○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、麻生総理並びに関係大臣に質問いたします。
年の瀬を前にして、今、国民生活と経済は危機に立たされています。
二〇〇七年度決算の最大の特徴は、国民には定率減税の全廃だけでも一・七兆円の庶民増税、さらに社会保障予算の二千二百億円削減を押し付ける一方で、空前の利益を上げる大企業、大資産家には証券優遇税制の延長を始め二兆円規模の減税を強行したことにあります。
一部の輸出大企業の応援に熱中し、そのしわ寄せを雇用や家計に押し付けてきた自民、公明の構造改革路線が深刻な貧困と格差を広げ、国民の所得を減らし、内需を冷え込ませ、極端な外需、輸出頼みという我が国経済の脆弱さをもたらしました。
総理、政府・与党は、大企業を応援すれば、いずれそれが家計に回ってくるなどと言ってきましたが、事実はそうなりませんでした。これまでの経済政策の誤りを率直に認めるべきではありませんか。
後期高齢者医療制度の廃止は国民の声です。社会保障の二千二百億円の削減は、この間の審議を踏まえ、来年度予算編成に入る前に中止を決断すべきではあり ませんか。本気で内需主導と言うなら、大企業から家計へ経済政策の軸足を移し、雇用を守り、国民の暮らしを支える転換こそ、今緊急に求められていると考え ますが、いかがですか。
今回のアメリカ発の金融危機で、これまでの金融自由化、野放しの規制緩和を見直そうという機運が国際的に高まっています。にもかかわらず政府は、相変わ らずアメリカに追随し、日本での更なる金融自由化という金融立国論を掲げたままです。この際撤回し、我が国の金融自由化そのものを抜本的に見直すべきでは ありませんか。
大銀行を先頭にした貸し渋り、貸しはがしは激しさを増しています。銀行に対して、中小企業への貸出し目標と計画を明確にさせて監視、監督を強化すべきで す。また、政府はセーフティーネット保証の対象業種を拡大しましたが、なお対象とならない中小業者は四割に上り、深刻な資金繰りに苦しんでいます。大本の 部分保証制度を撤回し、全額保証に戻すべきだと考えますが、いかがですか。
次に、雇用対策について伺います。
今、大企業による大量の派遣切り、期間社員の雇い止めというかつてない深刻な事態が広がっています。その多くは、職を失えば寮からほうり出され、たちま ち路頭に迷う住み込み派遣です。正社員の代わりに半分以下の賃金で同じように働かせ、莫大な利益を搾り取ってきながら、カジノ経済の破綻のツケを国民に押 し付け、調整弁として使い捨てることは断じて許されません。
総理は、派遣先に再就職支援を求めると言いますが、八月までに七百九十人が解雇され、五百五十人が失職したトヨタ九州では、その実態すら把握しておりま せんでした。厚生労働大臣、どれだけの労働者が職を奪われようとしており、どれだけの労働者が再就職先を確保できずにいるのか、住まいまで失おうとしてい る労働者がどれだけいるのか、政府はその実態をどのように把握し、派遣先、派遣元を指導しているのですか。
これら大企業は、減収減益が大量解雇の理由だと言いますが、なぜそれだけの人員削減が必要やむを得ないというのか、まともな説明は一切なされていませ ん。トヨタはなお年間六千億円もの利益を見込み、内部留保は十三兆円を超えています。マツダもまたバブル期を上回る利益を見込み、そのほんの一部を回せば 派遣労働者の人件費は十分賄えるはずです。大企業はまだまだもうかっており、体力も十分にあります。その大企業が、社会的責任を放棄し、率先して大失業の 引き金を引くなど断じて許すことはできません。
総理、このような雇い止めを中止し、雇用を守るための最大限の努力をするよう、主要企業と経済団体に対する指導と監督を強化し、雇用を守る実効ある措置をとることが政治の責任ではありませんか。明確な答弁を求めます。
また、雇用保険特別会計にため込まれている六兆円もの積立金を直ちに活用し、雇用保険から排除されている非正規労働者にも必要な給付ができるよう、受給 に必要な就労期間を元の六か月に戻し、給付期間を三百六十日とする。職業訓練や再就職活動中の生活援助制度、住宅困窮者への家賃補助制度を創設するなど抜 本的に見直すべきではありませんか。厚生労働大臣、お答えください。
我が党は、こうした派遣切りを許さないためにも、労働者派遣法を抜本改正して九九年の改悪前に戻し、有期雇用を厳しく制限する労働基準法の改正を求めるものです。
最後に、総理に伺います。
追加経済対策の目玉だと言いながら、迷走を極める定額給付金は、景気対策としてどんな意味があるというのですか。内閣府の試算でも、国内総生産の押し上 げ効果はわずか〇・一%です。三年後の消費税大増税は、暮らしと経済を深刻な危機に突き落とすことになります。そんな定額給付金は白紙撤回すべきではあり ませんか。
発足から二か月、政権の延命という党略は国民との深刻な矛盾を広げ、混迷を極めるあなたの政権は早くも政権末期というべき状況にございます。
日本共産党は、国民的闘いと結んで、徹底して国会論戦に臨み政治を変える決意を表明して、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 仁比議員の質問にお答えをいたします。
まず、これまでの経済政策の評価についてのお尋ねがあっております。
日本の活力を取り戻すために我が国が取り組んできた構造改革は、一定の成果を上げたと認識をしております。しかしながら、現在、格差の拡大など改革に伴 うひずみが指摘をされております。また、国際金融情勢が大きく変動をしていることなど新しい課題が生じ、我が国への実体経済への影響が懸念されているとこ ろであります。
このため、改革による成長を追求するとともに、ひずみへの配慮と新しい課題の解決に取り組み、内需主導の持続的成長が可能となるような経済の体質転換を進めてまいらなければならないと考えております。
社会保障費削減についてお尋ねがありました。
平成二十一年度予算の概算要求基準では、社会保障費の自然増のうち二千二百億円の抑制を行うこととする一方で、最終的には、財源も勘案の上、予算編成過程で検討することといたしております。
雇用を守り国民の暮らしを支える経済政策についてのお尋ねがありました。
政府・与党が取りまとめた生活対策では、三つの重点分野のうちの第一に生活者の暮らしの安全を掲げておりますのは御存じのとおりです。
このため、本対策におきましては、定額給付金の実施や六十万人規模の雇用下支え強化策などを盛り込んでおりまして、これらを着実に実施することで生活者の安心の確保を図ってまいりたいものと考えております。
我が国の金融自由化についてのお尋ねがあっております。
今回の金融危機は、証券化商品、いわゆるデリバティブ等々に代表される新しいビジネスモデルが拡大していく中で、市場参加者がそのリスクを適切に管理できず、金融市場が深刻な混乱に陥ったものであります。
基本的には、自由な市場原理に基づく競争と資本フローが今後とも成長の基礎であり続けると考えております。ただし、こうした現在の金融市場における混乱 を踏まえれば、金融市場における一定の規律付けも必要であると考えております。先般の金融・世界経済に関する首脳会合においても、金融規制、監督の改革の 方向性と具体策について一致をしたところであります。
次に、中小企業に対する貸出しについてお尋ねがありました。
中小企業向け貸出しにつきましては、あらかじめ一定の数値目標を設定させ、その実行を義務付けることは、金融機関の貸出しが借り手の資金需要や個々の与 信判断の結果によることから困難であると考えております。一方、中小企業に対する円滑な金融は民間金融機関の最も重要な役割の一つであると認識をしており ます。
政府といたしましては、緊急保証制度を先月末から開始するなど、しっかりした資金繰り支援を迅速に講じているところです。さらに、金融機能強化法の改正 により、民間金融機関の資本基盤を強化し、中小企業に対する金融仲介機能の発揮に万全を尽くしてまいりたいものと考えております。
中小企業への資金繰り対策についてお尋ねがありました。
緊急保証制度につきましては、経済状況の悪化に対応して対象業種を迅速に拡大することとしております。去る十一月十四日にもソフトウエア業や電気メッキ 業などを追加したところは御存じのとおりです。なお、小規模企業に対する保証制度につきましても、業種を問わず、もとより一〇〇%保証ということにいたし ております。
また、十月一日からセーフティーネット貸付けを開始したところです。これは、緊急保証制度の対象となっていない業種も含めて、すべての中小・小規模企業が利用可能といたしております。
なお、責任共有制度は、金融機関と信用保証協会が適切に責任を分担し、両者が連携して中小企業の経営支援を行うことを促すものであります。これは、借り手である中小・小規模企業にとっても意義のある制度と考えております。
引き続き、中小・小規模企業の資金繰り支援に万全を期してまいりたいと思っております。
雇用の維持に向けた取組に関するお尋ねがありました。
雇用情勢が下降局面となる中にあって、非正規労働者を始めとする雇用の安定の確保は重要な課題であると認識をいたしております。
そのため、大企業を含め派遣先が派遣契約を解除する際には関連企業での就職をあっせんするなどにより就業機会の確保を行うよう指導を行ってまいります。 あわせて、先般取りまとめた生活対策に基づき、年長フリーターなどの正規雇用化の支援、地域における雇用機会の創出など、雇用対策の強化に取り組んでまい ります。
定額給付金の経済効果についてのお尋ねがありました。
今回の生活対策における定額給付金は、低所得者にも広く公平に行き渡ることから、景気後退や物価高騰などの生活の不安に直面する多くの家計にとって、緊 急支援としての迅速な効果が期待されるものであります。定額給付金の経済効果については、一般論で申し上げれば、家計に給付金を支給することにより消費を 増やす効果があると言えます。
なお、今後一年間の実質国内総生産の押し上げ効果が〇・一%であるという内閣府の試算は、試算可能な一つの目安として示したものと承知をしております が、経済効果の試算は具体的な実施方法や今後の経済状況などによって変わり得るものであることから、幅を持って見る必要があると考えております。
次に、定額給付金を撤回すべきとのお尋ねがありました。
定額給付金は、景気後退下での生活者の不安にきめ細かく対処するため、家計への緊急支援として実施するものであります。あわせて、家計に広く給付するこ とにより消費を増やす経済効果もあるものであり、生活対策における重要な施策の一つと考えておりまして、これを撤回する考えはございません。
残余の問題につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣舛添要一君登壇、拍手〕
○国務大臣(舛添要一君) 仁比議員から、大企業の大量解雇等についてお尋ねがございました。
都道府県労働局からの十月の報告によりますれば、派遣労働者の約三千四百人が雇い止めや中途解除されていると聞いており、今後とも、毎月の労働局からの報告や派遣元事業主からのヒアリングにより、住まいの状況も含め、可能な限り実態把握に努めてまいります。
また、派遣先が労働者派遣契約を中途解除することは、違法ではないものの、派遣労働者の雇用の安定の面からは好ましいものではなく、可能な限り避けるべきものと考えております。
このため、派遣元、派遣先指針に基づき、中途解除の際には、派遣元、派遣先双方の企業に対し、派遣先の関連企業での就業をあっせんする等により新たな就業機会を確保するよう必要な措置を求めているところであり、適切な指導等に努めてまいります。
あわせて、先般取りまとめた生活対策に基づき、年長フリーター等の正規雇用化の支援、地域における雇用機会の創出など、雇用対策の強化に取り組んでまいる所存でございます。
次に、雇用保険についてお尋ねがございました。
雇用保険の積立金は雇用失業情勢が悪化した場合の失業等給付に充てられるものであり、積立金残高の規模を理由に安易な給付の拡充等を行うべきではないと考えております。
いずれにしましても、雇用保険制度については、雇用失業情勢が下降局面にあり、更なる悪化も想定されていることも踏まえ、給付と負担の在り方について、現在、労働政策審議会において検討を行っているところでございます。
また、非正規労働者の雇用対策については、雇用保険二事業を活用し、補正予算において職業訓練期間中の生活保障給付ができる制度や入居初期費用の支援の ための貸付制度を創設したところでありまして、今後とも、これらの支援策の積極的活用を図ることにより、非正規労働者の雇用の安定の確保に努力してまいり ます。(拍手)