○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日、初回の議論を始めてみて、やっぱりこの法案というのは、親子関係と家族の在り方に関する戦後民法の根本に関わる改正なんだと、これを国民的合意のないまま押し切っては絶対にならないということを改めて強く思います。与党からも厳しい懸念が示されている、野党の問いに対して安心できる答弁が返ってきていないと。それが、この参議院の審議が、委員会審議が始まってなおそうなのかと私は率直に思います。
そうした下で、この法案で言う子の利益とは何なのかという問題について質問したいと思いますけれども、まず、こども家庭庁に伺いたいと思います。
さきの本会議で私は、日本乳幼児精神保健学会の離婚後の子どもの養育の在り方についての声明、これを土台にして議場の皆さんにも質問をお伝えをし、認識を問うたわけですね。
今、お手元にお配りをしております二枚目以降に全文を紹介していますが、「人格の土台を作る乳幼児期の重要性を踏まえて」、二〇二二年の六月二十五日に発されたものですが、御覧のとおり、発達科学の到達点を共有し、臨床現場の実情あるいは知見に基づいて、家族法制部会、当時の、その審議についてこう述べています。その議論においては、子供の育ちにおける重要な科学的事実が礎とされているであろうか。これ厳しい指摘ですよね。現在の司法制度において、科学的、実証的な視点が軽視されているのではないかと。私は、この厳しい指摘を正面から受け止める必要があると思うんです。
そこで、傍線を引いていますが、子供は離婚により傷つくと言われることがあるが、正確ではないという一文を御紹介しました。子供は離婚という事象だけで傷つくのではなく、離婚に至るまでの生活環境(面前DVなどによる心理的虐待など)や父母のいさかいに伴う親子関係、そして離婚後の生活環境や親子関係の変化などの複数のストレス要因の複雑な絡み合いにより、身体的、心理的、社会的に大きなダメージを受けている。
この学会の指摘に対して、こども家庭庁の認識を問いたいと思って聞いたんですが、これに対する加藤大臣の答弁は極めてそっけなくて、この問題の指摘に対する答弁を避けたのかというふうに聞こえましたし、議場でもそういう声が上がりました。
そこで改めて伺いますが、答弁でいう、婚姻状態であるかを問わず子供の健やかな育成に支援していくという趣旨の答弁はどういう意味なんですか。
○政府参考人(野村知司君) 御説明申し上げます。
御指摘の四月十九日の本会議でございますけれども、婚姻状態であるか否かを問わず、面前DVなど、子供に対する虐待になり得るような身体的、精神的な暴力は防がなければならない旨を答弁申し上げたという経過でございます。
これの趣旨といいましょうか、でございますけれども、前回のその本会議での質疑でも御指摘を、先生の方から御指摘がありました日本乳幼児精神保健学会の声明にもございますように、安全、安心が得られる養育者との安定した関係性の中で育まれると、こうしたことは子供の健やかな育成においても重要であると。その上で、面前DVなどの心理的虐待などによる心理的、失礼しました、身体的、心理的、社会的ダメージについては、御指摘のこの離婚後の共同親権の場合のみならず、婚姻中であるとかあるいは離婚の協議中であるなど、親権のありようといいましょうか有無といいましょうか、そういった状況にかかわらず、どのような状況においてもこうした身体的、心理的、社会的ダメージが与えられるような事態というのは防ぐべきであるという趣旨での答弁というふうになったものでございます。
こども家庭庁といたしましては、引き続き、この離婚前後への親の支援でございますとか、あるいは虐待の未然防止の対応、こういった支援などを行いながら子供の健全な育成に努めてまいりたいと、こういった趣旨でお答えしたところでございます。
○仁比聡平君 つまり、離婚をめぐる葛藤という下で子供がこうやって傷つくというのはこの学会の指摘のとおりだろうけれども、それは離婚のときだけではない、婚姻中であっても事実婚の場合であっても、どんな場合であってもそうなんだと。だから、児童相談所を始めとした児童福祉行政としては、子の利益、子の利益といいますか、つまり、この子供の健やかな育成、この観点から一貫して取り組むんだと、そういう趣旨の御答弁なんだということですね。
○政府参考人(野村知司君) さようでございます。
こうしたダメージというものは、婚姻関係があるかないかとか、そういったことに関係なくほかの要因でもいろいろ発生するゆえに、児童虐待というのは年間二十万件を超える相談、通報件数というふうになってございます。
そうしたところ、何といいましょうか、要因のいかんを問わずしっかり対応していきたいと、そういう旨をお答えをしたということになります。
○仁比聡平君 ということなので、そういう御答弁として受け止めたいと思うんです。
そこで、改めて伺うんですけれども、この私が今指摘しているようなダメージというのは、子供をどのように深く傷つけるのか。こうした、自分が育っている環境の下でのこうした葛藤なりダメージというのは、子供に対してどんな影響を与えるのか。これはいかがですか。
○政府参考人(野村知司君) 面前DVに限らないと思いますけれども、子供に対する虐待になり得るような身体的なあるいは精神的な暴力につきましては、子供の心身に深い傷を残すということ、さらには、そのお子さんというか子供が成長した後においても、様々な生きづらさ、こういったものにもつながり得るものであるというふうに考えております。そういう意味では、どのような状況においてもこういったダメージが起こるということは防ぐべきであるというふうに考えておりまして、そういう意味では、離婚前後の親への支援もそうではありますけれども、やっぱり虐待の未然防止、こういう観点からも取組を進めてまいりたいと考えているということでございます。
○仁比聡平君 委員会としても深く認識を共有していく必要があるんではないかなと思うんですが、今日はちょっと次の問いに進みますけれども。
もう一点、私が本会議場で問うたのが、子供の成長、発達にとって最も重要なのは、安全、安心を与えてくれる主たる養育者との安定した関係と環境が守られることだというこの声明に対する認識だったんですね。私はそのとおりだというふうに思うんですけれども、ここも答弁をちょっと避けられた。
確かに、主たる養育者の養育が常に適切とは限らない、不適切な養育というのがあり得ます。典型が同居親による虐待ということだと思いますが、それを調査し、評価し、一時保護や施設入所や里親委託といった親子分離を行うという取組をするんですが、それらは子供の健やかな育成を実らせるための取組だと思うんですよね。ここはどんなふうに考えて取り組んでいらっしゃるんですか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
子供の心身の健やかな育成という観点では、養育に当たる養育者など、大人との間でしっかりとした愛着形成を基礎として、情緒の安定でございますとか信頼感の醸成、こうしたものが図られて自己肯定感を持って成長していくことができるようにしていくこと、これが重要な課題であるというふうに認識をしております。
ここで、児童虐待があるなど子供にとって適切な養育環境が確保されていないという場合、こうした場合には、児童相談所などで適切にアセスメントを行い、今御指摘がありましたように、場合によっては児童を一時保護するであるとか、あるいは施設入所、あるいは里親といったような措置をすることなどによって親子分離を行うなどの対応をしております。
こうした親子分離の対応でございますけれども、こうした対応によって、子供が暴力などで傷ついたり、あるいは必要な愛着関係が得られないといったような時期が続くようなことを防ぎながら安定した養育環境を提供する、つまり、何というか、保護先の施設とか里親の下で安定した養育環境を提供することで、ひいては子供の健やかな育成が図られることになると、そういうような考えでやっております。
○仁比聡平君 例えばネグレクトなどの関係があったときに、一時保護をして親子を分離して、その取組の中で子供も安心、安定をする、親の方も、いろいろな学び直しとか自らの生活の立て直しとかいろんな取組を行って、もう一回一緒に暮らせるように再統合を目指していくと、そういう取組もありますよね。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
失礼いたしました、施設、里親を前提にしたようなしゃべりになって、御答弁になってしまいましたけれども、御指摘のように、確かに、施設であるとか里親のところで安定した養育環境をつくるということもあれば、令和四年の児童福祉法の改正の中で事業を盛り込みましたけど、再統合に向けての、親子再統合に向けて支援をしていく、こうした形でまた安定した養育環境を再構築していくとか、そういったいろいろな取組を児相などが関与しながら行っていくということでございます。
○仁比聡平君 その学会の声明の一枚目の下の方に、こんなくだりがあります。主たる養育者を始めとする周囲の人とやり取りし、優しく温かい声や浮き浮きするリズム、心地よい身体的刺激などの肯定的な交流を得て、脳や神経が成長し、心と体を発達させていく、子供にとって、主たる養育者とこうした幸せなやり取りができることは、生存と発達の重要な要素であると。
こうした指摘についてはどう思いますか。
○政府参考人(野村知司君) 先ほどのお答えとちょっと重なるところがありますけれども、子供が育っていく過程で、養育者を中心とする周りの大人としっかり愛着そして信頼関係をつくっていくと、そしてその下で伸び伸びと、要は安心と安全ということのよりどころを得た上で、そして外の世界と触れ合っていくという、探索の拠点とかよりどころになっていくような拠点があるということが大事だということを発達の場面でもよく言われますので、こうした子供を養育していく際の環境整備、こういったものは必要、大事な課題であると考えております。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
今御答弁いただいたような、児童福祉の上での取組の言わば指導理念と言っていいんだと思うんですけれども、児童福祉法の二条一項にこういうくだりがあります。全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身共に健やかに育成されるよう努めなければならないという規定ですけれども、これが指導理念として重いものだということでしょうか。
○政府参考人(高橋宏治君) お答え申し上げます。
御指摘の児童福祉法第二条第一項の規定、これは、児童虐待について発生予防から自立支援まで一連の対策の更なる強化等を図った平成二十八年の児童福祉法改正の際に、児童福祉法の理念の明確化を図るために盛り込まれた規定でございます。これは、子供が権利の主体であること、その最善の利益が優先されるべきことがこれまで、それまで法文上明確にされていないという課題があったことを踏まえて改正されたというふうに承知しておりまして、こうしたその児童福祉法の理念は、全ての子供の福祉を保障し、子供が心身共に健やかに育つことができる社会を実現する上で極めて重要なものと認識しておるところでございます。
○仁比聡平君 そのとおりだと思います。
そこで、民法、家族法の親子関係における子の利益とは何かということなんですけれども、今日もこれまで何度か質問がありましたが、大臣の答弁あるいは局長の答弁というのは極めて抽象的ですよね。子の利益って何をもって子の利益とするのかということが、実際の子供の姿がこの議場にイメージが出てこないじゃないですか。わくわくしないじゃないですか。子の利益のために親権を行使しなきゃいけないなんて言いながら、結局何か父母間の争いの焦点になっちゃっているじゃないですか、子供が。これ、おかしいでしょう。
そこで民事局長に聞きますけれども、二〇一一年の改正で、親子法制に子の利益のためにという条文が明記されました、八百二十条。資料の一枚目に条文をちょっと抜粋しましたけど、監護及び教育の権利義務について子の利益のためにと、親権喪失の審判において八百三十四条が子の利益を著しく害するとき、親権停止の審判について子の利益を害するときと要件を掲げ、先ほどもお話ありましたが、民法七百六十六条の一項、離婚後の子の監護に関する事項を定めるという条文について、子の利益を最も優先して考慮しなければならないと規定されたわけですね。この現行法の下で裁判も行われているわけですよ。だから、施行後たくさんの事案が、この法の下、法の適用という形で取り組まれてきたわけですね。
だから、二〇一一年から今日までの間の取組も踏まえて、改めて子の利益とは何なんですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
具体的な子の利益が何であるかは、それぞれの子が置かれた状況によっても異なりまして、一概にお答えすることが困難ではありますが、一般論といたしましては、その子の人格が尊重され、その子の年齢及び発達の程度に配慮されて養育され、心身の健全な発達が図られることが子の利益であると考えております。
その上で、概括的に申し上げれば、民法も含めた御指摘の法律等の規定における子の利益、児童の利益というものについては、それぞれ特に異なる内容のものとして定められたわけではないと理解をしております。
○仁比聡平君 二〇一一年の改正というのは極めて不十分、中途半端なものでした。後に削除されましたけど、当時、子の利益のためと言いながら、懲戒権の規定は削除されませんでした。依然として子供を親の附属物のように捉えるというそういう認識が、この二〇一〇年以降の時期にもですよ、この法の、基本法の改正を阻んだわけでしょう。
実務では、その後の時期に家庭裁判所において原則面会交流と呼ばれるそういう取組、運用が行われて、この今回の法案に対しても多くの方々から、この裁判所の実務によって、運用によって傷ついたと、傷つけられているという声が寄せられているわけですね。その上に立って今回の改正案を提出されているわけです。にもかかわらず、子の利益とは何かと何度聞かれても、今のいろんな場合があるという答弁しかできないのかと。
逆に、大臣、聞きますけれども、改正案の趣旨として、何回もおっしゃっているでしょう、適切な形で子の養育に関わる、そのことで子の利益を確保すると言うじゃないですか。適切な形でって、何も言っていないのと同じでしょう。不適切な形で関与しちゃ駄目なのは当たり前じゃないですか。子の利益を実現するために何が適切なのかを語らなければ意味がないじゃないですか。極めて抽象的な規範を新たに作って、極めて厳しい指摘がされている裁判の運用で合意をしていなくても共同親権を定め得るということにしてしまったら、そうしたら新たな危険が起こるじゃないかと不安が広がるのは当たり前じゃないですか。
適切な形の関与というのは、これ一体何のことを言っているんですか。
○国務大臣(小泉龍司君) まず、子供の利益でありますけれども、これは漠然としているという御批判はありますけれども、しかし、あらゆる場合に子供の利益、様々な場面で様々な形で考えられる子供の利益を我々は勘案しなければいけない、そして多様な家族の形にもできる限り沿ったような形を取りたい、そういう考え方で法律を構成しているわけであります。
ですから、子供の利益というのは、法律用語ではないんですけど、子供の幸せです。子供の困難を少しでも減らすこと、子供の幸せを少しでも増やすこと、これはみんな親になった方々は子に対して同じ思いを当然持っていらっしゃると思うわけであります。子供の利益が何か分からない親はいないと思うんです。
そういう意味で、法律用語にはできませんけれども、子供の、それを子供の利益という言葉で表しているわけであります。
○仁比聡平君 子供の利益が分からない親はいますよ。だから虐待が大問題になっているんでしょう。
本会議でも申し上げたけど、大臣の家族観は、それはそれでいいです。けれども、それで法律を作ることはできないじゃないですか。(発言する者あり)そうおっしゃるから聞きますけど、子供の利益を分からない親はいない、先ほどのその答弁、撤回されますか。
○国務大臣(小泉龍司君) 一般的に申し上げています。もちろん一人もいないということではなくて。
○仁比聡平君 一般的な話を申し上げているって、大臣が責任を持って今提出して議論しているのは一般的な法律でしょう。全ての国民に適用される基本法じゃないですか。その基本法を作るに当たって、子の利益とは何かという問いにきちんと、法制審以来議論されてきた確立した答弁メモがないのは分かりますよ、だから答弁しづらいのは分かる。けれども、大臣の思いとして、子供の利益が分からない親はいないなんということを立法趣旨として残すわけにいかないじゃないですか。
民事局長、子供の利益が分からない親はいない、それが、適切な関与が子の利益と、そういう趣旨ですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
何が子にとっての利益であるかということは、その子の置かれた状況あるいは生育環境等によると思われますので、一概にお答えすることはなかなか困難ではございます。
済みません、繰り返しになって恐縮ですが、一般論といたしましては、その子の人格が尊重され、その子の年齢及び発達の程度に配慮されて養育され、心身の健全な発達が図られることが子の利益であると考えているところでございます。
○仁比聡平君 だから学会から、現在の司法は科学的、実証的な視点を軽視していると批判されてしまうんじゃありませんか。
先ほどこども家庭庁に御答弁いただいた、児童福祉法に基づく様々な取組と。様々な実践、現場があって、支援すべき子供たちがいて、だから先ほどのような御答弁が積み重なってくるわけじゃないですか。
これまでの離婚後単独親権を共同親権に変えると、しかも父母間に合意がない場合に裁判所が定め得るという法案を提出しておられるわけです。ならば、それがなぜ子供の利益になるのかということを誰にも説得できる形で、そうだと胸に落ちる形で、それは逆に言えば、そういう場合以外は裁判所は定められないんだなということが分かる形で答弁し、条文を作らなきゃ駄目じゃないですか。それは分からないんですか、大臣。
私は、ちょっとまず確認しておきたいと思いますけれども、この法案で言う子供の利益、つまり、これは改正されればですよ、家族法という基本法に子の利益という言葉がたくさん出てくることになります。そして、子の利益に反するのか害するのか、あるいは子の利益に沿うのかというのが、親子関係のあらゆる場面あるいは親権者を定める場面などでこれが規範になるわけですよね。
その規範というのは、私は、先ほど御答弁いただいた児童福祉法の二条の理念だったり、あるいは子どもの権利条約、そして子どもの権利条約も踏まえて我が国でも作られたこどもの基本法、こども基本法ですね、今日も三条三項という議論が与党からもありましたけど、そうしたものと共通するものと考えなかったら、一国の法制度として成り立たないと。だから、児童福祉法やこども基本法、そのベースにある子どもの権利条約の指導理念と同様だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 概括的に申し上げれば、今おっしゃった民法を含めた御指摘の法律等の規定における子の利益あるいは児童の利益というものについては、この民法で我々が定める子の利益と、それはそれぞれ異なる内容のものではない、異なる内容のものとして定められたわけではないと理解をしております。
○仁比聡平君 定めようとするものでもないということだと思うんですよ。現行法は定められたものじゃないし、これから定めようと提案しておられる改正案も、児童福祉法やこども基本法や子どもの権利条約と合致しているものだと、共通するものだと。子の利益というのは、つまり、子の親権を考えるときの目的だということだと思うんですね。あれこれの要素の一つではありませんよね、そういう意味で。
例えば、子の意見表明について大臣は、裁判所が判断をするときの重要な考慮要素の一つという言葉を使っておられるじゃないですか。重要な考慮要素の一つというのはあれこれの一つなんですよ、重要であろうがどうであろうが。子の意思や心情を把握して、それをどういうふうに生かすのか、その場面についてお答えになっているんだろうと思うけれども、子の利益を全うするんだと、これは、あれこれの一つじゃなくて、取組全体の、あるいは法そのものの目的ですよね。
○国務大臣(小泉龍司君) そうです。子供の利益を図るということがこの法律の一番の目的であります。
○仁比聡平君 その上で、非合意型の共同親権を導入することが子の利益に必要だとする立法事実を示してくださいと私は問いました。これに対して本会議で、恐らく初めて御答弁されたようにも思っているんですけれども、次のように答えられました。例えば、親権者変更や親権の停止又は喪失に至らない事案においても、同居親と子供の関係が必ずしも良好ではないケース、同居親による子の養育に不安があるために別居親の関与があった方が子の利益にかなうケースがあり得るという、この同居親の養育に問題がありそうなときという、こういうケースを挙げられたんですよね。
そこで、まずこども家庭庁に先に聞きますけど、親と子供の関係が良好ではないとか養育に不安があるとかという場合は、行政によってどのような支援が取り組まれるか。虐待が行われる場合は、虐待が疑われる場合は、その調査や評価、一時保護などの取組が専ら児童相談所において行われると思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
御指摘のような事例、つまり家庭における養育などに不安が大きい場合を含めまして、保護者による養育を支援等する必要がある場合においては、市町村におけるこども家庭センター、これは令和四年の児童福祉法の改正の施行で制度に位置付けられたもので、この四月から施行が始まって、センター、全国展開を目指して各市町村に設置を進めていただこうとしているところではございますけれども、この家庭センターで個々の家庭の状況に応じたサポートプランを作成して、そのプランに基づいて家庭支援事業などによる支援を行っていくと、そういうようなことを考えております。
子供への虐待が疑われる場合の家庭に対する調査でございますけれども、専ら児童相談所のみということではなくて市町村においても行われるものではございますけれども、結果として親子分離が必要と考えられるような場合には、児童相談所において一時保護でございますとか施設入所などの措置を行うと、そういった流れになってまいります。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
民事局長、という取組が制度上あるいは実際に行われている中で、この親権者変更や親権の停止又は喪失に至らない事案において別居親の関与があった方が子の利益にかなうケースというのがどんなケースなのかというのが私ちょっとよく分からないんですけれど、これどういう場合をいうんですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
本改正案では、裁判所は、離婚後の親権者について、親子の関係、父母の関係その他一切の事情を考慮して実質的、総合的に判断すべきこととしておりまして、父母の合意がないことのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないものとはしておりません。
そして、父母の合意がないにもかかわらず共同親権とすることが子の利益にかなう場合があるか否かにつきまして、法制審議会家族法制部会における調査審議の過程では、同居親と子供との関係が必ずしも良好ではないケース、同居親による子の養育に不安があるために別居親の関与があった方が子の利益にかなうケースがあり得る旨の指摘がされたところでございます。
これらのケースがどのようなものかというお尋ねでございますが、例えば、同居親と子との関係が必ずしも良好でないために、別居親が親権者としてその養育に関与することによって子の精神的な安定等が図られるケースや、同居親の養育の状況等に不安があるが、児童相談所の一時保護の対象になるとまでは言えないようなケースについてもこれに当たり得ると考えております。
○仁比聡平君 今の御答弁だと、あれですか、児童福祉法上の取組には当たらないような場合、まあ見守っておきましょうみたいなそんな場合に、父母間で合意がないのに、裁判所が、その同居親の養育についてこれでは駄目だとか良好でないとかというような評価をして別居親との共同親権を定めるみたいな、そんなことになるんですか。何だか、どういう、具体的にどんなふうな場合が、どんなふうな評価、アセスメントに基づいてされるのかということがちょっとなおなお分からないんですね。
例えば、様々な状況で傷ついている子供、児童を診療している精神科のドクターの皆さんいらっしゃいます。先ほどの学会の声明もそういう積み重ねでできていると思いますけれども、先日、院内集会での私どもの発言を受けてメールが寄せられまして、診断書で加害親から子供を守っていただきたいという意見書を裁判所に提出しても、それが役に立つという実感もありませんという言葉なんですよ。ある同僚の児童精神科医師からは、法の領域に入ってしまうと守ってあげられないという話を聞いたり、また別の医師からは、診断書に記載したのに今も結局加害親との関係性を続けるように裁判所からの指示が出ているという話を聞いたり、カンファレンスでは、別の担当者の児童が加害親との面会交流を継続することを裁判所から指示され続けていて児童の具合が悪くなっているという症例が報告されたことがある。
何に基づいて裁判官あるいは調停委員会が、父母も合意をしてもいないのに共同親権、別居親の親権者としての関与がふさわしい、子供の利益になるというふうに判断するのかと、そこがおかしいじゃないかという指摘が数々噴き上がっているんですね。
その点を今回の法案提出においてどう検討されたんですか、あるいは検討していないんですか。今の裁判所に対するこうした批判を民事局長はどう受け止めるんですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
裁判所は、離婚後の親権者につきまして、親子の関係、父母の関係その他一切の事情を考慮して実質的、総合的に判断すべきこととしておりまして、家庭裁判所において、必要に応じて家庭裁判所調査官を利用して子の意見、意向や生活状況等を把握することも含め、適正な審理がされた上で判断がされるものと承知をしているところでございます。
○仁比聡平君 引き続き議論をしていかなきゃいけません。
時間が参ろうとしているので、文科省に一問お尋ねをしておきます。
今日も高校授業料無償化の支援に関わって様々御議論ありました。先ほど公明党の伊藤議員から御質問があった件は私もよくそしゃくしてみたいと思っているんですけれども。
そもそもでちょっとお尋ねしたいんですけど、私の本会議に対する答弁では、親権者が二名の場合であっても、一方がドメスティック・バイオレンスや児童虐待等により就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合には一名で判定を行うという、それは共同親権となった場合でも同じだという答弁をされているじゃないですか、大臣が。大臣、基本一貫してそう答えているわけですよ。
ということは、離婚後共同親権になる場合に、DVやあるいは虐待によって大変になる場合があるんだと、そんな説明を法務省から受けてきたんですか。
○政府参考人(梶山正司君) 答弁申し上げます。
今般の民法改正案におきまして、裁判所が必ず父母の一方を親権者と定めなければならない場合の例として、虐待等のおそれがあると認められるときとDV被害を受けるおそれのある等の事情を考慮して父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときを挙げており、子への虐待のおそれやDV被害を受けるおそれがある場合には父母双方が親権者と定められることはないと想定されると認識しております。
御指摘の答弁につきましては、現行制度において親権者の一方の収入により判定を行う就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合の例としてドメスティック・バイオレンスや児童虐待等を挙げたものでございます。
○仁比聡平君 つまり、現行、婚姻中は共同親権なわけですよ。その婚姻中の今の家族がDVや虐待によってそうした状態に陥るということがあるわけで、そのときにはそういう対応をしていますということだけだと。ということは、離婚後共同親権という新たな関係を創設しようとしておられるにもかかわらず、そのときの家族の問題状況というのがどんな状況になるのか。
前回の質問のときにも申し上げましたけど、私、そうした葛藤状態にある、例えば中学校三年生の受験生がですよ、自分は学校に、高校に行けるんだろうかとか、授業料免除、無償化ということを聞くけど、自分は受けられるんだろうかとか思っても、相談するのってなかなか大変なことだと思いますよ。あるいは、学校の先生がこれだけ多忙を極めている中で、全ての子供のそうした状況に気付いて相談に乗ってあげるような余裕が果たしてあるのかと。それは文科省の現場の問題として大きな課題だと思うんですよ。ところが、そうした中身の、つまり子供をちゃんと中心にした協議は行われていないということじゃないですか。
そして、この高校授業料無償化の問題のみならず、様々な支援策、少なくとも給付に関して二十八件ある。それから、親の同意や関与というのが規定されている法令というのはもっとたくさんある。それらについて今のような議論しかできていないで法案提出しているじゃないかと私は厳しく指摘をしているわけです。
これを全て法務省の責任において、あるいは政府全体の責任においてこの委員会に提出してもらって、それぞれの運用基準や課題が何なのかということをちゃんとこの法務委員会として協議すべきだというふうに思います。
これ、取り計らっていただきたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。
○委員長(佐々木さやか君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。
○仁比聡平君 今日は終わります。