○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 ちょっと趣を変えまして、お手元に資料をお配りをしておりますけれども、私、今回の会社法の改正と、投資ファンドあるいは悪質な略奪ファンドについて、今日は少し事例も紹介しながらお聞きしたいと思っているんですが。
 今度の改正案は、安倍政権の日本再興戦略の一環として位置付けられているわけで、こうした改正によって海外投資家の評価を高めて、投資も呼び込んでいきたいといった趣旨なり、狙い、目的の発言ももちろんあってきているわけですが、この改正が当然、私が今申し上げようとしているような悪質な略奪的なファンドを日本の会社の中に呼び込もうという話じゃないだろうと。これはもうそのとおりだろうと思うんですけど、恐らくそうだろうと思うんですが。
 まず大臣に、この新たな監査等委員会設置会社を設けるとか、あるいは社外取締役の設置を促進をするとか、こういったコーポレートガバナンスの強化ということと日本再興戦略との関係ということについて、まず御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今の会社法ですと、コーポレートガバナンスに関する記述については、社外取締役の機能を活用するなど、取締役に対する監査、監督の在り方を強化せよという御提言が今までもずっとあったわけですね。この背景には、もちろん今、仁比委員がおっしゃったような悪質なものを入れようというわけではございませんけれども、やはり海外の投資家等々に信頼を得て、海外の投資も引き込んでくる必要は当然私はあると思います。
 コーポレートガバナンスを強化することによって、外国企業と比較して日本企業の収益性が低くて株価も低迷していたというところが解消する一助になるのではないかと。それからもう一つは、親子会社に対する法規制も弱かったというように指摘をされておりますので、そういった辺りの規定の整備を図ることによって、日本企業に対する信頼が高められ、投資が促進されて、そのことが経済の成長につながっていくと、そういうことを期待しているわけでございます。
○仁比聡平君 そこで、会社法の改正というのは、つまり会社制度の改正なり、この社会的インフラとしての企業法制を変えるということになるわけですけれども、まず、その制度の改正がどのような形で企業統治あるいは経営監視機能の強化に結び付くのかということで、民事局長に改めての話になりますが、二〇〇二年の商法改正で、米国型企業統治形態であると言われる委員会設置会社、それから、これが導入はされたけれども上場企業において採用する企業が少ないということが今回の改正案につながって、その中で、監査等委員会設置会社というのを設けることができる、設けるようにするというわけですが、こうした委員会設置会社だとか監査等委員会設置会社によってどうその経営監視機能が強化されるということなのか、御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(深山卓也君) 今お話に出ました委員会設置会社、それから今回導入する監査等委員会設置会社、これはいずれも社外取締役による業務執行者の監視、監督を強化するということを目的とすると、その意味では共通の面がございます。
 御案内のとおり、社外取締役ですから、業務執行者から独立した立場にございますので、しかも取締役会の決議における議決権がある、代表取締役の任免に議決権を行使して関与できると、こういう立場にありますので実効的な監督が期待される。委員会設置会社の場合には三つの委員会を設け、監査等委員会の場合には監査等委員会一つですけれども、いずれも社外取締役が過半数を占めていると、こういう委員会でございます。
 こういった社外取締役が中核を成している委員会が業務執行を監督するというシステムとして委員会等設置会社が設けられましたけれども、この利用が余り進んでいないということにも鑑みまして、で、その理由がまた、三つの委員会のうち、指名委員会、報酬委員会に取締役候補者の指名と報酬額の決定権限を委ねることに各会社に非常に抵抗があるということから、このモデルがなかなか採用が進まないと指摘されておりますので、今回、同じような委員会を設けるタイプの、社外取締役中心の委員会を設けるタイプの会社ですけれども、監査等委員会設置会社で、指名、報酬委員会を設けなくてこの一つの委員会を設けることによって業務執行者の社外取締役を中心とした監視、監督を強めるタイプの選択肢を増やすということを考えるに至ったと、こういうことでございます。
○仁比聡平君 今のお話の中に出てきます、業務執行者から独立したというその独立性の意味なんですけれども、もうちょっと砕いて言うと、会社との利害関係を持たない、業務執行者はもちろん会社の利益を追求するということでしょうけれども、そことの利害関係を持っていないというのが社外性とか独立性とかそういったことなのかなという感じがするんですけれども、そうした社外取締役が過半数を占める委員会の設置をして、その監査委員会は、従来の監査役と異なって、差止め請求権の行使も、業務執行者の違法性だけではなくて妥当性にまで及んで行うことができる、こうした機能を期待しているということでしょうかね。
○政府参考人(深山卓也君) 今先生御指摘のところは、期待される機能の一部であることは間違いありません。それ以外にも、社外性がある取締役が中心となる委員会が監視、監督を行うことによって、その差止めの場面だけじゃなくて、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、取締役会で代表取締役の選解任の議決に議決権を行使して加われるというところも非常に大きな監視、監督の権能だと思います。ここがまた、監査役はそれは全くありませんので、大きく違うところです。
○仁比聡平君 つまり、そうした形で委員会の権限や独立性というものを飛躍的に強化するということによってガバナンスの強化を図ろうという制度設計だと思うんですよ。
 この制度設計はそれとして、それが実際に実効性が確保されているのか、二〇〇二年の改正法が現実に施行された後も実際どうなのかということを、ちょっとお手元のペーパーも見ていただければと思うんです。
 前回の参考人質疑でおいでいただきました東京証券取引所の常務取締役の静参考人に一問だけお尋ねをしたAPF、アジア・パートナーシップ・ファンドという投資ファンドがあります。これが、このペーパーの一番上の英国領バージン諸島というのは、これはタックスヘイブンとよく言われるところですね、ここに資産管理会社を置いて、その一〇〇%が、今日のところイニシャルでKというふうに申し上げておきますが、この代表者、このファンドの代表者の資産会社が置かれていると。
 この代表者Kが、昨年の十一月、証券取引等監視委員会から、四十一億円という個人に対してはもう前代未聞という額の課徴金納付命令を行うべきだということで金融庁に勧告をされているわけです。
 この事件というのは、このAPFが一〇〇%それぞれ支配しているその下の明日香野とかあるいはAPFというホールディングスがありますが、さらにそれらが支配している昭和ホールディングス、これが東証二部の上場企業です。この支配をしているウェッジホールディングス、この株価を操作をする、価格を上昇させるということを企てて、そこによって不正な利得を得ようということを企てて、偽計を用い有価証券の価格に影響を与えたのであると。その被害を与えた額、課徴金の額は約四十一億円に上るのであると。ざっくりそうした勧告であると思いますけれども、それは事実ですか、金融庁。
○政府参考人(三井秀範君) お答え申し上げます。
 昨年十一月一日、証券取引等監視委員会から内閣総理大臣及び金融庁長官に対しまして、ウェッジホールディングス株式に係る偽計事件につきまして、金融商品取引法に基づく課徴金納付命令を発出するように勧告が行われております。
○仁比聡平君 中身についてもおおむね私の申し上げているとおりということなのだろうかなとは思いますが、いかがですか。
○政府参考人(三井秀範君) 仁比先生御指摘のおおむねとおりでございまして、十一月一日付けの証券取引等監視委員会のホームページで公表しておりますように、有価証券の相場の変動を図る目的を持って、偽計を用いてその有価証券価格に影響を与えたものであると、こういうことで勧告を金融庁に対してなされておるところでございます。
○仁比聡平君 念のため確認ですが、その四十一億円にならんとするような課徴金というのは、これは過去例がありますか。
○政府参考人(瀬戸毅君) 過去にそのような事例はございません。
○仁比聡平君 という重大な事態なんですね。
 こういう投資ファンドの悪質な行動が、他にも日本の市場あるいは世界の市場を食い物にして大問題だということは、恐らく立場を超えて共有できる問題意識だと思うんですが、この勧告が十一月に出されて以降どうなっているかと。これ、手続としては審判開始の決定が出されれば公開での審判が行われるということになっているわけですが、これ、審判は行われましたか。
○政府参考人(三井秀範君) 本件は個別の事件の審判手続でございますので、本件についてのお答えは差し控えさせていただきますけれども、一般論で申し上げますと、勧告がありますと、審判手続開始決定がなされます。開始決定がなされますと、審判手続、そして審判官による決定案の作成、それに基づく課徴金納付命令という決定の流れになっておるところでございます。
○仁比聡平君 私が伺うところでは、その公開の審判の期日が指定はされるんだけれども、これがこれまで度々、四回というふうに伺いますが、延期をされて開かれないと。去年の十一月の勧告からすれば既にもう半年がたとうとしていると。これほど重大な勧告が行われながら審判がこんなふうにして開かれないと、こういうのは皆さんにとっては普通ですか。
○政府参考人(三井秀範君) お答え申し上げます。
 まず、その審判手続開始決定につきましては、勧告と同日付けで、したがいまして昨年の十一月一日付けで行われております。法的には、先生御指摘のとおり審判手続中になります。そうしますと、争いが仮にある場合に、被審人といいまして、違反者であるというふうに名指しされた方に、もしその勧告内容ないし審判手続開始決定の内容に異議がある場合には、審判期日が開始されるということに、開かれるということになります。
 個々の個別事案について、審判期日の変更の有無やその理由につきまして、特に変更の理由につきましてはお答えは差し控えさせていただきたいわけでございますけれども、一般的に、法令上は審判手続の行政上の手続でございますけれども、その適正手続の確保を含みます正当な理由があります場合には、職権又は当事者の申立てによりまして期日の変更をすることがあり得るということになっていまして、それに基づきまして行われているところでございます。
○仁比聡平君 こうした重大な勧告で、もちろん新聞報道もされているわけで、これに先立っては、二〇一〇年の六月に証券取引等監視委員会から強制調査がこの関連会社に入っていると思います。そうした中で、このグループ下の、一番下の真ん中の枠に昭和ゴムという事業会社がありますが、この事業会社の事業が顧客からの信用を失い、取引先が手を引き、経営の悪化が進んでいるわけです。
 元々、ちょっと経過を申し上げると、この昭和ゴムという会社は、千葉県のゴムの製造販売の言わば名門といいますか老舗の製造会社でした。この会社について、二〇〇八年の六月にくだんのAPF関連グループ企業が第三者割当て増資によってこの事業に介入をしてくると。このAPFの代表者であるK氏が昭和ゴムの社外取締役、代表権ある取締役の会長にその実の弟が就任して、そのほかの役員も相当数がそのファンドから送り込まれてくるということになっているわけですね。
 元々のその昭和ゴムという事業会社は、昭和ホールディングスという会社と事業会社である昭和ゴムに言わば分社するという形になって、昭和ホールディングスが東証二部の上場企業、今も上場されているということだと思いますが、このKがその社外取締役、その弟さんが代表権のあるCEOということになっているわけです。
 実際に、その第三者割当て増資は、およそ十四億五千万円の出資ということで行われているわけですけれども、その直後からおよそ一年半の間に、元々昭和ゴムという事業によって蓄えられてきた資金、現金が、これが本当にひどい手口で総額三十三億円持ち出されていくという形で、真面目な企業が食い物にされているわけですね。その持ち出された三十三億円もの現金、これを労働者が、その昭和ゴムの事業に働く従業員、労働者の皆さんがからくりを告発していくと、その労働組合、労働者を敵視し、嫌忌して排除しようとする。こうしたことが次々に起こっているわけです。
 その下で、このK氏ないしはAPFのこの悪質な行為の一部として、今私が申し上げている偽計によるこの四十一億円の勧告というのが行われているわけですけれども、その勧告からも半年以上になっている。事態はどんどんどんどん悪化すると。このままでいくと、この勧告の結果、そのKの違法行為がただされるというか明らかになったときには、既に事業会社は例えば廃業に追い込まれているとか、従業員は路頭に迷っているとか、当然、地域経済にも関係債権者にも大きな被害を広げてしまうとかいうことになりかねないのではないのか。
 金融庁、どなたになるのか分かりませんが、勧告が行われ、審判の手続が先ほどのような御説明だというのは、それはそうなんでしょう。だけれども、現実のその間にこうした実害、被害が進行しているということについてはつかんでいらっしゃるんですか。
○政府参考人(三井秀範君) そのグループ全体に様々な経済的な影響が及んでいるというふうな先生の御指摘がございました。
 課徴金制度、刑事手続に加えましてこの証券市場における課徴金制度を導入している趣旨でございますけれども、先生御指摘のとおり、証券市場において不正が行われたというものに対して、違反者に対する適正手続を確保しつつも迅速かつ適切な金銭的な負担、賦課を用いることによりまして違反行為の抑止を図ると、こういう制度でございまして、先生御指摘のとおり、その適正手続の下ではありますけれども、迅速に手続を進めるべきものというふうに私どもも心得ているところでございます。
 個別の案件について御説明することは差し控えざるを得ないわけでございますが、本件につきましては、審判の手続の適正手続を確保する観点から、期日変更上正当な理由があるということで、職権を含めまして期日変更しているところでございまして、何とぞその点についての御理解を賜れば有り難いと存じます。
○仁比聡平君 私が伺うところでは、この審判の手続がどうなっているのかということも含めて、この申し上げている利害関係者、特に労働者が、どうなっているのかと金融庁にお尋ねをするとか、あるいは申入れをするとかいうような経過がありながら、言わば門前払いをされておられるようなんですが、この事案に限らず、金融庁のこうした取組、証券市場の適正を図るためのこうした取組というのは経済活動に重大な影響を与えるわけじゃないですか。逆に言えば、だからこそ監視委員会があり、そこで勧告をし、こういう公開での審判を行おうとするわけですよね。
 この状況がどうなっていくのかということについて、少なくともですよ、少なくともその行方において極めて重大な利害関係を持っている、この会社が倒産する、廃業するということになれば、もう生活の基盤が奪われてしまうというそうした労働者の方々、元々その違法行為についての告発も監視委員会にもした、そうした経過もあるようですけれども、そうした労働者の方々には、この審判がどんなふうになっているのかという、そういう説明ぐらい、金融庁、できないんですか。
○政府参考人(三井秀範君) お答え申し上げます。
 必要な限りにおきまして、審判の期日などは公開するということを法令上も認めていただいておりまして、当然のことながら、その規定に基づいて公開すべきことは公開する、開示すべきことは開示するというふうに行動すべきものはそのとおりでございます。
 ただ、この件につきまして、期日を設定するに当たり、そのための適正手続を踏む必要がございまして、その詳細について公の場で説明することは差し控えるべき事柄がございますので、その点についての詳細な説明は、重ね重ねで恐縮でございますが、控えさせていただきたいと存じます。
○仁比聡平君 私は、是非、改めて声を聞いていただいて、可能な限りの対応はしていただきたいということを求めておきたいと思うんです。
 それで、先ほど、その事業会社からおよそ三十数億円の現金を流出させるという手口というふうに申し上げたのは、プロミサリーノートという聞き慣れない言葉ですが、そうやって聞き慣れない言葉ではあるけれども、結局のところ、将来、先々お返ししますからと。だけれども、それは、そういう書面は作るけれども、あたかも手形、約束手形か何かであるかのような外形上の紙の大きさみたいなものはあるけれども、だけれども、そこに書いてあるのは単なる支払を、あるいは返済を約束した念書にすぎない。そうしたものを有価証券であると、そう言って、言い張る手口を行っているんですね。
 そこで、この昭和ゴムだとかの有価証券報告書には、有価証券を保有しているんだということが報告をされている。こういう事実は、監視委員会、御存じですか。
○政府参考人(瀬戸毅君) 個別事件の内容につきましては、お答えは差し控えさせていただきたいと思っております。
○仁比聡平君 投資家保護というふうに言うけれども、その有価証券報告書そのものを虚偽の記載をしているわけですよね。それがそのまま上場企業であり続けるというのかと、それが証券市場の今のありようなんでしょうか。
 ちなみに、このAPFというファンドは、金融商品取引法上の第二種金融商品取引業者としての登録も行っていません。いわゆる無登録のファンドですが、それはお分かりになりますか。
○政府参考人(瀬戸毅君) これにつきましては、個別の案件でございますので、お答えは差し控えさせていただきますが、証券取引等監視委員会といたしましては、市場の公正性、それから透明性の確保のために、問題がある事案については努めて適切に対応することとしております。
○仁比聡平君 この無登録のAPFあるいはそのグループファンドが、名前を申し上げれば皆さんが知らない人はいないというような著名人、週刊誌などには実名でも出されていますけれども、を看板にして様々な一般投資家からお金を吸い上げているわけですよ。それ、お金を吸い上げて、もう何件も裁判が起こり、その結果、敗訴をしたり、あるいは和解に持ち込んだりとかして支払義務が確定するんだけれども、その返済は行わないと。去年の四月には十五人の被害者の方々の集団提訴も起こり、メディアからはインチキ投資ファンドといった批判も浴びているわけです。
 個別はお答えにならないんですが、こうした悪質なファンド、これ、金融庁、どうやって規制するんですか。
○政府参考人(三井秀範君) 具体的な会社についての答弁は差し控えさせていただくとともに、一般論になって恐縮でございますけれども、日本国民の一般投資家に対して不適切な投資勧誘をするということから投資家を保護するのが金融商品取引法の目的でございます。
 現在の金融商品取引法、先生の御指摘の第二種金融商品取引業者ということになりますと、投資家に金融商品、金商法に定義されています金融商品を販売、勧誘していると、こういうものでありますと登録をしなければならないということでございまして、無登録でこの法律で登録を義務付けられている行為を行いますと刑事罰の対象となるところでございまして、この点につきましては、刑事当局と連携を取りながら適切に対応をする、刑事当局に情報提供をいたしまして連携しながら対応する、あるいは、被害者の拡大を防ぐために消費者庁を含む消費者保護行政当局や団体と協力しながら活動していくと、こういったことになってくるかと思います。
 また、その開示、ディスクロージャーについて虚偽の記載がある等の投資家の保護にもとる行為がある場合には、その観点からの法定開示規定違反についての刑事ないし課徴金、あるいは行政上の手続を取ることを含めまして、その違反の抑止を図っていくというふうな対応を取るということでございます。
○仁比聡平君 そうした手さえ打たれているのかと。もしかしたら幾つかのことについては進めておられるのかもしれないですけれども、個別は答えられないというふうにおっしゃる。
 実際にこのファンドの問題が明らかになったのは、少なくとも二〇〇八年とか、この一般投資家の方々の被害を広げていったのは二〇〇〇年代に入ってからなんですね。もう規模は数百人あるいは数百億円というふうにまで言われているわけですけれども、にもかかわらず、いまだに今おっしゃったような、紹介をされたような手だてが表に出ているわけじゃないじゃないですか。
 その中で、去年の十一月に監視委員会の勧告が出されたと。悪質な違法行為の中の一部ですけれども、このグループ内のウェッジホールディングスというところの株価を操作したという偽計で四十一億円という異例の勧告がなされながら、半年たってなお一体どうなるのかという。それで本当にこうした悪質ファンドに対する規制が働いているというふうに言えるんでしょうかね。私がなお心配になるのは、そうした事態になれば、同じようなファンド、同じような悪質行為が日本の市場を食い物にしても、結局よく分からないままどんどんどんどん被害だけ広がるということになりはしませんかということなんです。
 参考人質疑でお尋ねした東証の静参考人は、違法行為だというところまでは認定されているというふうに考えている。だが、会社自身は、その上場企業自身は事実関係を否定しておるという下で、今後、金融庁による審判手続、あるいは自主規制法人というところに委託をしているそこの調査の中で事実関係が明らかになっていけば、それを踏まえて、上場ルールの違反があったのか、あるいは上場適格性に問題がなかったのかなどを今後判断していくというふうにおっしゃっていて、今も二部上場企業として市場で証券は取引の対象になっているわけですよ。
 しかも、事情がよく分からないと、まだ、ということの理由に、金融庁の審判そのものが全く進んでいないということもありまして、事情が余り私どもとしてもつかめていないというふうに思いますというふうに言っているんですね。
 こうした事態になっているという下で、一般投資家の保護、あるいは大臣に冒頭お尋ねしたような海外からの投資の呼び込み、それ一般的に私否定しているものじゃありませんけれども、コーポレートガバナンスを強化するという形は整えても、現実にはそれが本当に、実際それ信じていいんですかということになりませんか。
○政府参考人(三井秀範君) 審判手続が始まらない、進んでいないという御指摘がございました。
 先ほど説明を少しはしょりまして大変恐縮でございます。この審判手続、審判期日というのを公開して行うということが法律に規定されておりますが、公開の審判期日を開くに当たって、法令上次のような手続を踏むことが予定されてございます。
 審判手続開始決定を行うというところまで申し上げましたが、その後、その審判手続開始決定書の謄本を、被審人といいまして違反者と目されている方に送達をし、そして審判期日、場所、違反事実、課徴金などの記載したものが相手に送達された後、相手に反論の機会を保障することに法令上なっておりまして、答弁書の手続という、法令上使う言葉ですが、その反論の書面を出していただけることになっております。そして、争いがある、要するに、先生から御指摘あるように、その会社は争っているということでございますが、仮に争うということにこれは一般論としてなりますと、そのための主張をする機会が保障されており、そして争点の整理あるいは証拠の整理を行います。ここまでが非公開で行われまして、その争点あるいは証拠の整理がなされ、それで、審判期日で実際に事実認定に至るような手続が迅速に行えるという整理を付けた上で公開の期日が開始されるということになります。
 現状、具体的に個別の案件でどこまで何が進んでいるということは申し上げるわけにはいかないんでございますけれども、公開の審判期日に至るまでにはそれ相当の適正手続が法令上要求されているところでございまして、これを法と証拠に基づき粛々と進めるというところが私どもの使命であるというふうに考えてございます。
○仁比聡平君 大臣、ちょっと通告していたのかしていないとおっしゃるのか分かりませんけど、今のお話ちょっと聞いていただいて、事業が実際に経営破綻をしてしまったり廃業に追い込まれたりしてしまった後にファンドの犯罪が確定してももう遅いと。これ、当然、審判の手続は適正手続を踏まなきゃいけないと、これは当たり前のことですよね。だけれども、そういうことをそれぞれ言っている間に、結局、実際の経済活動が損なわれて、とりわけ健全な事業活動が食い物にされて、どんどんどんどん資金がどこか訳の分からないところに行ってしまうと。こんなことでいいのか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 確かに、非常に違法な活動をして、それがどこかに金銭が消えてしまう、富が消えてしまう、今までもそういうことがなかったわけではありません。そういうことがしばしば行われていいはずはないんで、やはりそれはきちっと、企業統治そのほか違法の摘発等々やらなきゃならないことだろうと思います。
○仁比聡平君 厚生労働省においでいただいています。
 このAPFは、そうした形で経営者の悪質行為を告発した労働組合を嫌悪して排除する、そういう中で分社化を事業と労働者丸ごと行って、団体交渉にも応じないということをやっているわけですよ。こんなやり方というのは許されるんですか。
○政府参考人(熊谷毅君) お答え申し上げます。
 投資ファンド等の労働組合法上の使用者性につきましては、基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができるかどうか、これを判断基準とする最高裁の判例が確立しております。
 この判例を踏まえ、個々の事案に即して裁判所や労働委員会において判断されるものと考えております。
○仁比聡平君 いや、その最高裁判例があるのは存じ上げていますけれども、そういう部分的とはいえ同視できる程度にとか言っている場合ですか。現実にファンドが巨額の金や様々な術策を使って襲いかかってくるわけでしょう。その中で、会社が乗っ取られてしまう、事業が破綻していくと。このときに労働者が必死になって何が起こっているのか調べて、頑張って告発する、そういう活動を阻むために分社化をしたり団交に応じないなんという態度を取るわけですよね。
 そのときに、そのファンドが、例えばこの場合であったら、一〇〇%株主であるそのK氏がですよ、今言われるような基準に当たるのかどうかといったような枠組みで考えるんですか。このファンドがこういうことをやってきているという現実に起こっていること、そこに着目して、新たな基準なり考え方なり、もし必要な法制が必要なんだというんだったら、そういうことを検討して提起するというのが皆さんの仕事なんじゃないですか。
○政府参考人(熊谷毅君) 本件の事案、個別の事案といたしましては、現在、労働委員会の方で審議されておるということでございますので、それについてお答えすることは差し控えさせていただきますけれども、現在、この労働組合法上の使用者性につきましては、先ほど申し上げましたような内容の最高裁の判例が確立しておりまして、労働委員会の命令あるいは裁判所の判決、こういったものも近年、この最高裁の判例で確立した基準にのっとって行われているというものと承知しております。
○委員長(荒木清寛君) 仁比君、おまとめください。
○仁比聡平君 はい。
 時間が参りましたから終わらざるを得ませんけれども、私、こうした事態を議論をしてみて、改めて、企業の健全な活動を発展させるために、労働者、労働組合の役割というのは極めて重いなということを感じます。本当に、本業で積み重ねた資産を流出させるとか海外に回してしまってどこに行くか分からないとか、そんなことをやめさせよう、まともな経営を求めようと、そういう声がやっぱり持続可能な経営というのをつくっていくんだと思うんですよね。それが企業の社会的責任をしっかり果たさせていくという道になるかと思います。
 今回も含めて、会社法のそもそもにこうしたステークホルダーの位置付けがどんなふうになっているのか。今回、そうしたコーポレートガバナンスの強化という狙いでの改正が行われながら、このステークホルダーについての役割についての仕組みなり記載なりというものは行われていないということは残念でありまして、答弁はもう求める時間ありませんけれども、大臣、是非こうした利害関係者が会社の中で果たす役割というのも、しっかり今後検討していっていただきたいということを強く求めまして、質問を終わります。