審議を尽くすべき問題の第一は、「わが国に難民はほとんどいない」とする誤った認識をただし、国際水準へ転換する立法府の責任を果たすことです。入管庁の1次審査で難民と認められなかった人が、それをただす不服申し立てに関与する難民審査参与員の役割は重要です。法相は、政府案の土台となった専門部会の委員だった柳瀬(房子)氏の発言を擁護してきましたが、5月30日の記者会見での発言を夜になって訂正する異常な経過で、柳瀬氏のいう回数の対面審査を行うことは「不可能」だと認めました。
第二は、さまざまな事情で帰国できない非正規滞在者を一くくりに「送還忌避者」呼ばわりする入管庁のごまかしを明らかにし、人権と人道を尊重する保護と共生への転換を実現することです。法務委の求めで開示された一部の数字だけを見ても、「送還忌避者」に日本社会に根ざして生きる多くの人たちがいることが明らかになりつつあります。
日本で育った18歳未満の子どもが昨年末時点で295人含まれ、その両親、兄弟姉妹は296人、計591人に上ることがようやく明らかにされました。しかし、子どもたちの教育や将来に立ちふさがる深刻な壁の実態は、いまだ明らかになっていません。十分な資料提出を受けるまで待ち、審議を尽くすのが当然ではありませんか。
法相が国会で、ウィシュマさん死亡事件の教訓を踏まえ、改善策に誠実に取り組むなどと繰り返すその陰で、大阪入管の常勤医師が泥酔し患者への暴言、不適切な投薬を行ってきたことが報道で初めて発覚。法務省は問題をいつ把握したのか質問されても「答えられない」などという隠蔽(いんぺい)体質をそのままにして、採決に及ぶなどまったくあり得ません。(しんぶん赤旗 2023年6月3日)
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