「雇用破壊をくいとめるのは政治の責任だ」。日本共産党の仁比聡平議員は5月21日の参院予算委員会で、労働者をモノのように扱い、大量解雇をすすめる大企業のやり方を厳しく告発しました。
東芝グループ
「業務偽装」指導も無視
厚労相 企業は法律守らねばならぬ
派遣元と派遣先が一体となって「業務偽装」をおこなっている―。
仁比氏が取り上げたのは、東芝グループの派遣会社・東芝オフィスメイトに登録し、東芝デジタルメディアエンジニアリングに三年五カ月間、派遣されてきた労働者の実態です。
労働者派遣法は、上限三年の派遣期間制限を設けています。一方、「専門業務」といわれる機械設計やセールスエンジニア(製品に関する技術的な専門知識を備えた販売員)の営業などには、期間制限がありません。
オフィス社とデジタル社は求人案内で、「内勤、PHS基地局の工程管理」としていたにもかかわらず、実際には、法律が「専門業務」と認めていない基地局建設のためのあらゆる業務を、派遣労働者に強いてきました。
仁比 これは、「専門業務」を偽った「業務偽装」だ。
舛添要一厚生労働相 「専門業務」と関係のないことをやり、(労働時間の)一割を超えれば法令違反だ。
舛添氏も一般論としながらも、二社のやり方を違法だと認めざるをえません。
今年三月、この労働者は、「専門業務は偽装。ならば三年の上限を超える」として愛知労働局に直接雇用を求めて申告しました。
同労働局は、二社にたいし違法派遣を指摘し、「雇用の安定を図るよう」指導・助言しました。
ところが、二社はこれに従わず、「ほかの地域の労働局はそんなことはいわない」などと開き直りました。デジタル社は、この労働者の派遣契約を四月末で解除しました。
仁比 このままでは派遣元からも五月に解雇されかねない。申告者を見殺しにしていいのか。
舛添厚労相 指導に従わねば勧告し、企業名を公表する。派遣元には事業停止命令・事業許可の取り消しをおこなっている。
「指導に従わないのは明白な違法だ。雇い入れ勧告を絵に描いたもちにするな。断固として大企業の社会的責任を果たさせよ」と厳しく迫る仁比氏。舛添氏も「企業は当然、法律を守らねばならない。仁比議員との議論で、その成果は相当上がっている」と答えました。
パナソニック人員削減計画
配転か退職かの理不尽
首相 個別事案のコメント控える
「労働者には家族も家も、そのローンもある。子どもの学校だってある。おじいちゃんやおばあちゃんの介護もあるんですよ」
仁比氏は、パナソニックグループが一万五千人の人員削減計画の中で、労働者の生活を無視した遠距離配置転換を強いている理不尽さを告発しました。
パナソニック・ファクトリー・ソリューションズは、佐賀県鳥栖市の工場閉鎖を発表。九百人の正社員に対し、八百人は甲府市へ、百人は大阪府門真市への配置転換を命令し、できなければ自主退職を迫るという二者択一を強要しています。
閉鎖される鳥栖の工場の隣には、同じパナソニックグループのパナソニックコミュニケーションズの工場があります。同社は宇都宮市と新潟県小千谷市の工場を閉鎖し、そこから八百五十人を鳥栖の工場に配置転換させます(図)。「近くの関連工場で働かせるようにすらしない」(仁比氏)やり方に、委員会室から「それはおかしい」という声が上がりました。
仁比 卑劣なやり方で労働者を追い詰める。おかしいと思わないのか。
麻生太郎首相 個別の事案にコメントすることはさしひかえる。
仁比 個別企業については言えないという姿勢がこういう事態をつくっている。その姿勢を改めて自ら乗り出して雇用破壊をくいとめるべきだ。
仁比氏は労働者の「なんでこんな会社におったんやろ。悔しくて、寝ていても何度もうなり声が出て嫁さんに苦労かけとる。技術は負けんのに、まるで会社を私物化した経営者に家族までつぶされるのが悔しい」という声を首相に突きつけました。
パナソニックの株主配当は年間六百二十一億円、雇用を守る体力は十分にあります。日本経団連の副会長も務める世界的大企業の同社が、営業利益はなお黒字でありながら、大量解雇を進めている実態が浮き彫りになりました。 (2009年5月22日(金)「しんぶん赤旗」)