通信の自由脅かす乱用に懸念
警察などの捜査機関へのチェック機能を大きく後退させ、“効率よく”盗聴(通信傍受)できるようにする改定通信傍受法が6月から施行されます。これまで警察が通信会社に出向き、第三者の立ち会いのもとで盗聴したのに対し、これからは各地の警察などの施設で身内の捜査関係者の立ち会いのみで盗聴ができることになり、乱用がますます懸念されます。
専用パソコン141台に7.9億円
警察庁は、全国の警察施設で盗聴するための専用パソコン(特定電子計算機)141台を購入しています。
日本共産党の仁比聡平参院議員が警察庁に請求した資料によると、専用パソコン141台とその他の盗聴機器9台の購入にかかった予算は、2年度分(2017、18年度)で計7億9313万円です。
これらを含め警察庁が、電話の通話やファクス、メールなどを盗聴するため、盗聴法が施行された2000年度から18年度までにかけた機器の予算は総額19億1928万円となっています。
今回購入した新たな専用パソコンは、警察庁や管区警察局に保管され、警視庁や道府県警が使用する際に貸し出すとしています。
NTTなどの通信事業者が暗号化して送った盗聴通話を、この専用パソコンが暗号を解除して保存し、各地の警察施設などで聞くことができます。
新たな盗聴方式の導入に伴い今年4月に国家公安委員会規則(通信傍受規則)が改定されました。その中で、盗聴の「適正を確保するため」の助言・指導役として警視庁や道府県警に「傍受指導官」を設けるとしました。階級が警部以上の警察官から選ぶとしていますが、通信会社の社員が立ち会ってきたこれまでとは、乱用の歯止め効果は大きく後退します。
今年6月の施行に先立つ16年の盗聴法改悪で、それまで組織犯罪に限定されていた盗聴の対象が、詐欺や窃盗などの一般犯罪も対象となっています。
法務省が公表した2018年に全国の警察が行った電話盗聴の実績によると、12件のうち2件は犯罪と無関係の通話を盗聴しただけに終わり逮捕に結びつきませんでした。
今後、捜査機関にとって盗聴が手軽な捜査手法になることによって、件数の増大と犯罪と無関係な市民の通信の自由が脅かされる懸念が強まります。(しんぶん赤旗 2019年5月21日)