西日本豪雨から2カ月―。被災現場を回り、被災者の声を聞き、政府・行政に働きかけを重ねてきた、日本共産党の仁比聡平参院議員・党国会議員団7月豪雨災害対策本部事務局長に、復旧、被災者支援を中心に聞きました。

党国会議員団豪雨対策本部事務局長 仁比聡平参院議員に聞く
がれきの除去で画期的取り組み

――救援・復旧の状態はどうでしょうか。

 甚大な被害が明らかになってきた7月6日に、党国会議員団対策本部が発足しました。交通網が寸断されるなか、私は7日に広島にたどり着きました。各地で治山ダムを乗り越えて土石流が団地を襲い、全半壊を免れた宅地も土砂が約2メートルもの厚さで埋め尽くし、住民は途方にくれていました。当初、行政は「公道の土砂は撤去するが、私有地は自己責任で」というスタンスでした。

 「到底、自力や人力では撤去できない」―。被災者の声をもとに、「がれきの除去は行政の責任で」と求め続け、8月2日の参院特別委員会で全額公費での対応を求めました。

 とうとう政府は、災害救助法にもとづく「障害物の除去」によるほか、▽環境省の災害等廃棄物処理事業と国交省の堆積土砂排除事業を一体化して被災者負担なしで行う▽すでに業者に依頼して撤去した人にも事後精算する▽床下浸水や災害救助法未適用自治体でも行う―と答弁しました。初めての取り組みとなります。壊れた家の公費解体についても、全壊だけでなく、半壊でも行うということを明らかにさせました。大きな前進です。

 けれど市町村によっては、がれきと土砂の分別を求めたり、民有地に入ることをためらったりして、土砂撤去が全く進んでいない地域もあります。市町村の負担分はほぼ国費で賄われることへの誤解や、長年の自民党政治による地域の土木建設業の疲弊など、いろんな問題があると思います。

 だから大切なのは、被災者の要求と共産党の論戦で前進させてきた支援策を、現場に足を運んですべての被災者に届けきることです。その中で復旧の障害となる“新たな壁”も見えてくる。その解決に全力で取り組み、被災者とともに声をあげる要求運動で、被災者の生活と地域の再建を進めたいと思います。

グループ補助金さらに前進求め

――土砂問題以外ではどうですか。

 被災した事業所や商店の復旧費用の4分の3を公費で助成するグループ補助金が広島、岡山、愛媛の3県で実現しました。この制度は2011年の東日本大震災で始まりましたが、大企業の協力会社、サプライチェーン(供給網)が大きく毀損(きそん)した場合が優先対象とされました。それを運動の力で中小・零細の事業所に広げてきたのです。

 2016年の熊本地震では熊本県商工団体連合会も頑張って、中小の事業所もかなり対象にさせてきました。しかし、昨年の九州北部豪雨では、「災害の規模が小さい」などとされ、適用されませんでした。

 今回も適用がまだ3県にとどまっています。中小自営業者こそ地域の産業・雇用とコミュニティーの要です。希望するすべての事業者に補助金をかちとり、当面400億円とされている予算の増額を求めていきたいと思います。

 仮設住宅についていうと、当初、民間のアパートなどを活用する借り上げ型は進めるものの、建設型、とりわけ木造仮設住宅に消極的な自治体もありました。

 7月15日に小池晃書記局長とともに倉敷市真備町を訪ね伊東香織市長と懇談した際、私たちはコミュニティーを維持し、子どもたちの学校や通勤のためにも木造仮設住宅の建設を強く求める被災者の声を伝えました。政府や県にもさまざまな要請をしてきました。

 夏冬も過ごしやすく恒久住宅としての利用も展望できる木造仮設住宅の建設が各地で進んでいます。長期化が懸念される避難生活が量、質ともに人間らしいものとなるように、声をあげていきたいと思います。

生活再建支援金増額まったなし

――今後の課題は?


 「私有財産の再建に公費は投入できない」という立場から抜け出せない自民党政治を根本的に転換することです。

 もはや被災者生活再建支援金の最大500万円への増額、半壊や一部損壊への支援拡大はまったなしと言うべきです。全国知事会は7月、被害認定が「半壊」の家屋にも支援を拡大する方向で議論を進めるとともに、支援金基金に400億円を追加拠出することを決めています。地方自治体も京都府や愛媛県、岡山県総社市、広島県呉市など独自の上乗せや、対象の拡大を実施しています。しかし安倍政権は、これに背を向け続けているのです。

 また、ダムの異常放流や堤防・ため池の決壊、川の流れを妨げた堆積土砂や繁茂した樹木の放置など、大型開発偏重の公共事業や都市開発のあり方が根本から問われています。異常気象のもと「想定外」「被災者も自己責任」など絶対に許されないのです。防災減災への抜本的転換が必要です。

 共同の力で、「住まいと生業(なりわい)の再建こそ政治の責任」という声を大きく広げ、政治を変えて、復旧・復興を前に進めたいと思います。(しんぶん赤旗 2018年9月5日)