第170回国会 参議院決算委員会 第2号
2008年11月17日 仁比聡平参議院議員
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、外国人研修生・実習生問題につきまして、今回、会計検査院の報告では、〇六、〇七、この両年度で技能実習途中の失踪、途中帰国者が約一万二千七百人に上ると、こういう深刻な実態が指摘をされました。厚生労働省も初の実態調査をされるという旨、一部報道されているところなんですけれども、この制度は、建前は研修、技能移転とされながら、現実にはパスポートの取上げあるいは強制貯金、巨額の保証金やその担保のための田畑あるいは保証人と、こうした形で縛り付けられて奴隷のように酷使をされる。その中で、労働関係法令違反はもちろんのこと、強制帰国あるいは失踪、自殺、こうした問題が相次いでまいりました。
私は、研修生を食い物にする国際的な人材派遣ビジネスや現実の人権侵害を直視することなしに実効ある制度の見直しはあり得ないということを国会で繰り返し求めてきたところでございます。
ところが、こうした中で、厚生労働省所管の社団法人国際労働運動研究協会という公益法人が収益事業として行ってきた研修生・実習生受入れ事業について、法務省入管当局から今年の三月五日、不正裁定処分を受けるという、そういう事態が明らかになりました。詳しくは先週、法務委員会で申し上げましたから繰り返しませんけれども、大臣のひざ元でこうした不正が起こったということをどう認識しておられるか、今後どのように取り組もうとしておられるか、端的に認識をお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 今御指摘のように、この研修・技能実習制度、これは技能移転を通じて国際協力をやろうと、いい目的であるわけですけれども、一部の受入れ企業また団体において、今おっしゃったように研修生が実質的に低賃金で働かされる、そして途中帰国や失踪というようなことで当初の目的も遂げられていないということで、これは放置しておいてはいけないと、そういうふうに思っております。
したがいまして、まず国際研修協力機構、JITCOと申しますが、ここを通じた受入れ団体・企業に対する巡回指導を強化する、それからその外国人の研修生の母国語で電話相談ができるようなホットラインを設置する、それから入管当局との連携を強めると、こういうことを通じて制度の適正な運営に努めてまいりたいと思っています。
また、この制度、今のような問題が起こっておりますので、規制改革推進のための三か年計画におきまして、遅くとも平成二十一年通常国会までに関係法案提出等の措置を講ずることとされておることもありますので、法務省等関係省庁と連携して、具体的な制度設計の検討を始めてまいりたいと思っております。
○仁比聡平君 大臣はお答えにならなかったんですが、社団法人の不正裁定というこの事態についてはどのような御認識ですか。
○国務大臣(舛添要一君) この社団法人国際労働運動研究協会、今御指摘のこの公益法人が、今申し上げましたような外国人研修生・技能実習生の運営について不正行為という認定を受けたことは、非常にこれは遺憾であると思っております。
この公益法人につきましては、今月十三日、十四日両日、本省職員が立入りを行う等、現在、検査を行っているところでありますけれども、行政処分も含め、厳正に対応してまいりたいと思っております。
○仁比聡平君 今日はこの問題はこの程度にとどめて、制度改革の大問題が国会で大きな議論になると、私もその中で申し上げていきたいと思っております。
次に、介護保険におきます財政安定化基金につきまして、会計検査院が改善処置要求を今回出されました。多額の未貸付等基金が発生し、都道府県が基金の一部を拠出者に返還することが適切であると判断した場合に、基金規模を縮小できるような制度に改めることというふうに処置要求をしているわけでございます。
この背景といいますか要因には、私は、介護保険制度をめぐって、要介護認定がより厳しくなって、あるいは利用できるサービスが減らされた上に一割の利用料が高過ぎて払えずにサービスがまともに受けられないと、そういった事情があるのだと私は思うんですけれども、いずれにせよ、介護保険財政は黒字になっているところが多いわけです。その下で、基金も二割程度しか利用されていないと。市町村からは、三分の一の拠出金の負担が重くて、国や県がもっと責任を果たすべきだという、そういった要求も出ているところなんですが、この際、この基金それ自体は介護保険を支える大事な制度だと私も思いますけれども、市町村のこうした要求にこたえる方向で見直すべきではないかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(舛添要一君) これ今、委員御指摘のように、財政安定化基金、これは国、都道府県、市町村が三分の一拠出して、いざというときに介護保険制度、これが破綻しないようなある意味で安全弁を作っているわけですけれども、今の会計検査院からの御指摘も受けまして、来年度から標準拠出率を従前の〇・一%から〇・〇四%にまず引き下げる。さらに、基金積立残額を十分に保有している都道府県については拠出率をゼロにするよう周知徹底したところでございます。
この考え方に基づきまして、多くの都道府県においては、今言った拠出率の引下げ、さらには拠出を求めない方向で調整しているというふうに思います。
○仁比聡平君 続きまして、お手元に資料をお配りしたかと思いますけれども、国民健康保険の資格証明書とそれから保険料の問題について、あとの時間お尋ねしていきたいと思うんですね。
この間、私どもも求めてまいりましたが、実態調査が行われまして、十月三十日に、資格証の交付世帯が全国で三十三万七百四十二世帯、その中で子供さん方がいる世帯が一万八千二百四十世帯、子供の数にして三万二千九百三人という、こうした子供たちがいわゆる無保険という状態になっているという衝撃的な実態が今大きな問題になっているところでございます。
これを受けまして、全国の多くの市町村でこの事態を解決するための取組が起こっていますけれども、なお市町村の受け止めに差異があるというふうにも私は感じているんです。
そこで、今日は、この実態調査とともに、厚生労働省が出されました通知、この意味について大臣によく伺っていきたいと思っております。
この問題では、私は現場の実態を示して何度も担当課と改善を求めてきたんですが、今日も一つだけ例を挙げますと、大臣も御出身の福岡で、私もそうですが、ある小学生の男の子が、虫歯で歯医者さんに通院をし始めたんですよね。で、三か月来たんだけれども、それで来なくなって、病院から連絡をしても家庭の事情で行けませんという返事のまま一年半たちまして、学校の歯科の検査、これで絶対に行きなさいともう言われて、病院にやっとこさ来たときには全部の歯が虫歯になって、歯槽膿漏それから口腔内感染症、全部の歯を抜歯しなければならないと、小学生でもう全部の歯を抜かなきゃいけないという、そういう事態になってしまったというわけです。
この家庭の事情といいますのは、お父さんの失業です。これによって、窓口での十割、全額負担ができなくなってしまった。こうした形で、子供さんのいる世帯から保険証を取り上げてきたその国保行政そのものが今正面から問われていると思うんですね。
こうした事態を受けまして、私がまず感じますのは、病気になったときにまず行くのは病院のはずなんじゃないのか、国民皆保険というのはそういうことなんじゃないのかということなんです。
幾人ものお医者さん方から、市町村の担当者に保険証を取り上げていいかどうかの判断が付くのかと。保険証の交付だったり、その短期だったら期間ですね、この必要性の判断というのは本当は医者しかできないんじゃないのか。だけれども、これまでは、お医者さんが医療の必要がある、病院に来てもらわないと大変なことになると言っても保険証が出されないという、そういう事態が続いてきました。
今回お配りをしております通知の二枚目、緊急的な対応というところで、短期被保険者証を速やかに交付するということを市町村に求める通知を出しておられるわけですが、私が申し上げたような背景事情も含めて、大臣から、この緊急的な対応というものがどのようなもので、どういう趣旨でこういう通知をなされたのか、是非お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) その前に申し上げておきたいんですけれども、まず、この資格証明書を始めとする話、まずは滞納している状況がどういう状況であるかということをまずきちんと把握する。そういう意味で、とにかく窓口に相談に来てもらう、またこちらから行く。家庭がどういう状態であるか。特別な事情があって払えない。そういうときには様々な減免措置があるわけですから、そういうことをやっていただきたい。
それから、これはもう市町村の福祉部門との連携、保険部門だけではなくて、これが極めて重要で、児童福祉関連の諸施策もこれに対応させる。そういう中で、今おっしゃった緊急的対応の短期被保険者証を発行する。これを発行することによって、またそこでいろんな相談もできます。
そういうことで、とにかく緊急措置として、そういう状況であればこれを発行すると、そして子供たちの健康を守っていく。そういう趣旨でこの緊急的対応をやりなさいということであります。
○仁比聡平君 この通知文そのものを読めば分かるといえば分かるんですけれども、この通知文が正面からすべての自治体に受け止められているんだろうか、理解されているんだろうかという点がいささか私に疑問に思う向きがあるものですから、ちょっと大臣に更にお尋ねをしたいんですが、この緊急的な対応としての短期被保険者証の発行については速やかな交付に努めていただきたいというふうになっております。
従前は、滞納がある場合、あるからこそ資格証の発行になっているわけですが、例えば私が相談を受けた事案でいいますと、六十万円ほど滞納をしていると。子供が階段から転げ落ちて顔面骨折、どうしたって病院に行かなきゃいけないと。窓口に行ったら、それでも二分の一は払ってくれないと保険証は出せませんと、一点張りなんですよ。三十万円なんていうお金が払えるんなら、もうこうした滞納なんかはしていないわけですよね。そういう機械的な対応が現実にあるわけです。
ここに言う緊急対応としての速やかな交付というのは、これは、そういった滞納額との関係では一体どうなるのかという点はいかがでしょうか。大臣、どうぞ。
○政府参考人(水田邦雄君) お答えいたします。
今回の対応につきましては、申出があれば出すという趣旨でございまして、半分払うとかいうことではなくて、申出があれば出すということでございます。
○仁比聡平君 その点を是非自治体にも周知をいただきたいと思うんですね。
元々保険証というのは、けがや病気になったときに役所に取りにいくものではなくて、そういった病気やけがのリスクに備えて日常的に持っている、だから安心というのが当たり前であって、それが国民皆保険制度の本来の姿だと思うんですよ。ところが、現実にはそうなっていないからこそ、こうした子供たちの無保険と言われる状況が深刻になっているわけです。
今の局長が御答弁いただきました世帯主の申出ですが、ここについては、医療の必要性あるいは一時払いが困難であるという、この二点についての申出があればという、それが要件だということで理解してよろしいですか。
○国務大臣(舛添要一君) 一時払いが困難であるという申出さえあれば結構で、医療の必要性という要件は必要ではありません。
そして、これ十月三十日に直ちにこの通知を発出しろと私が言ったのは、今言ったような、私も北九州なんで、そういうことがあるのは極めてこれは残念ですので、きめ細かい対応をするようにする、もし、徹底してこの趣旨を、今のように熟知していないところがあれば更に指導してまいりたいと思います。
○仁比聡平君 今大臣がおっしゃっていただいたとおり、医療の必要が生じていることを何か示す必要はないんだというお話で、これつまり、少し裏返しますと、市町村で、あるいはその窓口の担当者において医療の必要があるのかないのかということを判断することはそもそもができないということだと思うんですが、いかがですか。確認でございます。
○国務大臣(舛添要一君) それはお医者さんじゃないですから分かりません。申出があれば即出すと、こういうことが趣旨でございます。
○仁比聡平君 そういった緊急的な対応の趣旨を是非徹底していただきたいと思っております。
それで、先ほどの答弁の中で大臣がおっしゃった、そういった短期保険証の緊急的な発行というような事態に立ち至る前の納付の相談などの問題なんですが、時間がありませんから全面的には伺えないんですけれども、この通知の一枚目の一番冒頭の一般事項、まあ原則的な厚労省の認識を示しておられるところかと思いますけれども、ここにおいて、資格証明書は「機械的な運用を行うことなく、特別の事情の有無の把握を適切に行った上で行うこと。」というお話がございまして、その趣旨を先ほど大臣はおっしゃったんだと思うんですが、この機械的な運用というのは一体どういう状況を指して機械的だと言うのかというのを少し確認をしたいと思うんですけれども。
私、この質問に先立って勉強をさせていただく中で、一年滞納すれば、事情も確認せず、あるいはろくに確認せず資格証を発行する、通常の保険証を返還を求めて資格証を発行する、こういうやり方のことだという、そういうような御趣旨の発言も伺ったんですが、大臣、そういったことでよろしいでしょうか。
○国務大臣(舛添要一君) まさにそういうことではなくて、機械的にただ何か月だからどうだ、一年だからどうだということじゃなくて、どういう事情であるかと、どういう特別な事情があって払えなくなっちゃったんですかと、それをきめ細かく聞いて対応しろというのがその意味であります。
○仁比聡平君 きめ細かくその事情を聞いて、つまり特別の事情を聞いて対応しろという、その大臣の趣旨はよく私も分かりました。
私が一年と申し上げましたのは、一年滞納を続けてしまったとき、そのときには保険証の返還を求めると、つまり資格証の発行に切り替えるということが、現場ではこれ義務付けられているという受け止めでずっと運用されているという現実があるからなんですよね。それで一年以上という言葉をちょっと出したんですが。まあそういう意味では、一年でも、あるいは大臣がおっしゃった半年でも構いません、一定の期間滞納があるから、そうしたら直ちに資格証に切り替えるという考え方ではないんだというのが大臣の先ほどの御趣旨ですね。
○政府参考人(水田邦雄君) そもそもその資格証明書を出すことの意味というものは、これは、できるだけ窓口で被保険者の方等の接触の機会を増やすということが本来の趣旨でございます。したがって、この制度の中身をよく理解していただいて、支払能力がある方については支払っていただくということを説得もしますし、それから本当にお金のない人であれば生活保護につなげるとか、様々な手段があるわけでありますので、そういった対話の機会というものをそもそもつくるためにこの資格証明書制度が設けられているわけでございます。
したがって、一年間出さなかったがゆえに即、その辺を確かめもせずに出すと、資格証明書を出すということは想定していないところでございます。
○仁比聡平君 この問題のもう一つの大きな問題は、払いたくても払えないという方々がこの滞納者の中にたくさんいらっしゃるのではないかということなんですね。私どもは、高過ぎる保険料という問題をずっとこれは繰り返して申し上げてきたわけですが、時間がございませんので、この幾つかの問題のうち、保険料の最高限度額という、保険料の算定方式にかかわる最高限度額という仕組みについてだけ、これ局長で結構ですので、尋ねておきたいと思うんですが、これ、資料の中に健康保険料の概要についてという資料がございますが、応益分、応能分というのが保険料の算定の中にあって、応能分は際限なく上がるのではなくて一定のところで、これ現在は五十九万円というふうになっているわけです。この金額を今現行でいいますと五十九万円というふうに定めている理由、根拠、これはどういうことなんでしょうか。
○政府参考人(水田邦雄君) 御指摘ありましたとおり、国民健康保険の保険料、これは被保険者の数に応じてお支払いいただく応益割と、それから所得に応じてお支払いいただく応能割の保険料、この合計によって算定しているわけでございます。一方で、給付というものが所得にかかわらず一定でございますので、一定の限度額を設けているということでございます。つまり、保険料を払っているお金の多寡によって受けるサービスに変わりはないわけでございますので、受ける給付は一定なので一定の限度額を設けているというのがそもそも趣旨でございます。
ただ、この限度額につきましては、ほうっておきますと中間所得層の負担が過度になる可能性ございますので、限度額を支払う被保険者の割合が一定となるように所得の伸びに応じて限度額を引き上げるなどの措置を講じているところでございます。
○仁比聡平君 所得の一定の伸びに応じてという、そのところをもう少し伺いたいんですけれども、これ事前の勉強のときに、この表でいいますとこの最高限度額を超えて、まあ本来ならといいますか、この限度額がなければ払わなければならない方々が四%程度になるように日本全体の所得、経済の状況を見て定めているというお話でしたが、そのとおりですか。
○政府参考人(水田邦雄君) 御指摘のとおり、限度額を支払う被保険者の割合が全国マクロで四%台となるように設定をしているところでございます。
○仁比聡平君 最後のページの資料を御覧いただきたいと思うんですが、大臣、あります。いや、それのもう一枚次です。これ、昨年、大臣に決算委員会でお示ししたことがございます。これ、福岡市、札幌市で九七年から統計の取れる二〇〇六年までの国保の収入別の世帯構成をグラフにしたものなんです。奥の方が古くて、手前に従って新しくなると。百万円以下あるいは二百万円以下という収入の世帯が激増しているという状況にあるわけです。いわゆる所得における格差がこの国保の加入世帯において大変拡大しているという状況なんですね。
マクロで日本経済全体で最高限度額を超える支払を本来なら求められる方が四%になるようにというお話だったんですが、格差が大きく広がって、これが四%ではなくて、例えば六%だとか七%だとかというふうになる世帯構成の国保が仮にあるとしたら、そこの分が中堅所得層、とりわけ子育て世代の、だけれども非正規という年収二百万円以下のワーキングプアなんて言われるようなその世帯にのしかかってしまうという、こういう実態になってしまうのではないのか。
私は、そういった点も含めて国保料がどういうふうに現実に算定されているのか、ここを実態調査を更に進めるべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(舛添要一君) 世帯別か個人かという問題があるから、実態をどこまで把握できるか、これはちょっと疑問ですけれども、ただ問題は、これは政策論として今の問題提起は非常に重要だと思いますが、半分税金、半分保険料でやっていますね。そうすると、給付に応じての負担ということになると先ほど局長が答えたとおりなんで、そうすると、もっと大きな枠組みで、五対五というのを例えば保険料の比率を三とか四にして税金の比率を六とか七にする、もっと極端に言うと、全部これ税金でやってみますというと、税による所得再配分で全部利くわけです。しかし、自助、共助、公助という仕組みの中で、じゃ税と負担の割合をどうするか、そしてその最高額についてどれだけの所得再配分機能とともにこの給付と負担の関係をどうするかということで、これはこれからやっぱり我々政治家がよく議論をして方向付けをやるべきだと思っていますんで、そういう大きな議論をこれは是非委員とともにやりたいと思っております。
○仁比聡平君 時間がなくなり、終わりましたので、もうこれ以上できないんですが、実態調査は是非やっていただきたいと思うんですよ、その議論の前提として。
大臣が御答弁の中で五分五分と言われましたが、国の負担あるいは公費の負担というのは、これは大きく減らされてきていると私は申し上げたいと思うんです。今大臣がおっしゃったように、国庫の負担を四五%に戻せというのが今ほうはいと起こっている声でございますから、これ是非実現をしていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。