○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
法案のポンチ絵を一枚目にお配りしましたけれども、今回の法案、三十一人、裁判所職員の員数を減少すると。これは、昨年夏の概算要求の時点ではプラス・マイナス・ゼロでした。これ、何がどうなったかといいますと、最高裁の事務官を概算要求では五十一人プラスという要求をしていたのが、二十人という今回の法案になっているということなんですよね。
そこで、まず最高裁に、昨年夏の最高裁事務官五十一人増員と、これには根拠があったんでしょう。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
令和六年度の概算要求につきましては、最高裁におきまして、裁判手続等のデジタル化の検討、準備、記録の管理の適切な運用の確保、裁判手続に関する各種法制の検討への関与といった事務に対応するために裁判所事務官五十一人の増員を要求したところでございます。概算要求の時点においてはそのような人員が必要ではないかというふうに考えたというものでございます。
○仁比聡平君 いや、何でそれを三十一人も減らせるんですか。裁判所にはといいますか、最高裁には独自に予算を確保していくという権限がある。ところが、その最高裁の概算要求を値引きするというのは、政府の司法軽視も甚だしいと私は思います。これでは業務量に必要な配置ができず、結果、職員の過重負担が生ずるのは自明ではないかと。
二枚目に、長期病休九十日以上の書記官、家裁調査官、事務官の方々がどういうふうにいらっしゃるか、最高裁の資料をお配りしておりますけれども、つまり増えているんですね。九十日以上の病休というのは、職場に増えているメンタルヘルスで苦しんでいる方々の中のごく一部、言わば氷山の一角なのであって、私はこれ深刻な実態だと思うんですよ。
この増えているということ、その深刻さについて最高裁はどういう認識なんですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
委員から今御指摘をいただきましたように、裁判所職員の病休取得者数ということにつきましては、病気休暇取得者及び病気休職者の数が令和五年と令和四年を比較いたしますと一部増加しているというところでございます。
病気休暇及び病気休職の理由は負傷や疾患など職員ごとに様々でありまして、業務外での病気等によるものも含まれているということもございますので、一概にこれら病気休暇取得者及び病気休職者の数が一部増員している、増加していることの原因を評価するというのはなかなか難しいというところでございます。
いずれにしましても、裁判所といたしましては、これまでも、全ての職員が心身共に健康に職務に精励できるよう職員の健康保持に取り組んできたところでございます。引き続き、そのような取組を継続してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 評価は難しいなんて言って済みますか。先ほども議論がありましたけれども、客観的な労働時間の把握さえしてこなかった。現に、どれだけの方々がいわゆるサービス残業、休日もあるいは朝早く出てきてやっているかということ自体把握しておられないでしょう。メンタルヘルスはこの病休者の数をはるかに超えて職場に広がっているにもかかわらず、それ、評価の言葉、認識さえ語れない。それが今の最高裁の現実だと思うと本当に悲しい思いがいたします。
実際に、業務量に必要な配置ができないと、例えば最高裁でということになると、結果、結局各地裁から定員を引き揚げるということに、そういうふうにせざるを得なくなる。本法案では、予算では下級裁はプラス・マイナス・ゼロのはずです。ですが、現実には違います。各高裁管内ごとに書記官、事務官の定員の増減について数字をお示ししていただけますか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
順次お答えをいたします。各高裁管内ごとに順次お答えをいたします。
東京高裁管内は、書記官の増減なし、事務官二十八の減、大阪高裁管内は、書記官増減なし、事務官二の減、名古屋高等裁判所管内は、書記官増減なし、事務官一の減、広島高等裁判所管内は、書記官三の減、事務官一の減、福岡高等裁判所管内は、書記官十の減、事務官五の減、仙台高等裁判所管内は、書記官六の減、事務官三の減、札幌高等裁判所管内は、書記官二の減、事務官三の減、高松高等裁判所管内は、書記官、事務官共に増減なしとなっております。
○仁比聡平君 つまり、各地裁もうこれまでも限界を超えているのに、そこから更に書記官、事務官減らすんですよ。合計で書記官二十一人、事務官マイナス四十三人という定員減というのが現実なんですよ。
法務大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、国家予算に占める二〇二四年度の司法関係予算というのを考えてみると、総額百十二兆五千七百十七億円のうち僅か三千三百十億円で、とうとう〇・三%を割り込んで〇・二九四%というのが我が国の司法関係予算です。
定員を確保するためにもこの抜本引上げを行うということこそが法務大臣の職責なのではありませんか。
○国務大臣(小泉龍司君) 裁判所の経費は独立して国の予算に計上するものとされておりまして、裁判所の予算の原案は、独立の機関たる最高裁判所が独自の判断に基づいて内閣に提出することになっております。したがって、法務省はこれに直接介入すべき立場にはございません。
ただし、ただし、裁判所の予算についても、最終的には予算案を作成するのは内閣の責務であり、第二に、閣議の一員であり、裁判所の職務に最も近い関係にある法務を担当する法務大臣としては、裁判所と必要な情報共有を図るなどして、内閣としての意思決定の段階において裁判所の要求が正しく理解されるよう最大限努力してまいりましたし、これからもその努力を続けていきたいと思っております。
○仁比聡平君 独自だとか自律的だとか言って、結局、そうやって努力すると言いながら、結果がこれじゃないですか。こんなことで本当に憲法に保障された国民の権利を個々の司法の現場で実現をしていく、守っていくということができるんですか。
加えて、最高裁、あれこれ、例えば共同親権の問題などについても適切に対処していくんだという趣旨のことをこれまで繰り返しおっしゃってきました。成年後見を導入したときだって、二〇一一年に子の利益をと民法改正を行ったときだっておっしゃってきたけれども、現実に対応するのは裁判官だけではないでしょう。書記官、事務官、もう一点聞いておきますけど、加えて、予算の定員と実際に配置されている定員で、それぞれ書記官、事務官、百人ぐらいの差があります。定員どおり実数で配置されているわけじゃない。これは私は本当に活用していかなきゃいけないと思うんですが、最高裁、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
委員から今御指摘をいただきました各高裁管内の裁判所に配置されていない部分につきましては、これは欠員としている、そういう形になっているものでございますが、これらの欠員部分につきましては、産前産後期間中の職員の代替職員の確保のために活用したり、あるいは事件数の急激な増加があった場合等の機動的な対応のために活用するなどしているものでございます。
こういった欠員につきましては、それぞれ全体の一%程度ということになっており、各庁の事件処理等に支障を生じているものではないというふうに考えております。
○仁比聡平君 年度を通して見れば、この定員法の定員がきちんとどこかに配置されて、活用されなきゃいけないと私は思います。
資料の三枚目に、共同親権の問題での全司法労働組合の機関誌から引用させていただいた文章を紹介しています。
ちょっと紹介しますと、現在の家裁の現場での実態に照らして、真ん中ら辺ですが、離婚に際して葛藤が高まった父母の場合にはそもそも協力体制を築くことが難しく、相手方や子供を支配したり、あえて行動を妨害し攻撃するための手段として用いられる懸念が強くあります、飛ばしますが、これまでは監護親が判断していた様々な事項について、協議ができないことを理由に調停などの裁判所の手続で決めるよう求められる可能性があります、双方の価値観の違いが裁判所に持ち込まれ、その間、実態としては紛争がずっと続いていくことになりかねません、最後の辺りですが、施行当初からの事件増が考えられるとともに、言わば事件が事件を生むような事態も懸念されることから、家庭裁判所の抜本的な人的、物的体制の整備が必要不可欠です、また、離婚をめぐる事件が今より更に複雑困難になることが想定され、とりわけ当事者対応は困難を極めることが予想されることから、現場の職員が困ることがないような運用の在り方を検討する必要があると考えますと。
私、そのとおりだと思うんですが、最高裁はどんな御認識ですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
現時点においては、法案が今審議していただいているという段階でございます。裁判所として確たる今後の状況について御説明をすることはできないというふうに思っております。
いずれにしましても、今般の家族法の改正がされれば、裁判所に期待される役割というのがこれまで以上に大きくなるということについては私どもも認識しているところでございます。
○仁比聡平君 いや、私は、現在の家裁の実態に基づく裁判所職員の皆さんの指摘している懸念についての認識を聞いているんですよ。これから先の話じゃない、施行されての話じゃない。つまり、葛藤の高い父母の場合、協力体制を築くことは難しいし、事件が事件を生むような事態というのも現にその実態からすると懸念されるでしょうと。それから、当事者対応が極めて困難になることが予想されると、それはそうなんじゃないですか。
裁判官が法の趣旨に基づいて適切に判断されていきますと言って済む話じゃないでしょう。裁判官だけで裁判やっているわけじゃないでしょう。子供の最善の利益を本当に見極めていこうと思ったら、専門家としての調査官、絶対必要でしょう。どうなんですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
新しい制度が導入されるというようなことになったときに、裁判官だけが何かをすれば足りるというものではないということは委員御指摘のとおりだと思っております。家庭裁判所調査官あるいは裁判所書記官等、各職種の裁判所職員それぞれが重要な役割を今後とも担っていくということは、私どももそんなふうに認識しているところでございます。裁判官だけのことの体制整備を考えているというわけではございません。
○仁比聡平君 だったら、抜本増員なんですよ。
せんだって、公明党の伊藤議員からの児童相談所の一時保護についての司法審査の質問がございました。家庭局長が、この施行一年後に向けて、こども家庭庁と連携しながら様々協力していくと、例えば申立ての書類のありようとか、そういう御答弁をされたけど、そうしたやり取りするのは裁判所職員でしょう。裁判官が直接やるわけじゃないじゃないですか。
それを、裁判が適切に行えるというふうに言い張って増員も求めないと、あり得ないと私は思いますが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
最高裁といたしましては、これまでも適正かつ迅速な事件処理を安定的に行うために必要な人的、物的体制の整備及びこれに必要な予算の確保に努めてきたところでございます。各裁判所におきましても、家事事件を担当する裁判官あるいは書記官や調査官等、必要に応じた増員を行うことで、事件数増も見据えて、家事事件処理のために着実に家裁の体制を充実させてきたところでございます。
今後とも、事件動向等を踏まえて適切な体制の整備に努めてまいります。
○仁比聡平君 それが足りないと、何倍も増やさなきゃいけないというのが国民の声だということを厳しく指摘して、質問を終わります。

 

○仁比聡平君 日本共産党を代表して、裁判所職員定員法の一部改正案に反対の討論を行います。
本法案は、裁判官以外の裁判所職員について三十一人減員するものです。概算要求では最高裁事務官の五十一人増員要求をしていたものが、本予算では二十人の増員要求にとどまりました。業務量に必要な配置ができず、現場の更なる負担強化が起こりかねません。
各高裁管内での書記官、事務官の減員実態も深刻です。書記官は、定員上は増減なしのはずなのに、各高裁管内では減員とされるところもあります。この下で、現場の繁忙の実態は深刻です。サービス残業や持ち帰り仕事はあってはなりません。適切な超過勤務時間の把握が必要です。それは、早朝、昼休み、休日における勤務についても変わるものではありません。最高裁はこの趣旨を下級裁に徹底すべきです。
定員合理化計画への協力は、裁判所職員の現場の繁忙を深刻化、固定化し、司法サービスの後退を招きかねないものです。裁判所職員の定員削減でやりくりしようとするのではなく、国家予算の僅か〇・三%を下回る司法予算の抜本的な拡充こそ必要です。
裁判所においても、子どもの権利条約やこども基本法に基づき子供にとって何が最善の利益かを探求していく上で、裁判官を始め関わる大人たちの家族観を子供に押し付けるのではなく、個々の子供の意思や心情を把握し、その子供の福祉に向き合っていく必要があります。そのためには、家裁調査官の増員は絶対に必要です。
我が国の司法が憲法が保障する国民の権利を守るという本来の重要な役割を果たすために、裁判所職員の増員、裁判所予算の抜本増額を強く求めて、討論といたします。