○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

御嶽山における捜索を中止せざるを得ないという報に接しまして、沈痛の思いがいたします。噴火や台風、集中豪雨など、相次ぐ災害で犠牲になられた方々へ心から哀悼の意を表しますとともに、全ての被災者の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。

今日は広島の同時多発的な土石流についてお尋ねをしたいと思っていますが、土砂、瓦れきの撤去が一定進む中で、土砂はかき出したけれどもこれからの生活の基盤の再建に途方に暮れるというのが多くの被災者の皆さんの実情ではないかと思うんです。

写真を六枚、資料としてお配りをいたしました。九月の、安佐北区可部東六丁目に新建団地というところがありますけれども、この様子です。

発災直後は土石流で完全に埋まって、もちろん入れもしませんでしたし、家の姿は見えなかったところですが、こうやって土砂をかき出してみると、一見新築のおうちのような、そうした建物なんですね。

二枚目が、土石流が襲ってきた山側の傾斜地です。ここを膨大な土石流が襲いかかってきて、三枚目のように建物の基礎の部分が完全にえぐられてしまっています。仮の柱で建物を支えるような形になってはいますけれども、これが住めるはずがない。

加えて、四枚目、そうした土石流が擁壁を壊して、その下の部分にある家にのしかかってしまっているわけですね。五枚目はその下の家の方から見た様子ですけれども、壊れた重たい擁壁が下の住家に倒れかかっていて、その住家も極めて深刻な被害を受けている。

最後の六枚目は、そうした土石流で建物そのものがゆがんでしまって、玄関の扉が閉まらない、そうした様子になっている。

こうした開発されて建物が建ったこの町内だけで合わせて九戸が、一戸一戸の再建はもちろんなんですけれども、言わば面として町内の再建の見通しを立てないと、これは生活の基盤を取り戻すことはできないという状況にあります。八木や緑井、そして安佐北区始めとして、こうした地域が本当にたくさんあるというのが今の現状なんだと思うんですね。この間、国、県、市一体で地域ごとの意見交換会が行われてきましたけれども、その中で被災者から出されているそうした声に応えて必要な公的支援を具体化する、再建の見通しを立てるということが今本当に大事だと思います。

そうした観点で、今日、三点お伺いをしたいと思うんですが、まず第一は、焦点となっている、これから安心して住めるのかという被災者の不安の問題です。
八月二十八日の閉会中審査でも紹介をしましたが、緑井七丁目で被災したある方は、あの場所が安全だという保証がない限り、家の改修とか建て替えの話には気持ちがいかない、個人の判断にはならないと、そうおっしゃっていて、私どももこの間、被災者千数百人の方々の声を伺う取組をしてきたんですけれども、その声がどんどん広がっていると思います。住み続けたいという気持ちと、どうしたらいいか、もう絶望するという思いの間に揺れ動くばっかりで、気持ちが定まらないと。その中で、安全性の判定というのは国、行政の責任だと思うんですね。

そこで、まず土砂災害防止法に基づく特別警戒区域指定の前提となる基礎調査と基準についてお尋ねしたいと思います。

今般の広島の土石流被害の流出した土砂が、想定の五倍という衝撃的なニュースが流れました。土木学会、地盤工学会の合同調査の結果を報じたものなんですけれども、その中で広島大学大学院の教授はこんなふうにコメントをされています。危険渓流の谷の姿というのは、これ枝分かれしているわけですよね。その支流から複数同時に土石流が起こるということを県の調査は想定をしていなかった。だから、その県の調査と違って、今回は複数から土石流が起きたことによってその想定との開きが大きくなった。したがって、流出した土砂が事前に想定されていたものと五倍の違いがあるということなんですよ。これ、大臣も現地を御覧になって、どれほど膨大な量の土砂や岩石が流れ出してきたかということでお分かりいただけると思うんです。

そうした下で、八木、緑井を始め、国の基準による特別警戒区域の指定が仮になされていたとしても、その範囲を超えて大きく被害が広がっているということが明らかになりました。したがって、これまでの基準で安心できるのかと。これまでのままの基準とそれに基づく調査で仮に特別警戒区域が今後指定されていったとしても、安心できないということじゃないかということが大問題になっているわけです。
目の前でいいますと、広島県は現実に起こった被害の現状を追認する形でこの地域の指定をするということが最も分かりやすいというふうに知事御自身もおっしゃっています。私は当然だと思うんですね。ところが、報道では国が難色を示しているというふうにも言われています。
そこで、まず水管理・国土保全局長に、どうしてこんなことになっているのか、その基準の説明を簡潔にいただければと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(池内幸司君) まず、この土砂災害警戒区域等の指定の前提になります計算に当たりましては、流出土砂量、それから氾濫が開始すると想定される基準点、土石流の流下方向、こういったものの適切な設定が必要でございますが、これにつきましては現在広島県から御相談を受けておりまして、今回の土砂流出の状況ですとか被害実態を踏まえまして適切に設定するよう、現在助言を行っているところでございます。

○仁比聡平君 私の方で少し説明しますと、今お話のあったような形で物理的に計算するわけですよね。なんですが、そこに入力する現地調査を踏まえた土砂量というのは、最長渓流、つまり谷が一本になるところの、しかも第一波の土石流だけを考えることになっていると、昨日勉強させていただいて伺いました。だから、第二波、第三波と、次々と土石流が発生したら想定を超えることになるのは、これは当たり前なんですね。現実には、第一波どころか同時多発的に土石流は発生をしました。ですから、基準が現実に起こり得る災害の実態に合わないのでは、土砂災害防止法そのものの信頼が根底から崩れてしまうわけです。
そこで、うえの政務官においでいただいていますけれども、これまで開発の後追いになり警戒区域の指定も遅れてきたと、言わば土砂災害の危険を放置したと言われても仕方がない、そうした国土政策の下で起こった多大な犠牲を本当に正面から受け止めて、これから同様の災害を繰り返さないためには、この広島県の要望にちゃんと応えるということ、そして基準自体を見直すということが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(うえの賢一郎君) お答えいたします。
委員御指摘のとおり、今回の広島における土砂災害につきましては、それをこれからも正面から受け止めてしっかりとした対応をしていくということが非常に大事だというふうに思います。その中で、土砂災害特別警戒区域を適切に指定をしていくということは特に重要なことだと認識をしております。

現在、その区域の範囲の算出に当たって用いる計算方式、これにつきましては、過去の多くの土石流データの分析などに基づきまして作られたものであり、学術的にも認められたものと思うものでございます。現時点では、これは最適なものだというふうに考えております。

国土交通省といたしましては、広島県に対して、土砂の流出状況あるいは被害の実態を踏まえ、適切に計算条件、その条件を設定するよう助言をしているところですが、このことにつきましては全国の都道府県についても同様に周知徹底を行い、この範囲の指定が適切に行われるように今後とも努めてまいりたいと思います。

○仁比聡平君 今、条件というふうにおっしゃったのは、つまり現実に災害が起こって五倍と指摘をされているような土砂の量が発生をしたのであるから、だからその現実に発生した土砂量を入力すれば特別警戒区域の指定ということになるじゃないかという御趣旨だと思います。

そうした方向を助言というふうに国はおっしゃるんだけれども、何だか都道府県の責任であるというようなことで、本当に国の責任が果たせるのかと。私、もっとはっきりさせるべきだと思うんですよね。今国会にかかる土砂災害防止法の改正は、そもそも広島で本来指定されるべき特別警戒区域の指定がされていなかったということが始まりですよね。実態に合った区域指定が行われないのであれば、法の見直し自体が何だったのかということになります。真剣な検討をお願いいたしたいと思うんです。

二点目は、自力避難者というふうに呼ばれている方々の実情についてなんです。

県営や市営住宅あるいは民間の借り上げ住宅で避難生活をされている方は、家賃あるいは家電や生活必需品も支援されるようになりました。ところが、自宅のローンが残っていながら住めなくなって、自力で避難してアパートやマンションを借りている方々は、二重に家賃を支払わなければならないという方々がたくさんいらっしゃるんですね。

例えば、県営住宅に応募をしたけれども落選をしてしまったと、大きな病気をしていて、大勢の、梅林小学校の体育館などの避難生活は無理だということで、やむにやまれず民間住宅を借りましたという方。あるいは、長女の下に次女の世帯と一緒に避難をしたお母さんがいらっしゃいますが、十一人もの大家族になってしまって、もちろん最初は十一人でも励まし合って頑張るわけですけれども、選ぶ時間もなくて、今すぐに入居できるというアパートを借りざるを得なかったと。あるいは、高校生と中学三年生の受験生を抱えていて、公営住宅は遠くばかりなので通学ができないという事情で、もちろん転校もできない、学校の近くのアパートを借りざるを得なかったと。どの方々も、経済的に余裕があるから自力で借りたんじゃないんですよね。

西村副大臣、現地の対策本部でずっと被災者の皆さんの実情を御覧になってきたと思いますが、こうした実情、自力避難者の実情をどう受け止めているか、どれだけの住民が自力で避難して家を借りているのかということをどう把握しているのか、その二点を伺います。

○副大臣(西村康稔君) もう委員御案内のとおりでありますけれども、発災当日から二十六か所の避難所を開設し、広島市において、そして五日目から公営住宅の空き住戸の募集を開始をして、その後順次、国家公務員の住宅であるとか国の提供するもの、それから民間賃貸住宅等も含めて七千二百戸分は確保してきたというのが現実であります。

そうした中で、今も常時募集を行っているというようなことでありますけれども、そうした中で、様々な事情で自力でアパートを見付けられたりした方がおられることを私どもも承知をしておりますし、市に対しては早い段階から被災者台帳というものをしっかり整備をして、一人一人きめ細かに対応、一世帯一世帯きめ細かに対応するようにということを求めてきているところでありまして、若干、当初、広島市の方で現場が混乱したこともあってなかなか進まなかったところはありますけれども、今ではそういう台帳が整備されて、一人一人きめ細かに、特に、避難所でまとまって情報提供できる段階から、それぞれがそれぞれの新たなスタートを切られていますので、散らばっておられますので、きめ細かに対応するようにということで国も支援をしながら進めているところでありますけれども。

現実どれだけの方がおられるのか広島市においていろいろ把握をしているようでありますけれども、一つには住民票の移動、それから義援金の申請が始まっておりますので、そのときにその都度いろんなことを、ヒアリング、カウンセリングのようなことも併せて行いながら進めていると思います。

ただ、全体としては把握はしていないというのが現状だと思いますので、引き続きそれぞれの事情に応じたきめ細かな対応を是非やっていただきたいと思いますし、国としても応援していきたいというふうに思います。

○仁比聡平君 二か月がたとうとして把握ができていないというのでは、ニーズに応えた救助ができないわけですよね。

山谷大臣に御認識を伺いたいと思うんですが、こうした二重の住居費負担ということについて、自力でできたんでしょうといって切り捨てるというのは、これは余りに冷たいんじゃないでしょうか。この二重生活がどこまで続くのかというめどさえ立たないという下で、民間の借り上げ住宅と同じように扱ったら、これ問題、住宅費については解決するんですよね。

これ、大臣、そういう支援をするべきじゃないですか。

○国務大臣(山谷えり子君) 広島市の土砂災害、多くの住宅に被害が発生しておりまして、国、広島県、広島市が連携しながら被災者の住宅確保や生活再建にしっかり取り組んでいくことが重要だと考えております。

今、西村副大臣からも答弁をいたしましたが、被災者の方々の支援のために、広島市において発災直後から入居可能な住宅として約七千二百戸の提供に努め、現在も応募できるような状態であります。住まいに関することも含めた総合的な相談窓口を設置して、利用可能な融資制度の紹介など、きめ細かな相談体制、対応を行っていると聞いております。

こうした市からの住宅提供の取組を活用しないで独自に住居を確保した方については、自らの資力では住家を得ることができない者に対して行政が仮住まいを提供するという災害救助法の趣旨に該当しないため、応急借り上げ住宅の対象とすることは難しいと考えています。

いずれにしても、国、県、市が引き続き連携しながら被災者の方々の住宅確保、生活再建に努めていきたいと思います。

○仁比聡平君 それは冷たいですよ。少なくとも市とよく相談して、だって、これから新たに民間借り上げに応募するんだったらいいよという話でしょう、今のお話は。今住んでいるところ、そこを民間借り上げとして扱うという検討を、私はよく考えていただいて、市とよく協議をしていただきたいと思います。

時間がありませんから、最後、もう一問は、被災住宅の被害認定に関わってなんですが、御存じのように、救助活動が重機を動員して行われました。八木で、近所で十名が亡くなったという地域で、御自身の敷地や畑に自衛隊や消防が重機で入ってきて救助活動を行った。その中で、大きな岩石の破砕のために重機がどんどん動くわけですよ。その振動で屋根がずれて壁もひび割れたんだけれども、家の柱はしっかりしているんで、支援法上の認定は一部損壊ですと、そういう相談が数十件も寄せられています。年金生活で新たな家賃も出せないと泣く泣く雨漏りする家でシートをかぶせて暮らしているんだけれども、行政に問い合わせても、前の写真がないじゃないかとか、補償のルールがないじゃないかといって取り合ってもらえないと。救助活動で壊れたのに、後は何もしないでいいなんということがあっていいはずがないんですね。

災害対策基本法では、救助のために緊急の必要があるときに他人の土地や建物の一時使用をするというときにはその規定があって、その際の損失補償も規定をされています。これに準じた対応を行う、あるいは支援法でしっかりと大規模半壊や全壊の認定をする、こうした方向で取り組むべきだと思うんですが、まず統括官、いかがでしょう。

○政府参考人(日原洋文君) ちょっと御指摘の実態をよく承知しておりませんので一般論としてお答えさせていただきますけれども、災害対策基本法の六十四条、応急公用負担につきましては、災害応急対策として必要だということで、他人の土地を使用するとか、そのために障害となるものを言ってみればわざと壊すとか、そういった類いのものでございますので、今回の事例がそれにうまく当たるかどうかということについてはちょっと分かりかねる部分がございます。

ただ、そうであっても、自衛隊等の機関の活動によりまして、過失によって第三者に損害を与えた、損失を与えた場合には、国家賠償法の規定による通常生ずべき損失の補償という適用もございます。

いずれにいたしましても、ちょっと事実関係を県や市、関係省庁がよく把握した上で、どのような対応を取れるか検討してまいりたいというふうに思います。

○仁比聡平君 時間が来ていますので終わりますが、今後しっかりと議論をしていただきたいと思いますけれども、被災者に、あなた、国家賠償を請求したらというふうな、そんな固いことを言っていて必要な支援はできませんよ。本当に心が通じる支援を今後ともどうぞよろしくお願いを申し上げまして、今日は質問を終わりたいと思います。