○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 まず、養育費の履行確保の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 前回の参考人質疑は、今日も他の委員も取り上げられました元家裁調査官の伊藤さん始め、松下先生、それから今津先生とお話をお伺いして、問題を、子の福祉、子の権利という原点に立って、これを理念として捉え直さなきゃいけないという意味でとても貴重な質疑を行うことができたなと思います。
 そこで、民事局長に、ちょっと通告していなかったんですけれども、この参考人質疑で、法制審もお務めになった松下参考人は、研究者なので自戒を込めて言えば、民事の問題だったから理論的にこうしかないという思考停止をするのではなくて、諸外国の立法例なども参考にしながら、まさに子の福祉、子供の福祉のためにどういう制度がよいかということを考える必要があり、今後も不断に制度の改正、改善というのを検討すべきであるとお話しになりました。
 また、今津参考人は、その松下先生の御意見を前提に、検討の方向性についてこんなふうにお話しになられました。子と暮らす親と子と暮らしていない親とどちらの生活も守りつつ、最終的に子が一番幸せになるような形というのを考えていく必要があるかなと思いますと。
 私、それぞれそのとおりだと思うんですが、局長、お聞きになっておられて、御感想ありますか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 委員の御指摘のとおり、私も今の御意見はまさにそのとおりだというふうに考えております。
 やはり子をめぐる制度につきましては、子の福祉、子の利益というものを第一に考えていくということでございますし、そういった制度を考える際には、諸外国における様々な制度、こういったものも参考にしながら検討していく、そういう必要があるものと考えております。
○仁比聡平君 そこで、お手元に、皆さんに資料をお配りいたしましたのは、二〇一八年の十一月二十日付けで国立国会図書館が「レファレンス」で出してくださっている「諸外国における行政による養育費の確保」というレポートなんですけれども、それの要旨の部分だけをお配りいたしました。
 これも見ながらお聞きいただければと思うんですが、まず、民事局長に、諸外国における養育費確保の仕組み、特に立替払制度、これはどのようになっているんでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 諸外国におきましては、養育費の履行確保のために様々な工夫がされていると承知しております。
 例えば、公刊されている文献によりますれば、ドイツなどでは、債務者が養育費の支払をしない場合には、行政機関がその一部を立替払して、その後に行政機関が当該債務者に対して求償するという仕組みがあると承知しております。また、アメリカでは、行政機関が債権者に代わって債務者から養育費の取立てをするという仕組みですとか、あるいは養育費の履行を怠った債務者に対して運転免許の停止等の制裁を科す制度などがあると承知しております。
○仁比聡平君 ドイツとアメリカの例を御紹介になられたんでしょうか。
 少し詳しくお尋ねしたいと思うんですけれども、その前提として、法務省として、あるいは日本政府として、この諸外国における養育費確保の仕組み、特に立替払や今の取立て、こうした仕組みについての調査というのは行っているのか、それから、この今回の法改正案を提出されるに当たって、法制審においてそうした議論はされたのか、いかがですか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 法制審の議論では、この養育費の履行確保の必要性についても議論がされております。特に、近年では、子供の心身の健全な発達のために養育費の履行確保の必要性が強く認識されていると。そういったことから、給与債権を対象とした強制執行がやりやすいようにすると、こういったような議論の下に、債権者が市町村等から債務者の勤務先に関する情報を取得する手続を申請することなどが盛り込まれたものでございます。
○仁比聡平君 つまり、法務省として各国の制度を調べているというわけではないんだと思うんですよ。
 先ほどの局長の答弁でも、公刊物におきましてはということで、言ってみれば文献の紹介をかいつまんでされたということなんだと思いますし、法制審において、養育費履行確保の必要な債権はどれかという議論はされているけれども、民事執行法を離れて、養育費の確保のためにどんな制度があり得るかという議論はこれはできていないと、これ、そういうことですよね。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 今回の法制審議会は民事執行法制についての見直しの議論でございますので、そういった制度を離れて、一般的な履行確保のものにつきまして議論されているということではございません。
○仁比聡平君 私が今日提起したいのは、それでは駄目でしょうということなんですよ。
 民事執行法で、給与債権も含めてこの差押えを活用するという方向は、それはあるんだけれども、実際に養育費が約束をされ、あるいは裁判所によって定められているというものが履行されているかというと、これは履行されていない。
 どれぐらい履行されていないかについて、この国会図書館の「レファレンス」が、今日午前中も御答弁ありました厚労省の平成二十八年度全国ひとり親世帯等調査結果報告から引用しているんですけれども、通告していなかったので答えられればでいいんですが、この「レファレンス」によると、室長、お聞きいただいた方がいいかもしれません、母子家庭のうち、離婚した父親からの養育費を現在も受けていると回答した方は二四・三%。つまり、養育費の約束なり審判なりあるんだけれども、母子家庭で養育費を払ってもらっていると回答したのは二四・三%にすぎない。父子家庭のうち、離婚した母親からの養育費を現在も受けていると回答したのは三・二%。
 そういう結果だと思いますが、お分かりになれば、イエス、ノーでお答えください。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおりの数値というふうに承知をしております。
○仁比聡平君 その理由というのはもちろんいろいろあるけれども、私どもが実際、生活や法律相談の場で伺う多くの場合というのは困窮ですよね。もちろん、子供を監護する側の多くの場合、お母さんがシングルマザーとしてとても苦労されるというのはもうこれ容易に想像の付くところですけれども、子を監護しない父の方も、就職がなかなか安定しないとか、そんな中で生活の本拠も転々とするとか、これ逆に母の側からすると、どこに行ったか分からないと、行方不明とか、どこで働いているかも分からないから督促のしようもないとか、そういうようなことが現実になっていて、約束したけれども払われない。
 その背景の大きなところに双方の生活の困窮というのがあるというような下で、当然、支払義務者、扶養義務なんですから、これを履行してもらうという方策を検討し、充実させていくというのは当然のことだと私は思います。けれども、それを充実させたから、そしたら民民の問題でいいのかと。そうではないでしょうということが現実に浮き彫りになっているし、前回の質疑で参考人の皆さんからもそうした御意見が出ているんだということだと思うんですね。
 そうした下で、大臣の御見解は少し制度を聞いていただいてから伺いたいと思うんですけれども、ドイツではどうなのかと。先ほど局長からもかいつまんだお話があったんですけれども、この国会図書館の「レファレンス」を見ますと、一九七九年に養育費立替え法という立法がされて、この申請を親がしてくるということに対して、連邦と州がこの養育費を立て替えるという仕組みになっているわけですね。この立替え額の財源については、四〇%を連邦、残余が州が負担すると。金額については、十二歳から十七歳は日本円でしておよそ三万五千五百円程度という月額が子供の権利として渡されるということなんですね。
 類似の制度がスウェーデンでございまして、スウェーデンでは養育費補助という制度なんですけれども、この受給権を持っているのは、両親が同居していない、つまり一人親の十八歳未満の子と、子供が受給権を持っていると。十八歳に達しても、結婚をしておらず、かつ就学中であれば、養育費補助の受給を延長することができる。これ、二十歳まで延ばすことができるし、十八歳以上の学生で受給期間を延長した者については、学生自身にこの養育費補助が支払われるという仕組みなんだそうです。十五歳超えるそうしたこの養育費補助の額というのは日本円でおよそ二万七千円程度ということのレポートなんですね。
 そうした立替払をされた養育費について、ドイツでもスウェーデンでも、支払義務者に求償する、あるいは返還を支払義務者はしなければならないという仕組みになっているわけですが、このスウェーデンの制度によれば、養育費の支払義務者の個人的、経済的な事情によっては、国は返還義務を猶予したり免除したりすることもできるようになっているというんですね。
 これ、局長、ざっと紹介しましたが、そういう制度なんでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) 委員の御紹介されたとおりだというふうに承知しております。
○仁比聡平君 つまり、親と子の間の、つまり子供の親に対する権利として扶養を求めるという権利があって、これが養育費として具体化をされる。その算定は、前回も議論をしたように、家庭裁判所、特に家裁調査官の調査も入って、子供と別れる父親の方、父親というか親の方が、子供と別れる親の方が、分かった、苦しいけれども約束しますということで調停が成立をしたり、あるいは、調停が成立しない場合も、これは家庭裁判所としてはこの金額が相当でしょうということで審判をしたりということで決まっていくわけじゃないですか。
 この子供の親に対する権利、これが決まっていくわけだから、子の養育費の請求権という、つまり子の親に対する権利という捉え方をする、それにすごくなじむのはドイツやスウェーデンの考え方だと思うんですよね。これ払われなかったら子供は生活できないわけですから、だから国や行政が立て替える。で、本来の支払義務者である親に、これは後で、あるいは同時にこれ求償をしていくと。これ、極めて合理的だと思います。
 確かに、先ほど民事局長から御紹介あったように、アメリカだとかイギリス、あるいはオーストラリアも、英米法系というんでしょうか、支払義務者から強制的に取り立てると。で、その制裁、払わないときの制裁を、運転免許を停止したりパスポートの発行の拒否をしたりという形で支えていこうとしているわけですけれども、そうした制度の枠組みはあるけれども、このドイツ、スウェーデン型というのは、私たち日本の法制度とも、分かりやすい制度の仕組みかなというふうにも思うのですね。
 そこで、大臣に、私、こういう立替払の制度を日本でもしっかりつくっていったらいいと思うんですよ。実際、約束した養育費が払えないという状況になることはあり得るでしょう。例えば、三万円という約束をしたけれども、いや、三万円はもう払えないんだと、仕事がなくなってしまって月に十万円届きませんという収入しかないという方があったとする。五千円は親の責任として絶対に払いますと。だけど、子にとってみると、二万五千円分なければこれ生活ができないわけですよね。それ立て替えて、子供が成人するまでは国が頑張る、その後になっても残余の部分は親に求償していけばいいじゃないですか。
 そういう制度をつくることを考えて、法務省として、あるいは政府として調査研究を行って意義や課題を明らかにすべきではないかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(山下貴司君) 委員御指摘のとおり、養育費の取決めが適切に行われ、その取決めが確実に履行されることは、子の利益を図る観点から極めて重要なものであると認識しておりまして、そういった養育費の履行確保も含めた子供の貧困対策というのは、政府全体で取り組むべき重要な課題であるというふうに認識しております。
 そういった意味もありまして、例えば、児童扶養手当法の一部を改正する法律案における附帯決議などを受けて、養育費が安定して支払われるための取組についても検討することが盛り込まれておりまして、これを受けて、厚生労働省が平成二十八年八月に、児童扶養手当の支払方法、養育費確保の仕組みに関する関係省庁連絡会議を設置しておりまして、この構成員に当省の担当者も出席しているというところでございます。
 また、加えて、諸外国の法制につきまして、本法律案の衆議院における審議の際に、四月十二日の法務委員会において、公的機関による養育費の履行確保に関する諸外国における法制度や運用状況に関する調査研究を実施し、我が国におけるそれらの制度の導入の是非について検討を行うよう努めることとする附帯決議がされたところでございます。
 また、そうしたことから、これをしっかりと踏まえて対応する必要があろうかと思いますが、ただ、その養育費の支払に公的機関が関与する措置を講ずることにつきましては、その是非、あるいは具体的内容としてどういうふうな法的性質の下で支給がなされるのかどうか、あるいは所管官庁、例えば、ドイツにおきましては連邦家族高齢女性青年省であったり、スウェーデンは社会保険庁が所管であったり、あるいはイギリスにおきましては労働年金省等が所管しているという部分もございます。
 そういったことを、また様々な意見があることも考えられますけれども、我々法務省としては、先ほど申し上げたように、附帯決議の趣旨を踏まえ、関係省庁とともに必要な検討をしてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 是非も含めて、今大臣がおっしゃった法的な性格をどのように捉えるのか、所管官庁をどうするのか、そこには当然、予算、財源をどういうふうに確保するのかなど、課題があることはもちろんそのとおりでしょう。だからこそ、法務省として、あるいは政府としてのこのテーマでの調査検討ということが私必要だと思うんですよね。
 元々、先ほどおっしゃった児童扶養手当に関しての検討会といいますか、厚労省の、そこに参画はしておられるけれども、そこで養育費の立替払制度についての、これがメーンテーマでやっているわけではないじゃないですか。今日、こうやって委員会で議論をしていますので、各国の制度について大臣も少し踏み込んでお答えになっておられますけれども、法務省としての調査検討があるわけじゃないんですよね。実際には、在外公館に法務省からも出向しておられたり、裁判官がいらっしゃったりしています。ですから、本気でテーマを定めて調べれば、どんな制度がどんなふうに運用されているか、そのことを日本として調査することは可能なのであって、これまでそれがされていないものをこれすべきだと私は思うんです。
 これ例えば、外国人技能実習生問題で政務官トップにしたPTってすぐ置かれたじゃないですか。あるいは、大臣の私的な諮問というか勉強会なんかをされるということはあるじゃないですか。そうやって新たな法改正なり新たな制度というのにつなげてきているじゃないですか。養育費の履行確保、中でも行政、国による関与なり、あるいは立替払についてどうするのかについて、大臣、そういう具体的な検討をこの場でお聞かせいただきたいと思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(山下貴司君) まず、附帯決議が衆議院においてなされております。その趣旨を踏まえ、関係省庁とともに必要な検討をしてまいりたいというふうに考えているというところでございます。
○仁比聡平君 今日はそこまでにとどまるんだとおっしゃりたいのかもしれないんですけど、先ほど大臣がおっしゃった児童扶養手当、私、ちょっと矛盾をやっぱり抱えていると思います。
 今日、厚労省にもおいでいただいていますけれども、先ほども御答弁いただきましたけれども、養育費とこの児童扶養手当の関係について、支給要件を満たすか、あるいは支給額がどうなるかということを判断する前の年に受け取った養育費、これが所得として算入されることになっています。けれども、養育費というのは、私たちが議論しているように、払われなくなるものということなんですよね。児童扶養手当の額が算定をされた後に払われなくなっても、その後、児童扶養手当が増額されるというわけでは、これ厚労省、そうじゃないですよね、されませんよね。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 児童扶養手当でございますけれども、養育費につきましても、児童扶養手当を算定をするに当たっての所得を計算をする場合に養育費の八割相当分を算入をするという仕組みになっておりまして、そのときに、毎年八月の現況届の際に、その前年の所得の把握をした上で算定をするということになりますので、その前年の養育費の状況について算入をするということになります。
○仁比聡平君 つまり、八月以降払われなくなれば、その翌年の八月が来るまでは同じ額になってしまうということなんですよ。
 もう一つ、この児童扶養手当ですね、私ども断固として反対しましたが、二〇〇二年の改定で、受給開始から五年がたったら、あるいは支給要件、例えば離婚をしたと、一人親家庭になったというようなときから七年たつと支給額が半減されるという、そういう仕組みになっていますよね。確認です。
○政府参考人(藤原朋子君) 委員御指摘のとおりでございます。
○仁比聡平君 ですから、別れて子供育てるって、例えば二歳の子がいて一人親になったと、五年たったら支給額半減、半分ですと言われたって、まだその子は七歳ですよ。いや、それは、ちょっとそれでは生活できないじゃないですか。一方で、養育費払うべき父の方は、これ職を転々としたり、もう行方不明になって払えないと、払えないあるいは払わないと。やっぱり、そこをそのまま放置していたら駄目でしょう。だから、私、これをきちんと政府として、法務省として調査研究をすべきだと思うんですね。
 そうした民事上の債務を国が立替払するというのは日本でも既にあるんです。もう一枚資料をお配りしておりますが、未払賃金の立替払という制度で、企業が倒産をして未払賃金が払われないときは、まあざっと言えば八割が立替払されるということになっています。
 労働基準局、この制度においては、当然こういう制度があるということと、それから未払なので、あっ、未払じゃない、企業が倒産する場合なわけですから、これが国が求償するということがかなわない場合というのがありますよね。どれぐらい、求償できなくても、それでも立替払をする意義というのはどこにありますか。
○政府参考人(田中誠二君) 御指摘の制度は、昭和五十一年、賃金の支払の確保等に関する法律が制定されまして、未払賃金立替払制度が創設されております。
 この内容につきましては、企業倒産により賃金未払のまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を政府が立替払をする制度であります。この立替払をした場合には、民法第四百九十九条に基づいて、政府が賃金請求権を代位取得して求償をするという仕組みになっております。
 その実態、実情ですけれども、未払賃金立替払事業における過去三年間の実績を見ますと、平成二十七年度立替払額が九十五億三千三百万円に対して回収額が三十五億七千五百万円、二十八年度が立替払額八十三億六千百万円に対し回収額が三十億八千百万円、平成二十九年度の立替払額が八十六億六千四百万円に対し回収額が二十億八千七百万円ということでありまして、回収率は大体二割から三割強ということになっております。
 元々、こうした制度の趣旨は企業倒産の場合の立替払でございますので、事業主からの回収が見込める状況ではありませんけれども、労働者保護の観点からこういう制度を運用させていただいているという状況でございます。
○仁比聡平君 給与債権が生活の基盤として極めて重要だと、当然のことです。養育費が子の生育にとって極めて重要だと、これも当然のことでしょう。
 大臣、これしっかり検討をすべきじゃありませんか。一言だけお願いします。
○国務大臣(山下貴司君) 関係省庁とも共有した上で政府を挙げて検討していくということは、先ほど附帯決議のところで申し上げたとおりでございます。
○仁比聡平君 是非しっかり検討をお願いしたいと思います。
 ちょっと残る時間、金銭債権の強制執行に関連して、金融庁においでいただいております。それは、バブル崩壊の後大問題になった融資型変額保険についてなんですね。
 そもそも変額保険というのが何かと。これ、バブル時代に、相続税がどんどん上がるよと、その対策だという大宣伝で、大銀行が大手の生命保険と提携して、異常な過剰融資、そのための抱き合わせのローンとともにこの変額保険を販売したと。これによって多くの人たちが、この保険さえあれば妻や子供たちに安心して家を渡してやれると思い込まされて、家や土地を抵当、担保にして融資型変額保険を契約するということになったわけですね。
 ところが、実際は全く違っていました。バブルも崩壊したと。それで、説明された保険の運用益は、説明とは反対に全く上がらない。だから、抱き合わせ融資の利息だけは複利方式で雪だるま式に膨れ上がっていくと。これによって、数千万円あるいは数億円単位の被害を多発させた商品で、この国会でもその銀行の貸し手責任、保険会社の責任ということが問われてきたわけですが、これ、金融庁、大体ざっとそういう問題でしょうか、変額保険。
○政府参考人(中村修君) かつてバブル時代におきまして、変額保険の販売、それにまつわる融資ということでいろんな形での事案が出てきたということはそのとおりであろうかと思います。
○仁比聡平君 結局、保険契約をした御本人が亡くなる、つまり、保険金が出れば元本は減るけれども、長生きすればするほど利息は雪だるま式に膨らむばかりだと。だから、自殺して返すという方が続発して、死に急ぎ保険などと呼ばれました。
 元々、商品の設計として、保険を解約した返戻金で、あるいは保険金そのものでも、土地を売っても返せないという高額な複利が発生していく。だから、相続税対策どころか悪魔の保険だと当時言われたんですけれども。ところが、銀行は、高齢者の自宅まで次々と競売に掛けて、血も涙もない取立てをして社会問題になってきたわけですが、その債務に苦しめられ続けてきたある家族の土地、建物が今強制執行を掛けられています。
 五月の二十三日、再来週に開札期日を迎えて、このままでは家、土地を取り上げられるということなので、ちょっとお話を伺ったら、お父さんとお母さんが、今申し上げている変額保険の契約をされた。そのお父さんは平成二十六年に九十三歳でお亡くなりになったそうです。ここで一億五千万円という元本を返済した。お母さんは平成二十八年に亡くなられて、一億円の保険契約だったそうですけれども、これを元本返済された。ところが、複利の約定利息というのは、これはずっと家族で払い続けてきたわけです。お父さんが亡くなってからお母さんが亡くなるまでのところの遅延損害金、一四%の遅延損害金が発生しているのだというので、お手元の資料の最後のページにあるダイヤモンド信用保証株式会社が平成三十年に家、土地の競売を申し立てているというケースなんですが、これは弁護士さんが、約定利息は完済しますと、百一万円だそうです、これは何とか完済しますと、これで、話合いで解決していきましょうと提案をしているさなかのことなんですね、強制執行の申立てというのは。遅延損害金だけというので、これ二千六十二万円にもなるんですよ。もう元本も返している、約定利息も返している、ほぼ。なのに、この遅延損害金だけで平成三十一年間ずっと苦しめ続けて、土地、建物を最後に取り上げると。
 こんなあこぎなやり方はないんじゃありませんか、金融庁。
○政府参考人(中村修君) ただいまの議員の事案の御説明ですけれども、個別金融機関の個別の取引についてでございますのでコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論で恐縮ですが、金融機関が債権の回収等の取引関係の見直しを行う場合には、まず第一に、顧客の知識、経験、財産の状況等を踏まえること、それから第二に、法令にのっとり一連の各種手続を順を追って適切に執行する体制が整備されていること、それから、手続の各段階において顧客から説明を求められればその理由を説明することが必要であり、その旨を我々は監督指針等において明示しているところでございまして、金融庁としましては、金融機関が法令ですとかこのような監督指針も踏まえながら顧客に対しまして適切に説明をしていくということが非常に重要だというふうに考えておりまして、こうした観点から監督に引き続き努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 こうしたことを、問題が、平成を通じてこんな被害に苦しめられ続けてきたのかということが明らかになりながら、その監督責任を本当に果たそうとしているのかと。そもそも金融庁が出発したのは、このバブル期の重大な事態、これへの反省からだったんじゃないんですかと。個別のことは答えられないというのでその責任果たせますかと。そんなことをやっているから、同様のことでしょう、結局スルガ銀行で起こっていること、そういうことになるじゃないですかと思うんですが。
 最後に、このダイヤモンド信用保証株式会社というのは、このホームページにあるとおり、三菱UFJ住宅ローン保証株式会社の支配する子会社です。その三菱UFJ住宅ローン保証株式会社は三菱UFJ銀行の子会社だと、これは明らかですよね。これ、三菱UFJがバブル期にこうした事態を起こして、三十年以上たってこの孫会社にこうした強制的な取立てをさせているんですよ。これが先ほどおっしゃった顧客本位だとか合理的だとか言えるはずがないんじゃありませんか。
 これ、きちんと指導すべきだと思いますが、最後、いかがですか。
○政府参考人(中村修君) 個別の事案についてはコメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、銀行に対しましては、銀行及びその子会社を含めた銀行グループ全体の業務の執行が法令に適合することを確保するため、体制をしっかり整備することなどの経営管理が義務付けられておりまして、金融庁としましては、そうした銀行グループの経営管理体制という観点含めまして、監督に努めてまいりたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 もう強制執行を是非取り下げていただいて、話合いによる解決を指導していただきたいと思います。
 終わります。