第169回国会 参議院法務委員会 第11号
2008年5月22日 仁比聡平参議院議員
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
大臣、お疲れのところですけれども、この保険法の問題で私いろいろ資料を調べておりましたら、平成七年度の生命保険協会がお作りになられた一般課程テキストというのが出てまいりまして、これを見ますと、業界の共通教育における業界統一カリキュラムの標準テキストですというふうにあるんですね。
〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕
ここで生命保険についてどう言っているかといいますと、一人は万人のために、万人は一人のためにという相互扶助の精神で成り立っているものです、本来助け合いであり、貯蓄とは異なりますという、こういうふうに書いてございまして、この建前と、一方で保険金の不払や保険料の取り過ぎ、こうした消費者被害、苦情の激増というこの現実との余りの乖離に、私は本当にあきれますし憤りを禁じ得ないわけですが、午前中、前川議員の質問に対する金融庁当局の答弁を聞いておりまして、その思いを一層深くしたわけでございます。
私も先週の五月十六日の決算委員会で、渡辺金融担当大臣に、この被害や苦情の激増をどう認識しているのかというふうにお尋ねいたしましたら、相談、苦情が増加傾向にあることは分かっているが、それは一連の保険金不払の問題があって、それが世間の注目を集め、契約者の問題認識が高まっているということもその背景の一つではないかという、全く歯切れの悪い、渡辺大臣らしくない答弁で、決算委員会は大変あきれた雰囲気が広がったんですね。
山本副大臣に私、個人的な恨みは全くないんですけれども、通告してないんですが、このような認識で間違いないんですか。
○副大臣(山本明彦君) 認識というのは、それぞれ思いいろいろあるというふうに思いますけれども、やはり我々金融庁も、利用者保護を図ってすべてのことを行っておるわけでありまして、今、未払、不払、支払漏れがありましたけれども、そうしたことを踏まえて、実際出てきたことは事実でありますから、そうしたことを踏まえて、利用者の方がこれからはそうした漏れがないような形で保険金が受け取れるような形で保険会社を指導してまいりまして、大分時間も掛かりましたけれども、制度が整ってまいりまして、これからは今までいろんな理由がありますけれども、請求主義という点もございますし、商品が多様化し過ぎてしまってなかなかそれにフォローができていかなかった、いろんなことがありますので、中のガバナンスも含めまして、システムも含めまして、請求漏れがないように、そして支払漏れがないような形のシステムを大分構築してまいりましたので、今からは今までのようなことはない、そんな形で我々も指導しておる、利用者のために指導しておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
○仁比聡平君 改善されてきたというふうにおっしゃるんですけれども、それだったらこんなに相談、苦情が激増しますかということなんですよね。
加えて、金融監督行政が、そういった市場あるいは保険企業をつくってきたという、あるいはそういう事態を放置してきたという、このことについての反省も、せんだっての決算委員会での渡辺大臣の口からも語られなかったというのが、私は何だかちょっと、一体どういうことなんだろうかというふうに思うんですよ。
トラブルがない方が相談することはあり得ないわけですから、ですから、相談が今激増しているという事実は、これまで泣き寝入りをしてこられた方がどれだけ多かったのかということのあかしにほかならないと思うんですね。その認識が政府全体にあるのかと。保険をめぐる消費者被害は後を絶つどころか深刻さを増しているという点についての認識を鳩山大臣にもお尋ねをしたいと思うんですけれども、前川議員の質問に対して、消費者保護の観点がないならばこの保険法案の意義の過半は失われてしまうというふうに大臣、午前中答弁されましたから、もう少し具体的にお尋ねしたいと思うんですけれどもね。
渡辺大臣は、そのときの質問で、不払の大きな要因として、各保険会社が入口、保険の募集から、出口、保険金の支払まで、商品の特性を踏まえた適切な管理体制が整備されていないまま商品を開発、販売してきたことが考えられるというふうに答弁されまして、先ほど副大臣もそのような御趣旨の御発言がありました。実際、金融自由化、それから保険の業界でも規制緩和が行われて以降、保険商品の複雑化、多様化がどんどん進んで、リスク性の高い商品も急増していると、これが被害要因になっているという中で、その下での契約法の役割、この保険法ですね、提案されている保険法の役割というのを総論としてどんなふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 四十万件の苦情が生損保に寄せられているということは、二年前より倍増したと。私、この新聞記事を見て考えたことは、苦情を寄せる人は、分かって不満を持ったから苦情をよこすわけです、苦情を寄せるわけで、言葉は悪いけれども、ちょろまかされて気が付かなかった人がいっぱいいるかもしれませんね。例えば、自動車の関係でいえば、対物とかいろんな事故を起こしてしまった、それが主たる契約にある、ところが、代車の分も払ってやると書いてあったのに気が付かなかったなんという話はどうも山のようにあるだろうというんですね。
そういう意味では、今回の保険法の改正の趣旨というのは、先ほどから何度も申し上げて、民主党の皆様方に御答弁申し上げたように、あるいは森さんに御答弁申し上げたように、ただいま木庭先生に申し上げたように私は思っておりますので、とにかく、強い立場にある保険者、保険会社がその立場を利用して、よりもうけを得ようとして、ごまかしと言うとちょっと言い方は変かもしれませんが、そういうことがないように厳しく金融庁も監視をしてもらいたいと思うんですね。
例えば、さっき前川先生が、生命保険で、亡くなった後三十年後に支払うという約款があったらどうなんだと。私は、先生方と違って弁護士じゃないから法律の知識は余りありませんけれども、ただ法学部を出ただけですけれども、そういうのは公序良俗に反する無効な契約とか約款というように私は勘では思うんですね。それくらいのことを金融庁が言えなくてどうするんですかと私は思うわけ。
〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕
だから、これは保険法の質疑であって、それは共済も取り込みますよとか、傷害疾病定額保険なんというのは書いていなかったから書きますよとか、そういう全く基本的な概念を確定し、ルールを決める法案だから、業法ではないんだけれども、しかし、どんなに立派な基本法を作っても、業法の運営がうまくいかない、監督官庁がよく監督しないとすれば、これせっかくのいい条文が泣くんですよ。そうならぬように、副大臣、頑張ってください。
○仁比聡平君 私も、監督行政が極めて不十分で、そのことがこの被害、苦情の激増ということの要因の一端を成しているということを指摘をしてきたわけですけれども、契約法、この保険法が本当に今大臣がおっしゃるような総論の趣旨を具体化したものに実際になっているのかということについても極めて疑問に感じているわけです。
基本法ですね、もちろん、なんだけれども、現実に市場の保険商品というのは極めて複雑化、多様化している。ここを規律するというものでなければ本当の消費者保護というのは果たせないのではないかというふうにも思うんですけれども、それでも、今日の議論でも出てきますように、消費者保護ということで具体的な柱は、告知義務の問題、それから告知妨害の問題、それから給付の履行期の問題、それらを通じての片面的強行規定の問題であって、しかも、午前中の議論のように、それぞれの保護規定と言うが本当にそうなのかと、むしろ現行法よりも後退するのではないかという疑問が指摘されているわけです。
局長にちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、この契約法としての基本法をどんな考え方で作ったのか、商品性とかかわる監督行政、こことの立て分け、これはどんなふうな発想で提案されているのか、お尋ねしたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) これは、まず契約ルールでございます。しかも、保険法という、保険契約全般に通じて一般的なルールとしてどこまで書けるかというところがございます。
その上で、しかし、保険契約者の保護の要請は近時特に強いと。特に、この保険という分野においては保険会社と保険契約者との関係、それから約款が膨大になる、そういった問題から見れば、この契約のルールというのを保険契約者の保護というところを常に視点に置きながら定めていかなければならないと、一般法のルールとしてそれを決めていくんだということでございます。
理念としてはそういうことでございまして、その上で、先ほども申し上げました告知に関する規定であるとか、先生の御指摘になった履行期の規定であるとか、それから、それを片面的強行規定にするといったような保険契約法、一般ルールとしてできるところを最大限図っているというつもりでございます。
もっとも、消費者保護を実現するためには契約ルールを設けるだけでは必ずしも十分ではない、この点はそのとおりでございまして、保険会社や共済団体との監督規制とも相まってこの契約ルールが消費者保護を図る一助になるというふうに考えているわけでございます。
○仁比聡平君 もう少し具体的に聞きますけど、多様化する商品がいろいろありますから、ですから一律に言いにくい部分もないわけじゃないんですが、例えばそれぞれの商品ごとの説明義務、重要な事項の、あるいはそれを証する書面の交付義務、こういったものを契約法の中に盛り込んで、これが尽くされなければ契約の効力を否定するというような立法政策だってあり得ると思うんですね。だけれども、そういった立法政策は今回お取りにならないということについて、論者、学者の中からも、百年ぶりの改正はそうだけれども、だけれども今回の目玉は一体何なのかと、消費者保護と言うけれども、実は中身がないんじゃないかという厳しい声もあるでしょう。どうですか。
○政府参考人(倉吉敬君) そのような御意見があるということは私も承知しております。現に、法制審議会の部会でもそういうことが議論もされているわけでございます。
ただ、これは保険契約法としての一般ルールでございますので、個々の商品についてどれくらい類型化して個別にこの場合にはこうだああだと書けるかというと、これは様々、それぞれの契約、商品の中身というのが千差万別でございまして、これを一律に規定していくというのは、しかも、その中の概念をきちっと明確に書いて書き分けていく、それについてどのような効果を与えるのかというのをそれぞれ整序させていくというのは、これまたなかなか難しい問題でございます。それで、提案した保険法案のような内容で消費者保護を図っているということでございます。
○仁比聡平君 百年ぶりの大改正なんですよね。その百年ぶりの改正に当たって、もちろんすべてを書き尽くすことはそれは無理かもしれないけれども、大きな問題を抱えているその分野について、そうした整理をして法案化するという能力は法務省民事局にはあるはずでございます。それをなぜやらないのかと。それをやらないという立法政策が、鳩山大臣の総論的な御答弁とは逆に、被害とそれを生み出してきた規制緩和後の市場の現状、これを追認するということになりはしないのかということを私は感じるんですね。
そこで、大臣が何度もおっしゃっています契約における強者、弱者の問題で最後、総論お尋ねしておきたいんですが、保険契約は付合契約の典型というふうに言われておりまして、この付合契約というのは、契約の内容が一方当事者によって事前に作成されていて、その契約内容で契約するかどうか、これのみを選択することしかできない、そういう契約ですね。保険商品というのはまさにそういうものなわけですけれども。
こういった力関係の中で、契約の成立効力をめぐっても特段の消費者保護が求められるという、こういった御認識は大臣、おありですか。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 学生時代に民法等を習っておったときに奄美大島に旅行に行ったんですね、友達と。船に乗ったら、船に乗って一杯やっておったら、約款が書いてあるでしょう、運送の。そうすると、まあ好き勝手なことが書いてあるわけですわね、あれ。要するに、船の中で物を盗まれたって責任負わないだとか、何かそういうのがありますわね。だから、あの約款を全部読んで納得して、これは契約をしたといって船に乗る人というのは余りいないわけですね。
だから、保険契約はもちろんそうではない、みんな慎重に読むものとは思いますけれども、やっぱりその約款の作り方が巧みにできていて、消費者が気が付かなかった、失敗したなんということが絶対ないように、そういう約款を認めないように金融庁に頑張ってもらいたいということを先ほどから何度も申し上げているわけでございまして、この保険法を作ったことは、今提出してこれが成立することを私は、いろんな御批判はあるかもしれない、ただの民法、商法の世界よりも後退したじゃないかというような御指摘もゼロではないけれども、私はこれはかなり、三歩、五歩、十歩前進することではないだろうかなと思っていますし、まだ不十分な点があるならばまた更に改正を加えていって、更に消費者や生活者、保険契約者に有利な方向に持っていくように努力すればいいと、こう考えております。
○仁比聡平君 そういった力関係の下で特段の消費者保護が求められるんだということを否定されるお立場ではないんだろうと思うんですけれども、先ほど、今御答弁の中にあった保険会社の約款の問題で一つ取っても、これ事前に消費者が、どの保険が自分に合うかなといって約款をいろいろ調べるということは現実には無理、不可能なことになっているんですよ。ホームページで主要商品の約款を公開しているのはわずか四社にすぎません。実際には、契約締結後に、あるいは締結と同時に約款が渡されて、読む間はないというのが現実なんですよ。
そういった問題も時間があればまたただしていきたいと思いますけれども、今日は残りの時間、他人の生命に掛ける保険、その典型は団体定期保険ですけれども、これを保険法上どう考えるべきかについてお尋ねしたいと思うんです。
住友軽金属事件と呼ばれる最高裁の判決で、最高裁、こんなふうに判示しました。このような運用が、従業員の福利厚生の拡充を図ることを目的とする団体定期保険の趣旨から逸脱したものであることは明らかである。しかし、他人の生命の保険については、被保険者の同意を求めることでその適正な運用を図ることとし、保険金額に見合う被保険利益の裏付けを要求するような規制を採用していない立法政策が取られていることにも照らすと、遺族の主張を採用することはできないという、そういう全体の趣旨なんですね。
この企業が従業員の命をカタにしてというか担保にしてといいますか、ここで利得をするということは趣旨から逸脱したものであることは明らかだとしながら、だけれども、我が国の立法政策の下での現行法という下ではその遺族の要求にこたえることができないというふうにしたような立法政策、つまり従業員を被保険者とする死亡保険金を企業が受け取るという、こういう保険契約を是とする立法ですね、これは主要国の中で日本だけだという指摘があるんです。これは事実でしょうか。
加えて、法案提出に当たって、政府は諸外国における団体生命保険の実情と考え方について調査をしたか、してないか、そのことを局長、お尋ねします。
○政府参考人(倉吉敬君) 実は、個別に全部調査をしたということはございませんが、保険法部会における審議の過程で紹介がされました。この審議の中では、ただいま委員御指摘の平成十八年の最高裁判決も踏まえて、企業が保険金受取人になるのがいいのかと、その当否が議論がされたわけでございます。
その際に、諸外国の中には企業が保険金を受け取ることを法律によって禁止している例があるということも紹介されました。そして、ただ他方で、諸外国の中には企業が事業活動にかかわるキーパーソンに生命保険を掛けることが広く行われている例もあるという実務の紹介もされました。
このように、この部会におきましては、団体生命保険に関する諸外国の法制について独自の調査を行わなかったわけでありますけれども、そしてすべての立法例を網羅的に検証したというわけでもございませんが、各委員や幹事からそれぞれ諸外国の法制や実務の紹介がされ、それを踏まえた議論がされたところでございます。
○仁比聡平君 今お話にあったその審議会の各委員や幹事というのは、先ほど御答弁があったように、生保業界を始めとして様々な業界の方々も入っておられるということなんだろうと、もちろん研究者の方もいらっしゃるわけですけれども、ということだと思うんですけれども、諸外国で企業のキーパーソンに生命保険を掛ける例があるということと、日本で大きな問題になってきた団体定期保険、つまり、その企業、工場に勤める従業員全員に、全員なり大きなその団体にですね、従業員の、ここに生命保険を掛けるというのは、これは私、場面が違うんじゃないかと思うんですよね。
この商品の仕組みについて簡単にちょっと御紹介をしますと、お配りをしている資料で、いろいろ批判の下で総合福祉団体定期保険とヒューマンバリュー特約というこの組合せが今広がっているわけですけれども、二枚目には契約の形態が書いてあります。それで三枚目に、インシュアランスという保険統計の資料から、平成十八年度決算におけるこの総合福祉団体定期保険の新契約、それから、その次のページはこの新契約も踏まえた保有契約高、これについての実績をちょっと紹介をいたしました。
これ御覧いただければ分かりますように、平成十八年度決算だけで、保険会社全社を合計しまして百万人を超える従業員が新たに被保険者となり、トータルでは二千七百七十万人もの労働者、従業員、サラリーマンがこの被保険者となり、その保険金総額は七十七兆三千百億になりますか、こういった規模、相当巨大な規模になっているわけです。
財務省おいでいただいていると思いますけれども、この保険に関して企業が保険会社に支払う保険料、これは会計上あるいは税法上損金ということになりますね。
○政府参考人(川北力君) お答え申し上げます。
法人税におきましては企業会計の慣行により算出される損益を基礎としておりますが、企業会計上は、法人が保険料を支払う場合におきましては福利厚生費なり支払保険料として費用計上されることが一般であるというふうに考えられます。
したがいまして、法人税法におきまして、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される費用等の額は法人税法の損金の額に算入されるということになっておりますので、御指摘の保険料につきましては、そうした会計処理に従いまして基本的に損金の額に算入されるということになろうかと思います。
○仁比聡平君 財務省、今の確認だけでございますので、退席いただいて結構でございます。
そういう仕組みと規模の中で、先ほど御紹介したように、ここまで最高裁が言うのかという判決が出ているわけですけれども、だけれども、諸外国の法制度の調査もせずにこうした立法提案をしておられる。この問題状況を追認するということになりはしませんかという思いが私はいたします。
そこで、この最高裁も言っています被保険利益について、我が国の法制上どう考えるかということをお尋ねしたいんですが、ある論者によりますと、この被保険利益というのは、契約者と被保険者の間に、契約して保険会社にお金を払う人と、保険が掛けられて、その人が死んだら受取人にお金が行くというその被保険者、この間に経済的な利害を始めとした利害関係、被保険者が死亡すると契約者の生活が破綻するといった関係、典型は御遺族ということになると思うんですけれども、こういった被保険利益というのが必要なんじゃないのかと。
ところが、今の法制で、過労死で一家の大黒柱を亡くして遺族が悲嘆に暮れている中で企業が多額の保険金を取得しているというような出来事が起こって、ここに対しては国民感情もそれから従業員の納得もこれは得られないという状況が起こっているからこそ、こういった紛争がずっと相次いでいるわけですね。これは情緒論だとか感情論の問題では私はないと思うんですよ。これは情緒の問題ではなくて法理の問題。つまり、従業員の命をカタに他人、とりわけ企業が利得するということが正義にかなうのかという問題にかかわる問題だと思うんですね。
かつて日本の法制度でも、この被保険利益を保険契約の柱の要素にするという考え方が取られていたという法制度研究もございまして、ところが今は同意主義ということになっているんです。この被保険利益というのを特にこの団体定期保険においてどう考えるのかと。法務省、いかがですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 被保険利益を取るのか同意主義を取るのかという、こういう厳しい御指摘であったと思っておりますが、この保険法案は同意主義を取ったということになろうかと思います。御批判はいただくところだと思いますが、若干説明させていただきたいと思います。
この保険法案では、当該被保険者の同意がなければ生命保険契約の効力を生じない、もちろん団体生命保険契約もこの中に含まれると、こういう法制を取っているわけでございます。したがって、会社が受取人となるというその今の団体保険契約についても、個々の従業員の同意がなければその従業員との関係では契約は効力を有しないことになります。これによりまして、団体生命保険契約についても少なくとも個々の従業員の意思によらずに会社が保険金を受け取ることとなるという、こういう事態を防止する機能は果たすものと言うことができようかと思います。
これによって、被保険者の同意を契約の効力要件とするということによりまして受取人による保険金の受領を根拠付けるという、そういう法政策、法制度を選択をいたしました。その結果、今御指摘のあった被保険利益を要するという法制は取らなかったということでありますが、これは契約の有効性というものを被保険者本人の意思にゆだねるということにするのが最も合理的であると考えられるということが部会の結論であった、それを受けての法案ということになります。
○仁比聡平君 時間がなくなってしまいましたので、団体定期保険の詳しい話は、金融庁おいでいただいているんですけれども、ちょっと次回に譲らなければならないかなと思うんですけれども、法案との関係で、民事局長にもう一点お尋ねしておきますけれどもね。今、そうした法制は取らなかったというふうにおっしゃったんですけれども、そうしたら、どんな法制を取りましたかということで、同意というこの保険法案をまるで目玉のようにおっしゃってきたわけですけれども、これはこれまでの、現行法の商法六百七十四条一項とどう違いますか。
これまでも、他人の生命に掛ける保険、これについては被保険者の同意が必要とされてきたんですよ。この同意というのも、衆議院で御答弁されていますが、真意に基づく同意でなければならないのはそれは当然でしょう。現行法の、商法上の同意だって、それは変わらないじゃないですか。商法の解釈でもこれまで同意は契約の有効要件とされてきたんです。ところが、その法制度の下でこうした被害が繰り返されてきたと、これが正されないまま新しい法制度なんて言えるのかという話なんですよね。
そこで、この同意が従業員に対してどのように取られてきているのかという調査を行ってきましたか、この法案作りに当たって、というふうに伺いましたら、法務省も金融庁もそういう調査はしていないということなんですよね。
この住友軽金属の名古屋製造所の工場に勤務をしている労働者の方からこんなお手紙をいただきました。
九〇年代にこの保険が問題になったときに、当時の職場の主任が朝礼の場で、会社は団体保険に入っている、この保険に不同意の方は人事まで申し出るようにという趣旨の通知があったが、それ以降は、総合福祉団体定期保険に切り替わったそのときに食堂の前の掲示板に張り出されただけで、一回限り、その後は毎年一年一年更新されているはずなのに、九六年から後ですよ、今日まで十二年間一度もその食堂の掲示すらないというんですから。これで真意に基づく同意が取られているなんてあり得ますか。あり得ないでしょう。
○委員長(遠山清彦君) 倉吉民事局長、質疑時間が終局しておりますので簡潔に御答弁ください。
○政府参考人(倉吉敬君) ただいまのようなケースで、それは具体的にちょっと、もう少し詳しく聞かないとここで断定的に申し上げることはできませんけれども、いかにも会社側がその強い立場に出て、従業員に詳しい説明もしないで、保険金がどういうふうに支払われるのかというのもよく分からないまま無理やり契約をさせられたと、そういう実態であるとすれば、それは真意に基づく同意とは言えないということは明らかであろうかと思います。
○仁比聡平君 契約をさせられたどころか、そういう契約の被保険者になっていること自体、従業員は全く知らないというそういう事態なんですよ。引き続きこの問題をただしていくということで、大臣も是非お勉強ください。よろしくお願いします。