明らかにすることができずに、法成立後、入管において定めますと。これまでどれだけ入管庁が外国籍の方々に対する権利侵害を行ってきたと思っているんですか。その人たちが決めますと。言わば、まないたの上にのせた外国人を切り刻むという生殺与奪の権を握った方が、自分のその包丁の当て方をガイドラインで示すと。そんなことやっちゃならないというのが立憲主義であり、国会の役割じゃないですか。いや、大臣、それは分かっておられないということなんですよ。
もう一つ、先ほどの御答弁、つまり法案との関係で申し上げたいなと思うのは、午前中も古庄議員が指摘をされましたが、今回、取消し事由として改定が提案されている九号、従来は退去強制事由として規定をされている条項ですが、永住者には適用されないということになっていました。つまり、退去強制事由を示す第二十四条の四の二ですよね、これは別表第一の在留資格者に限られるので、永住者には適用されないということになっていました。
これを今回の改正で取消し事由として持ってくるという趣旨の答弁が丸山次長から午前中来あっていますけれども、ここには、実刑のみならず執行猶予になった人も含む、実刑は一年以上の懲役若しくは禁錮と今なっていますけれども、今後で言えば拘禁刑になるんでしょう、に限らず、一年以下の実刑になった人、それから執行猶予になった人も含むと。
これは、次長、そういう理解でいいわけですね。
○政府参考人(丸山秀治君) お答え申し上げます。
現行入管法第二十四条四の二において、特定技能など別表第一の在留資格をもって在留する者については、一定の重大な刑罰法令違反について、刑の執行が猶予された場合であっても退去強制になるということでございまして、今回、永住者の退去強制事由である九号につきましても執行猶予も含まれていると、一定の犯罪についてでございますけれども、執行猶予も含まれているということでございます。
○仁比聡平君 つまり、これまで永住者も退去強制はあり得ました。けれども、この今紹介している条文については適用の対象外でした。ですから、実刑といいますか、一年を超える懲役若しくは禁錮にならなければ退去強制にはならなかったわけですが、今回の改正でそこは大きく変わるわけです。
裁判所で、軽微な罪を犯して裁判になったとする、起訴されたと。けれども、その犯情、犯行の経緯や犯行そのものの軽重、あるいはやむを得ず行われたことかなどの情状、こうしたものが裁判できちんと審理をされた上で、裁判所としては実刑は相当でないと、執行猶予として社会内で処遇する、更生を図ってもらうということが適当であるという判断が、司法判断がされた場合も、今回の法案は、入管が取消しの対象にし得るということになっているわけですよ。
これ、裁判所、刑事裁判所が、刑事裁判で執行猶予が相当であるという判決が出たのに、入管が在留資格を取り消して、果ては出ていかなきゃいけない強制退去にまでなってしまうのかというような、こういう制裁といいますか、にしなきゃいけないという、そんな理由がどこにあるんですか。
大臣、今私が申し上げているような法案の組立てになっているということを御存じですか。
○国務大臣(小泉龍司君) まず、永住権を取得していただくときに、日本国の利益に沿うという要件があるわけですね。この日本国の利益に沿うというのを、納税の義務、あるいは犯罪を犯さない、そういうふうにブレークダウンをしているわけであります。やはり、それを満たせなくなった場合には是正をお願いをするという、そういう形になっている、そういう仕組みであります。
これを実行しなければ、今度は日本の国民が、それを放置するんですかという形になってきて、そして外国人に対する不当な偏見につながっていくということも考えなければいけません。いやいや、そういう方々を目にすると日本の国民の心は閉じます。もっと受け入れようとする方々がいても、そういう方々が目に付いてくれば、外国人は嫌だという反応になってしまうじゃないですか。それを是正すれば、ごく一部でしょう、全員どころじゃない、ごくごく一部のはずですよ。永住権まで取られる方でありますから、ごく一部の方。その一部の方の是正をすることによって、全体が評価が崩れずに済むと。
○仁比聡平君 大臣の今の認識に対しては、本会議でこれも紹介した、在日本大韓民国民団の声明の一部をもう一度申し上げたいと思います。
税金等の少額未納が発生した場合や過失犯も含めた軽微な犯罪の場合に在留資格を取り消されることがあり得るという立場に置くこと自体、永住者に対する深刻な差別であると考えます。
この言葉を、いや、本会議では全文通告しているわけですから、大臣もお読みになってあの総理の答弁支えられたわけでしょう。岸田政権に対して民団から問われているのは、在留資格を取り消されることがあり得るという立場に置くこと自体が永住者に対する深刻な差別であるという批判なんですよ。今日の議論、一貫してその問題を外していらっしゃる。
繰り返しておっしゃるので、あえて私も、そうしたら、ちょっと繰り上げてその質問をしますが、大臣はごく一部の悪質な滞納者に対するものだとしきりにおっしゃりたいようですけど、納付確保のための制度ですか、公租公課の納付を確保するための改正ですか、改正の目的は公租公課の納付確保のためですかと。違うでしょう、うなずいていらっしゃるんだけど。だって、公租公課、税や社会保険料の滞納問題の徴収というのは、自治体や国の当局ですよね。入管が何だかまるで人手も足りないのにその徴税業務に乗り出そうとでも言うのかというような話になるんだけれども、現実はそんなことじゃないでしょう。
だって、滞納などが行われれば、自治体が、払われないかな、払えないかなと伝えもするし、払うのが難しければ分納を相談をしたりもするし、あるいは、公租公課が払えないという生活状況そのものが貧困のSOSではないかというふうにきちんと捉えて、生活支援につなげるという取組も大きく広がってきています。
近年でいえば、コロナや円安、物価高騰の下で、日本人住民も苦しいけど、外国籍住民も同じように苦しいわけですよ。そういう状況についてきちんと対処をしていくというのは、入管や法務省の仕事じゃないでしょう。それは、それぞれの行政が所管をし、私どもは決して今政府が行っていること、全面的にオーケーとは言っていませんが、取り組んでいることじゃないですか。
今度のこの永住者の資格取消しという制度は、今日、大臣がしきりに誘導しようとしておられる納付確保のためではないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 納付確保のためではありません。
納付しなかったという事実に対して、入管、在留管理上の評価をさせていただくということであります。在留管理上の評価をさせていただくということで、歳入確保のための行政権の発動ではありません。
○仁比聡平君 納付確保のためではないと今正面から認められたわけですけど、その納付確保の方法としては、明らかに過度な在留資格の取消しということの対象にするのは、結局、公的義務の履行と、今日も何度かおっしゃっていますよね、公的義務。つまり、国家にとって好ましい振る舞いをしないということに対して永住者も在留管理のまないたの上にのせる、ここで取り消し得るという裁量を確保すると、そういうことであって、それ自体が永住者に対する深刻な差別であるという批判がされるように、根っこにあるのは抜き難い排外主義なんではないですか。
外国人差別と排外主義がなければ、日本人住民に対するのと同じ取組を行えばいいのであって、どうしても悪質で、あるいは反社会的な、そうした者に対して特別の、大臣がおっしゃるような限定をした取組をするというんだったら、そういう条文の構造にし得るわけであって、これはこれだけ一般的な法にしてしまうというのは、それは排外主義そのものですよ。
時間がなくなってきていて、ちょっと通告していた質問がたくさんあるけれども、次の機会に譲らざるを得ないんですが、ちょっと一問、今の問題についてお尋ねしておきたいことがあります。
改正案二十二条の四の八号は、今日しきりに議論になった故意又は公租公課の支払をしないという場合だけではありません。この法律に規定する義務を遵守せずというのがあります。この法律というのは入管難民法のことだと思いますが、入管難民法に規定されている義務というのはたくさんあります。そのそれらの義務が一体どんな性質を持っていて、事柄の軽重、あるいは、その義務違反に対して制裁を加えることが外国籍住民に対してどれほどの権利侵害に当たるのか、あるいは基本的人権を脅かすものになりはしないのか、そうした個々の検討というのはどうもされていないように思うんですね。
私は、この法律に規定する義務というのを全て明らかにして、どんな場面でどんな運用をされているのか、この委員会できちんと議論する。今日は、常時携帯、在留カードの常時携帯義務については随分議論がありましたけど、同じようにちゃんと議論するということが必要だと思うんですが、入管庁、これはこの委員会に提出をいただきたいと思いますが、いかがですか。
○委員長(佐々木さやか君) 申合せの時間を過ぎていますので、答弁は簡潔にお願いいたします。
○政府参考人(丸山秀治君) 委員会としてお求めがあれば整理したいと存じます。
○仁比聡平君 委員長、理事会での協議をよろしくお願いいたします。
○委員長(佐々木さやか君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。
○仁比聡平君 終わります。