派遣労働者を違法な手口で低賃金で使い続け、あげくに使い捨てる―。十五日の参院決算委員会で、千四百人の派遣社員の雇い止めを決めた自動車メー カー・マツダの“派遣切り”を告発した日本共産党の仁比聡平議員。雇い止めの中止を指導するよう迫った仁比氏に対し、麻生太郎首相も個別の案件には「お答 えできない」としつつ、「憂慮しており、きちんと対応していかねばならない」と答えざるをえませんでした。
ランク付け
仁比氏は、マツダの派遣労働者の雇用実態を、同社の労働者の証言と「派遣就労ガイドブック」をもとに具体的に告発しました。 「驚くべきは、まず『ランク制度』なる労務管理の実態だ」。こう述べた仁比氏は、本来なら派遣会社が決めるべき派遣労働者の労働条件を、派遣先の マツダが実質的に決めている実態を資料で指摘。派遣社員はマツダ社員の評価にもとづいて勤務をC、B、A、Sなど四段階にランク付けされ、これに応じて、 時給や派遣契約期間、正社員登用まで決まる仕組みが作られていました。 仁比 労働条件の根幹を派遣先の大企業が決めている。とんでもない話だ。 舛添要一厚労相 派遣先が賃金、その他を決めることは職業安定法四四条違反となる。 舛添厚労相は、「個別企業の案件には答えられない」としながらも“一般論”として同社の違法を認めざるをえませんでした。
常用代替
さらに、仁比氏は、派遣労働の受け入れ期間を最長三年と定めている労働者派遣法の規定を逃れるため、マツダが派遣社員の「雇用形態換え」を恒常的に行っている実態を告発しました。 同社は、三カ月を超えて派遣を受け入れない期間(クーリング期間)があれば、継続した派遣とみなさないという厚労省指針を利用し、派遣社員を順次三カ月と一日だけ「サポート社員」(期間社員)にして派遣労働者を恒常的に使う手口(図)をとっていました。
仁比 こんな常用代替は断じて許されない。 厚労相 クーリング期間中に直接雇用しても、その先に派遣就業させることを予定している場合は(職業安定法)四四条に違反する。
解雇撤回を
違法実態を次々と告発した仁比氏は、マツダはこうした派遣労働者を本来早くに正社員にすべきだったとし、マツダでは職制が「トヨタでもやっている ので勘弁してほしい」という一言で首切りを行っていることも指摘しました。マツダの内部留保は四千三百億円にのぼり、今年度通期ではバブル期を超える五百 億円の利益を見込んでいることをあげ、「こんな理不尽は許されない。明白な違法に対しては、個別企業に対しても、単なる要請でなく、派遣切りの中止・撤回 を指導すべきだ」と迫りました。 また仁比氏は、「大企業は『減収減益』だというが、なぜこれほどの人員削減が必要なのか、説明すらしていない」と重ねて追及。麻生首相は「今、(仁比氏が)言われた事態は、この会社(マツダ)に限らずいろいろあると想像できる」と答弁し、対応することを約束しました。