○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、家庭裁判所の調停、審判に子供自身がどう関われるかという問題についてお尋ねしたいと思います。
二〇一一年の家事事件手続法でこの問題というのは大変重要なものと位置付けられたわけですが、まず民事局長にお尋ねしますが、どのような意義を持つ、どんな定めでしょうか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
家事事件におきましては、その結果により影響を受ける子の福祉への配慮が必要となります。そこで、家事事件手続法は、まず一般的に、未成年者である子がその結果により影響を受ける事件の手続におきましては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により子の意思を把握するように努め、子の年齢及び発達の程度に応じてその意思を考慮しなければならないとする規定を置いており、さらに一定の場合については、必ず子の陳述を聴取しなければならないとしております。
その上で、子の監護に関する処分の審判事件、親権の喪失や親権の停止、失礼しました、親権の喪失や停止の審判事件など、特に審判の結果により子が直接影響を受ける一定の事件につきましては、子の意思を可能な限り尊重する必要があるため、未成年の子であっても、法定代理人を介さず、自ら当事者や利害関係人として手続に参加することができることとしております。
また、このように子が自ら手続に参加することができる場合であっても、未成年者である子の場合には現実に手続行為をするには困難を伴うことも考えられますので、これを補うため、裁判長が弁護士を手続代理人に選任することができるとの規定を置いております。
○仁比聡平君 今御答弁にあった、子供自身が親ではなく弁護士を手続代理人として選任するという、こういう手続について最高裁に資料をいただきました。二枚目の方ですけれども、未成年者、つまり子供の手続代理人が選任されたという件について、平成二十五年の一月以降、令和五年十二月までの十一年間のトータルで、選任件数、うち裁判所の職権によって選任された数、それぞれどうなっているでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(馬渡直史君) お答えいたします。
各年ごとに申し上げますと、未成年者の手続代理人の選任件数ですが、各裁判所からの情報提供による実情調査の結果に基づく概数でございますが、平成二十五年一月から十二月までが八件、うち職権によるものが四件、平成二十六年は……(発言する者あり)トータルですか、済みません。トータルでいきますと、全体で、平成二十五年一月から令和五年十二月までのトータルが三百四十六件、うち職権によるものが二百二十六件でございます。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
子供の意見表明権の実質的保障のために、この手続代理人というのはとっても大事な仕組みだと思うんですけれども、実際に子供の親権だったり面会交流を含む監護などの事件数の全体からすれば、ごく一部、ほんの一部でしか選任には至っていないというのが、私、現実なんではないかと思うんですね。
大臣にちょっとお尋ねをしたいと思うんですけれども、父母の離婚をめぐっていうと、子供は、父母間の葛藤によって自分の意思に反して人生が大きく変えられてしまうというおそれがありますよね。面前DVという形で心理的虐待の被害者であることも少なくないわけです。
この子供の意思あるいは意向や心情というのをこの家庭裁判所の手続の中でどういうふうに受け止めていくのかということについて和光大学の熊上教授が、面会交流の決定について次のような指摘をしています。私、重要だと思うんですが、ちょっとお聞きください。
それは、自主的に行われる面会交流と子供への強制力を伴う裁判所決定による面会交流を区別することです、別居、離婚後も、子供と別居親が子供のペースや意思を尊重し連絡を取り合う自主的な面会交流ができれば、子供にとって、両親から関心を持たれ、愛されているという感情を抱くことができるでしょうと。しかし、裁判所の決定による面会交流は調停や審判には判決と同じ効力があり、履行しないと強制執行や間接執行が行われることもあり、子供が行きたくないときや心身の不調のときでも、面会交流を履行しなければ同居親に間接強制金の支払などが課されることがあります、このように、面会交流を裁判所命令によって強制される子供について、大人になってからかえって別居親との関係が疎遠になることや、子供時代や思春期に友人関係を諦めたりつらい思いをしたりすることがあると指摘をされた上で、ケースの解決は、子供の意に反して強いることではなく、子供の幸せのために、子供の意思が尊重され、子供の安心が保障されるように行われなければなりませんと。私はそのとおりだと思うんです。
大臣、お聞きいただいて、御感想いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 裁判所が判断する際のいろいろな要素がありますが、子供の意思というものも大きな判断要素の一つである、それは間違いないと思います。そして、その子供の声を尊重するために人格を尊重するという今回規定をしっかりと置いたわけでございまして、それは、人格の中に本人の考え方を含めて解釈をしていこうということを答弁申し上げているわけです。
裁判所において、そういう法案、法律の趣旨を踏まえて、子供の意思を何らかの形で酌み取り、それを総合判断の中で考えていく、そういうことが行われていくべきだろうというふうに思います。
○仁比聡平君 共同親権をめぐる法案について、今、今日直接聞いているわけではないんですけれども、判断要素の一つというおっしゃり方が、本当に子供の意思を尊重し子供を主体として扱っていくということになっているのかと、なるのかということが大問題だと思うんですね。
資料の一枚目の方は、子供自身が虐待親の親権の停止あるいは喪失を求めて審判を申し立てるという場合の資料です、数字です。
まず、最高裁、令和元年以降、四年間のトータルで結構です、既済件数と、その結果はどうなっているでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(馬渡直史君) お答えいたします。
子がその父又は母に対する親権停止又は親権喪失の審判を申し立てた件数、平成三十一年ないし令和元年ないし令和四年までに終局した事件として、各裁判所から情報提供による実情調査の結果に基づく概数として申し上げますと、まず親権喪失事件、既済件数十六件、うち認容が三件、却下が一件、取下げが十二件となっておりまして、親権停止事件につきましては、既済件数百八件、うち認容四十八件、却下十二件、取下げ四十六件、その他二件となっております。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
子供自身が、親の親権を停止してほしい、あるいは喪失させてほしいということを自ら子供が申し立てて百二十四件のうち五十一件が認容されているということは、これとても重いことだと思うんですね。同時に、この表れている件数というのは、実際、社会の中で親子関係においていろんな問題がある中での氷山の一角なのではないかという思いもいたします。
子供が、自らの親子関係や家族の関係などについて裁判の申立てをする、あるいは申し立てられている手続について、親とは別の、自らの利益や権利や意思をしっかりと関与していく、その中で必要な法的な手続を進めていくという、このことを保障するというのは、子供の意見表明権始めとした権利、福祉の実質的な保障の上でとても重要なことなのではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 今度の共同親権の話になってしまいますが、子供の利益をまず考える、そして子供の人格を尊重する、今までになかった規定が、子供が主役になる、そういう考え方が法案の中にしっかりと織り込まれているわけです。ですから、そこをしっかりと実施、実施していくということ、法案が通った暁にはそれをしっかりと実施する体制を考えていくということ、それは当然必要なことでありますし、また重要なことだと思います。
○仁比聡平君 法案が子供が主役になるというふうにきちんとなっているのかということについてはまたいずれ議論をしていきたいと思うんですけれども、その子供が主役のために弁護士を代理人として子供自身が頼めるようにするということ、私とても重要だと思うんです。
民事局長にお尋ねをしますけれども、子供は一般的にお金がありません。無資力です。ですから、弁護士費用を自らは負担ができません。虐待親が典型ですけれども、親子関係が対立関係にあるという場合に、親に費用を負担してもらうということは期待もできません。費用を子供本人に負担させずに代理人弁護士を選任できるようにすると、こういう方策を考えるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
裁判長によって子供の手続代理人が選任された場合には、子が裁判所の定める相当額の報酬を手続代理人に支払わなければならないとされておりますが、子に支払う能力がない場合には、子は、手続上の救助の制度によりまして、手続代理人に対する報酬の支払の猶予を受けることができるとされております。また、委員御指摘のとおり、この費用については、家庭裁判所の判断により、父母に対して負担させることもできます。このように、現行の家事事件手続法におきましても、子の手続代理人の選任に伴う子の負担を軽減するための仕組みが設けられているところでございます。
委員御指摘のように、子供の手続代理人の報酬等を公費で負担するという考え方につきましては、私人間の紛争の処理のために要する費用を公費で賄うということについて、国民の理解、納得を得られるかなどの問題があることから、慎重に検討する必要があるものと考えております。
○仁比聡平君 これまでそうやって慎重に検討するというふうに言ってきたんですけど、先ほど大臣が、子供が主役になるというふうにおっしゃいましたよね。そうした議論がされているときに、慎重に検討すると言っていて本当にいいのかと思うんですけれども。
今日はこども家庭庁にもおいでいただいていまして、児童福祉の現場でも、近年、子供に代理人弁護士が選任されて、子供代理人などと呼ばれることがあると思いますけれども、児童相談所に同行していろんなやり取りをしたり、中にはケース会議に参加をしたり、あるいは学費などを、親に対して扶養をしっかりしなさいと求める交渉をしたり、一時保護中などの学校の欠席が学校において不利益に取り扱われないように交渉を進めるといった取組が行われています。
こうした弁護士の代理人の活動というのは、現実には声を上げにくい被虐待児の意思を代弁するという積極的な意義を持っていると思いますが、いかがですか。
○政府参考人(高橋宏治君) お答え申し上げます。
今先生から御紹介あったようなケースについては私どもも耳にしたりしているところでございますけれども、全ての子供が意見を表明する機会を確保されるということが極めて重要でございまして、ただ、御指摘にあったように、なかなか声を上げにくい子供が実際いると。
そういうケースにおいて弁護士の方が子供の代理人になっているケースがあるということは承知してございまして、私どもとしても、本年三月に一時保護ガイドライン、これ、こども家庭庁の支援局長通知でお示ししているものでございますが、このガイドラインを改正いたしまして、児童相談所や一時保護施設は、子供の代理人弁護士の意見も勘案しつつ、子供の権利擁護を図る観点から、子供の最善の利益を考慮して必要な対応を行う旨をお示ししたところでございまして、引き続き、子供の権利擁護の推進に努めてまいりたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
大臣、最後一問だけ。
ところが、現行の民事法律扶助では、今の児童相談所への行政手続代理というのは、これ代理援助の対象になっていないんですよね。あるいは、未成年、子供が自ら法律扶助の利用契約を結ぶということはできないと、後に取り消されるおそれがあるからということで民事法律扶助の対象にはならない。これは改めるべきじゃないかと思うんですよ。子供が弁護士の活動を必要とするニーズをちゃんと把握して検討すべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 今度の法改正に伴って様々な支援措置についての必要性の御議論があります。先生の今の御指摘もその中の一つだと思います。今回の法律を成立させていただく中で、今度はその後の作業として様々な支援措置の充実という議論は当然起こり得ると思いますし、また我々もそれは視野に入れて検討していかなければならない、そのように思います。
○仁比聡平君 今日は終わります。ありがとうございました。